AIの魅力は「大変」「できない」を「できる」に変えられること
私が担当しているのはAIを使用した画像処理です。
この技術は、製品の不良を確認する外観検査や、ロボットの「目」として物の位置をガイドする技術として活用されています。
一例として、私が所属する長岡開発センターでは、センサーに組み込まれるシリコンウエハの外観検査にAI画像処理を活用しています。シリコンウエハは30㎝ほどの大きさの板の上に、1㎝にも満たない小さな半導体チップがいくつも並んでいます。
従来はこの一つひとつのチップに不良がないか、人が顕微鏡で確認していました。顕微鏡のピントを毎回調整する必要があるので、作業者にとって負荷が高く、時間を要する工程でした。この工程をAI画像処理に任せることで、作業の負担を軽減し、時間も大幅に削減できました。また、人が不良検査をするときの課題となる過剰判定や検査員のスキルへの依存といった課題の解決にもつながりました。
現在はAI画像処理を活用したピックアップロボットを開発しています。約1㎜の鏡筒一体型ガラスレンズをつまむためのロボットです。筒の部分は金属でできているため、光の反射によって色が変わります。従来の画像処理では反射するものの判定が難しく、人に頼っていた作業ですが、柔軟な判断を得意とするAI画像処理を導入することで工数の削減が期待されています。
大量のデータ処理や分析、単純作業の効率化という特長を活かすことで、今後さらに多様なアプローチで課題解決が可能になると考えています。困難と思われていた課題を解決できるようになることが、この仕事の最大の魅力です。自分自身含め、新しい挑戦が好きな人にとっては最高の仕事だと思います。
AI導入リアルな舞台裏〜カギは“人”との対話〜
こういった話をするとAIは何でもできる最強の技術で、その開発現場はさぞきらびやかだろうと思われてしまうかもしれませんが、実際はそんなことはありません。
AI開発は意外にも泥臭い作業が多いです。たとえばAIにモノの特徴を覚えさせる作業は長時間の単純作業となります。また、比較的新しい技術のため情報が不足していることが多く、国内外問わず情報をかき集めながら試行錯誤を繰り返し、適切解を探し求める必要があります。ネット上で収集した情報をうのみにすると危険なので、情報を精査する力も求められます。
そしてもっとも意外だったのが、人との対話が非常に重要だということです。AIに対する理解レベルや認識、感じ方には人によって大きな差があります。導入に際し製造現場や製造技術メンバーにAI説明会を行った際もその反応はさまざまでした。
たとえば、品質に関わる部分をAIに任せるのは不安だとして導入に反対する声が上がりました。それまで社内の導入事例が少なかったため、AIへの信頼度が低かったためです。このような意見に対してはデータをかき集め数値で説得しました。現在では、AI導入後の方が品質も上がっているので、社内の信頼度は高まったのではないでしょうか。
またAIを人(自分)の仕事を奪うものとして敵視する人もいました。技術の発展とともに人に求められるスキルが変わることはAIに限った話ではなく、これまでの歴史でも起きてきたことだと思います。とはいえ、気持ちも理解できるので、「AIは人間がやっていた負荷の大きい作業を代わりにしてくれるだけ」ということを説明するようにしています。
AIは万能だと思う人もいます。しかし残念ながらAIは決して万能ではありません。人間にしかできない作業は多くあり、従来の技術の方がAIよりも勝る分野もあります。たとえば画像認識では、形状や色が決まりきっているものを正確に見つけるという作業では従来のやり方に軍配が上がります。
AIの能力に対する認識がずれていると後々お互いが困ることになってしまいますので、導入する目的やメリット、できること、できないことを丁寧に説明し、早い段階からすれ違いをつぶせるようにしています。AIはまだまだ誤解の多い分野です。それゆえAI開発に向いている人は、人に上手に説明し誤解を解いていく能力がある人かもしれません。
好奇心を満たせる場所を求め、出会ったのはアルプスアルパイン
私がAIを勉強し始めたのは6年ほど前からです。それまで、いろいろな道を通ってきました。大学では電気電子工学を専攻していました。高校時代にエレキベースを弾いていたのですが、演奏時に使用するエフェクターは電気回路でできていることを知り、これを自分で作ることができたらおもしろいだろうなという考えからでした。
新しいことを学ぶことでできることが増える喜びを知った私は、以来、多くのことに興味を持ち、挑戦し続けました。
大学時代にはオーケストラ部に入部しバイオリンと共に青春時代を過ごし、社会人になってからは世界中を飛び回り異文化の中で過ごす楽しみを覚えました。登山に興味を持ってからは、今まで名前を気にすることもなかった動植物にも個性があると気づいてから世界の見え方が変わりました。
友人の農業スタートアップを趣味として手伝ったこともありました。独学で画像処理を学び、植物の生育状態や作業管理を支えるシステムを導入。ビジネスを改善する喜びを友人と共有しました。
そして2018年ごろ、AIに興味を持ち独学で勉強を始めました。知れば知るほどその無限の可能性に心惹かれ、しだいに実際に仕事でも活用したいと思うようになりました。
当時、私は別の会社で組み込みソフトウェアの設計開発をしていました。仕事自体は楽しかったのですが、AIの知識を活用することが難しい環境でしたし、社内には新しい技術を導入する雰囲気はありませんでした。そこで一念発起し転職活動を開始。生まれ故郷である新潟県でAI関連の仕事ができる企業を探したところアルプスアルパインに出会いました。今の職に就いたのは2020年のことです。
組織で働く喜びは組織のレベルアップに関われること。会社の発展のために挑戦し続ける
趣味で勉強していたころは自分の人生を豊かにするために学び、挑戦を重ねてきました。しかし、仕事を兼ねて勉強するからにはこの知識欲と好奇心旺盛な性格を活かして新しい技術を生み出し、組織のレベルアップにつなげていきたいと思っています。
幸い、アルプスアルパインには新技術に挑戦するための環境が整っています。他社では新技術に関心があっても、人材や資源が不足していることが多いと聞きます。その点、私たちは非常に恵まれていると感じています。転職組の私が言うので説得力があるのではないでしょうか(笑)。
さらに当社では拠点を超えてエンジニア同士が情報交換する仕組みが整備されています。今年からは、製造技術に特化した社内展示会がスタートしました。30弱のグローバルな生産拠点が技術やノウハウを共有し、刺激し合いながら成長している実感があります。
AIを活用した製造技術は当社ではまだ発展途上ですが、私が生み出す技術がアルプスアルパイン全体のレベルアップに貢献できると期待しています。
まずは誰よりもAIに詳しくなることをめざし、ディープラーニングの基礎知識を試されるG検定を取得。その後エンジニアとしてのレベルアップをめざし、ディープラーニングを実装できる能力が求められるE資格も取得しました。E資格は難易度が高くかなりの勉強が必要でしたが、おそらく私が当社で一番早く取得したはずです。
AIは万能ではありません。しかしうまく使えば組織の技術力を大きく底上げするポテンシャルがあると信じています。この信念を胸に、これからも学び、職場の仲間と高め合い、挑戦し続けていきます。
※ 記載内容は2024年7月時点のものです
