今、必要とされているモノの提供・数年後を予想した提案──どちらも大切な営業の仕事
──現在の業務について教えてください。
ある国内ゲームメーカー向けの営業を担当しています。扱っている製品は、タクトスイッチ®や多機能操作デバイスなどの入力系、つまりゲーム機に指示するための製品群です。
タクトスイッチ®とは、小さなボタンのこと。既存の製品だけで1,000を超えるバリエーションがあり、操作時の触覚や音、操作方向、大きさ、形などがそれぞれ異なります。お客様に対しては既存のものをお勧めすることもありますし、既存品にはない新たな「(ボタンの)押し心地」をお客様と一緒につくり出すこともあります。
多機能操作デバイスは、レバーを傾けることで多方向の入力を行うためのデバイスで、ゲーム機のジョイスティックと言った方がわかりやすいかもしれません。どちらもゲーム機の使いやすさや、お客様のブランドイメージまで左右する場合もある重要な部品だと認識しています。
営業というとお客様に製品の価値を伝え、購入を促していく仕事のイメージがありますが、当社における営業業務はそれだけではありません。お客様に納品する製品の製造工程や個数を把握して品質管理やフォローを行ったり、お客様が企画している新製品に当社製品を使用してくれるよう提案して新たなビジネスの獲得をしたり。また、将来の市場ニーズを予測し仮説を立てることも営業の業務のひとつです。
従来、当社の営業活動の多くはプロダクトアウト型、つまり当社が持っている製品や技術をお客様に紹介して使っていただく、という方式でした。しかし最近では、市場動向を分析して、将来を見据えた世間のニーズを把握し、ニーズありきの製品開発を行うというバックキャスト型に変化してきています。
「今後ゲーム市場は10年、20年先どうなるのだろうか。こうなるはずだから、こういう製品が必要なはず」と仮説を立て、自分たちからお客様に提案します。そのために実際にゲームをしてみたり、社内のさまざまな市場担当者から話を聞いたり、常にアンテナを高く張り世の中の最新動向を追うようにしています。
業務の幅はとても広く、日々変化がありおもしろいですね。
学生時代のブラジル留学とサークルで気づいた自分の興味と性格
──なぜアルプスアルパインの営業に就いたのですか?
学生のころ、私はプロサッカー選手をめざしていて、力をつけるために高校2年生のときにブラジルの現地校へ1年間留学しました。ブラジルにいけばプロになれる、そう思っていたからです。
ところが、現地に到着してまず直面したのは言葉の問題。ブラジルの公用語はポルトガル語で、英語があまり通じなかったんです。最初のうちはポルトガル語の辞書を持ち歩き、指を差すことでなんとか意思を伝えられる状態でした。周りに日本人は1人もおらず、とても苦しかったのを覚えています。
しかしホームシックを感じたのは1カ月ほどだけで、すぐに馴染むことができました。そのとき、常に心がけていたことは、笑顔でいること、自己主張をちゃんとすること、現地のやり方で挨拶を積極的に行うことの3つ。この経験から、何もない状態からコミュニケーションをとって信頼関係を築く方法を学びました。また、もともと柔軟性がありポジティブな性格でしたが、1年間のブラジル生活を経てさらに強化されたように感じます。
唯一失敗だったなと思うのは、サッカーがまったく上達しなかったことですね。高校の交換留学制度を使用したため、比較的安全なリゾート地に近い地域に留学したのですが、学校には裕福な家の子どもたちしかおらず、みんなまったくサッカーはせずゲームしかやっていませんでした。私はサッカーをしにきたのに、なぜ誰もサッカーをしないのか。私の方がうまいぞと思いながら過ごしていました。サッカーということだけ考えれば、日本に残っていた方がうまくなったかもしれないと後悔しています(笑)。
その後、大学ではサークルの雰囲気がしっくりときたソフトテニスサークルに入りました。そこで複数の大学の代表者と話し合ったり、組織運営をしたりする中で、いろいろな人と接することの楽しさを覚えました。こうした経験がきっかけで、人と多く接する職種に興味を抱くようになり、就職活動では営業職を軸に進めていました。また、ブラジルで身につけた人懐っこさゆえか、周りからは私が営業向きとよく言われていたことも、営業職を希望していた理由の1つです。
その軸のもと、企業選びは3つの点から考えていました。1つめは、扱う金額や規模の大きい、対法人向けのビジネスができる企業であること。2つめは自社製品に誇りを持つことのできる、モノづくりメーカーであること。3つめは、商材が多い企業であること。好奇心旺盛な性格なので、さまざまな製品を扱える方が長く楽しみながら働けると思ったからです。これらの条件がピッタリと合う企業、それがアルプスアルパインでした。
1人で頑張ることだけが正解ではない。助けてくれた上司と仲間が、気づかせてくれた
──入社後の経歴について教えてください
2014年に入社して最初はマーケティングを担当する部署へ配属され、IoT、民生モジュール製品の営業サポート業務に就いていました。
3年ほど経ってから、海外サポート業務を行う部署へ異動することに。海外のお客様への営業業務をサポートするほか、海外販売会社のサポートにも携わっていました。この業務によって、海外との仕事の進め方について経験できたのですが、反対に日本企業対日本企業の仕事の取り組み方にも興味がわくようになってきました。また、サポートではなく営業の前線に行きたいとも考えるように。そこで上司に相談したところ、現職である日本ゲームメーカー向けの営業部署に配属されることになったんです。
──達成感を得られた経験を教えてください
異動してすぐ、商社のような役割を務めるビジネスを担当することとなりました。当社がアメリカの関係会社から製品を仕入れ、それをお客様であるゲームメーカーに納めるというビジネスモデルです。それまで、このアメリカの関係会社とそのような取引をしたことがなかったため、私がイチから商流やプロセスを造り上げ軌道に乗せる必要がありました。担当者がほぼ自分1人だったため裁量も大きく、やりがいと緊張感を抱く日々でしたし、しくみ自体は作ることができ、各関係者とも合意はできていました。
ところが、実際に運用を始めると、やりがいよりも大変さが上回るようになったんです。今まで担当したことがない製品のために、技術的なことを勉強しながら対応したり、アメリカ側とのやりとりが当時は苦手だった英語で、やりとり1つにも時間が余計にかかったり。加えて、毎日タスクは膨大にあるのに、「責任感を持つ」とはすべて1人でこなすことだと思い込み、当時はいっぱいいっぱいでした。
そんな私の状況に気づき、助け舟を出してくれたのが当時の上司。関係者にあたって協力を仰いでくれた結果、いろんな人の助力を得て危機を乗り越えられたんです。このとき、上司をはじめとする当社の人はみんな優しいなとしみじみと思うと同時に、つらかったら頼ってもいいんだと気づきました。
今では、この新規ビジネスは軌道にのり、会社の売上を形成するビジネスの1つとなっています。まだ人に頼るのは上手ではありませんが、周りに迷惑をかける前に、そして自分がつぶれる前に、いかに早く適切な人にエスカレーションするべきか、という教訓は自分の中に根づいています。
必要なのはお客様の考えに敏感になり、ゴールを共有し、愛を持つこと
──営業としてやりがいも苦しさも味わってきた鳥居さんが思う、営業として必要なマインド、もしくは大切にしている価値観は何ですか?
3つあります。
1つは、お客様の考えに敏感になること。営業はお客様と直接話して要望や最新情報を得て、社内に的確に伝えるという重要な立場です。お客様が何を考え、何を期待しているのかをつかみ損ねると会社全体が間違った方向に向かってしまいますので、お客様から発せられる情報には常に敏感になっています。
もう1つは、お客様のためになる行動は何かを常に考えること。 ときには厳しい要求もいただきますし、楽な方に流れてしまいそうなときもあります。ビジネスなので自分たちの利益を考えることも必要です。しかし、そもそもお客様に価値を感じて購入してもらえなければ、お互いにとって良い結果にはなりませんし、お客様の信頼を得られず長期的な関係を築くことも難しくなってしまいます。何が一番お客様のためになるか考えることを忘れてはいけないと、心に刻んでいます。
また、お客様のためになる行動を考え、選択するためには、判断基準となるものが欠かせません。だからこそ、お客様と共通のゴールをきちんと持つことも大変重要です。共通のゴールがあれば、目の前の問題ばかりに目を奪われることなく、最終的にお客様のためになることを考えられます。さらには、ときにお客様の要求が最終ゴールからするとベストでないと感じるときにも、臆せずきちんと議論できるようになるんです。
営業としては、そんなふうに常にお客様の最終ゴールに視線を向けて、お客様と一緒に歩んでいけるパートナーになりたいと考えています。
それから、愛を持つこと、ですね。
お客様への愛、自社への愛、扱っている製品への愛など、多方面に興味を持って好きになることが大切だと思います。熱意とも言い換えられるのかもしれません。過去の新規ビジネスの仕組みづくりも、自社への愛と、お客様に良い製品を出していただきたいというお客様への愛があったからこそできたことだと思っています。
自社への愛という点では、社内の人が楽しく働けるような環境づくりも心がけていますね。
──今後営業をめざす人が身につけたほうが良いことはなんですか?
ロジカルシンキングです。どんなにお客様に愛を持って提案したとしても、そこに論理性がなければ受け入れてもらえません。どうすることが最終ゴールへつながるのかと、ロジカルに考える必要があります。また、社内を説得するときも、部署間で意見が一致しないことも往々にしてあるため、ロジカルに話すことは必要です。
──最後に、今後の目標について教えてください。
今担当しているゲーム市場におけるビジネスについては、今後当社がゲーム業界のHMI(Human Machine Interface)を引っ張っていく存在になれたらよいなと思います。ゲーム業界で使用されている当社製品は、今はタクトスイッチ®や多機能デバイス、ハプティック®など入力系が主ですが、今後ゲーム業界でもさらに重要になってくると思われるセンサー系でも存在感を出せていけるよう努めていきたいです。
私個人としては、ゲーム市場以外にも、車載やスマホなどさまざまなビジネスを経験してみたいです。本社以外の営業所でも仕事をしてみたいですね。上の役職に就くことにも興味があります。とにかくいろいろな経験をして、視野を広げていきたいです。
ただし、どこで、どんな立場で、どんなビジネスを担当したとしても、愛を持って、お客様とゴールを共有して進んでいける営業でありたいという気持ちに変わりはありません。
※ 記載内容は2023年4月時点のものです
