近年「DX」という言葉をよく耳にしていませんか?私たちの日常生活やビジネスシーンではこの「DX(=デジタル・トランスフォーメーション)」が急速に普及しつつあります。DXの流れは業種・業界問わずあらゆるビジネスに波及しており、従来の仕事のやり方を一変させるほどの可能性を秘めています。建設業界においてもDXの流れは確実に進行しています。今回は建設業課が抱える課題を解決へ導き、働きやすさに影響する「建設DX」について紹介します。
いまさら聞けない「DX」とは?
「DX」とは?
「デジタル技術の導入により社会生活様式がより快適に、便利に、効率的になるよう変革する」概念です。ビジネス分野においては「効率化や省人化、自動化を実現することにとどまらず、ビジネスそのものをデジタルによって変革する概念」とされています。DXは2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱され、日本では2019年に経済産業省が「『DX 推進指標』とそのガイダンス」を取りまとめました。その後、情報処理促進法に基づく形で策定した「デジタルガバナンス・コード2.0」(※2022年9月改訂)においても、引き続き以下のようにDXを定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
【引用】経済産業省「『DX推進指標』とそのガイダンス」(2019年7月)
それでは「建設DX」とは?
建設業界が抱えているさまざまな課題や問題を、デジタル技術の導入によって解決へと導き、業界に携わる組織や個人、ひいては業務内容そのものに変革をもたらす概念です。具体的には、生産性向上や働き方改革促進、エキスパートからビギナーへのナレッジ(知識・知見)共有、といったさまざまな要素において多大な恩恵をもたらすと考えられています。
建設業界が抱える課題

人手不足(過重労働)
今日の建設業界は慢性的な人材不足状態が続いています。2023年4月、国土交通省が発表した「最近の建設業を巡る状況について【報告】」によると、平成9年ピーク時に685万人いた建設業就業者数は、令和4年時点では472万人まで減少しています。
また建設業就業者の年齢別内訳では、令和4年時点で55歳以上の割合が35.9%を占めているのに対し、29歳以下は11.7%となっています。全産業就業者平均では55歳以上の割合が31.5%、29歳以下が16.4%であるのと比較すると、建設業界における高齢化の進行が顕著となっています。建設業界就業者の高年齢層への偏りと若年層の建設業界離れは、人材不足による過重労働化を招くとともに、建築技術の次世代への継承を困難にさせるなど、解決すべき深刻な課題であるといえます。
【参照】国土交通省 不動産・建設経済局「最近の建設業を巡る状況について【報告】」(2023年4月18日)
危険作業
建設現場には危険な作業が伴い、人の手による作業は時として労働災害をもたらすリスクを常にはらんでいます。国土交通省・厚生労働省「建設業における安全衛生をめぐる現状について」からの報告によると、令和3年死亡災害発生状況は全産業867名で建設業は288名。死傷災害発生状況は、全産業約150,000件で建設業は16,000件となっています。このため報告では新技術導入による新たな働き方への転換と労働災害リスク軽減を提唱しています。
【参照】国土交通省・厚生労働省「建設業における安全衛生をめぐる現状について」(2023年2月)
対面主義
建設現場では、いまだ対面主義が根強く残っています。たとえば、現場作業における連絡・コミュニケーション体制や、作業指示書、図面といった業務資料の共有など、対面前提で業務を進めざるを得ない状況が続いています。
2020年からのCOVID-12世界的流行をきっかけに、日本でもテレワークが普及してきましたが、建設業界ではその導入がなかなか進みませんでした。総務省発表の「令和3年版情報通信白書」によると、2020年における建設業界のテレワーク実施率は15.7%と全体平均の24.7%を大きく下回っており、テレワーク導入があまり進んでいないことを、伺い知ることができます。
【参照】総務省「令和3年版情報通信白書」(2021年)
建設現場で普及する最新デジタル技術

AI(Artificial Intelligence=人工知能)
今日、情報処理能力が飛躍的に向上したコンピュータは「機械学習」能力を持つことで、膨大なデータセットから自己学習を行い、認識・判断・処理能力を進化させることが可能となりました。
建設現場におけるAI導入は、たとえばプロジェクトのスケジュールや品質管理などタスク効率化。リアルタイムデータ収集と画像解析による問題・リスクの早期検知や、設備故障予測からの適切な保守計画提案。デザインアルゴリズムを活用した最適な設計の提案といった場面において、生産性・効率を向上させ、かつ品質・安全性の強化などの効果をもたらすと期待されています。
BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling)
3D(3次元)モデルデータをコンピュータ上で作成し、実際の建設業務における計画・調査・設計の段階からデータを情報共有・活用することで、生産性の効率化を実現する概念です。BIMは建築分野、CIMは土木分野にてそれぞれ活用されています。
3Dモデルデータは、構造物の完成イメージが直感的に伝わりやすく他者間の情報共有が容易なため、平面の図面では見つけにくい課題や修正すべき箇所など早期発見しやすくなります。
その結果、手戻りや施工ミスが減少し、作業時間の軽減や工期短縮によるコスト削減、作業現場の安全性向上といったメリットがあります。日本では建築・土木業界への普及導入が積極的に推し進められており、2020年4月、国土交通省は「2023年までに小規模を除く全ての公共事業にBIM/CIMを原則適応」指針を発表しています。
クラウドサービス(=SaaS)
クラウドサービスは、インターネット上に設置された仮想サーバーにアクセスし、各種データやアプリケーションソフトウェアを利用できるサービスです。今日さまざまなビジネスシーンでクラウドサービス活用が普及し、業務遂行に必要不可欠なインフラとなっています。
建設業界の場合、図面や資料の共有、工程スケジュール管理、記録帳票作成などで活用されており、距離的制約に縛られずにコミュニケーション、文書閲覧、共同作業などができるため、業務効率化が図れます。
ドローン(無人航空機)
ドローンの持つ「空中飛行」「遠隔自動操縦」特性は、建設現場における高所や垂直面などアクセス困難で危険が伴う箇所の作業で役立てられています。とくに、ドローンに搭載されているカメラや電波・赤外線・レーザーを用いた各種センサー類は、測量調査で大きな効果を発揮し、従来人力で行っていた作業を短時間かつ容易に実行できるようなりました。建設現場でのドローン導入は安全性の確保に加え、省人・省力化、工数・コスト削減に大きく貢献しています。
建設DXがもたらすメリット

過重労働の解消
建設現場においてもデジタル化・自動化を推進し、仕事を人の手から機械へと任せられるようになれば、一人ひとりの労働負担が軽減され、過重労働を解消できます。2024年4月から建設業界でも「改正労働基準法」が適用され、他の業種同様に「36協定の上限規制」が適用されます。そのため、働き方改革と労働時間削減がより一層求められるようになりますが、その実現のためには業務の機械化・自動化は喫緊の重要課題となっています。
危険作業におけるリスク削減
デジタル化・自動化は現場の危険な作業を機械化できます。たとえば、AIや通信技術などを導入した遠隔操縦は、人間が危険な箇所から離れて作業できるため、労働災害リスクを軽減できます。また人がアクセス困難な作業箇所は、ドローン映像での確認により、施工不良や危険度の評価・判定も可能となります。
このように、従来人の手で行っていた作業を機械に委ねることで省人化・効率化が図れるほか、機械と人間の双方がダブルチェックできるため、事故や労働災害リスクをより最小限に抑えることも可能になります。
生産性の向上
建設業界の構造的な課題として、人力作業に頼らざるを得ない場面が多く、生産性が低い点が指摘されています。現場ごとに環境条件が異なり、作業工程の均一化や標準化が困難です。
また、業務プロセスが細分化され、それぞれに多数の人が関与するため情報共有・更新に時間を浪費するなど、さまざまな問題を抱えています。業界のデジタル化・自動化推進は、業務の効率化と生産性向上をもたらし、課題解決につながることでしょう。
まとめ
多くの業種においてDXは進行中であり、建設業界でもその潮流は確実に来ています。大企業のみならず中小企業でも働き方改革や人材不足、人件費増といった制約・課題に対応するために、DX普及が急務となっているのが現状です。
今後も効率性を高め人力をサポート、コスト削減を最大化する、より洗練されたシステム・ハードウェアが登場することで、建設業界のDXを普及促進させることでしょう。実際に、大企業をはじめとした多くの建設会社がデジタル技術を導入し、活用を始めています。この記事で「建設DX」に興味を持たれた方はどのような技術が取り入れられているのか、ぜひご自身でも調べてみてください!
