予兆保全の新時代へ──産業用IoT向け無線センサで現場のニーズに応えていく
私は現在、産業用IoT向け無線センサの機構の設計を専門として、製品開発に携わっています。また、これから新規に製品開発していくチームのリーダーとして数名のメンバーを取りまとめながら業務をしています。
私が担当している製品は、設備の予知保全・予兆保全のためのソリューションを提供するセンサとして利用されます。従来、設備のメンテナンスは定期点検や故障時の対応が中心でしたが、設備が停止することによる損失を最小限に抑えたいというお客さまのニーズに応えるため、設備の状態を常時監視し、メンテナンスの最適なタイミングを予測することを目的としています。
これらのセンシングデバイスは、無線通信部分とセンサ部分をそれぞれモジュール化しており、組み合わせて使用できる設計にあります。寿司のシャリとネタのように無線通信部分は共通で、センサ部分をお客さまの設備状態に合わせて温度や振動など、用途に応じて選択できます。センサラインナップは今後さらに拡充していく予定です。
私たちの現在の課題は、センサで取得したデータの活用方法です。たとえば、振動データの測定により設備の状態変化を検知することはできますが、具体的にどの部分に問題があるのか、あるいはいつ頃故障する可能性があるのかといった詳細な分析・予測については、まだ改善の余地があります。お客さまにより有用な情報を提供できるよう、データ分析の精度向上に取り組んでいます。
私たちの開発チームでは、営業部門と共にお客さまを訪問し、現場の生の声を聞く機会を大切にしています。設備停止による損失への懸念など、お客さまの切実な要望に直接触れることで、開発に対するモチベーションもいっそう高まります。また、これらの声は開発チーム全体で共有し、今後の開発方針を決める重要な指針としています。
当社の強みは、工場やプラントで人が立ち入りにくく、メンテナンスが難しい場所に設置できる機器の設計力だと思っています。培ってきた技術とノウハウを活かしながら、お客さまのニーズに対応した製品開発を進めています。また、新製品開発においては製品やサービスの開発前から特許の取得を意識した「攻めの知財」活動も展開しています。
「キャリアは取り戻せる」。先輩からのアドバイスをもらって、制度をうまく活用
私が工学部で機械システム工学を学ぼうと思ったきっかけは、SF映画への憧れでした。未来的な技術に魅力を感じ、漠然とですが工学系、とくに機械の分野に進みたいと考えました。理系科目が得意だったこともあり、そんな単純な動機で進路を決めました。
しかし大学で学んでいくうちに、宇宙への憧れよりも、物理的なものを設計・分析することにより興味を持つようになりました。就職活動では、社会インフラの基盤を支える仕事に魅力を感じ、そのなかで当社に出会いました。製品開発・設計に携わる技術職で首都圏に居住したいという希望があり、また福利厚生がしっかりして、長く働ける環境を求めていたため、この会社を選びました。
もともと大学の機械系は女性が少なかったので慣れてはいましたが、入社してさらに女性が少ないことを実感しました。入社後に配属された製品開発部署では電子回路や機構を担当するハードウェアの開発メンバーには、当時ほとんど女性がいない状況でした…。一番近くで教えてくれた先輩は18歳上と、まるで大人と子どものような年齢差がありましたが、職場の皆さんが優しく接してくれて技術者としての基礎から丁寧に指導してもらいました。
とくに印象に残っているのは、物の大きさを手で示して説明した際に、「感覚的な表現ではなく、数値できちんと示すべき」と教えられたことです。他にも技術者としての基本的な姿勢を叩き込まれました。学部卒で専門知識が少ない中、図面の読み方や書き方など、基礎からしっかりと教えてもらい、技術者として必要な考え方が身に付いたと思います。
2017年8月からは、夫の海外駐在に伴いスイスのジュネーブで生活することになりました。それまで英会話を学んでおり、海外生活にも興味があったため、会社の「配偶者海外駐在休職制度(*1)」を利用して、同行しました。しかし実際は、夫の出張が多く一人で過ごす時間が増え、数カ月するとヨーロッパの街並みにも慣れてしまい、もの足りなさを感じるようになり、「仕事がしたい」という気持ちがしだいに強くなり、仕事に復帰することを決意しました。
*1:配偶者の海外転勤に帯同するなど、海外で勤務する配偶者と生活を共にすることを目的に、通算3年間を限度に休職する制度
帰国後、会社職場の皆さんは私を温かく迎え入れてくれ、仕事も充実していました。しかし、その後に育児休暇を取得することになり、大きな不安を感じました。海外駐在から復帰後すぐの育児休職取得で、キャリアが二度止まることへの懸念があり、周りと比較して自分だけが遅れているような感覚を抱きました。
女性の先輩に相談したところ、「キャリアは後からでも取り戻せる」というアドバイスをもらい、これに背中を押されて、育児休職を取得することを決意しました。
キャリアを継続・ステップアップしていきたい。復帰後は希望を尊重した働き方に
はじめて取得した育児休職中は育児に専念しながらも、社会から取り残されるような感覚があり、しだいに家庭以外でも活躍したいという思いが強くなっていきました。当時は夫が単身赴任中で、一人で育児をする中で早期復帰を考えるようになり、育児休職5カ月(*2)で仕事に復帰することを決めました。
*2:1歳に達する日の次の4月末まで取得可能。また、入園状況次第で延長可
復帰後、最も大きく変化したのは、時間の使い方と仕事に対する意識です。育児休職前は時間を気にせず仕事に打ち込めましたが、復帰後は限られた時間の中でいかに効率よく成果を上げるかを考えるようになりました。また、自分が不在の際も業務が滞らないよう、属人化を防ぐための工夫も意識するようになりました。
復帰直後は育児時間(*3)を活用し、状況に応じて子どものお迎えで退社したり、両親のサポートが得られる日は通常勤務をしたり、その日の状況に応じて勤務時間を調整しました。現在はテレワークという選択肢も増え、子どもが体調を崩した際も対応でき、より柔軟な働き方が可能になっています。
*3:1日2時間を限度に、1回1分単位で午前と午後に各1回もしくは1日1回育児時間が与えられる
仕事と育児の両立をするなか、製品開発において責任ある仕事が増えるようになりました。これは私自身の希望によるもので、ワークライフバランスを重視して育児と家事を優先したい方もいる中で、私はエンジニアとしてのキャリアを継続・ステップアップしていきたいという強い思いがありました。会社側もその希望を尊重し、むしろ意図的に責任ある仕事をアサインしてくれました。
上司との定期的な面談では、常に希望や状況を丁寧に聞いてもらい、たとえば定時で帰らなければならない時には「途中でいいから帰りなよ」といった、心が楽になるような言葉をかけてくれました。チームメンバーも、時間的な制約がある中で細かい作業を手伝ってくれたり、上司が適切なメンバー配置をしてくれたりと、周囲のサポートに支えられています。
最近では男性の育児休職の取得も増えており、お互いの状況を理解し、サポートし合う雰囲気が醸成されています。
気持ちの切り替えでつかんだコツ。育児とキャリアの両立を支える環境とは
仕事と育児の両立において、最も大切にしていることは会社と家庭での気持ちの切り替えです。以前は子どもが寝た後も「あれをやらなければ」「これをやらなければ」と夜も仕事をし、これが体力的にも精神的にも大変であったため、現在は家に帰ったら家事・育児に集中するというマインドで取り組んでいます。完璧にはできていませんが、このメリハリをつけることを意識的に行うようにしています。
今後の目標については、当面は開発者・技術者として世の中で広く使われる製品の設計を継続していくことです。ただし、単に言われた製品を作るだけでなく、データ活用方法やソリューションの探索にも携わっていきたいと考えています。製品の企画をすることまではめざしていませんが、企画をサポートできる立場まで視野を広げたいと思っています。私自身、1つの分野を深く追求していくタイプではなく、むしろ深い知識を持った人たちをつなぎ合わせていくことに強みを持って、チームとしていいものを作り上げていけるような調整役としての役割を担っていきたいと考えています。
当社では自分がやりたいキャリアの方向性を自分で決められる環境が整っており、仕事と育児の両立は十分に可能です。ワークライフバランスを重視したい方は、子育てが落ち着いてからキャリアアップをめざすこともできます。このように個人の状況や希望に応じて柔軟に対応してくれる環境があることには、非常に感謝しています。私自身の経験を通じて、将来、後輩をまとめていく立場になった際には、同じように個々の希望に配慮した対応をしていきたいと思います。
※ 記載内容は2025年2月時点のものです
