バイト先で出会ったフォークリフトが、豊田自動織機への入社を決めた理由
学生時代は電気電子を専攻し、プラズマの計測に関する研究に取り組んでいました。実験データと向き合いながら地道に研究を進める日々の中で、モノをつくること、仕組みを解き明かすことへの楽しさをより強く感じるようになっていきました。
アルバイトは塾講師と酒屋を掛け持ちしていました。塾では生徒一人ひとりに合わせてわかりやすく伝えるスキルが鍛えられましたし、なかなか理解してもらえないときも粘り強く向き合う忍耐力も身についたと思います。この経験は、社会に出てからも「人に伝える」という場面で活きている気がしています。
就職活動を始めた当初は、正直なところ自分が何をやりたいのかはっきりしていませんでした。そこで改めて自分自身を見つめ直し、「自分とはどういう人間なのか」を分析するところからスタートしました。そこで浮かび上がってきたのが、子どもの頃から車やバイクが好きだったという気持ちと、モノをつくることへの強い関心でした。この二つを軸に、自動車関連企業の設計業務に携われる仕事を中心に企業探しを進めていきました。
豊田自動織機という会社を知ったのは、酒屋のアルバイト中のことでした。倉庫内を動き回るフォークリフト(荷物の運搬や積み下ろしに使われる産業用車両)を目にしたとき、「これをつくっている会社はどこだろう」と自然と興味が湧いてきました。物流の現場を支える縁の下の力持ちのような存在感に、思わず引き込まれました。調べていくうちに、産業車両やコンプレッサー、織機機械など、世界シェアでトップクラスの製品を複数手がけている企業だとわかり、その技術力の高さと企業としての信頼感に強く惹かれていきました。
入社を決めた理由はいくつかあります。まず、大学の研究室の先輩方からお話を伺う機会があり、職場のアットホームな雰囲気や長く働きやすい環境のことを聞いて、ここなら安心して働き続けられそうだというイメージが持てました。また、入社後の研修制度が充実していて、自分の専門外の分野も学べると知ったことも大きな決め手でした。電気電子を専攻してきた私にとって、製造業の設計業務はまだまだ未知の領域も多い。そんな中でも、会社がしっかりと育ててくれる環境があるというのは非常に心強く感じました。
さらに、豊田自動織機がトヨタ自動車の源流企業であるという歴史の重みも、入社の後押しになりました。長い歴史の中で積み重ねてきた技術と信頼は、企業としての安心感につながっていました。自動車メーカーとして表舞台に立つ企業だけでなく、産業の裏側を支える製品を世界に届けている企業に魅力を感じた私にとって、豊田自動織機はまさに理想の選択肢でした。
評価部署から設計部署へ。研修と実務が交差するキャリアの出発点
入社後はまず、全社員が参加する1か月間の全体研修からスタートしました。ビジネスマナーや社内ルールなど、会社の基礎を学ぶ場として設けられているもので、さまざまな部署の同期と交流できる貴重な時間でもありました。その後は技術系の専門研修へと移り、エンジニアとして必要な基本的な知識や技術を体系的に学んでいきます。
入社当初に感じたのは、学びの場が研修だけに限られているわけではないということです。配属後も、自分の希望に合わせた技術系の専門知識を深めるための社内研修が用意されており、仕事をしながら継続的にスキルアップできる環境が整っています。成長の機会が長期にわたって設けられているのは、ありがたいと感じています。
研修を終えた後、私が最初に配属されたのは評価部署でした。現在は設計部署に在籍していますが、いきなり設計を担当するのではなく、まず製品を「使う」「試す」側から経験を積むのが、この会社のフォークリフト製品開発部門における一つのルールとなっています。製品開発部門に配属された社員は、皆が評価部署を経験するという流れになっているんです。
評価部署では、実際に自社製品のフォークリフト(荷物の運搬や積み降ろしに使われる産業車両)の試作機を使った評価業務に従事しました。フォークリフトに直接触れながら、その構造や動作特性を肌で感じる日々でした。設計者として製品を考えるとき、実際に使ってみた経験があるかどうかは大きな差になります。評価部署での経験は、製品に対する解像度を高める、とても良い機会だったと今でも思っています。
そうした経験を経たうえで、現在の設計部署へと異動しました。評価で培った製品知識を土台に、今度は「設計する側」として開発に携わる立場になったわけです。入社してすぐに設計の第一線に立つのではなく、製品をじっくり知る時間を設けてもらえたことは、その後の仕事に大きく生きていると感じています。
一方で、入社前に抱いていたイメージと異なる点もありました。開発している車両の数に対して、思っていたよりも設計者の人数が少なかったのです。最初は少し驚きましたが、実際に働いてみると、過去の開発プロセスや豊富な市場実績から積み重ねられたノウハウが社内にしっかりと蓄積されており、それらをもとにブラッシュアップされた効率的な開発が行われていることがわかりました。少数精鋭だからこそ、一人ひとりの担当領域が明確で、効率的に業務が分担されているのだと理解できるようになりました。
「皆でどう対処するか」を考えられるチームで感じるやりがいと成長
現在私は、フォークリフト用の電気機能ユニット(コントローラ・ディスプレイなど、車両を制御・操作するための電気部品ユニット)の筐体設計と、車両へのレイアウト設計を担当しています。車両ごとに使用状況や搭載環境が異なる中で、部品を共通化できるような設計を行い、電気機能ユニットを車両に組み込む上で必要な検討を進めるのが主な業務です。また、電気機能ユニットの筐体設計業務リーダーとして、構造部品の設計統括や、車両設計部署との調整役も担っています。
車両の開発は複数のプロジェクトが同時並行で動いており、コンポーネント担当として複数の開発に関わっていかなければならないため、各プロジェクトの開発日程の動向には最大限の注意を払っています。特に私が担当する部品は複数の車両にまたがって搭載されることが多い分、仮に不具合が発生してしまうと、影響が複数の車両に及んでしまいます。そのため、部品変更が必要になった際には、他の車両への影響がないかを十分に検討することが欠かせません。
印象に残っているエピソードとして、新型カラーディスプレイの開発時のことがあります。ディスプレイのハード設計といっても、筐体部分と基板部分でそれぞれ担当が分かれています。それぞれの部品の制約や要件を考慮しながら、ディスプレイ全体としての要求事項を満足させるために、筐体担当と基板担当が同じ目標に向かって設計に取り組み、最終的にフォークリフトへの搭載を実現できました。異なる担当者がそれぞれの専門領域を持ち寄りながら一つの製品を完成させていく、チームとして結果を出せた瞬間だったと思っています。
またこの時評価の中でNGが発生し、対応に追われましたが、自分達のグループ内だけでの対処が難しい場合は機種担当グループにも対応を相談しながら対策の検討を進めました。失敗しても責められるような雰囲気はなく、開発部門が一丸となって「皆でどう対処するか」を一緒に考えていける開発チームなので、チャレンジングなことにも前向きに取り組めていると感じています。
こうした経験を通じて、自分自身も大きく変わったと実感しています。以前は一人でなんでもやろうとしていましたが、今は一人で深く考え込まないようになりました。自分一人で出せるアウトプットには限度があると思っていて、周りの協力を得てより良い成果を出すことを意識するようになっています。困ったときに本当に助けになるのは周りの方々だと、今は心からそう思います。
自分が設計に関わった車両が実際にお客様の現場で使われているのを目にしたとき、誰かの役に立てているという喜びを素直に感じます。製品に対してポジティブな評価をいただいたときは、「もっと良い製品を世に出していこう」という気持ちが湧いてきて、仕事へのモチベーションにもつながっています。
「世界No.1」を次世代へつなぐ。AIと広い視野で挑むコントローラ開発
短期的な目標として、まず取り組みたいのがAIを活用した設計業務の効率化です。設計の現場では、今もアナログな作業が多く残っています。これまで机上で検討を進めてきた業務を、積極的にデジタル化へと移行させていきたいと考えています。
この取り組みは私の部署だけで進めているわけではなく、会社全体として力を入れていることでもあります。設計にAIを活用する流れは今後ますます加速していくと感じており、他社に後れをとらないよう、積極的に挑戦していく必要があると思っています。
中長期的には、次世代に向けた高機能コントローラ(フォークリフトの動力や制御を担う電子制御装置)の開発を通じて、より競争力のある製品を世に送り出すことが目標です。製品設計においては、最新の電子技術を積極的に取り入れていくことはもちろん、将来的な機能追加や変化にも柔軟に対応できる拡張性を意識した設計が重要だと考えています。
また、設計プロセスの面でも進化を続けたいと思っています。熱解析や磁場解析といったシミュレーション技術(製品の挙動を仮想空間で再現し、事前に問題を検証する手法)の精度をさらに高め、評価手法のデジタル化を一層推進していきたいと考えています。
そして、自分自身のキャリアとしては、コントローラの担当エンジニアという枠にとどまらず、車両全体を俯瞰した広い視点で製品の魅力を高められる存在になりたいと思っています。一つの部品や機能だけを深掘りするだけでなく、車両としてのトータルな価値をどう引き上げるかを考えられるエンジニアへと成長していくことが、私の目指す姿です。
最後に、これから私たちの仕事に興味を持ってくださっている方へお伝えしたいことがあります。私たちの職場には、困ったときに手を差し伸べてくれる温かい人がたくさんいます。社是にも「温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし」とある通り、助け合いの文化が根付いており、安心して挑戦できる環境が整っています。また「研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし」という言葉が示すように、新しいことへの挑戦を後押しする風土もあります。
求めているのは、積極的に学ぼうとする意欲を持ち、着実にコツコツと努力を続けられる方です。そして何より、モノづくりが好きな方に来ていただきたいと思っています。一緒になって世界No.1のフォークリフトを生み出していきましょう。

