1月より放送中のTVアニメ『空色ユーティリティ』は、「ゴルフの楽しさ、おもしろさを多くの人に伝えたい!」という想いを込めて、アニメ制作会社・Yostar Picturesとポニーキャニオンが初めてタッグを組んで創り上げたオリジナルアニメーションです。
このアニメを形にするまでには、オリジナル作品ならではの課題もありました。企画段階から携わったアニメプロデュース部の制作プロデューサー・宮治 舞と、音楽レーベル・P's Recordsで音楽プロデューサーを務める渡部 直が、“オリジナルアニメ制作ならでは”のこだわり、新たな挑戦を語ります。
▲写真左から、宮治 舞、渡部 直
『空色ユーティリティ』最大の魅力は共感を呼ぶリアリティ
ゴルフを題材にしたアニメやマンガは多く、その大半がプロゴルファーや競技の頂点をめざす物語ですが、『空色ユーティリティ』は違います。自分が輝ける“特別”な何かを探していた女子高校生・青羽 美波が、偶然にもゴルフに出会い、少し年上の女性ゴルフ仲間の手ほどきを受けながら、ゴルフに夢中になっていく姿を、ゆるりとした日々と共に描いていきます。
宮治:『空色ユーティリティ』の魅力として、“共感”と“リアリティ”があると思います。実際、私もこの作品をきっかけにゴルフを始めましたが、ゼロからゴルフを始めた初心者の(青羽)美波ちゃんにすごく共感できます。
また劇中に登場するゴルフにまつわる全てのものをYostar Picturesさんがとてもリアルに作り込んでくれています。
また、作品作りにおいて大切にしているのは、ゴルフへの憧れだと宮治は言います。
宮治:脚本家さんをはじめスタッフに女性が多いので、これを観て“私も美波ちゃんのようにゴルフを始めてみたい!”と思ってもらえる目線を大事にしています。アニメファンだけでなく、ライト層やゴルフに少しでも興味がある方にも楽しく観てもらえることを意識して、制作を進めていきました。
渡部:監督の斉藤 健吾さんをはじめ、作品愛が画面から伝わってきますよね。美波、遥、彩花を中心とするキャラクターたちが魅力的なことはもちろん、小物や細かい仕草の一つひとつにも作り手のこだわりが詰め込まれている作品だと思います。
アニソンの枠に捉われないキャラソンを!新たなプロモーションにもトライ
『空色ユーティリティ』のさわやかさと、キャラクターの活き活きした楽しいゴルフライフの演出を音響面で支えているのが音楽です。渡部はキャラクターソングや挿入歌、劇伴(サウンドトラック)のプロデュースとプロモーションを担当しました。
渡部:宮治さんから作品の目指したい方向性は事前に聞いていたので、「音楽もしっかりせねばと!」と気を引き締めて臨みました。ここで初めて明かすのですが、キャラソンはもともとコンペでデモを集めるつもりだったんです。
でも「いざ曲を発注するぞ!」となったタイミングで、ふと、美波のセリフにもある「スペシャルな特別」ってワードが頭に浮かんできて。コンペではなく、アーティストのみなさんと一緒に、ゼロから作ることにしました。
とはいえ、明確な候補がいなかった渡部は、まず作品に興味を持ってくれるアーティストを探すために、音楽事務所のマネージャーやCDショップのバイヤー、作曲家の友人、エンジニアチームまで……いろいろな人に話を聞いてまわりました。
渡部:そういったなかで奇跡的なご縁があり、Hakubiの片桐さん、北澤 ゆうほさん、SILENT SIRENのすぅさんに引き受けていただきました。こんな凄いメンバーに引き受けていただけるなんて!と感動しつつ、青羽 美波役の高木 美佑さん、茜 遥役の天海 由梨奈さん、星美 彩花役の後藤 彩佐さんとどんな化学反応が起きるのか、毎日ワクワクしましたね。
最終的には、サウンドチームのdaisuke horitaさんやZENTAさんからも楽曲をいただき、アルバムが完成しました。超名盤です。ぜひたくさん聴いてください。
各曲のオリジナルミュージックビデオも制作し、「そのキャラクターらしい曲」だと好評を得ています。
渡部:ミュージックビデオは当初、制作予定がなかったのですが、こんなに素晴らしいアニメと曲があるのだから作らねば!と思い立ち、制作を決めました。あとは、YouTubeにミュージックビデオがあれば、普段サブスクを使っていない方だったりCDに馴染みのない方でも気軽に曲を聴きやすいかなと思って。映像制作チームの協力もあり、とても良いものに仕上がったのでぜひご覧いただきたいです。
そういう意味で、たくさんの企業が関わるアニメーション製作において、ここまで作品ファーストな姿勢を貫くことができたのは、共同制作だからこそですね。
劇伴に関してもポニーキャニオン、Yostar Pictures、2社の強い連携あってこその制作手法が実現しました。
渡部:通常、音響監督と劇伴作家はそれぞれ別の方が担当されていることが多いのですが、今作ではhoritaさんが音響監督と劇伴作家を兼任していることもあり、サウンド面もフレキシブルに対応いただきました。ちょっとしたことでも何かあればすぐに電話したりして。隠し事も一切なしでしたので、僕も素直になりすぎて、たまに意見がぶつかり合うこともあったけれど今となっては良い思い出です。
そうした環境だからこそ、7話の挿入歌である「Zubatto☆ショット 首ったけ!!!」や「ゲットまぢっく☆HAM式」などを中心に、真剣ながらも遊び心ある取り組みが実現できたと思っています。
音楽面のプロモーションにも、渡部の新しいアイディアが投入されました。それが、既存の音楽メディアやアニメメディアだけに頼ることなく、ポニーキャニオン公式ニュースサイト「PONY CANYON NEWS」で、クリエイター×歌唱声優などの音楽対談企画記事を掲載したことです。
渡部:それこそ、horitaさんとレコーディングしてるときに「普段スタジオで繰り広げられるコアな話をファンの方にも共有したいね」という話題になったのがきっかけです。自社のオウンドメディアを活用すること自体はずっと頭の片隅にあったので、「これはチャンスかも?」と検証も兼ねて企画しました。
普段は他社さんに協力いただいている部分も自分たちで行なったので、物量的にはそれなりに大変でしたが委員会のみなさんにも爆速でOKいただき、結果として、よりリアルな現場の想いをお客さんにお届けできたのではと思っています。
おかげさまで記事もたくさんの方に見ていただけているようで、アニメ音楽プロモーションにおける新しい可能性を感じています。突然のオファーにも関わらず快く引き受けてくださったキャストやアーティストのみなさん、取材にご協力いただいたライターの澄川 龍一さんに、心から感謝しています。
リアリティを生むゴルフメーカーとのコラボも実現
本作は、原作のないオリジナルアニメだからこその工夫も多くあります。制作プロデューサー・宮治にとって最大のミッションは、『空色ユーティリティ』という作品をいかに多くの人に衆知してもらうかでした。
宮治:原作物アニメに比べ、内容を含めて新規オリジナルアニメを知ってもらうのは、そもそも難しいことです。ですが『空色ユーティリティ』は、Yostar Picturesさんが熱量高く制作に取り組んでくださったおかげで、オンエアの1年前にはすでに第1話ができていました。
そのおかげで、“『空色ユーティリティ』はこういうアニメです!”ということを、宣伝施策やグッズの商品化に協力いただく企業様に早くアプローチできました。
また、その早い取り組みがあったからこそ、もともと狙っていたゴルフファン獲得のための施策も打ち出せました。
宮治:2024年3月には『第58回ジャパンゴルフフェア2024』にブース出展。ノベルティ配布を行うなど、オンエア前のプロモーション施策に動き出すことができました。
ゴルフ業界にも、ひとりでも多くの若い世代にゴルフを楽しんでもらいたい想いをお持ちの方々がいらして。そこに『空色ユーティリティ』が少しでも貢献できたらという想いもありました。
劇中には、実際に販売されているゴルフクラブやボール、シューズなどの道具(ゴルフギア)が多数登場し、ゴルフファンも納得のリアリティを追求しています。協力企業には、株式会社ヴィクトリア、株式会社ダンロップスポーツマーケティング、ミズノ株式会社、ヤマハ株式会社と錚々たる企業が名を連ねています。
宮治:どのキャラクターがどのギアを使用するか、キャラとギアの親和性にもこだわっています。また本編のクラブはすべて3Dで制作いただいていて、それこそすごく“リアリティ”のある映像になっていると思います。実在するクラブを使用することで、キャラと追体験ができるのも良いですよね。
また、第4話で登場するヴィクトリアゴルフ世田谷店さんでは、青羽 美波役の高木 美佑さんと一緒にゴルフイベントを開催させていただいたりと、本編制作のみならずプロモーション周りでも各者様にとても協力していただいています。
ゴルフファン、アニメファンの両軸に訴える、同じく女性ゴルファーを描いた『オーイ!とんぼ』や『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』といった他社作品とのコラボレーションも話題を呼びました。
さらに、作品とリンクした動画コンテンツも積極的に発信。なかでも『空色ユーティリティ』公式YouTubeチャンネルでスタートしたバラエティ番組『【空色YouTV】』は、ゴルフ愛たっぷりの内容でファンを楽しませています。
宮治:高木 美佑さん、天海 由梨奈さん、後藤 彩佐さんがパーソナリティとなり、プロゴルファーから初心者レッスンを受けたり、打ちっぱなしに行ったりしています。アニメと共にゴルフにもっと親しみを持ってほしいと思い始めた番組です。
また、オープニング主題歌「主人公になろう!」にフィーチャリングで参加いただいた鈴木 愛理さんのご家族がゴルフファミリーということで、弟の鈴木 貴之プロがオーイシマサヨシさんにゴルフを教えるという、素敵なご縁も実現しました。
『空色ユーティリティ』で改めて感じたチームワークの大切さ
ゴルフ愛あふれるスタッフ陣の尽力もあって、アニメのオンエア後はゴルフ愛好者からの作品に対する声援も聞こえてきました。
宮治:私の父もゴルフをするのですが、父のゴルフ仲間の方が偶然『空色ユーティリティ』を観てくださっていて、「いいアニメだから原作マンガも読んでみたくて探したけど、原作はないんだね」とおっしゃっていたらしくて。私たちがリーチしたかった40代、50代のゴルフ好きの方にも想いが届いていることを実感します。
斉藤 健吾監督の“みんなゴルフやろうよ!”という愛情を、チームが一丸となってしっかり形にできたからこそだと思います。
渡部:『空色ユーティリティ』のチームメンバーって、とにかくポジティブなんですよ。作品のためになることや、お客さんに喜んでもらえるようなアイディアがあれば、それぞれ専門外でも提案しあったりして。しかも、そこに対する回答が「それ、どうすれば実現できますかね?」といった具合で超スムーズに物事が進んでいく。キャストやクリエイターだけでなく、関わるスタッフが常にポジティブ。
そうした個々の熱量が作品のクオリティーアップにつながったのではないかと思っています。当たり前のことですが、作品に対して、真面目に、丁寧に向き合うことの大切さを改めて実感しました。
制作陣の密なチームワークがさまざまなアイディアを生み、迅速な施策の実現へと実を結んだことも、このプロジェクトから得た糧のひとつです。
渡部:アイディア次第で作品の可能性を広げられるということが実感できたのはすごく大きかったです。自分にとって、これまで経験のないトライアルを重ねた音楽制作も同様ですが、日々のルーティーンに囚われない、頭と手を使ったもの作りの在り方を、この作品から教えてもらった気がします。
キャラクターの魅力あふれる『空色ユーティリティ』ですが、同じくらい音楽チームのメンバーも気合が入ってます。ぜひアニメとあわせて音楽もお楽しみいただけると幸いです。
宮治:やはりチーム内でコミュニケーションを密にして、“作品のために動こう!”という信頼関係をいかに築けるかが、もの作りには大事だと思います。Yostar Picturesさんと製作委員会が同じ熱量とスピード感で動けたことで実現できたことがたくさんあります。
この経験はぜひ次にも活かしていきたいですね。『空色ユーティリティ』をより楽しんでいただける施策を今後もお届けできたらと思っておりますので、ぜひ注目いただけたら嬉しいです。
※ 記事の部署名等はインタビュー当時のものとなります
TVアニメ「空色ユーティリティ」
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