ブレーキソフトウェアで社会課題に挑む、エンジニアの日常
私は現在、ソフトウェア機能設計部のアプリケーション設計室で、開発の中心メンバーとして働いています。担当員(いわゆる係長)という立場から、チームの中心となって開発機能に対する仕様検討や性能評価を推進しています。私たちのチームが取り組んでいるのは、ブレーキのソフトウェアで車両状態や走行環境を推定し、交通事故や交通障害を未然に防ぐという、社会課題の解決に直結するミッションです。
日々の業務では、主にソフトウェアの仕様開発を担当しています。まず、お客様や関係部署と要求や課題を整理し、機能の目的や成立条件を明確にするところから始まります。そのうえで、仕様案を作成し、シミュレーションや過去データを用いて成立性を確認しながら仕様を具体化していきます。特に力を入れているのは、実車データやシミュレーション結果を分析しながら、さまざまな条件でも正しく推定できるように工夫することです。仕様が固まった後は、実車やベンチでの評価結果を踏まえて調整を行い、関係者と合意した内容を最終仕様としてまとめています。
私たちが開発している機能の核心は、ブレーキが持つ独自の強みにあります。ブレーキは路面と直接接するタイヤの回転状態を高い精度で把握できるため、車両がどのような状態で走行しているかを詳しく知ることができます。さらに、アドヴィックスには車両の挙動を安定させるためのブレーキ制御技術を長年開発してきた中で、スリップや外乱を見分けるノウハウが蓄積されています。これらの情報とノウハウを組み合わせることで、車両状態や走行環境を推定する機能を開発しているのです。
仕事をする上で私が何より大事にしているのは、サプライヤーとしてのお客様はOEM各社ですが、開発している機能が社会に貢献できることを第一に考え、チーム一丸となって開発に取り組むことです。技術そのものだけでなく、その先で社会にどう役立つかを常に意識しながら、日々の開発を進めています。
自動車への情熱とエンジン開発の現場で培った6年間
学生時代は機械工学を専攻していました。もともとクルマが好きだったこともあり、自動車メーカーへの入社を決めました。車の「走る・曲がる・止まる」という基本性能の中でも、走る原動力となるエンジンに実験を通じて直接触れながら開発に携われる点に魅力を感じていました。幸いにも希望通りエンジンの実験部署に配属され、パワートレインの振動・騒音性能開発を担当することになりました。
前職では約6年間、自動車メーカーにてパワートレインの振動・騒音性能開発に携わっていました。実験結果から改善すべき点を抽出し、ハード・ソフト設計者へ改善策を提案しながら、他の性能との背反を確認しつつ性能開発に取り組む日々でした。その中でも特に印象に残っているのは、グローバル展開するエンジンの開発を、開発初期段階から量産間際まで一貫して担当させてもらった経験です。振動・騒音性能の改善・向上に取り組む中で、排ガス性能や燃費、コストなどのさまざまな背反事象について関係者と議論を重ね、ベターな設計変更を決めていく過程は、簡単なものではありませんでした。しかし、この経験を通じて、個別性能だけでなく、全体最適の視点で判断することの重要性を強く実感しました。自分自身の成長に大きな影響を与えた、貴重な経験だったと思います。
前職では良好な人間関係にも恵まれ、専門性を深める貴重な経験を積むことができました。しかし、将来のライフプランを具体的に考える中で、自身の成長と働き方の両立について見つめ直すようになったんです。これまでの経験を活かしつつ、今後はより成長できる環境や柔軟な働き方に挑戦したいと考え、転職を検討するようになりました。クルマが好きで前職を選んだこともあり、転職にあたっても自動車業界で働き続けたいという思いは変わりませんでした。CASEが叫ばれる時代の中で、自動車業界が大きく変化していく過程に当事者として関わり、新たな分野に挑戦してみたいと考えるようになりました。そんな中で、アドヴィックスがデータビジネスを推進していく方針を知りました。これまでの経験を活かしながら、安心・安全なクルマ社会の実現に貢献できる環境だと感じたことが、入社を決めた理由です。
一人で抱え込まない。関係構築が開いた成長への扉
中途入社して制御ソフト開発という新たな分野に挑戦し始めた当初は、正直戸惑うことばかりでした。自分の知識不足から遠慮してしまい、周囲に頼れる人や相談先が分からず、思うように業務を進められない時期が続いたのです。個人で抱え込んでしまい、前に進めない日々が続いたことは、今振り返っても苦い経験として記憶に残っています。
しかし、その経験こそが大きな転機となりました。早い段階で「一人で抱え込まないこと」が大切だと気づき、分からないことは正直に伝えて教えてもらうようにしたのです。日々のちょっとした会話や報連相を大切に心がけました。すると、仕事の相談だけでなく、背景にある考え方も共有してもらえるようになり、結果として業務理解も格段に深まっていきました。この経験を通じて、「技術力と同じくらい、人との関わり方が大切だ」ということを学びました。
各分野のエキスパートの方々と積極的に関わる中で、単なる知識や技術だけでなく、「なぜその考え方や判断に至ったのか」という背景を理解することの大切さを実感しました。特に、ハードウェア・制御・評価など立場の異なるエキスパートと議論することで、自分の視点だけでは気づけなかった制約やリスク、設計の勘所を学ぶことができました。その経験を通じて、ソフトウェアを考える際も、より広い視野で全体最適を意識するようになったのです。
そして、データビジネスの立ち上げに関わり、社会貢献をテーマに検討・開発してきた機能が、実証・検証の段階として具体的な形になってきたことは、大きな成功体験となりました。自動車メーカー向けの試乗会において、「社会に必要とされる価値の高い機能だ。ぜひ量産車に搭載できるように引き続きお願いします」というコメントをいただいた時は、開発の方向性が間違っていなかったと確信することができました。技術開発を通じて、将来的に社会課題の解決につながる可能性を実感できたことが、現在の仕事における大きなやりがいにつながっています。
ソフトウェアで未来のモビリティ価値を創り出す挑戦へ
短期的には、今開発中の機能を確実にリリースし、ユーザーに価値を届けることが目標です。現在、仕様や品質面の最終確認を進めながら、関係部署と連携してリリースに向けた準備を着実に進めています。ただ、リリースして終わりではありません。その成果を土台にして拡張機能の開発を加速させ、より完成度の高い機能群へと発展させていくことに挑戦したいと考えています。将来の拡張を見据え、実装や設計の段階から改善点や発展の余地を整理し、次の機能開発につなげられるよう取り組んでいるところです。
中長期的には、ブレーキに限らず各種ハードウェアの知識を土台とし、ソフトウェアファーストの考えに基づいて、ソフトウェアからクルマの快適性や安全性を高める機能を継続的に世の中へ提供できるエンジニアをめざしたいと考えています。そのためには、ブレーキに限らず各種ハードウェアや車両運動制御の理解をさらに深めるとともに、それらを前提としたソフトウェア設計・制御技術のスキルを磨いていく必要があります。また、仕様開発から評価まで一連の開発プロセスを経験し、ソフトウェアによる価値創出を継続的に行える実践力を身に付けていきたいです。
採用候補者の皆さんにお伝えしたいのは、自分が関わった技術や機能が、最終的にクルマという形になって世の中に出ていくことのやりがいです。サプライヤーという立場だからこそ、ハードウェアの特性や制約を理解したうえで、ソフトウェアによって性能や価値を引き出す役割を担えます。試行錯誤を重ねながら開発した機能が量産車に搭載され、安全性や快適性の向上につながったと実感できた瞬間は、大きな達成感を感じるはずです。
将来のモビリティ社会を見据え、アドヴィックスのソフトウェアは、単に車両を制御する技術にとどまらず、事故リスクを低減し、人の安全を守り、社会課題を解決する役割を担っています。 私たちは、分からないことを自ら学び続け、仲間と議論しながら価値を形にしていける方と、ぜひ一緒に未来のモビリティをつくっていきたいと考えています。 入社後は、現場での開発経験を通じて、基礎的な技術力を身に付けること、そして製品開発の流れや品質・安全に対する考え方を深く理解いただくことを期待しています。 その経験を積み重ねることで、徐々に自分の視点を持って機能や技術を提案できるようになり、将来のモビリティ価値創出に貢献できるエンジニアへと共に成長していきましょう。
