吉村「いろいろな視点から意見が交わされるフラットな組織をめざして」
freeeのダイバーシティの取り組みは、「freeeのマイノリティの声を拾いたい」という経営サイドの想いから、2018年にダイバーシティ推進室を設置したことに始まります。室長にアサインされた吉村は、採用チームでリクルーターとしても働きながら、freeeのダイバーシティをリードする立場となりました。
吉村:推進室の目的は、組織が拡大する中でも一人ひとりのメンバーが自らの才能を最大限発揮できる環境を整えること。具体的な取り組みは、主に「全社ダイバーシティ研修」と「ダイバーシティよろず相談窓口」の設置です。
全社ダイバーシティ研修では、入社するすべてのメンバーに向けて研修を行っています。マイノリティについての当事者性を感じるワークショップを経て、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)やアクセシビリティーなどの理解を深めてもらい、社内外の人との接し方について考える機会を提供しています。またジャーマネ(※)になったタイミングでもあらためて研修を行います。
ダイバーシティよろず相談窓口は、「あなたの『働きやすい会社』は、みんなにとっての『働きたい会社』である」と掲げ、freeeで働く上での悩みや不安を気軽に打ち明けやすくするためのもの。相談内容に応じて、話を聞いたり対処方法などを一緒に検討したりしています。
なぜ吉村はfreeeでダイバーシティへの取り組みを始めたのか。その背景にはある原体験があったと語ります。
吉村:かつて、トップダウンでスピードを追求するあまり高い同質性が推奨される環境で働いたことがあるんです。本音が言いづらく息苦しかったのを覚えています。そのころから、いろいろな視点からいろいろな意見が交わされるフラットな組織が理想だなと考えていました。
その後freeeに入社して組織が拡大していった時、経営陣と従業員の間で、耳に入る声が変わってきました。経営陣はストレートになんでも話ができていると思っていたけれど、従業員側は些細なことに声を上げづらくなってきたんです。そこで、ちゃんと従業員の声を聞ける体制を作ろうと行動し始めました。
声を上げづらくなった理由をヒアリングしてみると、組織が大きくなって自分の話なんか聞いてもらえないんじゃないかと諦めかけている事例が出てきました。これは立場や性別の違いなどの表面的な理由ではなく、前提となる考え方に違いがあるからだと考えたんです。
この体験をもとに、吉村はダイバーシティ研修の骨子を作っていきました。
吉村:「あなたと私は違うのが当たり前で、異なった考え方の人が集まっているのが組織であり、そこで一緒に働く」ということです。お互い気軽にディスカッションすることで新しい視点が生まれ、組織として物事を多面的に考えられるようになります。だからこそコミュニケーションをしっかり取っていきましょうという考え方です。
当たり前のことなんですが、入社直後は誰でも社内ではマイノリティな状況で、ナイーブになっている場合もあります。自分自身が当事者であることに気づくことで、ダイバーシティの話題がぐっと身近になります。研修では、自分の意見を話すことを恐れずに、数カ月後には新しいメンバーを受け入れる側になり、多様な視点を持つことの重要性を話しています。
多様であること(Diversity)や公平であること(Equity)を前提に、組織運営においても、お互いの違いを当たり前だと思うことで、誰もが自然体で働ける環境をめざしているんです。
※ freeeでは単にメンバーの上に立つ者のことではなく、“タレント”であるfreeeのメンバーを叱咤激励し、成長・活躍をサポートする役割だと考え、ジャーマネと呼んでいる
辻本「ミッション実現のため私たち自身も多様な存在でありたい」
CCO(Chief Culture Officer)として社内のカルチャー浸透・組織の体現に取り組んできた辻本。DEIチームが作られることになったきっかけをこう語ります。
辻本:CCOとして社内カルチャーに取り組む中で、女性管理職や女性従業員比率の正確な数字を見た時にかなり偏っていたんです。
その偏りについて、毎回経営会議の場では口をそろえて「課題だね」と言うのですが、そう認識するだけでは進んでいかない。誰かがちゃんとオーナーシップを持って取り組む必要があると考えていました。意識して変えていかないと解決しない難しい課題なんです。
そこで2022年10月、CEOからアサインを受けて私がオーナーになりました。さらに組織を強化するために、2023年7月から吉村に採用チームと兼務という形で手伝ってもらい、2024年1月からは本格的に異動してもらって2人チームになったんです。
チーム結成前、2022年6月にfreeeはダイバーシティポリシー『freeeのDiversityは、多様なスモールビジネスを支えるためにある』を発表しました。これはDEIチームのすべての活動の下敷きとなっています。
吉村:2021年、CEO・佐々木と話をしていて、freeeはなぜDEIに取り組むのか、ちゃんと世の中に打ち出した方が良いよねという話になったんです。
辻本:スモールビジネスは世の中の事業者の99.7%を占めていて、その人たちは当然ながら多様な人たちで構成されています。
freeeは『スモールビジネスを、世界の主役に。』をミッションに掲げていて、スモールビジネスを営んでいる方々がアイデアやパッションを形にするのを、テクノロジーで後押ししたいと考えています。そういった方々に必要とされるプロダクトを作り、ミッションを達成するためには、まずスモールビジネスを解像度高く理解しないといけません。そのためには私たち自身も多様な存在でなければいけないなと。
吉村:freeeのミッションが実現している世界は、前向きなチャレンジがしやすく、多様なビジネスが次々に生まれ、スモールビジネスを通じてみんなが最高の自己表現をできている世界です。誰もがおのおのの個性を活かし、公平な環境でビジネスができ、人生が豊かにおもしろくなっていく世界を作っていきたいと考えています。
現在、freeeのお客さまやアプローチをしている方々は、私たちに近いIT業界が多くなっています。freeeの価値をまだ社会全体には届け切れてはいないんです。
これからさらに多様なお客さまに向き合うにあたって、組織としていろいろな意見を取り入れることや、そもそもの前提が異なる人たちの「違い」に気づくことが大切です。freee自体が多様であることが、ミッションの実現につながると考えています。
2030年、freee全社で多様な意思決定ができている状態をめざして
DEIチームは、2030年に「freee全社で多様な意思決定ができている状態」をめざしています。それには、freeeが多様な状態であることが必要です。
では多様な状態とは何か、いかに実現しようとしているのか──。
吉村:多様な状態を、身体・社会・感情・認知の4つの観点における多様性や公平性が保たれていることと定義していて、この4つは相関関係があると考えています。
つまり身体の多様性、年齢・性別(sex)・人種・障害などが担保されることで社会的な多様性・文化・宗教・雇用形態・ジェンダー・セクシュアリティ・階級などが存在しやすくなる。そして感情の多様性、ポジティブ・ネガティブ・外向性・内向性などが担保されると、最終的に認知の多様性、つまり異なる考え方や学習方法など物事の捉え方ができる状態になるんです。
辻本:最終的には認知の多様性を満たして、問題のあらゆる側面を考慮できるように、チームにさまざまな思考スタイルを持つ人々がいればミッションを実現できると考えています。しかしfreeeはまだ個々の身体の多様性も担保できていない状況です。
たとえば2023年6月期のデータでいうと、従業員における女性比率は25.23%、女性の管理職比率は12.55%です。(freee ESGデータ)
男性ばかりのグループの中でも、その中で多様な意思決定はできていると思っています。しかし、freeeがターゲットとしているスモールビジネスや社会はもっと多様で、それを社内で再現する必要があります。
男女比以外を考えても、大体が大学で教育を受けた人たちで、ほとんどのメンバーが健康体で、社会的ステータスとしては結婚して子どもがいる人が多く、年齢も大体30〜40代。そう考えたらすごく偏っていますよね。
現在freeeは一部の属性の中でなんとか多様に意思決定しようとしている状況とも言えるので、それをもう少し前提から多様にしていきたいんです。
吉村:「いろいろな意見を聞いて反映する」という意味ではヒアリングで良いのではと思うかもしれませんが、反映する/しないの判断が結局こちら側になってしまいます。多様な人が働いていて意思決定に関わってもらうことが大切だと考えています。
会社組織の中でどこまで実現できるかわからないけれど、ヒアリングですべてをカバーできた気になるのは絶対に違うと思っています。意思決定する人が、自分で見えないことは意識できないからこそ、違う視点を持っている人がそこにいるべきだよねという素朴な発想なんです。
DEIチームは、2030年の目標達成に向けて具体的に動き始めています。
辻本:社内の多様性を確保していく上で、今の目標としているのが、最大のマイノリティである女性の採用と登用です。2030年には管理職の構成も含めて、男性比率45%、女性比率45%、残りの10%にどちらにも性別分類が難しいケースを含む、と設定しています。
ただこれは単純に達成したい数値目標ではなく、あくまで多様な意思決定をするために、どこにでも当たり前にいろいろな人がいる状況にするために立てた目標です。
数字を達成するために、同じレベルの応募者がいた場合は女性を採用します、という浅い話ではありません。ちゃんと各ポジションに同じだけ応募者が来るように母集団の形成をしようとか、面接で偏らないように面接官の属性を設定しようとか、最終的にフラットな状態で判断できるようにあらゆることを行います。
テクノロジー以外の分野からもfreeeとして何か言えるように
多様であること、多様な価値観やものの見方が混在することをめざしているfreee。しかし絶対に譲れない条件もあると言います。
辻本:これまでのような文脈で「多様性」という言葉を出すと、多様であることがすべて素晴らしいことのように聞こえてしまいます。でも、実はそうではなくて、「これだけは多様性を認めない」ところも同時に存在しています。
それは、freeeのミッションに賛同しない人とは一緒に働けないということ。
freeeにとってはミッションの実現が前提で、そのために価値基準が定められています。これはfreeeで働く人には全員意識してほしいことです。だからこそダイバーシティポリシーはミッションに紐づけて作られたんです。
一緒にミッションを追いかけたい想いが一致していれば、それ以外の属性は基本的には関係ないというのが大前提のスタンスです。
ダイバーシティへの取り組みの一環として、freeeのメンバーにも期待していることがあります。
吉村:もちろん私たちは、折に触れて、国際女性デーでの発信や東京レインボープライドへの参加も行います。
ただfreee全体として、たとえばプロダクトやそのほかのfreeeの発信など、すべてをダイバーシティポリシー前提にしたいと考えていて、まさに取り組んでいる最中です。バックオフィスのうち、とくに外部発信に関わるチームにはDEIチームの目標を共有し、これからプロダクトチームとも連携していきます。
本当は、ダイバーシティの文脈で私たちじゃなくて、ほかのメンバーに出てほしい。誰に話を聞いて、どこの角度で話を切り出しても、絶対にダイバーシティの文脈が出てくることが理想ですね。
最後に、それぞれがこれからの目標を語ります。
吉村:理想と現実に「なぜかわからないが埋まらない差がある」という時には、アンコンシャスバイアスがあることが多いんです。まずそこに目を向け、会社として気づけるようにしていくことが直近の目標です。
辻本:私はCCOとして社内の制度を整えて、従業員をより働きやすくする取り組みを行ってきましたが、スモールビジネスで働く方々の中にはそうしたくてもできない人も存在します。たとえば育休が取れなかったり、子どもが熱を出しても休めなかったり。
それを、フリーランスだから仕方ない、自己責任だよねと冷たく見放す社会にするのではなく、『スモールビジネスを、世界の主役に。』と掲げているように、“主役”になってもらうからこそ、テクノロジー以外の分野からもfreeeとして何か言えるようにしたいんです。
企業の社会的責任という言葉がありますが、freeeだからこそ、スモールビジネスに対する責任があると考えていて、そういう意味で社会に対してのインパクトを出していきたいですね。
※ 記載内容は2024年6月時点のものです
