現場で育まれた“つくる側の視点”
2011年に入社し、最初に配属されたのは市販用タイヤを開発するREタイヤ開発部(※)。設計業務の基礎を習得した頃に、仙台工場での研修が決まりました。
※ REはReplace Equipment(リプレイス・イクイップメント)の社内略号で、市販用の自動車タイヤのこと。(当時の部署名は「タイヤ技術第一部」)
当社には、「交換留学」と呼ばれる制度があり、開発部門に配属された若手社員が、一定期間、工場で研鑽を積む制度があります。約1年半、工場の技術課に赴任し、生産工程での実習や不具合対応などをこなす中で、実際に手を動かしながらものづくりの流れを学びました。
工場の人たちがどんな工夫を凝らし、どんな思いを抱えながら製品を作っているのか。設計業務ではわかりづらい現場のリアルを知ることで、「つくる側の視点」が自分の中に根づいていったように思います。工場で起きる課題に対して、設計の立場からどう支援できるかを考える日々を通じ、「開発と生産現場は密接につながっている」という実感が強まりました。
開発部門に戻ってからは、工場で学んだことを意識しながら、あらためて商品開発に注力する日々が始まりました。スタッドレスタイヤの設計では、先輩が手掛けた基本設計をもとに、金型に合わせてタイヤの各種部材の幅や構造を調整するなど、詳細仕様を決める業務を担当。
当時は現在よりもタイヤの種類も多く、サイズ展開は100種類を超えており、一つひとつに合わせて仕様を決めていくのは、相応の労力が求められました。この際、工場で学んだことを生かし、「この設計だと現場での作業が難しくなるかもしれない」といった観点を持ちながら、細部まで調整を重ねていきました。その積み重ねが、設計者としての基礎力を養うとともに、現場を意識した製品づくりの姿勢を育てることにつながったのだと感じています。
その間、工場の製造能力を増強中だったマレーシアや中国、北米の工場の立ち上げに携わる機会がありました。各工場では、現地スタッフの教育や商品立ち上げに関わり、中でもマレーシア工場には1年間滞在しています。言葉や習慣の違いに戸惑う場面もありましたが、現地スタッフと共に試行錯誤を重ねながら、ものづくりを進める過程には、難しさと同時に充実感を味わうことができました。
こうした経験を通じて設計と製造の現場感覚が身につき、ものづくりを捉える視野が広がりました。その力は、後に携わることになるセルビア工場の立ち上げ支援でも、生きています。
現地スタッフと進めた工場の立ち上げ──セルビアでの挑戦
2022年夏、セルビア工場の立ち上げ支援のため、まだ製造設備が整っていない段階から現地に入りました。
設計者として、商品立ち上げに向けた試作から量産までの生産準備業務を中心に、現地の設備に合わせた工程計画の立案や、製造スタッフへの教育など、幅広く役割を担いました。設備や製品の立ち上げ、そして人材育成を並行して進める必要があり、たいへん苦労しましたが、現地メンバーと密に連携し、一つひとつ形にしていきました。
言葉や文化、仕事の進め方が異なる中で、現地スタッフと互いに納得しながら前に進むためには、相手の考えを尊重し、冷静に対話を重ねる姿勢が欠かせません。マレーシアなどでの経験があったからこそ、セルビアでは比較的柔軟に対応できるようになっていたのだと思います。
セルビアでは、設計や技術の枠に捉われず、現場で起きるさまざまな課題に対して、必要に応じて領域を越えて関わることを心がけていました。ときには、品質保証体制の整備などにも取り組み、現地スタッフといっしょに改善を進めました。日本とセルビア、工場と本社、それぞれの立場や考え方をつなぎ、前に進める役割を果たすことにやりがいを感じました。
現地スタッフと課題をひとつずつ乗り越えていく中で、「自分が関わることで、現場が少しずつ前に進んでいく」という実感が持てたことが何よりの励みになりました。他部署では人の入れ替わりが見られましたが、現地の技術チームが誰一人退職せずに残ってくれたことも、うれしい出来事でした。
立ち上げ業務が終わり日本に戻る時に「今まで来てくれた日本人で、あなたが一番親身になって私たちのこと考え、いっしょに働いてくれた」と言ってもらえたことは、今でも忘れられない良い思い出です。現地のスタッフと対等な立場で向き合い、困っていることには手を差し伸べる──そんな姿勢が伝わっていたのかもしれません。
これまでの経験を通じて、私は「自分の仕事はここまで」と線を引くのではなく、部署や立場を越えて支援する姿勢が、現場を動かす力になると学びました。
積み重ねた経験をもとに、ものづくり全体を見渡す
現在はこれまでとは異なる業務に携わっていて、私にとっての新たな挑戦の日々です。
ひとつめは、設計支援の「モジュール開発」という業務。モジュールとは、「このタイプなら、この形や構造が基本」というタイヤの種類ごとの標準パターンのことです。それをベースにすることで、設計者は効率よく開発を進められるようになります。服で例えるなら、オーダーメイドではなく、セミオーダーのようなイメージです。過去のデータをもとに、基本となる設計の仕様を定めることで、設計プロセスの効率化や、品質の安定化をめざしています。
そしてもうひとつは、生産統括管理部に兼務で所属して取り組んでいる、原価低減プロジェクト。この業務では、購買部門、材料開発部門、製造部門など、社内のさまざまな部署と連携しながら、コストと品質の最適なバランスを探る調整役を担っています。
たとえば製造部門の担当者が「生産設備を改良すれば、生産性が上がる」と提案したり、開発者は「この材料を少し見直せば、コストが下がるかもしれない」と意見を出したり。部署ごとに重視するポイントが異なる中で、全体として最適な落としどころを見つけていくのが、この仕事の難しさであり、おもしろさでもあります。
これまで設計と製造の両方の現場に関わる中で、ものづくり全体を見渡す視野を培ってきました。今は、そうした経験から得た判断力や、現場との橋渡し役としての立ち位置を生かしながら、より多くの部署と連携して全体の質を高めていくことにおもしろみを感じています。新しい領域に踏み出した今だからこそ、これまでの経験を土台に、さらに成長していきたいと思っています。
TOYO TIREの推しポイントは?
TOYO TIREの魅力は、設計や製造などの経験を積み、ものづくりについての学びを深められることだと思います。新人時代の「交換留学」を通じて、設計だけでは見えない“つくる側”の視点を学びました。
自分が関わったタイヤを街で見かけたり、ニュースで製品が紹介されたりした時に、心から「やっていて本当によかった」と思えるんです。苦労もありますが、誰かの役に立っている実感が得られる瞬間は、何にも代えがたい達成感があります。
※ 記載内容は2025年5月時点のものです
