体を動かすことが大好きだった少年時代から、ものづくりへの道へ
子どもの頃の私は、とにかく体を動かすことが大好きでした。毎日友人たちと外で遊び回り、エネルギーに満ち溢れた子どもだったと思います。性格は喜怒哀楽がとてもはっきりしていて、感情表現が豊かでした。嬉しい時も悲しい時も、素直に気持ちを表に出すタイプだったんです。
習い事も積極的に取り組んでいました。バスケットボール、野球、空手、水泳と幅広く経験させてもらいましたが、特に球技が好きでした。中でも、バスケットボールには夢中になりましたね。兄が小学校の部活動でバスケをやっていたんです。その姿を見ているうちに、自然と興味を持つようになりました。高校時代もバスケットボール部に所属し、部活動に注力していました。県内でも走り込みが多いことで有名な部活で、休みも少なく年中バスケに励んでいたんです。厳しい練習でしたが、仲間と一緒に汗を流す日々は本当に充実していました。
大学では、工学部で機械工学を専攻しました。この選択には明確な理由がありました。高校時代にベトナムを訪れた際、日本製の製品が数多く使われているのを目の当たりにしたんです。その時、日本のものづくりの技術力の高さを実感しました。また、私は愛知県の三河出身で、地元には高い技術力を持った製造メーカーが数多くあります。将来的に自動車関係の仕事に携わりたいという思いが芽生え、ものづくりの技術を最も学べる機械工学を選びました。
大学での学びは実践的でした。製品を分解・組み立てて仕組みを理解することから始まり、航空宇宙、自動車、ロボットなどの分野を中心に、機械工学の基盤技術を幅広く身につけることができました。3年次からは「自動車」「航空宇宙」「ロボット」の3コースから選択でき、より専門性を深めるカリキュラムでした。実験や実習が多く、実際に企業で使われているソフトウェアを用いながら、設計、制御、情報処理などの実践的な技術を習得することができました。こうした学びを通じて、主体的に考え、創造的にものづくりができるエンジニアとしての基礎を養っていったのです。大学時代はお寿司屋さんでアルバイトにも注力し、学業以外の経験も積むことができました。
交通事故をきっかけに、安全への思いを胸に刻み、選んだブレーキの道
大学生の頃、兄が交通事故に遭い、幸い大事には至りませんでしたが、日常が危険と隣り合わせであることを強く実感しました。これをきっかけに、自動車業界の中でも「安全」に関わる仕事がしたいと考え、就職活動では安全分野を重視しました。
自動化・電動化が急速に進む中で、車両制御の中心となるのは「止まる・減速する」というブレーキ機能だと考えていました。特に電動車では回生協調ブレーキや高度な制御ロジックが不可欠となり、従来以上に精密で高信頼な制御ブレーキが求められます。また、自動運転レベルが上がるほど、車両が自律的に状況判断して減速・停止する場面が増えるため、ブレーキ制御の重要性はさらに高まると感じていました。
アドヴィックスは、ブレーキの開発・設計から製造、量産までを一貫して担う世界でも稀有な総合ブレーキメーカーです。特に魅力的だったのは、メカ・エレキ・ソフトを統合したシステムとしてのブレーキを自社内で完結できる体制でした。この体制は、電動化・自動運転が進む「100年に一度の変革期」において極めて重要な役割を果たすと考えていました。自動車の安全性を根幹から支える技術を持ち、今後のモビリティ社会の進化に不可欠な企業として、業界をリードしていく存在になるというイメージを抱いていました。
早期選考で第一希望群であった2社を受け、アドヴィックスから先に内定をいただきました。採用選考の中で印象に残っているのは、面接官の方が非常に明るく、親しみを持ちやすい雰囲気だったことです。他の企業と比較しても、新しいことに挑戦していく姿勢や、事業として今後成長の可能性がある点に強く魅力を感じ、内定承諾を決めました。
入社後は、社会人としてのマナー研修から技術研修まで幅広く受けました。入社前には想像していなかったことですが、コミュニケーションが活発であり、年齢に問わず意見を言い合える環境に驚きました。入社以来、制御ブレーキ品質保証部に所属し、毎年担当製品や関わる工程が変わるため、常に新しい知識や視点が求められる環境で、安全を支える仕事に携わっています。
制御ブレーキの品質を守る、解析と対話の日々
現在、私は、制御ブレーキの品質保証部に所属しています。私たちの部署は、グローバルに設計から生産、そして市場まで一貫した品質保証活動を牽引し、世界中のお客様の期待に応える品質を提供することをミッションとしています。その中で私は、回生系制御ブレーキの新機種生産準備から量産製品の品質保証業務を担当し、社内から得意先の車両メーカーで発生した品質不具合解決にも従事しています。
回生系制御ブレーキは、ドライバーのペダル踏込み力、スピードに応じて必要な制動力を車両駆動モーターの発電減速力とブレーキユニットのポンプで発生させた油圧を自動で協調制御している高度なブレーキユニット製品です。
生産段階では、工場内での量産工程で発生した不具合の解析を行い、製造条件や設備、部品状態などを多角的に確認しながら原因を特定していきます。単に不良の原因を見つけるだけではなく、製造部門と協働して再発防止策を策定し、検査基準の見直しや工程改善にも関わることで、工程内での品質づくりを強化しています。納入段階では、車両メーカーの生産ラインで発生した不具合に対して、現地での状況確認や部品の回収・解析を行い、車両側の使用条件や組付け状態も踏まえて原因を切り分けています。迅速な報告と対策立案を求められるため、社内外の関係者と連携しながら、問題解決を進めることが求められます。
この仕事で最も達成感を得られたのは、生産工程で多発していた不良をゼロ化できた経験です。不良が発生していた工程を実際に観察し、製品の構造や作動特性、設備条件、作業手順などを一つひとつ確認しながら、発生メカニズムを論理的に整理しました。特に、設備の動作タイミングと部品の状態が不良発生に影響している可能性が高いと仮説を立て、データ収集と再現試験を繰り返して要因を絞り込みました。原因が特定できた後は、製造・設備・品質の各部署と協力しながら対策案を検討し、設備条件の最適化、治具の調整、作業手順の見直し、検査基準の強化など複数の対策を段階的に実施しました。対策後は一定期間モニタリングを行い、不良が再発しないことを確認できました。最終的に、不良発生件数をゼロまで減らすことができ、自分の解析と提案が現場改善につながり、関係部署と一体となって成果を出せたことに大きなやりがいを感じました。
一方で、得意先に大きな不良を出してしまった際は、これまでで最も苦労した経験でした。不良が発覚した直後から、得意先からは早急な原因特定と対策提示が求められ、短期間で発生メカニズムの解明から流出要因の整理、再発防止策の立案までを進める必要がありました。まずは現品を回収し、分解調査や作動検証を繰り返して、製品構造・制御ロジック・製造条件の観点から可能性を一つずつ潰し込みました。再現試験やデータ分析を重ねることで、最終的に不良の発生メカニズムを特定することができました。その後は、社内の設計・製造・品質部門と連携しながら、発生要因と流出要因を整理し、設備条件の見直しや検査工程の強化など、必要な対策を迅速に実行しました。
こうした対策を進める中で特に印象に残っているのは、各部署が求めている情報や次のアクションに必要な材料がそれぞれ異なるため、それを正確に把握しながら調整を進める難しさでした。設計部門は製品仕様との整合性を確認するために技術的データを求め、製造部門は工程で何を変えるべきか判断するために設備条件や作業手順に関する具体的な情報を必要とします。品質部門は流出要因の整理や再発防止策の妥当性を重視するため、発生メカニズムのロジックや検査工程の弱点を明確にする必要がありました。さらに得意先に対しては、技術的な内容をそのまま伝えるのではなく、どのデータが原因を裏付けるのか、どの対策がどのリスクを潰しているのかを論理的に説明できる資料が求められました。各部署が次に何を判断したいのか、どの情報があれば動けるのかを意識しながら、必要なデータを整理し、伝え方を工夫することで、部署間の連携がスムーズになり、対策を短期間でまとめることができました。最終的には、原因の明確化と対策の実行により不良の再発を防止でき、得意先からの信頼回復につなげることができました。
入社してから現在までで大きく変わったのは、物事の背景をとらえる力と相手に合わせて伝える力です。学生時代は、事実をそのまま伝えれば十分だと思っていましたが、品質保証の業務では、相手が何を判断したいのか、どの情報が必要なのかを理解したうえで伝えることが非常に重要だと気づきました。不具合解析では、事実と推測を明確に層別し、根拠のある情報だけを提示する必要があります。また、設計・製造・品質・得意先など、関わる相手によって求める情報が異なるため、同じ内容でも伝え方を変えるようになりました。このような経験を積む中で、単に情報を並べるのではなく、相手が理解し、次のアクションにつなげられる形で伝えるという視点が身につき、仕事の進め方が大きく変わったと感じています。
挑戦を後押しする風土で、システム全体の品質を守るリーダーへ
短期的には、現在担当している制御ブレーキ製品について、構造・機能・制御ロジックなどの製品知識を深めるとともに、主要部品の製造工法や生産プロセスを体系的に学び、確かな知識基盤を築きたいと考えています。そのために、設計資料・仕様書・過去の不具合事例を体系的に読み込み、週ごとにテーマを決めて学習する計画を立てています。構造理解から制御ロジック、作動特性、主要部品の役割へと段階的に知識を深めていくため、実機を用いた分解調査や作動確認を定期的に行い、机上の知識を実体験と結びつけることを大切にしています。また、現場へ足を運び、設備担当者や作業者から工程のポイントを直接学び、設備条件の変化が品質にどう影響するかを自分の目で確認し、ノートに整理して知識化しています。そのうえで、得た知識を活かしながら、新製品の新規立上げに積極的に関わり、量産に向けた品質づくりや工程設計に実務として携わることを目標としています。
中長期的には、メカ・エレキ・ソフトの各分野を横断的に理解し、製品の設計段階から量産まで一貫して品質を作り込めるエンジニアとして成長したいと考えています。現在は生産段階や納入段階での品質保証を中心に担当しているため、設計段階に関する知識と経験が不足していると感じています。特に、メカ・エレキ・ソフトが複雑に絡み合う制御ブレーキでは、設計段階での要求仕様、制御ロジックの意図、部品選定の理由などを深く理解していないと、システム全体としての品質保証を牽引することは難しいです。私は、不具合の未然防止や設計品質の向上に向けて、各部門と協働しながら課題を構造的に整理し、品質基準や検証プロセスの高度化を推進できるようになりたいと考えています。そして最終的には、製品の安全性・信頼性をシステムレベルで保証できるリーダーとして、企業の品質競争力向上に貢献したいです。
私が一番伝えたいのは、若手でも遠慮なく意見を発信してほしいということです。実際、当社は若手が多く、年次に関係なく、意見に耳を傾けてくれる風通しの良い会社です。自分の考えを発信すれば、必ず誰かが受け止めてくれる環境があり、挑戦したい気持ちを後押ししてくれます。些細なことでも自分の考えを持ち、発信できる人、何事にも興味を持ち、なぜを突き詰められる人と一緒に働きたいと思っています。当社はメカ・エレキ・ソフトを統合したブレーキシステムを一社で開発できる世界唯一の企業であり、回生協調ブレーキ、自動緊急ブレーキ、電動パーキングブレーキなど、電動化・自動運転時代に不可欠な技術を多数保有しています。CASEの影響で縮小してしまう事業もある中、当社の事業はさらに拡大していきます。2001年設立の比較的若い会社であり、個人の裁量も大きく、若手でも十分活躍できる環境が整っています。
