土木分野からの転身。日本への留学を経て、環境・資源・エネルギーに没頭していく
現在、次世代資源プロジェクト推進部の地熱開発チームで、カーボンニュートラル技術に関する地熱分野を担当しています。
私自身の最初のキャリアは、韓国の設計会社で土木分野、特にトンネルや地下構造物の設計に携わったことから始まりました。仕事を通じ地盤や岩盤についての工学を学んでいく中で、資源分野に強く惹かれるようになったのです。特に、地下の状態を調査・研究しながら可視化していく部分に魅力を感じました。
そこで、文部科学省の奨学生として日本への留学を決意し、京都大学で資源工学について学びました。その後、富山大学でポスドク(博士研究員)としてまだ使われていない地熱資源の直接利用に関する研究プロジェクトにも参加しました。
そこから日本の大手石油開発事業会社への就職を決めたのですが、理由は主に3点あります。1点目は、日本には石油・ガス関連の知見を持つ企業が多く、韓国よりも大きな舞台で働けると思ったこと。2点目は、火山国ではない韓国には地熱発電所がなく、より大規模なスケールの事業に携わりたいという想いがあったこと。そして、3点目は、習得した日本語のスキルを活用したいと考えたためです。
当企業では、石油・ガス上流部門で油層エンジニア(Reservoir Engineer)として働きました。主に、地下の油・ガスをどれだけ回収できるか予測し、生産効率を上げる方法を探る仕事をしました。その後、一度韓国に戻り、韓国初の総合エンジニアリング会社に転職。韓国の新規地熱発電プロジェクトの立ち上げに関わることになりました。
しかし、2017年に大きな転機が訪れました。同年11月に、浦項(ポハン)市で地熱開発に関連した人的な誘発地震が発生したのです。この浦項地震(M5.4)は、地下に深い井戸を掘り、高圧での水注入が近くの断層を刺激したことが原因であると、韓国政府の調査団が公式に認定しました。この事故は韓国の地熱業界全体にも影響を与え、政府も当面は地熱事業が難しいと判断。私が携わっていた事業も事実上凍結状態へと追い込まれました。
ケニアなどでの事業の実現可能性調査などを行いましたが、地熱の仕事は激減。その後は再生可能エネルギー分野である太陽光発電の現場代理人として施工管理や品質管理を担当し、さらに認証会社でカーボンニュートラル分野の国際認証や検証業務も経験しました。しかし、地熱への関心は常に持ち続けていました。
スケール防止・抑制技術の革新で、配管の“動脈硬化”を防ぐ
私がTOYOに入社するきっかけとなったのは、中学時代の家庭教師との縁で紹介していただいたエージェントからの提案でした。もともと、プラント業界大手のうちの1社として名前は知っていましたが、地熱事業を行っていることを初めて知ったのです。
そこで詳しく調べてみると、EPCだけでなくカーボンニュートラル本部で再生可能エネルギーにも力を入れており、自分のキャリアとマッチしていました。また、以前の業界でよく名前を聞いていた専門家が在籍していたことも、入社を決める重要な要因となりました。
入社後、私は地熱開発チームに配属され、インドネシアの事業者との技術スタディを実施することになりました。入社から1年間で7回ほどインドネシアに出張し、ジャカルタの拠点を基点に事業者との打ち合わせや提案活動を行っています。
私たちの部署では、事業者のニーズを発掘し、ソフトウェアの面から新しい地熱技術を提供することをメインミッションとしています。事業者がフィールドを提供し、私たちが新技術を持ち込んで試験を実施しデータを収集・分析するという形でwin-winの関係を築いています。
私が主に担当しているのは、スケールの防止・抑制技術です。地熱発電所では、温度・圧力等の変化により地熱水に溶けこんでいる鉱物成分が固形化してスケールとして配管内等の地上設備や井戸に付着します。これは目詰まりを起こしたり、血管の動脈硬化のように流路を狭め、蒸気の流量を低下させる原因になります。この流量の減少は、発電効率の低下に直結するため、スケールをいかに防ぎ抑制するかが、地熱発電の安定運用において重要な技術課題となっています。
この課題に対して、私たちは新たなアプローチを取っています。pHを低くすることでスケールの生成を抑制する方法を採用し、その効果を測定するためのスケールセンサーを活用しています。当センサーは、私のポスドク時代の恩師がいる富山大学の研究室で開発されたもの。入社後、この縁を活かして富山大学との協力関係を深め、技術開発を進めた結果、共同で特許出願するに至りました。
このように、地熱の分野で長年の課題とされてきた問題に対して、革新的な技術で解決策を提供できることにやりがいを感じています。
新たなエネルギーを生み出すカギとなる。次世代型地熱発電技術「クローズドループ」
現在、次世代型地熱発電技術として「クローズドループ」という新技術の開発に力を入れています。従来の地熱発電では、地下層の熱源、水、それらを閉じ込めるキャップロックという蓋の役割をする地熱貯留層の3つの要素が必要でした。
しかし、近年の「クローズドループ」技術の発達により、昨今では熱源さえあれば開発が可能になってきています。この新技術は、これまでの地熱開発では導入されていない新しいアプローチで、日本国内のみならず世界的に注目を浴びています。
具体的には、井戸を掘ってループ状にし、地上から地下に水を入れて地下深くの熱源で温めて汲み上げる仕組みです。地下から流体を汲み上げずに熱のみを回収する方式で、温度が下がった水は再び地下に戻して循環させるという仕組みです。このクローズドループ技術をインドネシアの事業者に提案しており、現在は経済産業省・PwC向けの「インドネシアにおける地熱マスタープラン策定等調査事業」の一環として、スタディを進めています。
クローズドループ技術の導入には、地熱や地下の状態、掘削技術など多岐にわたる知識が必要です。以前の石油業界での経験、特にリザーバーエンジニアとしての経験が活きています。リザーバーエンジニアとして携わっていた時期には、地質専門家やプロダクションエンジニア、ジオケミストなどさまざまな分野の専門家と協働してきました。この経験が、現在の業務に大きく活かされています。
特に、クローズドループに適した場所の選定基準を定める際には、多角的な視点が必要です。どこのマニュアルにも載っていない新しい技術だからこそ、井戸の特性や地下の状態、地質構成といった多くの要素を総合的に判断する必要があります。一つの要素だけを見てしまうと、他の場所でのポテンシャルを見落としてしまう可能性があります。
そのため、私一人で判断するのではなく、チーム内の様々な専門家と話し合いを重ねています。何度も協議を重ね、事業者の方々に提案をしていきます。そして、事業者の方々が納得して頷いてくれた時には、大きなやりがいを感じます。
これまでの経験を活かしながら、新しい技術開発にも挑戦できる。それが現在の私の仕事の醍醐味だと感じています。
技術と知見を糧にし、未来へと繋ぐ。それこそが再生可能エネルギーの意義
TOYOの魅力は、まず働く環境の柔軟さにあります。2024年に本社を千葉市幕張新都心に移転し、フリーアドレスをはじめとする新しい働き方を基調とした新しいオフィスになりました。会議スペースや集中作業スペースが適切に配置され、業務に応じて柔軟に活用できる環境が整っています。また、在宅勤務も可能で、東京オフィスでも業務ができるなど働き方の自由度が高いことも特徴です。
私の場合、家族が韓国に住んでいることもあり、金曜日の夜に韓国へ戻り、週末を家族と過ごした後、月曜のフライトで日本に戻ることもあります。 このように、仕事と私生活のバランスを取りやすい環境が整っているのは、当社の大きな魅力の一つです。
現在、私は地熱マスタープランのプロジェクトでサブリーダーを務めています。プロジェクトマネージャのマネジメントスキルを見習いながら、自身の成長を図っています。1年目を迎え、自分の業務はある程度こなせるようになってきましたが、今後は若手メンバーへの気配りやアドバイス、教育的な視点も意識して取り組んでいきたいと考えています。
将来的な目標としては、現在取り組んでいるスタディや事業者への提案を実用化につなげることです。次のステップとして実証試験を実施し、事業として成立させていくことを目指しています。規模の大小に関わらず、実証試験を通じて成果を出し、事業者と共に新しい技術を積極的に取り入れていきたいと考えています。
私の仕事における哲学は「苦労して得たものは自分のものになる」という考えです。TOYOでの経験や技術の習得は、将来どのような場面でも活かせる財産になると信じています。例えば、もし将来的に韓国に戻ることになった場合でも、地熱発電事業においてこの経験を活かして貢献できる存在になりたいと考えています。
この想いは、単に自国の発展だけでなく、次世代の地球環境を守ることにもつながっています。私にも中学生と小学生の子どもたちがいます。彼らの世代により良い環境を残すためにも、再生可能エネルギーの技術開発に携わる仕事に、今後とも力を注いでいきたいです。
※ 記載内容は2025年7月時点のものです
