技術トレーナーとして新卒社員の教育を担当。育てたいのは、自ら“考える”技術者
サービス部門の社内育成を一手に担うサービス部 研修課。中でも竹谷は技術トレーナーとして新卒社員の教育を担当しています。
「研修課では新人教育からサービスエンジニアの資格取得支援、資格取得後の継続的なスキル向上まで包括的な研修プログラムを提供しています。現在、12名の技術トレーナーが在籍し、私を含む9名が新卒社員の教育を担当しています。
現在、私たちのミッションは各研修生が法定12カ月点検をひとりで正確に実施できるようになること。また、点検箇所に不具合が見つかった際に車に及ぶ影響を理解し、それをお客様にわかりやすく説明する能力を養成することもめざしています。
新人研修プログラムでは、社会人としての基本的なビジネスマナーの習得から始まり、法定12カ月点検に必要な専門知識と技術を段階的に教育していきます」
例年、研修を受ける新入社員の数は約100名。20名ずつのグループに分かれ、半年間にわたり、整備士としての基礎を徹底的に学びます。
「タイヤの取り外しやリフト操作といった基本的な作業から、日常点検、さらには自動車に関する幅広い知識まで、研修の内容は実にさまざまです。このうち私は、タイヤの取り外しやリフト操作といった安全指導と、8〜9月の研修終盤パートを担当しています」
初めて技術トレーナーに就任してから10年になる竹谷。育成担当として、大切にしてきた信念があります。
「私がもっとも重視しているのは、研修生の自主性を育むことです。そのために、あえて教えすぎないよう心がけてきました。目標を示した上で、『どうすればいいか自分で考えてみようか』と問いかけて自分の頭で考える機会を与え、彼らが出した答えを尊重しながら、適切な指導を行うようにしています。
私自身、ただ教えられたことはあまり記憶に残っていないんです。つまり、自分の頭で考えて実行してみたことこそが、本当の意味で身になると信じています。とはいえ、わからないことがあれば遠慮なくどんどん質問してほしいので、質問しやすい雰囲気づくりにも努めていますね」
偶然の出会いに導かれ技術者として最高峰へ。挫折を糧に歩んだエキスパートへの道のり
自動車整備士養成学校であるトヨタ名古屋自動車大学校で整備士としての基礎を学んだ竹谷。しかし、彼が整備士の道を志すことになったきっかけは意外なものでした。
「高校時代に進路を考えていたころ、漠然と専門性を持って技術職に就きたいという思いがありました。でも、実は自動車に特別な興味があったわけではないんです。
整備士になろうと決意したのは、ある日の帰り道のこと。たまたま通りかかった販売店で、つなぎを着て整備を行っている整備士の姿を目にし、それがとてもかっこよく見えて。『こういう仕事もいいな』と思ったことが、整備士をめざした理由です。
また、『トヨタ検定1級や国家一級自動車整備士』のワッペンを胸元に誇らしげに貼れることが、数あるディーラーの中から愛知トヨタを就職先に選んだ決め手でした」
入社後、サービスエンジニアとして竹谷は豊田元宮店へ。3年目にトヨタ技術コンクールに出場したことが大きな転機となりました。
「トヨタ技術コンクールは、サービスエンジニアの育成と技術向上を目的とした技術競技大会です。私は、受付・問診から法定12カ月点検、故障診断、修理、結果説明までを2名1組で行う『一般競技』カテゴリーに参加しました。
上司に声をかけられたことが参加のきっかけでしたが、地区大会で惜しくも敗退。そのあまりの悔しさから、自ら『もう一度チャレンジさせてください』とお願いし、翌年も再挑戦しました。
その結果、東海地区大会で準優勝を果たし、全国大会への切符を手にしました。全国大会では表彰台には届きませんでしたが、この経験が大きな自信につながったことは事実です」
さらに竹谷は、入社5年目に「TOP CREW」を取得。検定や資格に果敢に挑戦してきた背景には、自己成長への強い渇望がありました。
「入社以来、自動車好きな同期と自分とのあいだに熱量の差を感じてきました。そんな中、資格取得こそが自分がこの世界で生き残るための命綱であり、仕事に誠実に向き合うことにつながると信じて、社内で取得できるすべての資格に挑戦する覚悟で取り組んできました。
とくにTOP CREWは、極めて優秀な整備士だけに与えられる、トヨタの整備士として最高峰の称号です。自動車の知識はもちろん、次々と登場する新型車の機構も理解しなければなりません。さらに、診断能力だけでなく、診断のプロセスや考え方も重視されるため、そういった点を重点的に勉強しました」
そして2015年、竹谷は技術トレーナーに就任。彼にとって憧れのポジションでした。
「入社時に研修を担当していた研修課の方に憧れ、いつかトレーナーになりたいと思っていました。私はどちらかというと形から入るタイプ。『テクニカルインストラクター』と書かれた、技術トレーナーだけが被ることができる特別な帽子を自分も被りたいという気持ちがモチベーションになっていましたね」
新たな指導哲学と出向経験が育んだ自信。技術トレーナーとしての成長の軌跡
竹谷にとって二度目の転機が訪れたのは、研修課に移って数年が経ったころ。技術トレーナーとして重要な気づきがありました。
「教えることに必死になりすぎるあまり、自分の知識や考え方を研修生に押し付けるようになっている自分がいたんです。そんな中、当時の上司から『自信がないから教えすぎるんだよ』と指摘され、ハッとしました。
実際、私が現場経験を積んだのはわずか3年ほどで、自分の技術への自信のなさを、言葉数で補っていたことに気づかされ、指導法を大幅に見直しました。
研修生たちがいきいきとしているのは、押し付けられているときではなく、自分で考えているときです。いまでは、誰もがミスを恐れず楽しみながら取り組める研修をめざしています」
その後、トヨタ自動車への出向を経験した竹谷。そこで約3年にわたって積んだ経験が、技術トレーナーとしての大きな成長につながりました。
「出向先は高度な故障診断を担う部署でしたが、想像以上に対応できた実感がありました。私は机上の理論ではなく、車両に不具合を仕込んで現場で診断するなど、実車を通してすべてを見ていくことを重視しています。その部署では、それまでそうしたアプローチをしてきた人があまりいなかったようで、その点を高く評価していただきました。
これまで自分が教えられ、また教えてきたことが間違っていなかったという確かな手ごたえを得たことは、技術トレーナーとしての大きな自信につながっています」
帰任後、2023年から竹谷は再び技術トレーナーとして研修課へ。大きく成長を遂げたいま、現在の仕事のやりがいについて次のように語ります。
「4月から約6カ月間、新入社員を見続けていくのですが、入社当初と研修後を比較すると、全員の成長度合いがよくわかります。考えて行動することを伝え続けてきましたが、4月には言われたことをこなすのがやっとだった彼らが、9月の研修では、自分たちで何をすべきかを考え、理解して行動できるようになってくれるんです。
こうした成長を間近で見たり、本人たちが『ここまでできるようになってうれしい』と自ら成長を実感している様子を目にしたりすると、充実感を覚えます。
また、以前教えていた研修生たちが資格を取得し、リーダーとなる姿を見るのも喜ばしいことです。とくに、現在研修中の新人が、かつての教え子のもとでOJTを受けている場面を目にしたときは、感慨深いものがありました。
こうして当社の歴史の中で脈々と受け継がれてきた技術の連鎖の中に、自分の確かな存在感を感じられることが、私にとって大きなやりがいになっています。これから先、10年、20年と彼らの成長を見届けていきたいですね」
世代を超えた共感力を。若手の悩みに寄り添い、自らをアップデートし続ける存在に
竹谷の目標は、若手社員とあらゆることを分かち合える存在になること。技術トレーナーとして、めざす姿があります。
「実は私自身、入社して1年目に仕事を辞めたいと思ったことがありました。そのときに助けてくれたのは同期たちです。ただ話を聞いてくれていただけですが、気持ちを吐き出せる相手がいたことが、当時の私にとって非常に大きな支えになり、それがきっかけで現在のような前向きな思考へと転換することができました。
いまは技術トレーナーという立場ですが、若手社員にとって力になれる同期のような存在でありたいと考えています。私たちはつい年齢を重ねるにつれ、『最近の子たちは…』などと突き放した言い方をしてしまいがちですが、若い世代の社員たちと対話を重ねながら、自分の考え方をアップデートし続けていきたいんです」
そして、かつての自分のように不安を抱える若手社員に向けて、竹谷はこんなメッセージを送ります。
「私と同じように、自動車が特段好きなわけではないけれど、この業界に飛び込んだという人も多いでしょう。技術トレーナーとして、そんな一人ひとりの悩みにも喜びにも寄り添いたいと思っています。
私にはきっと皆さんができないことを教えてあげられるし、できることを探す手伝いもできるはずです。仕事のことも、仕事以外のことも共有しながら、一緒に成長していきましょう」
※ 記載内容は2024年10月時点のものです
