幸せの探究者──堀内亮平のSPPへの想い
“冷静沈着“
堀内亮平のインタビューを通して感じたイメージとしては、この言葉が一番しっくりくるだろう。すべての受け答えにおいて物事を客観的に考えており、どんな場面でも、その場の感情に流されずに正しい決断ができる男であると感じた。
前職は教育系の仕事をしている中で、障がいのある方と関わることも多かったという堀内。その後、社会貢献につながる企業で働きたいと考えて転職活動を始めた。そうして出会ったSPPに入社を決めた理由をこう語る。
「さまざまな企業を中でもSPPはとくに社会貢献性に富んだ会社でした。行動指針でもあるハッピートライアングル(三方良し)の考え方にも惹かれ、SPPの一員になりたいと入社を志望しました」
SPPには、「ハッピートライアングルを拡大すること」という行動指針がある。その意味は誰かだけの幸せではなく、企業・障がいのある方やその関係者・SPPスタッフの全員が同じように幸せになるという考え方である。
「転職活動では自分の働きが社会貢献につながるかどうかを重視して転職先を探していました。とくに障がい者雇用支援会社にこだわらず、いろいろな企業を見て冷静に考えた上で、SPPが一番自分に合っていると思いました」
就労者ファーストの環境に整える仕事──創り出す未来のために
ソーシャルビジネスとは、社会的課題に対処しつつ、経済的持続性を追求するビジネスモデルである。その目的は、社会的な価値と経済的な利益を同時に創出することであり、持続可能性や社会的影響の向上を重視している。
ボランティアや寄付とは異なり、事業収益をあげることにより経済的な持続性も担保しつつも、社会問題解決という目的に専念するソーシャルビジネスは、世界を変える新しいタイプのビジネスとして注目を集めている。
ソーシャルビジネスの中でもSPPは障がい者雇用の創出に特化した会社であり、障害者雇用促進法に基づき、障がい者の雇用を義務づけられている企業に向けて、日本初の企業向け貸し農園「わーくはぴねす農園」を運営している。
この事業は、障がいのある当事者の経済的自立が可能になるだけでなく、一般企業の社員として契約されることでご家族の不安を取り除くことができる。農園は障がい者の安全を考慮した仕様で設計され、総勢4,000名を超える障がいのある方が勤務しており、入職1年目の定着率は92%を超えている。農園で栽培された野菜は従業員の福利厚生や社員食堂で利用されるだけでなく、子ども食堂への寄付など、多様な形で有効に活用されている。
堀内は農園の運営管理を行う農園長として入社して4年半。本社勤務を経て、現在は就労支援のチーフとして主に埼玉エリアを任されており、障がいのある方の募集活動や企業への紹介の業務に勤しんでいる。4年半という短期間の中でも着実にキャリアアップを進め、次なる目標に向かっている堀内にあらためて「わーくはぴねす農園」について聞いてみた。
「農園で働く障がいのある方々が新鮮で美味しい野菜を作り会社に還元・貢献する上で必要になるサポートを行います。
ここは福祉施設ではなく一般就労の場なので、10の約束を設けることであくまで仕事の場であることを認識できるよう心がけています」
障がいの度合いによって仕事量や時間は人それぞれ。大切なのは就労しているという自覚を持ってもらうことで、自分の働きが社会の一員になっていると感じてほしいと堀内は話す。
「人によってさまざまですが、現在福祉施設に通われてる方は、賃金が少額だったり、一般就労ではない場合は保険が使えなかったりすることがあるなど、親御さんとしては心配な部分があったと思います。
しかしSPPの農園では、雇用先の従業員として一般就労が可能になります。それは障がいのある方やそのご家族の方にとって大きな魅力になっていると思います」
農園長としてのキャリアをスタートさせた堀内は現場への思いも強く、働く環境の整備についての重要さについても続けた。
「農園で働く方の中には、これまで過度なノルマやプレッシャーに負担やストレスを感じてきた方もいらっしゃいます。
スピードや量に追われる仕事ではなく、配慮のある環境で自分に合ったペースで取り組めるのが農園の良さだと思っています。就労者ファーストの場所をこれからも私たちが創り出していきます」
思い通りにいかない経験を糧に、実現をめざす理想のかたち
しかしこの考えに至るまでには、さまざまな苦労があった。就労者ファーストの働きやすい環境にするには、何から動けば良いのか手探りの時期もあったと言う堀内。
「農園型というだけでまったく聞く耳を持っていただけず、なかなかSPPの事業を見ていただけないような経験や、待ってくださる企業様や顧客がいるのに、思うように農園型の就労について踏み込めず、上手くアプローチができなかった時は、悔しかったですね。
また、せっかく採用された就労者が短期間で離職してしまった時も同様です。本人にとっても、企業様にとっても負を与えてしまうため、紹介側として顧客に不安を与えてしまうのは不本意ですし、人の人生を扱う仕事なので、短期離職となってしまった際は責任の重さを痛感します」
企業側だけでなく、就労者の思いも汲み取りながらアプローチしていかなければいけない仕事の難しさを常に感じていると話す堀内は、農園型に踏み切れない企業について次のように語った。
「いろんな意見があるのは当たり前ですが、世の中に誇れる仕事なので、まずは知ってもらう・見てもらうことを意識しています。ゆくゆくはファンになって応援してもらうために、何度も足を運んで資料を見ていただくなど、障がいのある方のリアルな声を伝えていき、企業側が感じている不安要素をヒアリングして考えを受け止めた上で、われわれの見解と不安要素を擦り合わせていく作業が大切なんです。
いい意味で農園のプライドを忘れずにおごらずに、相手の意見も尊重しながら良い関係を築くことを意識して働くようにしています」
数字を追い求めなければいけない立場であることは重々承知しているが、長く農園と付き合っていただく関係にすることが何よりも大切であることを感じている。農園で働く障がいのある方への想いも堀内は続ける。
「長く仕事をするためには、生活面を安定しなければいけないと思っています。われわれは、プライベートな部分に踏み込むことはしませんが、必要に応じて面談を通して不安を取り除き、何かあればすぐに連携できるような体制を整えています。
仕事場だけが充実していても、長期間の就労にはつながりにくいと考えています。私たちは、農園に関する一人ひとりに寄り添える社員でいなければいけません」
従業員思いの姿はまさしく「もう1人の家族」と表せるのではないのだろうか。
誇りある仕事の自覚を誰よりも持つ。1人でも多くのファンを増やしたい。
今後どのような農園にしたいか、堀内はこう語る。
「第一に、働いている方を大切にし、長期就労をしてもらうことが大切です。安心安全な環境を維持し続けた上で、広げていきたい気持ちもありますし、働きたいと思ってくださる人をもっと増やしていくのが私の仕事だと思っています。
それはどんな立場になっても変わらないと思います。100点満点の農園にはまだできていないと感じており、日々ブラッシュアップしながら、私たちが行っている誇りある仕事を、さらに高める作業を常に行うことが必要なんです。そのために誠心誠意、相手と向き合い、対話することを実践しています」
人と人がいるからこそ仕事があることや相手との関わり方などを意識しており、どのような場面においても、「人」を重んじる姿勢の堀内が思い描く理想の農園とは。
「働く方々がやりがいを持って長く楽しく仕事ができる場所にしたいです。働いている本人、その家族や雇用元の企業からも農園があって良かったと言われる姿にするのが私の仕事ですし、農園で働いていない方にもファンになっていただいて、いろんな人に応援してもらう場所にしていきたいです。
障がいのある方が働く上でお悩みや課題を感じた時に、常に寄り添い、僕たちが将来の希望であり続けることが必要なんです。仕事の選択肢は多いですが、農園と出会えて良かったと感じてもらいたいですね」
農園が愛される。働く従業員にもファンができる。自分自身が事業を愛しているからこそ生まれる目標が堀内にはある。
「SPPの社員として常に追い求める事業理念を大切にして、1人でも多くの障がい者雇用を創出して社会に貢献することを意識しています。そのためにも行動指針をもって目標に向けて走っていかなければいけないです。
自分たちが楽しくなければ、農園の方にも良いものを届けることができないので、チームの連携から日々笑顔で迎えることを意識し、ハッピーな未来を築いていきたいです」
堀内が創り出す、未来の障がい者就労支援に今後も注目していきたい。
※ 記載内容は2024年5月時点のものです

