原点と選択──身近なものづくりが発端
私は北海道で育ちました。父は工業高校の先生です。小さな頃から父の学校の実習室に連れて行ってもらい、簡単な作業を一緒に行いながら、自然とものづくりに触れてきました。そのおかげか、 “ものづくりが大好き”とまではいきませんが、幼少期から興味は持ち続けていて、大学進学時は地元の大学の機械科を選びました。父も同大学のOBで、どういう大学かをある程度知っていたことも後押しになりました。大学では機械科として、力学や加工など、ものづくりの基礎を体系的に学びましたね。
そして大学卒業後、2019年、アルプス電気とアルパインが経営統合し、アルプスアルパインとして新たなスタートを切ったその年に、当社に入社しました。最初の1年間は仙台開発センター(古川)の機構技術部に仮配属され、研修とOJTで設計の基礎を身につけました。
その後、同じ古川のIoTサービスプロジェクトへ異動し、産業機械向け振動センサーのメカ設計を担当しました。ここでは先輩のもとで設計業務を進めながら、製造ラインの現場に出向き、試作評価や組み立て工程の確認など、机上だけではつかめない“現場のリアル”に触れる機会を数多く経験しました。こうした日々の積み重ねの中で、2〜3機種を量産まで運び切ったことは、自分の中でも大きな成果であり、今の技術的な理解や現場対応力の礎になっています。
設計から営業へ──ものづくりの現場で生まれた思いをきっかけにキャリアチェンジ
設計者として働いた5年間、製品の量産化に向けて、関連メンバーの皆で向き合い、数値を基点に論理を構築することの重要性を学びました。一方で、ものづくりの現場を経験するほど、「お客様がどんな課題を抱え、製品がどんな使われ方をしているのか」をより直接感じたいという思いが強くなっていきました。その延長線上で、“設計室の内側”ではなく、“お客様の近く”に立つ働き方にチャレンジしたいと考え、社内公募に手を挙げたのです。そうして2024年に異動した先が、ソリューション営業部・産機新事業グループです。
異動した現在はアルプスアルパインの社員として、合弁会社 IDEC ALPS Technologies株式会社の製品拡販を担う技術営業として働いています。扱う製品は、FA・産業機械向けのミリ波センサー。設計出身らしく単に売るだけでなく、“現場で使える形にする”ところまで伴走するのが自分の役割です。
IDEC ALPS Technologies側・アルプスアルパイン側の営業と連携しながら、お客様の現場へ出向き、センサーを実際に取り付け、動作確認をし、技術的問い合わせにもその場で応える。導入前の相談から現場での調整まで、担当範囲は想像以上に広いものです。
また、既存顧客に加え、展示会での名刺交換や問い合わせから新規のお客様を訪ねる“初回訪問”も多く、1日に2~3社回ることも珍しくありません。そのため、移動時間を有効に活用することも必要で、顧客ごとの提案内容や資料の準備、センサー設定準備などスピード感と社内への報告、調整など判断力が求められる環境です。
挑戦がくれた自信──学んだのは、人に頼る勇気と、最後は自分の責任で語る覚悟
2025年の秋、前年に社内の先輩が登壇したセミナーが再び開催することになり、経験を積む場として私が講演することになりました。テーマはBluetooth®。私はメカを専門としていたため電波の分野は門外漢。最初は何を話せばいいのかもわかりませんでしたが、企画部や技術部の仲間に協力を仰ぎ、最新事例を集めながら資料と原稿を磨き込みました。
数百名規模の会場で緊張はしましたが、マイクを握って一歩踏み出した瞬間に腹が決まりました。発表後には上司から「よくやった」と声をかけてもらい、社内の仲間からもメッセージで励まされました。準備を通じて痛感したのは、知らないことを“知らないままにしない”姿勢です。人に頼る勇気と、最後は自分の責任で語る覚悟。これらは営業現場にもそのまま通用します。
加えて営業に移ってからは本を読む習慣を身につけ、読み終えたら3〜4枚のパワーポイントに要点をまとめるようにしています。アウトプットで情報の整理と要約の筋肉が鍛えられ、初回面談でもお客様の言葉から核心を素早くつかめるようになった実感があります。
忙しいからこそ身体も整えます。週2〜3回のジム、社内のフットサル部とテニス部には月1ペースで参加。2〜3カ月に一度の国内旅行や北海道への帰省も、心身を整える大切な時間です。営業は移動が多く、静岡・長野・福島など、土地の空気に触れる機会が増えました。現場へ向かう道すがら、新しい景色に少しだけ勇気をもらっています。
これからの私。「広く深く」設計も営業もできる人材へ
営業2年目のいまも、迷う場面は少なくありません。 人によって助言もアプローチも違う世界で、自分の軸を磨き続けています。私は営業を、お客様のご要望と自社の条件を適切に調整し、過不足のない合意へ導く役割だと捉えています。
ただ、契約の場面では、時に条件面で実現が難しいと判断せざるを得ないケースもあります。お客様の視点だけでなく、自社の視点も持ってチームを守る。それもまた、この仕事の重要な役割です。設計時代に品質保証・製造技術・製造を巻き込み、原因分析と対策合意を粘り強く進めた経験は、いまの交渉や合意形成に直結しています。キーパーソンと早めに腹を割って話し、準備で火種を消してから進める。その積み重ねを続けます。
そして中長期では、「広く深く」設計も営業もできる人材が理想です。専門を一つに絞るより、複数領域を横断して価値を出せることが、変化の大きい時代の強さになると感じています。だからこそ今は、目の前の仕事で価値を出すことに集中しています。
設計で学んだ丁寧さと、営業で求められる能動性。その両方を自分のなかでゆっくり組み合わせながら、お客様と仲間に向き合っていく。「広く深く」という理想を少しずつ形に変えながら、これからも現場で価値を届け続けたいと思っています。
※ 記載内容は2025年11月時点のものです
