会社員として働く上で福利厚生の充実は大切です。企業選びの際、福利厚生の条件面を重視して判断される方もいらっしゃるのではないでしょうか。条件内容そのものに目が行きがちですが、その内容が定められた背景や意図からは、企業それぞれの考え方や姿勢を読み取ることができます。
そこで本日は、人事部 べネフィットチームのTada氏に当社の福利厚生のつくり方について話を聞き、ウェルビーイングに対する考え方について深掘ります。
そもそも、福利厚生は何のためにある?
──就活・採用イベントでは、学生から福利厚生について具体的な質問を受けることが多くあります。制度の紹介に入る前に、まずは、なぜ福利厚生が存在しているのか考えてみたいと思います。
「採用文脈はもちろん、現社員の満足向上のためにも福利厚生(法定外福利)は重要な要素ですよね。社員の立場からすると、『福利厚生はあればあるほど嬉しい』といったようにモチベ―ションとつなげて捉えることが多いかと思いますが、福利厚生という下支えがしっかりあるからこそ社員のパフォーマンスも上がるので、会社側にとっても欠かせないものなんです」
──福利厚生は最小限にとどめながら、その代わりに給与として高く支給する企業もありますよね。
「そのような企業もありますね。しかし、単純に給与を高くするだけでは補えない部分があると考えています。
企業として、社員に対してどういったサポートがベストなのか。グローバルカンパニーである私たちは、各国特有の法的要件も満たしながら、経済面のサポートのみならず複合的に最適な形を考えて社員に提供することを重視しています。
給与を高くする一方で、もし退職金制度を最低限に留めてしまったら、社員が自分で将来に向けてしっかりと資産形成をプランする必要性が高まります。お金に関する知識を自分で学ぶこともできますし、それも必要ですが、会社として、社員に対する将来に備えた資産形成の必要性を知る機会・学ぶ機会の提供も欠かせないと考えています。そういった観点も福利厚生を提供する上では重要ではないでしょうか」
福利厚生で読みとる企業カルチャー
──国ごとに法律や生活事情が違うため、グローバル企業では所属国によって福利厚生は異なるかと思います。デル・テクノロジーズではどのように福利厚生をつくっているのですか。
「当社では、カルチャーコードとピープルフィロソフィーという二つの概念を大切にしています。カルチャーコードは、デル・テクノロジーズの社員としてどう行動し、どう仕事で成果をだしていくかという指針を言語化したもの。ピープルフィロソフィーは、会社が社員に与える機会や環境の指針を示したものです。
ピープルフィロソフィーの中身として、アチーブメント(達成)、コネクション(つながり)、ダイバーシティ&インクル―ジョン(D&I)、バランスの4つの柱を置いています。
このうち、福利厚生は「バランス」に当たる部分をカバーするものだと定義されています。「バランス」という言葉からもわかるとおり、キャリアの充実だけでなくプライベートも含めた人生そのものを充実させることに焦点を当てています。健康だけではなく、メンタルサポートやフレキシブルな働き方の実現をサポートしています」
──ワークライフバランスは、Employer Value Proposition(EVP)としても掲げられているバリューの一つですね。ワークライフバランス実現のための手段として、福利厚生があることを知りました。
「私たちベネフィットチームではバランスをテーマに、健康・メンタルヘルス・経済支援・働き方の4つの柱を定めて各施策を企画・推進しています」
──グローバルで統一された福利厚生としては、何がありますか?
「EAP(Employee Assistance Program)という言葉を耳にしたことはありますか?人間ドッグなどの定期健診はもちろん、身体とメンタルヘルスともに健康であることをめざすプログラムです。メンタルヘルス向上のための手段として、さまざまな悩み事を相談できるカウンセリングやセッションも受けることができます。
日本ではカウンセリング文化がまだ根付いておらず、イメージが湧きづらいかもしれませんが、カウンセリングはさまざまなシーンで活用することができるんです。人間関係の悩み相談、貯蓄などお金のことに関する相談、あるいは、家族や友人、上司など身近な人には話しづらいけど第三者の意見がほしいといった些細な相談など。そんな時に試してもらいたいのが、プロの専門家によるカウンセリングです。
そのほかには、アプリやWeb上で運動・メンタルヘルス・お金などに関するさまざまなオンラインプログラムが受講できますし、退職金や各種保険、休暇制度など業界水準に劣らないものです。日本創業から35年の歴史もありますし、内容のアップデートも重ねて、充実した内容になっていると思います」
時代に合わせてアップデートを続ける日本法人の福利厚生
──日本法人では独自にどんな福利厚生を用意しているのですか?
「健康に関していえば、デル健康保険組合という独自の健保を持っている点が特徴です。
協会健保や総合健保などさまざまな健保が存在しますが、当社は組合健保と呼ばれるもので独自に健保を運営しています。自社で健保を持つメリットは、保険料率や付加給付などを自主的に設定できる点にあります。人間ドックの助成や運動奨励事業といった疾病予防につながる保健事業が推進できるので、健保組合の存在によって福利厚生がもっと充実しますよね。
また、健保の財政状況と社員の健康状態には相関関係があります。財政が悪化すれば、社員の健康状態が悪化しているというサイン。定量的に健保の財務面を管理すれば、社員の健康状態も把握することができます。
社員それぞれが健康意識を高め、付随して健康的な行動が実践されれば、健保の財政も健全になり、その結果としてさらに社員に対して還元ができます。社員の健康のために良い循環を生み出していきたいですね」
──退職金についてはいかがでしょうか。
「企業型確定拠出年金(DC)と退職一時金を組み合わせたプランで、毎月の拠出金額がDC月額法定上限額を超えた場合も無駄なく積み立てられる仕組みを導入しています。また、2022年10月よりiDeCoとDCの併用が可能となりましたが、デル・テクノロジーズでは独自のマッチング拠出(任意個人拠出)の仕組みをつくっています。社員それぞれのニーズに合わせて選ぶことができます」
──ちなみに、日本企業では住宅手当を支給される企業も多く、採用イベントでも住宅手当があるか聞かれることがありますが、デル・テクノロジーズでは住宅に関する手当はありませんね。
「住宅手当は、あると嬉しい福利厚生として人気が高いですよね。気持ちとしては私も同感ですが、住宅手当は(総じて)社員満足度が低いという興味深い調査データもあるんです。
私たちはグローバル全体でフレキシビリティを重視し、働き方の柔軟性を大切にしています。国籍も年齢もさまざまな社員が働く多様性の中では、住宅事情もさまざまです。社員みんなが享受できる住環境の支援は一律には難しいといった一面もあって住宅手当は支給していないのです」
──なるほど。福利厚生には社員の公平性という観点が求められるのですね。
「一部の人だけが享受できる制度ではなく、社員の誰もが受けられる制度づくりを念頭にしています。前述にもありましたが、グローバルや日本法人全体としてバランスを考え、法的要件などあらゆる面でアンテナを立てる。そして、その時代のマーケットのニーズをとらえ、内容をアップデートしていくように努めています」
──働き方といえば昨今、ウェルビーイングという言葉をメディアで見かけます。ベネフィットチームでも重視されていますか?
「ウェルビーイングには以前から注力し、ウェルネスに関するプログラムを提供してきました。中でも、当社にはERG(Employee Resource Groupe)という従業員グループがあり、このERGによる活動が社内のつながりを推進・加速する役割を担い、社員の満足度を高める効果を生み出せていると感じています。
先日はウェルビーイングの実践・啓蒙のために、健康保険組合主催でウェルビーイング・ウィークという社内イベントを開催しました。ウェルビーイングを構成するのは「こころ」「からだ」「つながり」の3つの要素だと定義し、この3つをテーマにさまざまな健康推進ブースを企画。
野菜不足のチェックや歯の健康状態のチェック、睡眠やリフレッシュをサポートするアロマオイルづくりなど、楽しくウェルビーイングを感じてもらう内容に仕上げました。ランチタイムの開催だったので、各ERGがテーマを設けてヘルシーなお弁当を提供し、ランチを介して社員同士のコミュニケーションを深めました」
──出社とリモートワークのハイブリッドスタイルで働くことになり、以前よりも出社の機会は増えましたが、大勢の社員が一気に集まる大規模な対面イベントは大盛況でしたね。
「久しぶりにみんなが集まる場を作りたい、ヘルシーなランチを食べながら純粋に楽しんでもらいたいという想いで企画しました。ウェルビーイングというと、どこか意識の高さを感じてしまったり、難しい概念にも捉えられますが特別なことではないですよね。もっと、当たり前にしていきたい。こころ・からだ・つながりを大事にする瞬間を、これからも社員へ提供していきたいと思っています。
社員が健康でいてくれるおかげで健康組合の財政が好調でいられるので、今後も健康に関する発信・啓蒙を続けていきたいですね」
──ウェルビーイングと関連して、メンバーの有給取得は組織としてもチームマネージャーもすごくケアしている印象です。セルフケアという言葉も、社内ではよく聞かれますね。
「人事部から各部門のリーダーたちには定期的にリマイングしています。有給取得の奨励、休むことの重要性、オンオフの切り替えについては前述のEAPでのセッションでも発信していますので、社員一人ひとりの中でも休むことに対する意識は浸透しているのではないでしょうか」
──「休むこと」がどれだけ大切か、マネージャーがいつも繰り返し説いていますね。心身ともに健康が整い、オンとオフの時間が充実することが仕事へのモチベーションにもつながりますよね。
「目に見えづらい、こころのヘルスチェックにはとくに意識したいですね。この領域のサポートは今後も強化すべき重要なトピックスだと認識しています。 また、ウェルビーイングの向上には運動習慣も大切ですので、そのための支援としてスポーツ補助金(※)もあります」
※ 上限あり
──グローバル基準に沿った制度の運営、そして日本独自のプログラム企画などベネフィットチームの役割について知ることができました。
「ベネフィットチームの中で、日本法人に所属するのは私一人ですが、自分の所属国についてだけにフォーカスするのではなく、各国のメンバーとお互いにベストプラクティスや法的要件などを積極的にシェアし合っています。国を超えたあらゆる事例やデータを生かし、新しいアプローチを試すことを心がけています。
福利厚生と聞くと、人事部の中で守りの部署だと思われるかもしれませんが、イノベーションを事業の柱に据えている当社では福利厚生においても、常に進化していくことが求められます。日本法人で働く社員のウェルビーイングを、さまざまな形で推進していきたいですね」
