CEの実現に向けて、多様なバックグラウンドを持つメンバーがイノベーションを推進
100年に一度の大変革期を迎え、循環型静脈事業の重要性が高まる自動車産業。豊田通商でも、リバースサプライチェーンの仕組みを次世代自動車のライフサイクルに適用する取り組みを進めてきました。
このような中、当社は「循環型静脈」を含む7つの重点分野を整理、さらに成長戦略を加速する目的で2024年4月に組織改編を実施し、サーキュラーエコノミー本部を新設しました。中でもリバースサプライチェーン事業部では、動静脈が連携したバリューチェーン構築をめざし、「CO₂を減らす、なくす、CO₂から創る」をキーワードに資源循環の取り組みを深化させます。
宮城:豊田通商は、限りある資源の有効活用をめざし、ELV(使用済み自動車)の車両回収と解体、部品の適正処理による再資源化など、50年以上にわたり自動車周辺のリサイクルビジネスを推進してきました。これまではさまざまな部署が独立してリサイクル事業に取り組んでいましたが、昨今の再生材ニーズの高まりによりお客様からの問い合わせも多くなり、一元化してまずは駆け込み寺の役割として2022年に立ち上げられたのが、私が所属するCEイノベーション室です。
近年、自動車業界では、製造・廃棄後に適正に処理するリニア型から、リサイクル材を新車製造に取り入れるサーキュラー型エコノミーへの移行が求められています。当室では、モノづくり側が使用可能な再生材に仕立てるために必要な技術調査、ビジネスモデルの構築などをトヨタグループのメンバーと共に仮説立案や検証を進めています。
また、自動車リサイクル分野におけるバッテリーリサイクル技術は発展途上です。今後、電気自動車の台数が増加することを見据え、法律によりリサイクル率が定められるなどの外部環境も考慮しつつ、自動車バッテリーのリサイクルに関する新技術の調査や実証にも力を入れています。
松本:当社では、中期経営計画において循環型静脈戦略を含む6つの注力事業とプラスアルファ(+α)事業の7つの重点分野を掲げています。4月に行われた組織改編では、循環型静脈戦略にさらに注力し、循環型社会を先導するという強い意志が込められています。
私は現在、リバースサプライチェーン事業部のバッテリー・3Rグループに所属し、バッテリーリサイクル市場や競合他社の分析、バッテリースクラップのサプライチェーンやバッテリーリサイクル技術、法規制、協業パートナーの調査のほか、事業モデルの企画、差別化戦略など、バッテリーリサイクル事業の企画に取り組んでいます。
江間:私はCEイノベーション室で、CEにおける動静脈連携の推進を担当しています。トヨタグループ各社のメンバーと協力しながら、協調領域と競争領域を明確にし、自動車業界全体のサーキュラーエコノミー(CE)実現に向けた課題の抽出と解決策の実証、仲間づくりを進めています。
これと並行して、再生可能な部品を効率的に解体するための1次解体工程の合理化や、PIR(ポストインダストリアルリサイクル)材の活用検討も行なっています。
現在、リバースサプライチェーン事業部では、トヨタグループ各社のメンバーやキャリア入社者含め、多様なメンバーが活躍しています。
宮城:私は2009年に入社し、鉄鋼原料部でスクラップトレーディングの国内営業や、中国での事業体の立ち上げなどに従事しました。その後、アメリカの現地法人へ赴任し、スクラップ加工事業体でマネジメントに携わり、帰国後は当時の金属資源第一部へ。プロジェクトマネージャーとして新規スクラップの獲得やメーカーとの協業による中古品を活用したモノづくりを推進しました。
CEイノベーション室には、2022年の発足時から所属しています。現在、当室に在籍する26名のメンバーのうち、私や江間を含む7名が専任者です。
松本:私はプラントエンジニアリング企業でキャリアをスタートし、現場電気施工管理や電気設計、エンジニアリングマネージャー、プロジェクトマネージャーなどを経験しました。
転職を考え始めたのは、8年目に新事業探索チームに参加し事業創出のおもしろさを知ったことがきっかけでした。エンジニアリング企業のような受注産業では、アイデアを具現化し新しい事業を創出する機会が非常に限られていたため、常にダイナミックに事業展開する商社の魅力に引かれ、2022年に豊田通商に入社しました。
リバースサプライチェーン事業部は、CEイノベーション室とバッテリー・3Rグループ含め、6つのグループから構成されています。このうち、バッテリー・3Rグループには10名が所属し、うち1名が兼務者です。
江間:私は2014年に現在の株式会社デンソーに新卒で入社し、主に接点・コネクタの技術開発と品質対応に携わってきました。静脈側でCEの実情について深く理解するために、2023年9月から研修出向という形で当社に参加し、現在は主任を務めています。
接点・コネクタは、機能として「着脱」できることが求められることがあります。現在取り組んでいる解体工程の合理化や、リサイクル・リユースを推進する上で、「着脱」という観点が活かせる場面があるのではと感じております。
共創でめざすサステナブルな未来。リバースサプライチェーンの構築にワンチームで挑む
リバースサプライチェーンの仕組み構築をめざすリバースサプライチェーン事業部。新たな価値を創出するために、大切にしていることがあります。
宮城:循環型静脈事業を推進するために、私たちが常に意識しているのが“協調”です。各企業が独自性や競争優位性を保ちつつも、効果的な協力関係を築くことを心がけてきました。「一緒にやりましょう」をスローガンに、互いに歩み寄り、積極的な会話に努めています。
具体的な成果があらわれるのはこれからですが、組織改編後、江間をはじめとする出向者を通じて動脈側と静脈側のコミュニケーションが深まり、相互の意識改革が進んでいます。以前は廃棄物の適正処理や再資源化を豊田通商が一手に担っていましたが、CEの実現に向けて両者が一体となって取り組むべきだと考えるようになりました。これは大きな前進です。
CEイノベーション室が発足して約2年。現在はCEの事業化に向けて課題を洗い出し、その解決に向けた取り組みが進められています。
松本:リサイクル業界では、材料を購入する側が「この価格で廃棄物を買い取ります」と見積もります。これは、製品やサービスを提供する側が価格を設定する一般的なビジネスモデルとは真逆のアプローチです。このような特殊な商慣習が、動脈側と静脈側の連携をいっそう複雑にしていると感じます。
江間:良質な材料を仕入れ、優れた製品をつくるのが動脈側であるメーカーの役割です。それとは対照的に、静脈側の豊田通商は、不安定な質と量の廃棄物を、適正に加工して再利用可能な資源へと生まれ変わらせなくてはなりません。
同じゴールを共有しているものの、出発点が異なるため、考え方も進め方も正反対です。まずは両者間にあるギャップを埋めていくことが重要だと考えています。
宮城:現在、当室で活躍するトヨタグループからの出向者は8名に上ります。互いの言語を理解することから始め、この数年でようやく両者の歩調がそろってきました。現在は、トヨタグループを中心に社内外のメンバーがワンチームとなって循環型静脈戦略を推進するための体制構築を進めているところです。
圧倒的なスピード感が強み。気運の高まりを追い風に豊田通商だからできるCEの実現を
新たな動静脈連携の実現をめざして、トヨタグループ内の体制構築に努めてきた宮城。同時に、他産業との連携の可能性も模索してきました。
宮城:循環型社会は自動車業界だけでは実現できません。業界での資源循環に関する考え方について意見交換を重ねてきました。
「一緒に議論しましょう」とただ話を持ちかけるだけでは、なかなか連携には至りません。具体的なプロジェクトの骨子をもとに、実際に手やモノを動かしながら実証する共同作業を提案するなど、協調できる仲間づくりを進めています。
松本が冒頭で触れた通り、循環型静脈戦略は当社が定める重点分野のひとつです。当該分野への投資が拡大されるなど、カーボンニュートラル(CN)やCEに向けた気運がここ数年で顕著に高まっていることを感じています。
一方、入社以来、バッテリーリサイクル事業の企画や、技術・パートナー企業の探索に取り組んできた松本。トヨタグループ特有の先見性を実感していると言います。
松本:産業廃棄物処理を手がける関連会社と共に、バッテリーのリサイクル設備のパイロットプロジェクトを進めています。これはバッテリー・3RグループとCEイノベーション室が分離する前から取り組んでいるもので、私たちがそのバトンを引き継ぎました。
宮城らと密に連携し、CEイノベーション室が発掘した新事業の種をビジネスとして具体化するのが私たちの役割。現在は、バッテリー廃材の調達、加工、再利用に至る一連の事業化をめざしています。
未来の事業に早い段階から先駆的な投資を行い、これを長期にわたり戦略的に育成するのが当社らしさ。そこにトヨタグループの競争優位性を感じています。
豊田通商に着任して約9カ月になる江間。社外出向を通じて、静脈側ならではの経験を積んできました。
江間:慎重に検討を重ねながら物事を進めるメーカーでは、確実性の高いプロジェクトだけが進むという長所があります。ただその反面、プロジェクトが途中で座礁する場面を何度も目にしてきました。
一方、当社では業務プロセスや意思決定のスピード感が圧倒的に速いと感じます。何事もまずは踏み出すことの重要さを、ここに来てから日々学んでいるところです。
協調と多様性が生み出すシナジー。循環型社会を先導する存在をめざして
人・社会・地球との共存共栄を図り、豊かな社会づくりに貢献する価値創造企業であり続けるために。豊田通商の循環型静脈戦略の可能性について、3人はそれぞれ次のように展望します。
松本:バッテリーリサイクルは希少金属の再利用による資源の節約だけでなくライフサイクルアセスメントの観点から、CO₂を削減する点で大きな付加価値があります。
すでに希少金属再利用の義務化を進める国もあり、外部環境としてもリサイクル事業創出の機運は高まっていると考えています。
江間:静脈側で得た知見を動脈側にどうフィードバックしていくかが、私の目下の課題です。現時点で豊田通商が対話できているのは、循環型静脈戦略に協力的なメーカーの一部のメンバーに限られています。さらに輪を広げるためにも、まずは動脈側が要求を提示しやすい環境を整えることが必要だと考えています。
宮城:今後はアウトプットにこだわっていくつもりです。協調による成果を実績として残し、連携を活性化することをめざしています。リーディングサーキュラーエコノミープロバイダーとして、当社が循環型社会を推進する存在になることが目標です。
転職者、出向者としてそれぞれ活躍する松本と江間。豊田通商でリサイクル事業に取り組む魅力について次のように話します。
松本:詳細はまだ公開できませんが、バッテリー・3Rグループでは現在、さまざまなプロジェクトが進行中です。新しいビジネスの創出に携わりたいと考えている方にとって、非常に挑戦しがいのある職場だと思います。
また、多様性を尊重する文化が根づいているのも、豊田通商の魅力です。さまざまなバックグラウンドを持つ人と物事を多面的に分析し、1人では気がつけない価値をチームで発見し、イノベーションにつなげるというコンセプトが体現されており、異なる価値観を受け入れる土壌が醸成されています。
江間:私が以前所属していた技術開発部門では、おのおのの専門性などから業務が属人化する傾向が見られました。一方、リバースサプライチェーン事業部では、協調性を重視し周囲を巻き込む業務アプローチが一般的です。技術開発とは異なるおもしろさとともに、チームシナジーが生まれる可能性を実感しています。
すべての廃棄物を、資源に。循環型社会の実現をめざして、リバースサプライチェーン事業部の挑戦は続きます。
※ 記載内容は2024年6月時点のものです

