鋼管ビジネスの管理と拡大。リーダーとして担う、チーム全員が安心して働ける環境作り
現在、豊田通商の条鋼鋼管事業部、鋼管グループに所属する小向 里奈。この部署に籍を置きながら、グループ会社へ50%出向し、双方のグループリーダーを務めています。
「取り扱っているのは、自動車の給油管や排気管などに使われる鉄やステンレスのパイプです。 出向先のグループ会社では、豊田通商の国内外のトレーディング業務を移管・委託する形で、その鋼管の輸出入や三国間取引の管理を行っています。私の役割は、実務を担うメンバーが滞りなくデリバリーできているかの進捗確認や月ごとの業績管理、そして新規案件の相談に対するアドバイスです」
一方、豊田通商本体では、グローバルな新規事業創出を担います。
「現在は企画や調査を行っている段階です。また、現地のパートナーと共に、鋼管そのものを作る『造管事業』ができないかなども見極めています。それと同時に、国内グループ会社で培った事業モデルをグローバルに展開できないか、その可能性も探索していますね。鋼管分野を軸に、さまざまな展開を想定しながら業務を進めている状態です」
出向先では6名のチームをリードする中で、小向が大切にしている価値観が、チーム全員が安心して働ける「心理的安全性」の確保です。
「メンバー一人ひとりが心身ともに健康で、意欲的に働ける環境作りを最優先しています。そのために意識しているのは、報告・相談のハードルを極限まで下げること。悪い報告であっても、まずは『報告してくれてありがとう』と伝える。その上で、次の一手を一緒に考える組織でありたいと思っています」
自身も時短勤務を活用しており、「メンバーのサポートなしでは回らない」と語る小向。
「今のチームは、私がリーダーで皆を引っ張っていくという上下関係ではなく、同じレイヤーで共に進む『仲間』というイメージです。私一人では対応しきれない状況でも、一人ひとりが主体的にサポートしてくれているので、本当に助けられています」
さまざまな役割を担う小向ですが、業務を進める上で自身の強みとなるのは「人」にあると言います。
「人とのつながりや関係構築が好きなんです。社内外問わず、まずは自分との共通点を見つけて関係性を深める。そうして築いたネットワークは、業務上の課題解決にも活きています。
『この件ならあの人が詳しいかも』とすぐに顔が浮かびますし、そこからさらに人を紹介してもらえることもあります。人のつながりから新しい視点を得ることは、私の強みであり、仕事の突破口になっています」
グループリーダーへの挑戦。自信のなさを払拭してくれた周囲のメンバーや先輩の存在
2011年に新卒入社した小向。以来、一貫して鉄鋼分野を歩んでいますが、入社当時は苦労も少なくなかったと振り返ります。
「鉄鋼業界の部署に配属され、当時は業界全体でも体育会系の雰囲気が強い中で、馴染みのない業界用語や商習慣に戸惑い、苦労することも多かったです。
転機となったのは2年目での現在の出向先グループ会社への出向でした。現場に近い場所で働くことで、商材への理解度やGembability(※)が養われ、仕事への手応えを感じ始めました」
※ 私たちにとって大切なこころと行動を過去、現在、未来へと紡いていくものとして、2024年7月に、Humanity/Gembality/Beyondからなる豊通DNAが策定されました。
Gembalityは、「Gemba(現場=現地・現物)+Reality(現実)」の造語となっています
2015年には、豊田通商に帰任、2017年からは連続で2回、産休・育休を取得した小向。2021年に輸出担当として現場に復帰しましたが、そこには新たな葛藤がありました。
「4年間のブランクを取り戻すだけでも大変なのに、家事・育児との両立が想像以上に難しくて。また、必死に目の前の仕事に取り組む一方で、周囲は当たり前のように海外出張や駐在経験を積んでいるのに、私は行けていないという葛藤がありました。
もともと、駐在に行きたい気持ちは入社当時から強く持っていましたが、ライフイベントも大切にしたいと思い、断念したという背景があります。『輸出担当なのに海外にも行けていない私が輸出担当でいいのか』と悩みながら走っていましたね」
そんなマインドが変化したのは、帰任後のインドネシア出張がきっかけでした。
「現地で『自分の知らない世界の広がり』を肌で感じ、商社パーソンとして海外で自分の目標を成し遂げたいという使命感が芽生えたんです。『異国の地で挑戦してみたい』という野心が再燃しました」
そして2024年4月、グループリーダーへの打診を受けます。当初は「知識も経験も足りない自分に、管理職なんて務まらない」と消極的だったと振り返ります。そんな小向の背中を押したのが、2つの出来事でした。
「1つは、周囲との対話を通じて得た気づきです。『すべてを完璧にこなす必要はない。自分なりの立ち位置を確立し、最終的にチームに還元できればいい』と思えたことが、心理的なハードルを下げてくれました。
そしてもう1つが、女性の先輩社員からの言葉です。 『一回そこのポジションに挑戦してみなよ。合わなかったら降りればいいし、行くことによって見える景色は全然違うよ』と言われたんです。それなら一度やってみようと決意しました」
実際にグループリーダーになってみて、心境は一変します。
「数字に対する責任感や、最後までやり切りたいという覚悟は、このポジションに就いたからこそ強まったものです。また、時短勤務という制約がある中で、メンバーの支えを再認識したことも大きな変化でした。 子どもの急な発熱で不在にする時も、みんなが嫌な顔ひとつせずカバーしてくれるんです。
そんな恵まれた環境にいるからこそ、『メンバーに何か還元したい。そのためにはどうすればいいのか』と常に考えるようになりました。その思いが、今の仕事の楽しさにもつながっています」
これまでの恩を、今のチームへ。循環する「支え合い」の文化
今でこそリーダーとして活躍する小向ですが、若手時代には苦い失敗経験もありました。初めての大きな失敗は入社1〜2年目の頃、輸送の手配でトラックのサイズを間違え、積載できないトラブルを起こしてしまったと振り返ります。
「『一人でなんとかしなきゃ』と背負い込んでしまい、報告が遅れてしまいました。夜中に行き詰まり、恐る恐る上長に電話すると、会食帰りにも関わらず会社に戻ってきて、長年の関係各所とのつながりを駆使して、なんとか解決してくれたんです。
上司やお客様、関係各所には多大な迷惑をかけましたし、強く反省もしましたが、その背中を見て学ぶことは大きかったです。『危ないな』というセンサーが働いた時点で、すぐに一報を入れ、早めに助けを求めることの重要性を痛感した出来事でした」
一方で、自信につながった経験もあります。北米向け案件で品質トラブルが発生した際、仕入れ先の損失を回避するため、仕入れ先とともに、顧客と粘り強く調整を行いました。
「仕入れ先の担当者と現地へ飛び、不具合箇所の除去工程を現地現物で確認しました。結果、損失を最小限に抑え、顧客への供給も守ることができたのです。『三方よし』な解決ができ、商社パーソンとして介在する価値や、『人と人をつなぐ仕事』の醍醐味を味わいました」
失敗も成功も、全ては周囲の「人」に支えられてきたと小向は振り返ります。
「1年目に落ち込んだ時、支えてくれたのは同期や近くにいたチームメンバーでした。話を聞きに駆けつけてくれたり、お菓子を差し入れて励ましてくれたり。そんな細やかな気遣いに触れ、『自分には仲間がいる』と心強く感じさせてくれました。
今の出向先にも、新人時代の私を育ててくれたメンバーがたくさんいます。今は、そんな仲間や会社に対して、『何か自分ができることはないか』という考えを常に持っています。恩を組織に返していきたいという思いが、私の原動力です」
「支え合って上昇する」。共創が根付く風土で描く、未来のチャレンジ
現在、小向が感じている仕事のやりがいは、ニッチな業界だからこその「開拓者」としての高揚感、そしてチームの一体感です。
「自動車向けの鋼管は、本部内でもニッチで規模感も小さい領域ですが、利益はしっかり生めるおもしろい業界です。これからグローバルにおいて新しい事業を作り出す、そのスターティングポイントにいるおもしろさを感じています。
また、メンバー全員が『鋼管の世界をもっと増やそう、もっと盛り上げていこう』という同じ熱量で走っている一体感の中で仕事ができることが、何よりのやりがいです」
今後のビジョンについて、まずは組織として、トレーディングの枠を超え、自らが主体となって事業を創造することをめざしています。
「自動車鋼管の分野では、まだ自分たちがマジョリティを取って主体的に何かを作り上げるという段階には到達できていません。一部マイナー出資などは行っていますが、未開拓の世界です。
だからこそ、まずは中期的な目標として、自分たちで事業を作り上げ、その管理まで担える『事業主体者』へと進化したいと考えています」
個人としては、2つの思いを持っていると語ります。
「1つは、文化や言語が異なる異国の地でチームを作り上げる経験がしたいという気持ちです。駐在にチャレンジしたいという思いを叶えながら、『人とのつながり』という強みを活かして貢献したいと思っているんです。
また、現地では鋼管以外の商材も扱うことになると思うので、それらを組み合わせて新しい価値を生み出し、実績を残したいと考えています。
もう1つが、社内で女性管理職がまだ多くはない中で、1つのキャリアサンプルになること。私自身、周りに同じような環境で管理職をしている女性社員がおらず、悩みを共有できずに苦労しました。
だからこそ、後輩にとって『あんな先輩もいたな』と思い出して気軽に相談できるような存在でありたいと考えています。後輩がキャリアを考えるハードルが少しでも下がればと、密かに使命感を持っています」
豊田通商の中で長い時間を過ごしてきた小向。だからこそ見える風土の魅力を次のように語ります。
「良くも悪くも本当にいい人たちが多くて、優しいんです。『お互い支え合いながら上昇していこうよ』というマインドを持った人たちばかりです。中途入社の方も誰かわからないくらいすぐに馴染める、この『人の魅力』は当社ならではだと思います。
最近では、『みんなで会社を大きくしていくために何ができるか』という課題意識を持って、中堅・若手が中心となって動くことが増えています。市場開拓を行うタスクフォース活動など、自分の業務とは直接関係ない領域でも『将来伸びるから』とみんなで調べる活動が始まっています。それを上司や本部が容認し、推奨してくれる環境も素晴らしいなと感じています」
多くの支えを糧に、グローバルな事業創造を牽引するリーダーへ──小向はこれからもチームと共に、未来を切り拓いていきます。
※ 記載内容は2025年12月時点のものです

