小学生時代の原体験からタイヤメーカーへの就職を夢見る
親の影響もあって幼い頃からクルマが大好きでした。小学生の頃はF1ドライバーを夢見て、毎週レーシングカートの練習に通っていました。走るだけではなくカートのメンテナンスも自分で行っていましたが、運転よりも部品を交換する作業におもしろさを感じていたことを今でも覚えています。
とくにタイヤ交換をした時は、まるで別のマシンに乗っているのかと思うほどブレーキ性能やコーナリング性能が大きく変化し、その違いに衝撃を受けました。その時の経験がきっかけでタイヤの魅力に惹かれ、将来はタイヤメーカーに就職したいという思いが芽生えました。
大学では機械工学を専攻し、メーカーのエンジニアをめざして就職活動に取り組みました。自分にとって魅力的な商品を扱う企業で働きたいと考えていたところ、TOYO TIREのスポーツ用ラジアルタイヤ(※)「PROXES R1R」を知りました。スポーツ用タイヤでは珍しく「主溝(太い縦溝)」がない独特なデザインに感銘を受けたことを覚えています。魅力的な商品を多く手がけるTOYO TIREに強く惹かれ、第一志望とすることを決めました。
※ タイヤの骨格を形成する「カーカス」が中心から放射線状に配置されているタイヤ
評価試験を通じて、タイヤの設計開発を支える
TOYO TIREへ入社後、タイヤの性能評価を担うタイヤ実験部に配属されました。現在は主にタイヤの耐久性を調査するとともに、路面状況などのタイヤの使用状況に応じた評価方法の開発にも取り組んでいます。
タイヤの試験というと、車両に装着して走らせるイメージを持たれるかもしれませんが、実験部では実車装着試験とは別に、試験機上でタイヤを回転させ、どの程度の負荷まで性能が維持できるかを検証しています。
300km/hの速度を超える高速回転試験や2週間連続で回転させる長距離耐久試験など、多様な試験を通じてタイヤの耐久性を評価します。平均すると1日100本のタイヤを機械で試験していますが、開発段階のタイヤは、求められる性能に応じて多岐にわたる調査項目を、サイズごとに一つひとつ検証する必要があるため、その大変さは配属前の想像をはるかに超えていました。
仕事で常に心がけていることは、試験現場でしか得られない情報をタイヤの設計開発者に的確にフィードバックすることです。そのためには、試験結果の数値だけではなく、タイヤの破損状況や破損時に発生するゴムの臭気の違いなど、定量化できない情報も含めて設計者に伝えるよう努めています。
たとえば、同じロットのタイヤで破損時に発生するゴムの臭気に違いがあれば、製造過程で素材の配合に差が生じた可能性があります。設計者が想定できていないところで性能に差が出ることもあり、試験結果のフィードバックが開発に役立つことも少なくありません。
実際に、私たちの考察をもとに設計者がスペックを変更したことで、タイヤの性能が劇的に向上した例もありました。そのような時に設計者から「ありがとう」と声をかけてもらえると、とても嬉しいですね。私たちは評価部門ではありますが、常に設計者と共にタイヤ開発に取り組んでいるという意識を持って仕事に向き合っています。
社長賞受賞に特許取得。努力がかたちになっていく
これまでの仕事で、とくに印象に残っていることが2つあります。
ひとつは、社業に貢献したプロジェクトとその関係者の功績をたたえる社内表彰制度において、優秀賞を受賞したことです。
2022年の「ニュルブルクリンク耐久シリーズ」では、当社製タイヤを装着した車両がSP10クラスで優勝を果たし、世界一過酷とされるレースで結果を出したことが社内で高く評価されました。そして、本プロジェクトに関わった他部署と共に、装着タイヤの開発に貢献したとして、性能評価を担当していた実験部にも表彰がありました。
レース用タイヤのように特殊な状況下で使用される製品の性能評価を行う場合は、既存の評価法だけでなく、現地の路面や気候に合わせた新たな評価法を考案し、実践する必要があります。
ただし、得られた結果にばらつきがある場合、それがタイヤの性能変化によるものなのか、あるいは新たな評価法の精度に起因するものなのか、明確には判断できないことも少なくありません。
そのため、原因を究明しながら、何本も同じタイヤで試験評価を実施して信頼性を見極める必要がありました。試作に対し何度も試験を重ね、確実性の高いデータを収集し、開発へフィードバックする一連のプロセスを繰り返すことで、開発と連携しながら過酷な条件に耐えうる高性能なタイヤを完成させていきました。この経験により、技術的な知識だけでなく、目標達成に向けて挑み続ける姿勢と課題に対して柔軟に対応する力が身についたと実感しています。
もう1つは、新たな試験装置を開発し、特許を取得したことです。
ハンドル操作によって横方向に発生する「横力」を調査する試験があります。その力の大きさを計測できるよう、既存設備に後付けするかたちで試験装置を改良しました。プロジェクト立ち上げ当初は設備投資に限りがあったため、費用を抑えられるように知恵を絞り、これまでに試したことのないようなアイデアも躊躇なく提案しながら進めていきました。
入社して間もない時期だったこともあり、先輩たちにはたくさん助けてもらったことを覚えています。他社が実現していない技術をかたちにして、それが特許として認められたことは、自分にとって大きな自信につながりました。
TOYO TIREの推しポイントは?
若手でも挑戦できる環境があると感じています。レース関連の仕事に興味があることを上司に伝えたところ、入社1年目から世界的なオフロード耐久レース「ダカールラリー」用タイヤの評価開発を任されました。「ダカールラリー」は砂漠や岩場などを走破する過酷なレースです。
中でも、岩場走行時に生じやすいタイヤの側面損傷に着目し、タイヤの側面だけを傷つけるような試験機の設計にも携わることができました。早い段階から大きな仕事に挑戦させてもらえたことで、何事にも粘り強く取り組む姿勢が身につきました。
※ 記載内容は2024年1月時点のものです
