市場のニーズを設計に落とし込む
トラックやバスなどの大型タイヤの開発部門に所属し、タイヤのパターン設計を担うグループでリーダーを務めています。タイヤのパターンとは、接地面やタイヤ側面に施された模様のことで、駆動・制御性能や操縦安定性など、車両の走行に大きく影響を与える重要な役割を果たしています。パターンの種類によって、タイヤの性能は大きく変わります。
たとえば、「リブ」と呼ばれるパターンは円周方向に連続した縦溝が特徴で、転がり抵抗が低く、燃費性能や静粛性に優れているため、高速バスや長距離トラックに広く採用されています。
一方、「ブロック」と呼ばれるパターンは独立した塊がトレッド(接地)面に配置されており、駆動力や制動力に優れ、雪道や泥濘路などの悪路で高いグリップ性能を発揮します。このように、パターンには多様な種類があり、それぞれの特徴を生かして用途に応じた設計が求められます。溝やブロックの形状・配置を工夫することで、タイヤの性能向上に貢献しています。
営業担当が市場で得たお客さまの要望やトレンドなどの情報をもとに、私たちは製品の開発を進めています。求められる性能に応じてトレッドパターン(タイヤが接地する面の溝や切り込み)を試作し、使用後の評価を踏まえて改良を重ねていきます。性能向上のためには、パターン設計を工夫するだけでなく、新しい素材の配合にも挑戦します。
こうした取り組みの結果、お客さまに当社のタイヤを選んでいただけることは、製品の価値を認めていただいた証であり、私たちにとって大きな励みとなります。
また、開発に携わったタイヤが実際に車両に装着されているのを見かけると、深い達成感を覚えますね。タイヤのパターンには、要求性能を満たすための設計者のさまざまな意図が込められており、同じものはひとつとして存在しません。まったく新しいものを一からつくり出すこのプロセスに大きなやりがいと魅力を感じています。
設計と製造の両輪で築く、開発者としてのキャリア
学生時代、タイヤ交換のアルバイトを経験したことがきっかけで、タイヤの構造や性能に興味を持ち、タイヤ業界への就職を志すようになりました。TOYO TIREに入社後は、約1年間、工場の製造ラインでトラック・バス用タイヤの製造に携わりました。原材料であるゴムが加工され、タイヤとして出荷されるまでの一連の工程を実際に体験できたことは、開発業務に携わる現在のキャリアにおいて、大きな財産となっています。現場で得た知識と経験が製品づくりの根幹を支える力になっていると実感じています。
工場勤務を経て、トラック・バス用タイヤの開発部門に配属され、タイヤ内部の構造設計を担当することになりました。タイヤは、表面の黒いゴムだけでなく、カーカスといわれるタイヤの骨格を形成するコード層も重要です。主に繊維や金属コードで構成され、ゴムで被膜されており、タイヤの内圧や荷重に耐える役割を担っています。これらが適切に組み合わさることで、タイヤ本来の性能が発揮されます。構造設計では、部材の配置や素材の配合を調整しながら、耐久性・静粛性・乗り心地といった多面的な性能を高い次元で両立させることが求められています。
とくに、初めて使用する素材を用いた設計では、前例のない商品を一から開発することになり、想定外の挙動や部材の不具合が発生することもあります。すべての基準を満たす製品が完成するまで、何度も試作と検証を繰り返したことを今でも鮮明に覚えています。実現可能性を探るために、工場の製造ラインに足を運び、時には部門を越えて協力を仰ぐ場面もありました。現場との連携を通じて、設計と製造の両面から製品づくりに向き合うことができたのは、大きな学びとなっています。
設計開発業務に約3年間従事した後、工場の技術部門へ異動し、品質改善や生産効率の向上に取り組みました。品質に課題が生じた際には、原因を徹底的に分析して再発防止策を講じるとともに、製造サイクルの短縮を図るなど生産性向上にも力を注ぎました。
現場では、自分1人でできることには限りがあります。そのため、製造部門をはじめとする工場の皆さんとの積極的な意見交換を心がけました。各分野のプロフェッショナルから得た知見は、新たな視点や思考方法を育むきっかけとなりました。また、現場と一体となってモノづくりに向き合った経験は、後のパターン開発業務にも大きく生かされています。
工場で培った課題解決手法を武器にタイヤ開発を深化
8年間の工場勤務を経て、ふたたびトラック・バス用タイヤの開発部門へ異動となり、現在はパターン開発を担当しています。これまで構造設計を中心に、タイヤの内部構造に長く携わってきましたが、接地面の設計にあたるパターン開発は初めての領域でした。
しかし、実際に取り組んでみると、これまの経験で培った知識やスキルが生きていると感じる場面が多くありました。たとえば、工場での課題解決の進め方──現場の声をヒントに課題を特定し、仮説を立てて検証し、解決へと導くプロセス──は、パターン設計にも応用可能であり、業務効率の向上にもつながっています。これまでの経験が、新たな領域での挑戦を支える土台となっていることを、日々の業務を通じて強く感じています。
2023年に発売されたトラック・バス用スタッドレスタイヤ「M939」の開発は、これまでの経験が大きく生かされた仕事でした。近年の暖冬傾向により、通常路面での走行が増加したことで、スタッドレスタイヤの耐摩耗性能向上に対するニーズが高まっていました。
一般的に、耐摩耗性能と氷雪性能は相反する特性とされており、両立は容易ではありません。耐摩耗性能を高めるために、パターンブロックを大きくして、剛性を上げることで過度な動きを抑制させる必要がありますが、氷雪性能を向上させるには、トレッドにサイプ(細かな切れ込み)を入れて、ブロックに柔軟性を持たせ、氷雪路面を捉える必要があります。「M939」は、この2つの性能を高いレベルで両立させることをめざして開発されました。
しかし、開発当時も暖冬に見舞われ、冬季路面での走行機会が限られていたため、改良すべき課題の抽出が難しい状況でした。そうした中でも、お客さまのもとへ何度も足を運び、走行環境や使用状況、ハンドリングの感覚などを丁寧にヒアリングしました。
開発の過程では、思うように進まず心が折れそうになる場面もありましたが、工場勤務で培った課題解決のノウハウを活用することで、一歩ずつですが、着実に前進することができました。現場の声に耳を傾け、そこから見えてきた課題を的確に捉え、根気強くパターンの改良を何度も重ねた結果、お客さまに満足いただける製品を作り上げることができました。
ユーザー向けに実施した雪道での試走会では、「旋回時の安定性や、ブレーキを踏んだ際のグリップ力の高さを実感した」と肯定的な評価をいただき、大きな励みになりました。お客さまから直接感謝の言葉をいただけることが何よりのやりがいにつながっています。
TOYO TIREの推しポイントは?
さまざまな環境で挑戦できることは当社ならではの魅力だと感じています。設計や製造現場での経験を通じて、タイヤに対して、多角的な視点から関わることができました。一つの場所に留まっていては得られないような考え方を身につけ、視野を広げることができたのは、貴重な経験です。
これらの経験は、現在の業務の基盤となっているだけでなく、今後の成長に向けた軸として大きな意味を持っていると考えています。
※ 記載内容は2023年12月時点のものです
