リスキリングをきっかけに、ソフトウェアビジネスを拡大させるプロジェクトへ
自動化や電動化、ネットワーク化が加速し、100年に一度の大変革期にあると言われる自動車業界。ソフトウェア領域の重要性が高まる中、ボッシュでは2023年に「ソフトウェアシナジーハブ」(以下、SSH)を立ち上げました。
SSHは、ソフトウェアビジネスで価値を生み出すために、16の部署とグループ会社から集められたメンバーによる社内プラットフォーム。組織間を横断的につなぎながらソフトウェアに関する情報収集や課題解決、人材育成に取り組み、ソフトウェアカンパニーの実現をめざしています。
発足のきっかけは、マネジメントとの会議において、ソフトウェアコンピテンスの向上が課題として挙がったことでした。SSH発案者の高原は、その経緯をこう話します。
高原:当社では以前から、トップマネジメントが「ソフトウェアの知見を活かし、グローバルで『ソフトウェアカンパニー』になっていこう」という強いメッセージを発信しています。しかし、それぞれの事業部での活動はあっても、会社として大きなムーブメントにはなっていないと感じていました。
加えて、近年ソフトウェア人材の獲得競争が激しく、確保が難しくなっています。社外から採用することはもちろん、社内でリスキリング、アップスキリングさせていくことが重要です。
そんな中で、当社のマネジメント会議において「ソフトウェアコンピテンスの向上」が全社として取り組むべきテーマの一つとして決まりました。それをきっかけに、全社統一してリスキリング、アップスキリングできる仕組みを用意しようと考えたことが始まりです。
当初は、スキル向上や人材育成を目的として企画されたSSH。発足に向けてマネジメント層とアイデアを出し合うなかで、ボッシュが「ソフトウェアカンパニー」をめざすために、ソフトウェアビジネスを拡大させるプロジェクトにしていくことが決まりました。
そこで、各事業部でエンジニアとして活躍している人、エンジニアをリードする立場の人など、ソフトウェアのキーパーソンを集めてSSHを発足。高原はマネジメント層との橋渡し役を担い、運営担当としてプロジェクトをハンドリングするのが、エンジニア出身の小松崎です。
小松崎:私はもともと自動車メーカーでエンジニアとして働いていて、2020年にボッシュに転職しました。ソフトウェアに限らず、機械や電気のハードウェアも含めた技術全体に関わってきた中で、ソフトウェアの重要性が高まっていると実感したことが、今回SSHに参画した理由です。
私たちコアメンバーが「ソフトウェアカンパニー」になるためにはどのような施策を打てば良いのかというワークショップを企画し、各事業部から集まったメンバーはその施策を自分たちの事業部で実行していく役割を担います。
ビジネス展開するためにはエンジニア以外の知見の底上げがカギ
「ソフトウェアカンパニー」をめざす上でボッシュが掲げるビジョンは、「ソフトウェアを強みとしたビジネス展開」、そして「ハードウェアでのノウハウを活かした強みの活用」です。
小松崎:さまざまな企業がソフトウェアに焦点を当てている状況だからこそ、ボッシュが培ってきた強みを活かしたい。ハードウェアでの知見を活かしつつ、さらにソフトウェアを強化していくことで、より強い組織にしていく。そのために、開発体制も含めてソフトウェアをどうビジネスとして作り上げていくかを模索するのが、SSHの役割です。
ビジネスとして展開していくためには、エンジニア以外もソフトウェアの知見を持つことが必要。そこが大きな壁であり、これから取り組むべきことだと高原は話します。
高原:SSH発足のきっかけがリスキリングだったように、ソフトウェア領域での対策を考えるときに真っ先に思い浮かぶことは、エンジニアの確保や育成だと思います。
もちろんエンジニアは重要な存在ですが、ビジネス展開するとなると、営業や品質保証の部署も関わってきます。営業する際には契約の仕方も変わるため法務担当者も知識が必要ですし、採用する人材も変わってくるので人事部にも関わります。
さまざまな部署が関係するのですが、その意識づけが追いついていません。当然、育成プログラムも整っていませんが、ソフトウェア領域を強化するとなると、エンジニア以外の人材育成や研修も必要なのです。
小松崎:この状況でトップマネジメントがメッセージを発信し続けても、直接関わりのない従業員にとっては、どうしても他人事になってしまう。自分から積極的に学びにいかないと、会社からのメッセージをあまり理解できないまま進んでいくことになります。
ソフトウェアに対する深い知見は必要がないにしても、基礎的な研修などでソフトウェアの重要性を認識してもらうことが最初のステップだと考えています。
全従業員でカルチャーを作り、ソフトウェア人材にとっての“ホーム”をめざす
全社的にソフトウェアコンピテンスを向上させ、ビジネスとして展開していくためには、視野を狭めずに対策を講じていく必要があります。
そこで2人が最初に行ったことは、現場でソフトウェアに関わるメンバーに現状の課題を話してもらうワークショップ。それと並行してトップマネジメントを含めた事業部長らによるワークショップも実施し、現場とマネジメント層、それぞれから広く意見を集めました。
高原:あえて落とし所となる施策を決めず、まずはさまざまな方向から課題を洗い出すことを重視しました。意見を出せるだけ出して、それを集約させて発展させていきたいと考えています。
小松崎:ワークショップで挙がった課題の一部を例に挙げると、現場のメンバーからは「エンジニアの工数の負荷が多い」「開発部門とのコミュニケーションがよりスムーズになる手段がないか」といった課題が。一方でマネジメント層からは、「ソフトウェアカンパニーとは何か、どのようにソフトウェアカンパニーになっていくか」「ソフトウェアを扱う上で必要なことを理解してもらうための情報共有が不足している」といった課題が上がってきました。
課題を洗い出すフェーズが終わり、次は具体的な施策に落とし込んでいくフェーズへ──。ソフトウェアビジネスに関わるすべての人の認識やスキルを底上げするためにも、「ソフトウェアのカルチャー」を根付かせる取り組みをしていきたいと話します。
高原:当社はハードウェア製品を作ってきた会社ですから、マネジメント層の多くはソフトウェア出身ではありません。「ソフトウェアカンパニー」をめざすと掲げている以上、現場のメンバーは、マネジメント層における理解促進も必要という想いを持っています。
そのため、エンジニアや関連部署の素養を身につけていくと同時に、マネジメント層の研修も必要になってくると思います。
小松崎:現在の社内は、まだソフトウェアのカルチャーが浸透していない部門もあり、組織全体でソフトウェア人材の居心地が良くなる環境を作る必要があります。とはいえ、逆にハードウェアに関わるメンバーの居心地が悪くなってしまってはいけません。
どちらも発展的に成長できるように従業員の意識を変えていくことが必要ですし、そこに全従業員が関わりながら取り組むことが大事だと感じています。
高原:私たちがめざすのは、ソフトウェア人材にとっての“ホーム”となること。カルチャーはもちろん、制度改革も必要かもしれませんし、働き方や使う道具も変える必要があるかもしれない。さまざまな角度から魅力ある会社づくりをしなくてはいけません。
もちろん、ソフトウェア人材のキャリアもその一つ。マネジメント層をめざす以外の選択肢を増やしていく予定です。
高原:これはボッシュに限ったことではありませんが、ソフトウェアエンジニアがスペシャリストとしてのキャリアを積んでいける道を担保していくことが求められています。管理業務ではなく、自らのスキルを磨くことに注力していけるキャリアパスを選べるような仕組みも必要だと考えています。
グローバル規模で、日本の自動車メーカーが世界で存在感を示すサポートを
これから本格的に、研修をはじめとしたさまざまな施策を打っていくSSH。カギとなるのはやはり、人材育成です。
高原:自動車業界でソフトウェアに関わるためには、ソフトウェアのことだけを理解していれば良いわけではなく、自動車のことも理解していることが重要です。そうなると、自動車のことを深く理解している従業員にソフトウェアのことを学んでもらうほうが効果的だと感じることがあります。
小松崎:だからこそ、SSHのメンバーが培った知見を自分の部署に持ち帰り、部署の中で出た意見や要望をまたSSHに還元する。まずは率先して知見を深めていくメンバーがいて、その人たちを中心に各部署で輪が広がっていくことで、多くの従業員の意識が変わっていくのではないかと思います。
ソフトウェアによってモビリティをどのように進化させていくかということは、自動車メーカーをはじめ業界全体が取り組んでいる課題です。グローバルカンパニーであるボッシュが「ソフトウェアカンパニー」をめざすことは、業界に対しても大きな価値を生むことができると2人は語ります。
小松崎:SSH発足によってソフトウェアを扱っていくための開発体制が整い、ソフトウェア人材の育成が進んでいけば、お客様の希望に沿った開発組織を提供できることはもちろん、お客様の期待以上のサービスを提供できるようになるはずです。
高原:とくに電動化に関しては、中国の新興メーカーがマーケットをリードしている現状があります。その中で、日本のメーカーがどのように価値を高めていくかを考えたとき、グローバルカンパニーであるボッシュがサポートできることがあると思うのです。
そのためにも、社内の変革を加速させること、そして社外へアピールしていくことも必要だと話します。
高原: 私たちが取り組んでいることを、お客様にしっかり伝えていくことが大切です。日本の自動車業界を担う会社の一つとして、他社も巻き込みながら、一致団結して業界の発展に寄与したいと考えています。私たちの戦略を通して、ソフトウェア人材がより働きやすい魅力的な環境を提供していきます。
※ 記載内容は2024年1月時点のものです
