80tを超える機械のメンテナンス──プロジェクト管理のカギは綿密な打ち合わせ
日本の鉄鋼技術を支える大型の製造設備。日鉄テックスエンジは、それらの機械を維持管理する重要な役割を担っています。1999年に入社し、現在は機械事業本部 整備事業部 東日本機械整備1部 機械整備グループに所属する鈴木は、機械メンテナンスのスペシャリストとして日々奮闘しています。
「私の仕事は、単なる機械の修理にとどまりません。お客さまのニーズを丁寧に聞き取ることから始まります。それを基にした計画立案、見積り作成、案件受注、そして施工から検収作業までプロジェクト全体を見据えた広範囲な業務を担っています。チームのメンバーと協力しながら、時には職場内の各班に仕事を振り分けることもあります」
鈴木の担当する機械は、電動機のモーターの交換から50tを超えるような大型の機械の補修まで多岐にわたります。
「最近では、81tにもなる巨大な重量物の取替作業を行いました。製鉄所において不純物を取り除く製鋼工程で使用される大型の炉のことを『転炉』と呼びます。転炉は、転動する仕組みになっています。この傾動装置の一部で、直径約6mの大歯車の軸を交換したんです。天井クレーンが使えない状況下で、9mほどスライドさせるという困難な作業でした。
この作業では、レールを敷いたりスライドの方法を考案したりと、チーム全体でアイデアを出し合いました。3交代制で1チーム15人体制、合計45〜50人ほどの大規模なプロジェクトを指揮しましたね」
このような作業を行う中で鈴木が大切にしているのは、社内外で課題を共有しながら「どうやったらうまくいくか」という知恵を出し合うことだと言います。
「初めて関与する作業も多いので、見積りや計画段階でお客さまと綿密に打ち合わせを行います。CADを使ったシミュレーションを行ったり、何度も打ち合わせを重ねたりして安全面や品質面での承認を得てから実施するんです。
そうしてチームのみんなで知恵を出し合う過程の中で、信頼関係や絆が築けるんです。それがおもしろいですね。お客さまから『次も頼むよ』『2年後の案件まで頼むよ』といった言葉をもらえることもあり、仕事ぶりが評価されていることを実感できるのもやりがいにつながっています」
未経験からプロフェッショナルへ。10年かけて築いた学びと経験から得た技術力
鈴木は、高校卒業後に地元福島県を離れ、日鉄テックスエンジに入社しました。
「就職活動時、機械系の知識はなかったものの将来の安定性を感じて選びました。ですが、高校は普通科だったので図面を見る経験もなく、機械についてもまったくの無知。最初はかなり苦労しましたね。
社内には『教育資料』という仕事に役立つ資料が豊富にあり、これを活用して道具や機械の種類、図面の見方など、一つずつ基礎から学んでいきました。それでも、わからないところは先輩に聞いて学んでいきました。
入社後、日本製鉄東日本製鉄所鹿島地区の設備のおおよそを把握し、要請に対応できるようになるまでには時間がかかりました。1人でなんでもこなせるようになったのは入社して10年位経ったころですかね。そして、ちょうどそのころから自分の行った仕事で設備が滞りなく稼働し、生産がうまくいった時の喜びや達成感が、仕事のおもしろさへとつながるようになってきました」
現在は、ほとんどの案件に1人で対応できるようになったという鈴木。多数の案件に携わる中で、重要な業務の一つに鹿島東部コンビナート定期修繕工事があります。
「これは毎年4月から6月にかけて行われ、工事期間は約30日間。案件数は少なくとも10件以上で、多い時は30〜40件にもなります。職場内の各班に助けを要請することもあれば、施工担当の方は20~40人位が関わります。
このような毎年決まった案件が5件ほどありますが、地域によっては新規の案件や初めて行うような依頼もあります。たとえば撹拌機の補修作業。ポンプやメカニカルシールの交換、シャフトの交換など、作業内容は多岐にわたります。
場所も多数あるため、一日一日あちこちを行ったり来たり。これらの案件を工事期間内に調整するのが大変ですが、お客さまとの綿密な打ち合わせを大切に行っています」
また、スラグ微粉末工場のローラーミル減速機の脱着・整備工事も大きなプロジェクトでした。
「機械の下部にある減速機のギアボックス内部を点検し、歯車交換をする作業でした。ローラーミル機械全体で約100tあるのですが、これをリフトアップしないとギアボックスをスライドできません。また減速機だけで50tの重さがあります。天井クレーンのない設備なので、160tのレッカーを導入しました。
計画には1カ月を要しました。過去資料を参照したり、機械メーカーとの打ち合わせを設けたり、上司にアドバイスをもらったり。打ち合わせを重ねて理解を深め、綿密な計画を練っていきました。そのおかげで、実際の作業には30人ほど関わりましたが、安全に、決められた工期内で無事に実施することができました」
人の背中を見て学ぶ──コミュニケーションが信頼関係を生み、トラブル回避へつながる
鈴木はこれまでの経験を振り返る中で、とくに印象に残っている出来事としてローラーミル減速機のトラブルを挙げます。
「減速機の中に異物を入れてはいけないのですが、ポケットからペンが落ちてしまい、異物になってしまったことがあるんです。機械を止めなければならなくなり、その日は寝られないほどショックでした。
それ以来、ポケットの中身を出すことはもちろん、お客さまとのダブルチェックやチェックリストの作成などさまざまな対策を講じるようになりました。精密機械を扱う上で、本当に大切な教訓になりましたね」
失敗から学び、次に活かすことで確実に成長につなげていった鈴木。周りの人々からも多くのことを学んでいると言います。
「上司の人材管理能力には本当に感心します。人の配置や仕事の流れを巧みに扱う様子を見ていると、『すごいなあ』と思います。シニアの方々からも学ぶことが多いですね。とくに、トラブル対応時には経験豊富な方々の判断の早さや対応力に助けられることが多いです。
『背中を見て学ぶ』という言葉がありますが、まさにその通りだと思います。たとえば溶接作業が上手な方がいれば、その人の手の動きを観察し、参考にさせてもらっています。自分で練習して、『こういうふうにできるんだな』『これだったらうまくできる』という経験を積み重ねています」
また、中堅のポジションとしてチームを牽引する立場でもある鈴木は、日頃のコミュニケーションをとくに大切にしています。
「各個人の能力や得意不得意を把握し、適材適所に配置するよう心がけています。そして、安全面にはとくに注意を払っています。
大型機械や重量物を扱う現場では、人災防止が最重要課題です。たとえば、製鉄所で経験を積んでいくと1〜2tの重量物に慣れてしまうことがあるので、現場での作業時にはとくに注意を促すようにしています。
コミュニケーションは、社内だけでなくお客さまとの良好な関係を構築するのにも重要だと感じています。何かあればすぐに連絡をもらえる信頼関係ができていることが嬉しいですね。プロジェクト実施までの過程で、お客さまと密に連絡を取り合うことで『一緒の釜の飯を食べる』ような絆が生まれると感じています。この関係性こそが、私にとって大きなやりがいになっているんです」
未経験者でも安心の環境──スペシャリストが語る成長の楽しさと仕事の魅力
鈴木は、これからの自身の成長と会社の未来について、熱い想いを秘めています。
「私の目標は、まず何より安全第一です。けがをさせない、しないということが大前提となります。その上で、品質面にも力を入れていきたいですね。
トラブルが発生した時は『ちょっと待て』と立ち止まって考えることを心がけています。現場は日々変化するので、『現物・現場・現状を確認して』という三現主義の姿勢で臨んでいます。そうして、もらった仕事はすべて実施するという姿勢で、できることはすべてやりたいと考えています」
新しい人材に求める資質についても自分なりの考えを持ち、未来の後輩社員たちにメッセージを送ります。
「コミュニケーション能力が一番大切だと思います。お互いに対話ができる人が一番良いですね。そこから信頼関係や絆が生まれると考えているので。業界未経験者でも大丈夫ですよ。この仕事は1人でやることはなく、チームクルーで動く仕事なので、わからないことは先輩に聞いたりしながら徐々に慣れていけると思いますし、未経験者でも十分に活躍できる環境が整っています。
ただ、すぐにこの仕事ができるようになるわけではありません。1人前になるまでには時間がかかると思います。でも、それは決して悪いことではありません。むしろ、成長の過程を楽しめる仕事だと思うんです」
最後に、鈴木は会社の魅力についてこのように語ります。
「休暇が取りやすく、福利厚生が非常に充実していると感じています。また、チームワークを大切にする文化があり、現場でのコミュニケーションも大切にしています。とくに、移動中の車内など少人数で過ごす時間に雑談から会話や対話が発展することがあります。そういった何気ない時間が、チームの絆を深めるきっかけになっているんです。
この仕事は、人と人とのつながりが何より大切です。経験者、未経験者関係なく一緒に成長し、お互いを高め合える。そんな環境で働けることが、私にとっての最大の魅力なんです」
鈴木の言葉には、未来の仲間たちへの期待と歓迎の気持ちが込められています。未経験からスペシャリストになって現場の最前線で指揮を執る姿は、これから入社を考える人々にとって大きな励みとなることでしょう。
※ 記載内容は2024年8月時点のものです
