「昨日の自分に負けない」想像力とプロフェッショナル意識で切り拓く
豊田通商のモビリティ素材事業統括部。この部署は、自動車OEMや部品メーカー向けに、鉄鋼メーカーや材料メーカーから仕入れた素材を加工・供給する事業を展開しています。その中で、中川は中国広州にある従業員約220名の国有企業とのジョイントベンチャーに出向し、営業部部長として活躍しています。
「当社のミッションは、金属素材分野における素材革命や機能変革の先導者として未来の社会に貢献することです。ビジョンとして、とくに私が出向している会社では中国およびグローバルでモビリティ素材業界のリーディングカンパニーになることをめざしています」
営業部には13名のメンバーが所属し、出向メンバーを除く全員が中国人スタッフ。中川は、メンバーの育成教育から顧客・仕入れ先との折衝、現業ビジネスの深化と進化、新規ビジネスの探索、社内ガバナンス強化から製造現場改善など、幅広い業務を担当しています。
「中国では今、主要な顧客である日系自動車メーカーが苦戦を強いられていて、われわれの事業体も厳しい局面を迎えています。そのため、一般的な材料加工やトレーディングの枠組みを超えて、新たな付加価値を生み出すことを日々現地スタッフと一緒に考えています。
とくに、国有企業とのジョイントベンチャーという環境下では企業文化や価値観の違いが大きく、意思決定には多くの時間と根気が必要になります。物事を決めるにも時間がかかりますが、パートナーと協議をしながら正しい姿を追求し、チーム一丸となって進んでいけることがこの仕事のやりがいです」
こうした環境で仕事をする上で、中川は2つの価値観を大切にしています。
「1つめは『昨日の自分に負けない』という向上心です。新入社員の時から意識していることで、明日の自分は今日の自分より何か成長しているという意識を持ち続けています。2つめはプロフェッショナルの意識です。何事も一人称でやりきる気持ちを持つ。どんな業務や環境に置かれても、自分の世界に限界を決めずにその領域のプロフェッショナルになるという想いがあります。
また、想像力を養うことも重視しています。なぜこのような依頼をお客さまや仕入れ先が言っているのか、何に困っているのかを想像して仮説を立てて理解していく。その想像力を養うためにも、最低限の知識と人間関係が大事と感じています。周囲の自身への期待値を理解し、応える。それを上回ることを心がけています。商社の仕事は想像力の上に成り立っているのかと考えています」
自動車素材業界で築いてきた、挑戦と成長の軌跡
学生時代、経済経営学部で学びながら部活動や短期留学、障害者バスケットボールのコーチなどさまざまな活動に取り組んでいた中川。その経験を通じて、自身の価値観が大きく変化していきます。
「さまざまな環境に身を置く中で、自分の中の固定概念や価値観が徐々に広がっていきました。そこで、国境や業界にとらわれず、さまざまな背景を持った人たちと共にビジネスを創り上げる仕事に興味を持ちました」
2012年、豊田通商への入社を決意します。当時、同社は自動車事業を軸足としながら、他領域への伸長・変革を進めているところでした。
「若手社員からスタートアップ的な勢いを感じましたし、快活でチャレンジ精神旺盛、それでいて気張らず温かさも持ち合わせている先輩方が多いという点に惹かれました。この人たちと働いてみたいと単純に思いました」
入社後は一貫して自動車素材業界に携わり、1〜3年目は国内自動車鋼板営業部署で大手OEMと鉄鋼メーカーの橋渡し役を担当。その経験は、今でも鮮明に記憶に残っています。
「入社3カ月くらいで、大ベテランの方から『どうなっているんだ!』と電話で叱られたこともありました。ラインが壊れて生産停止になりそうな日々が続き、深夜にトラックの進捗を仕入れ先と電話で確認したり、朝一の入荷を物流会社と一緒に見届けたり。まさに豊田通商の現地・現物を体感しました。
そうした苦労を経験する中で『絶対にサプライチェーンを切らさない』という豊田通商の仕事への姿勢を学ぶことができました。大ベテランの方とは、最終的に退職の送別会に呼んでいただけるまで信頼関係を深めるなど、現場の方との関係性を築けたことも大きな財産になっています」
4〜5年目には中国広州に実習生として派遣。副部長として営業スタッフの教育に従事しつつ自身も業務開拓を行っていました。
「まだ4年目ではあったものの、日本の豊田通商営業部門の代表として社内外から見られる中で甘えは許されず、徐々に責任感が醸成されていくのを覚えました。
また、マネジメント層のお客さまと話す機会も多く、自動車製造業界や自身のコイルセンター業界について深く考えるきっかけにもなりました」
6〜9年目は名古屋で北中米での合弁事業立ち上げに携わり、4年間で100億円以上の投資関連プロジェクトを経験。その後、新規事業創出を目的とした社内公募のプロジェクト「TIVP(※)」にも参画します。
「既存事業の幅出しが課題となる中、上司・先輩3名とチームを組んで応募しました。内容としては、日本の金型業界の優れた技術をいかに復興させビジネス化できるかという企画です。プレゼンテーションが評価され選出され、現在も国内でプロジェクトが進んでいます」
※ Toyotsu Inno-Ventures Project TIVPのプレスリリース
再び立つ広州の地で──営業部長としての事業発展と人材育成の使命
2021年、中川は中国広州の鋼板加工事業体への再赴任を命じられます。北中米関係の業務に携わり、社内ベンチャープログラムを通して新たなビジネスの兆しを感じていた中で、以前と同じ拠点への赴任は想定外の人事でした。
「正直、非常に珍しい人事でショックでした。実習生として4年前に経験した拠点だったこともあり、自己成長と環境変化をほぼ同義と捉えていた私にとって最初は納得できないものがあり、生意気にもすぐに役員や部長との面談を申し入れました」
中国の会社は鋼板加工事業体としてもグローバルで最大規模に成長し、設備増強や新技術導入の過渡期にありました。これまでの経験を活かした立ち上げ支援への期待と、将来的な経営層としての活躍を見据えた人事だったことを説明されたと振り返ります。
「役員や部長と1時間ずつ面談の機会を設け、この拠点に対する想いや意義、私への期待について丁寧に話してもらい、納得したことを覚えています。そして、4年ぶりに広州に戻ると、営業部や製造部には知っているスタッフもたくさんいて、温かく『お帰りなさい』と迎えてくれました。このとき、何があってもこの会社に尽くそうと心に決めました」
そして2023年、同事業体で日本人として初めて営業部長に就任します。13名の部下を持つマネージャーとして、中川なりのマネジメントスタイルを確立していきました。
「中国は上下関係がしっかりしている文化ですが、私は比較的スタッフと年齢が近いこともあり、近い距離感で接するように心がけています。とくに大切にしているのは、メンバーの話をじっくり聞く姿勢と『教えてほしい』スタンスを見せることです。
また、自主性を育むために『なぜそう考えているのか』『次はどうしたいのか』を、答えを直ぐに言わず、自身で考えさせることを意識しています」
マネジメントの立場になり、意識も大きく変化します。
「若手の頃はメンバーの意見を吸い上げることが中心でしたが、今は自身でストーリーを組み立て、最終意思決定まで導くポジションになり、自身も経営の一部に携わっています。
また、年を重ねるにつれ自己成長から、会社や仲間との成長へと自身のベクトルが変わってきました。この会社が5年後、10年後、20年後も発展し続けるためには、人材育成が最も重要だと強く感じています」
4年目を迎えた現在、新規設備投資や工場の省人化、中国初ビジネスの種蒔きから他国との連携等、幅広い経験を積んでいます。
「中国ではアジャイルな開発・提案が好まれる環境で、さまざまなビジネスチャンスがあります。220名規模の会社で工場長や社長と共に人事や財務、製造、営業など多面的な知識を活かした提案ができることは大きな醍醐味です。
事業の持続可能性を考えると、結局は人材が鍵となります。そのためにも、部下の育成により一層力を入れていきたいと考えています」
挑戦し続ける価値観が未来を変える。モビリティ素材事業の現場から世界へ発信
モビリティ素材事業統括部に所属する中で、中川は部門ならではの魅力も感じています。
「23拠点の海外事業体を持ち、各拠点で経営やマネジメントに近い経験ができる環境が整っています。製造現場を持っているため、お客さまと現場に近い視点で改善提案やDX、スマートファクトリー、新素材提案などさまざまな切り口での提案が可能です。
また、鉄鋼メーカーや材料メーカーとの取引があるため、非常にダイナミックで規模の大きい提案ができることも魅力です」
さらに、今後のキャリアについて短期的な目標と中長期的な目標を描いています。
「短期的には、中国ビジネスにおいて、上海、天津、成都など広範な部門のメンバーと密に連携を取りながら中国全土として何ができるかを考え、現地発信のビジネスを展開していきたいと考えています。
中長期的には、製造業界全体により大きな貢献ができないかと考えています。とくに、当本部が注力しているグリーンスチール事業、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーといった分野や日本の優れた技術を世界に広めることに興味があります。そこに当社ならではの付加価値をプラスして、製造・素材業界をさらに盛り上げたいですね」
最後に、社内の中堅メンバーおよび若手メンバーに向けて、中川自身の経験を踏まえたメッセージを送ります。
「常に挑戦し続けてやり抜く気持ちを大切にしてほしいと思います。今はわからなくても、いつか自分の糧になると信じて、目の前で起きていることを一人称でやり抜いてください。
どの分野・業務でもプロフェッショナルな気概を持ち、『この分野は任せてください』と言える存在になることが、結果的に周囲の信頼につながります。一つひとつの経験、点と点がいつか線になり、新たなビジネスのきっかけにもなります。
われわれのビジネスは変革期を迎えています。新たな価値創造戦略を作っていく必要があります。お客さまや社会が求めているものを常に考え続け、より良い未来、社会に貢献できるビジネスを一緒に作っていきたいと思います」
※ 記載内容は2024年11月時点のものです

