自動車への愛が、製造業という道と研究室での失敗が育てた力を紡いだ
子どもの頃から、とにかく自動車が好きでした。その気持ちは大学生になっても変わらず、進路を選ぶ際にも「自動車に関わる仕事がしたい」という思いが軸になっていました。工学部の応用化学科に進んだ私は、高分子材料の研究室でポリウレタン(プラスチックやゴムの一種で、自動車のシートや断熱材などにも広く使われる素材です)の研究に取り組んでいました。
研究室での日々は、失敗の連続でした。実験がうまくいかないことがほとんどで、そのたびに「なぜ失敗したのか」を考え、原因を推定し、次にどうするかを組み立てて、また実験に臨む。そのサイクルを何度も繰り返していました。そうして試行錯誤を重ねた末に実験が成功したときの喜びは、今でも鮮明に覚えています。結果だけを求めるのではなく、プロセスを丁寧に見直していく習慣は、この研究室での経験が土台になっていると思います。
大学時代はもうひとつ、4年間続けたアルバイトも大切な経験でした。カー用品店でのアルバイトです。好きな自動車に関われるという理由で始めたのですが、接客を通じてさまざまな知識が身につき、日々が勉強の連続でした。特に印象に残っているのはクレーム対応の場面です。最初はご不満を抱えて来店されたお客様が、最後には笑顔で帰っていかれたとき、「人と向き合うことの大切さ」を実感しました。あの経験は今でも自分の中に残っています。また、車の運転が好きだったので、休日には友人を誘って遠くまでドライブに出かけることもよくありました。
就職活動では、子どもの頃からの「自動車が好き」という気持ちを素直に軸にしました。自動車そのものや自動車部品を製造する企業を中心に選考を受け、ものづくりへの興味も重なって、製造業への就職を目指していました。自動車の内装部品や足回り部品のメーカーからも内定をいただきましたが、最終的に入社を決めたのは、自動車の心臓部とも言えるエンジン部品を製造している企業でした。エンジンという「要の部分」に携われることへの強い興味が、決め手になりました。上場企業でもあったことも、安心感につながりました。また、その会社では一部に樹脂製品の取り扱いもあり、大学で学んだ高分子材料の知識を多少なりとも活かせるのではないかと考えたことも、背中を押した理由のひとつです。
「現状把握こそが真因への近道」20年の生産技術キャリアで学んだこと
前職では生産技術部に所属し、約20年にわたってものづくりの現場を支えてきました。入社から10年ほどは、新規の軸受け製品(回転する機械部品を支え、摩擦を減らす部品)の製造に必要な設備の手配や、製品を安定して作るための生産条件を探り出す仕事を担当していました。その後はダイカスト(溶かした金属を金型に流し込んで成形する鋳造技術)のラインを担当するようになり、工程の検討から設備の手配、工程の整備、そして良品を安定して生産するための条件出しまで、ライン立ち上げの一連のプロセスを幅広く手がけてきました。
今でも強く印象に残っているのは、品質不具合によって不良品が大量発生した時の対応です。問題が起きたとき、私がまず取り組んだのは「現地現物での徹底的な現状把握」でした。実際に不良品を切断し、断面を観察したり、内部のガス量を調査したり、寸法を測定したりしながら、不良がどの部位で発生しているのかをマップ化して整理していきました。さらに、不良が発生した時の生産条件を洗い出し、良品が出た時の条件と比較することで傾向を分析。その結果をもとに再現試作を行い、現象を確認するという手順で調査を進めました。
一番苦労したのは、再現トライを何度も繰り返しながら要因を一つひとつ潰し込んでいく作業でした。仮説を立て、試作し、結果を見てまた仮説を修正する——その繰り返しは根気のいる作業でしたが、地道に続けることで早期解決につながりました。この経験を通じて痛感したのは、「現状把握でどれだけ真因に迫れるかが、問題解決の鍵を握っている」ということです。焦らず、まず事実を丁寧に集めることの重要性は、その後のキャリア全体を通じて私の仕事の軸になっています。
そんなやりがいのある仕事でしたが、年月が経つにつれて、ある変化を感じるようになりました。工場内に物理的なスペースがなくなり、新規ラインの設置が難しくなっていったのです。「このライン立ち上げが終わったら、次からは改善業務が中心になるのかもしれない」——そう感じた時、心の中に「もっとスケールの大きい生産準備をしたい」「ダイカストの技術をさらに高いレベルに引き上げたい」という気持ちが芽生えてきました。迷いはありませんでした。スキルアップしたい、もっと多くのことを経験したいという思いが、転職を決断する背中を押してくれたのです。
前職経験を武器に、何ヶ月も決まらなかった課題をついに動かした瞬間
現在は高浜工場の生産技術部に所属し、産業車両用モータの生産ラインを新設するプロジェクトに取り組んでいます。これはBCP(事業継続計画)対応として立ち上がった重要なプロジェクトで、私はその中でもダイカストライン——ロータコアという部品にアルミを高圧で流し込んで成形する自動化ラインの立ち上げを担当しています。
レイアウトの検討から始まり、設備の仕様決め、発注、設置、工程の整備、そして良品を安定して生産するための条件出しまで、一連のプロセスをスルーで対応していく予定です。担当ラインのメンバーは6人で、2人1組を組んで進めています。設備と設備の間をつなぐ搬送部分の仕様や全体としての統一性については、メンバー間で密に情報共有しながら認識のずれが生まれないよう細心の注意を払っています。私はチームの中で相方へのアドバイスや指示も担うなど、いわばリード役として動いています。
このプロジェクトの中で、特に印象深かったのが原材料の仕様を巡る一件です。何ヶ月もの間、仕様の方向性が決まらずプロジェクト全体が足踏みをしている状況が続いていました。そこで私は、前職でダイカスト関連の生産準備に携わってきた経験をもとに、原材料のサイズや形状について具体的な提案をしました。さらに、前職時代からつながりのあるメーカーに声をかけると、その形状仕様に快く対応してもらえることがわかり、調達面でのめどもつきました。
関係部署と連携しながら仕様を固め、最終的には役員への報告の場で承諾をいただきました。コスト面での懸念や将来的な方向性についての意見もいただきましたが、提案そのものは受け入れてもらえた。あの場に立ったとき、前職で積んできた経験が確かにここでも通用すると実感できた瞬間でした。
一方で、苦労していることもあります。設備の仕様を検討する際、生産技術部の立場として最優先すべきは「安全な設備を提供すること」です。ただ、安全は当たり前のこととして、現場からは作業性や保全性(設備を維持・管理しやすいかどうか)も同時に担保してほしいという要求があります。限られた予算とスペースの中でそのすべてを両立させることは、決して簡単ではありません。
現在は製造部門や保全課と協議を重ねながら仕様を詰めています。双方の視点から折衷案を提案してもらえることもあり、毎回多くの気づきを得ています。こうした現場との対話の中で学んでいることを、次の設備検討にしっかり活かしていきたいと思っています。
「責任ある仕事を任せてくれる」環境で描く、技術者としての未来
現在取り組んでいるモータラインの生産準備(製品を量産するために必要な設備・工程・品質基準などを整えるプロセス)を通じて、まず目指しているのは、この一連の流れをしっかりと自分のものにすることです。今は先輩や上司のサポートを受けながら進めていますが、次の案件では一人で生産準備を完遂できるようになりたいと考えています。
そしてその先に見据えているのが、海外工場への技術提供です。日本から輸出した設備が海外の工場で稼働していますが、品質不具合が発生したときに的確なアドバイスを行い、早期解決へ導くことが私の役割だと思っています。設備が故障したり改造が必要になったりした場合には、設備メーカーと海外工場をつなぐ橋渡し役も担いたいと考えています。また、現地で稼働している設備は導入から10年以上が経過しているものも多く、最新の設備仕様を紹介することで、更新のタイミングに役立ててもらえればとも思っています。日本側で良い結果が出た加工条件や工程についても、積極的に情報共有していきたいですね。こうした活動を通じて、海外工場の生産性や品質を底上げし、会社全体の収益確保に貢献することが、私の中期的な目標です。
さらに長期的には、リーダーとして若手の育成やチームのマネジメントに挑戦したいと思っています。このビジョンを持つようになったのは、前職でのマネジメント経験がきっかけです。当時、中堅メンバーを一人前に育て上げるまでには相当な時間と労力がかかりました。しかし育成が実を結び、スキルの高い人材がグループ内に増えたことで、仕事のスピードが格段に上がり、遅れの挽回や残業の削減にもつながったのです。あのときの経験から、人を育てることの大切さを改めて実感しました。個人の力には限界がありますが、チーム全体の底上げができれば、組織として生み出せる価値はまったく変わってくる。そのことを肌で知っているからこそ、ゆくゆくはマネジメント職としてその経験を存分に活かしたいと考えています。
最後に、入社を検討されている方へお伝えしたいことがあります。この職場には、社内の各種教育制度や資格取得支援が整っており、少人数制のグループ体制のなかで上司や室長とも相談しやすい環境が整っています。部内だけでなく、事業部を越えた協力体制があることも、ここで働く大きな魅力のひとつです。また、年間の休日日数もしっかりと確保されているので、仕事とプライベートのバランスを保ちながら長く働ける職場だと感じています。生産技術の経験をお持ちの方であれば、経験の深さを問わず歓迎します。変化を恐れず新しいことに挑戦し続けられる方、誰とでも気軽にコミュニケーションが取れる方、協調性を持って仕事に臨める方にとって、ここはきっとやりがいを持って活躍できる場所です。「責任ある仕事を任せてもらえる」「挑戦できる環境がある」——この言葉こそが、私がこの職場で感じているやりがいそのものです。ぜひ一緒に働きましょう。

