商業分野の知見を非商業分野へ。新たな価値とともにクリエイティブ力を底上げする
2025年よりクリエイティブ事業部を率いる町田は、事業部についてこう説明します。
「現在注力しているのは、名古屋をはじめ中部エリアの電鉄系グループやインフラ企業、ものづくり企業への取り組みやPFIなどの行政案件、大型商業施設の環境計画です。もともと当社は商業施設に入居するテナントさまの商環境をつくる仕事が多かったのですが、現在はそれに加え、非商業分野などの案件も増えています。私が所属するクリエイティブ事業部も、商業・非商業を問わず、さまざまな案件を手がけています」
事業部は3部門で構成されていて、各部門によって特徴がある、と続けます。
「まず1つが企画開発部です。お客さまからのご要望に応じて、遊休不動産や低未利用地の利活用に関する企画構想の立案やPark-PFI事業、行政発注の公募型プロポーザルなどの官民連携事業への取り組みを行っています。できる限り初期段階から関わり、調査・構想・企画から基本計画、基本設計、現場での設計監理まで携わります。
そして、企画・デザイン・設計を武器に、お客さまと共に空間を創り上げる企画デザイン部が2つあります。どちらもデザイン・設計~設計監理まで携わりますが、取り組む分野が異なります。企画デザイン1部は、余暇エンタメ施設や仮設展示のノウハウを活かし、『企業ショールーム空間』への参入など、名古屋本部の新規分野案件に取り組んでいます。企画デザイン2部は、ショッピングセンターや高速道路施設の商環境デザインからアミューズメント施設、ディーラー、飲食店、オフィスなど、商業・非商業問わず多様なジャンルに取り組んでいます」
多くの案件を抱える町田の役割は、『事業部長』という肩書にとらわれず、柔軟に変化すると言います。
「案件やお客さまの特性、チームのメンバー構成によりますが、クリエイティブディレクターやデザイナーの時もあれば、設計者やPM、営業の時も。昨日の夜も現場に行っていましたし、その時々にあわせて必要なポジションを担っています」
事業部長として町田に求められている役割の一つとして、これまで培ってきたさまざまな知見やノウハウをメンバーに伝えることがあります。
「クリエイティブ事業部は名古屋本部における攻めの取り組みが多いため、収益化が難しい状況下でも活動を続けなければなりません。状況を改善し成果を挙げられるメンバーを育てるために、私自身も案件を一緒に進めながら、教育を図っています。
たとえば、先日完成した観光案内所の案件では、単にパンフレットを置くだけでなく、物販の魅せ方や照明にまで追求した提案をし、ほかの観光案内所にはない発想だとお客さまから評価していただきました。これは私たちが長年、商業分野の案件を手がけてきたからこそできることです。
こういった非商業分野に、スペースだから提案できる新しい価値を提供する視点をメンバーみんなにも持ってもらいたいなと思っています」
そしてもう1つ、町田が熱を込めるのが、事業部全体のクリエイティブ力の底上げです。
「『クリエイティブ事業部』という名を冠している以上、世の中に対してクリエイティブな発想で空間を提供しなければなりません。デザイン業務においても、素材の組み合わせや判断の仕方といった細かなノウハウについて膝を突き合わせながら打合せしたり、参考になる空間や構成、店舗の情報を共有したりしています。私が一緒になって企画や設計を考えながら、デザインする楽しさやデザイン力を磨く大切さを伝えることで、メンバーの引き出しを増やしていきたいんです。
また、若手社員であっても、上司に言われて動くのではなく、より自発的に『こういうことをやりたい』と行動できるようになってほしいとも思っています。一度に教えられるのは数人ですが、少しずつでも事業部全体の意識に変化を生み、お客さまへの提案内容をより進化させていきたいです」
デザイン・設計を極めたい──挫折をバネにDesign Lab.にたどり着くまで
大学で建築を学び、2007年にスペースに新卒入社した町田。飲食店チームで設計施工を6年間担当しました。お客さまとの最初の打ち合わせからデザイン・設計、積算、施工管理まで一貫して携われる業務に魅力を感じたと振り返ります。
「お客さまや職人さんとコミュニケーションを取り、自分の裁量で進められることが本当に楽しかったです。一貫した業務だからこそ、自分の提案がどれくらいの金額に値するのかをリアルに体験できる点もおもしろかったですね」
さらに、結果的に町田に大きな学びをもたらしたのが、入社2年目にリーマンショックの影響で店舗づくりの案件が大幅に減少したことでした。
「フードコートのメニューの差し替えや商品撮影、グラフィック制作など、通常は外部に依頼する業務も自身で担当しました。その中で、既存の空間に何を加え、何を取り除けばより良く見せられるのか?必要なのはグラフィックなのか、ロゴの変更なのか──空間だけでなく、その周辺も含めて総合的に商いをする場を考える力が養われました。
お客さまの売り方に対しても『こういう見せ方のほうがエンドユーザーに効果的だから、このデザインにしましょう』と語ることができるので、デザイン・設計を行う上で説得力が増すんです」
逆境を学びに変えられたのは、自由に任せてくれた上司や、提案を快く受け入れてくれたお客さまのおかげでもあると語る町田。
その一方で、デザインや設計の仕事を極めたいという思いから、社内のデザイン専門チーム「Design Lab.(デザインラボ)」への異動希望を出していた。経験不足のため異動はかなわずという苦い経験となりましたが、信頼する上司の「5年待ってくれ」という言葉を信じ、引き続き飲食店チームでの業務に邁進します。
また、この5年の間で、設計コンペなどにも参加し、Design Lab.への異動はしなくとも、しだいに設計業務へのチャンレンジ自体はできるようになっていきました。
しかし、高品質スーパーマーケットが新しく創るフルーツタルト専門店「A Merveille」の設計で味わった挫折が、町田を再びDesign Lab.への情熱へ駆り立てることになりました。
「きっかけはフルーツのノウハウを培うことで事業を拡大させてきたスーパーマーケットの社長。豊富な専門知識をお持ちで、フルーツの色一つひとつにこだわりのある方でした。
美しく見える配置や照明の色温度はどれくらいか、エンドユーザーの動線や目線はどうなるか、そして働く従業員の方や搬入業者の方のことまで。私の提案では、お客さまの求めるレベルにまったく太刀打ちできず、コテンパンにやられました。
たとえば『このオレンジの色はこれが一番自然ですよね』など僕がこの目で見て脳裏に焼き付けておかないと会話が成り立たないというのに、当時そこまでの知識はありませんでした。設計をする上で必要な準備ができていないし、デザイナーとして半人前だなと痛感しました。
そして、設計やデザインを真剣に追求し、デザイナーのステージを上げるなら、一貫した業務に取り組み続けるだけでは足りない。会社で最も優れているとされるDesign Lab.に行くのが近道だと確信したんです」
こうして覚悟を新たにした町田。その後、待ち望んだDesign Lab.から声がかかり、入社7年目となる2013年、ついにDesign Lab.への異動を果たしました。
最後まで考え抜く覚悟と泥臭さ。Design Lab.で見出した真のデザイナー像
念願のDesign Lab.での経験は、町田にとって転換点となりました。大きく変わったのは、その環境だったと語ります。
「上司に直接指導を受けることに加えて、上司と同僚の会話をそばで聞くことで、たくさんのことを学びました。たとえばどんな内容を指導されているのか、不足しているのは何か、こういう時に気をつけるべきことは何か。用途ごとに適した素材の使い分けや照明1つで変わってしまう空間の価値、デザイン・設計していく上でお客さまに引き渡した後まで考える責任感……と挙げればきりがありません。
それだけに、デザイナーにとって必要な視点が常に流れてくる環境になったのは本当に大きな変化です。そしてそこから、自分だったらどうするか、と常に考えてノウハウとして身につけていきました」
スペースで一番のデザイナーと言われている上司が数々の成果を出す姿を目の当たりにしながら、町田は“泥臭さ”の重要性も実感していきます。
「デザイナーの仕事は、最後まで『本当にこれでいいのか?』と考え続けることが求められます。『これでいい』と決めてしまったら終わりじゃないですか。私たちは図面を描いて空間のイメージをつくることで価値を生み出します。もちろんものづくりにはどこかで決断が必要ですが、プレゼン前日でも改善点を探し、提案内容をより魅力的に伝えられるアイデアがあれば、スケッチや写真、言葉を補うなど、お客さまから『すてきだね』『良い空間になりそうだね』と言われることをめざして考え抜きます。なぜなら、お客さまの利益があって私たちの商売が成り立つからです。
実は明日もプレゼンがありますが、本当にこれでいいのか、もうちょっとよくできないか、と今も悩んでいます。それがふと夜中に思いついたら、夜中にやらないといけない。気ままにスルスルと図面を描いて定時退社する、というスタイルでは務まらない。デザインするには覚悟が必要なんです」
一般的には過酷に映るかもしれない働き方。しかし、町田はデザインという仕事の本質をそこに見出しています。
「本当に好きじゃなければデザイナーは続けられないと思います。たとえ他の仕事がギリギリで忙しい状態でも、本当のデザイナーと言われる人たちは、やりたいと思う仕事をいただけたらきっと断らずに喜んで請ける。そこまでじゃなくてもデザイナーという肩書きで仕事はできるかもしれませんが、生み出すものにはきっと差が生まれる。
生活の中にデザインの視点を持って考え続けられる人、苦しいはずなのに楽しめる、むしろ超越する価値を感じられる人、良い意味で仕事とプライベートの切り分けがない、いわば“24時間クリエイティブ”できる人が、真のデザイナーと言えるのではないでしょうか」
さらに、1つのことだけに集中するのは苦手だと言う町田は、複数の案件を同時並行で進めることで、相乗効果が生まれると話します。
「たとえば、ある物件のために資料を見ている時に、別の案件のアイデアを思いつくことも。『これはあっちの物件に使えそうだ』『この考え方を活用すればいけるな』など、不思議とつながっていくんです。10案件ぐらいを同時に回しているとき、一番脳みそが活性化すると感じますね。
もともと幼少期から絵を描くことが好きで、小学校のコンテスト前には放課後まで残って制作に取り組んでいましたし、大学時代は、家よりも長い時間、製図室にこもっていました。
また、一見デザインと関係なさそうですが、料理もクリエイティブな要素があって好きです。たとえば、餃子はつくる人や具材や調理法でできあがるものがまったく変わるおもしろさがあります。『好きこそものの上手なれ』じゃないですが、やっぱり好きだからずっとやれるんでしょうね」
そんな町田の考えを体現する機会となったのが、高品質スーパー「サポーレ 熱田伏見通り店」のプロジェクトでした。
「土地購入前から先方の社長と密に対話を重ね、街づくりの観点から建物の配置や駐車場のレイアウトを検討しました。2,000坪の土地に1,000坪の建物を建てる大規模なプロジェクトで、敷地や市場におけるさまざまな提案から始まり、内装はもちろん、本来は建築設計の担当の方が進行する外装までをも一貫して担当させていただいたのは私にとっても初めての経験でした。
駐車場のアスファルトを張った後に、高級車が通るには角度に問題があることがわかって急遽剥がすなど、内装にはないトラブルに遭いながらも試行錯誤を繰り返しました。最後の3カ月は睡眠時間を削りながら設計進行、現場調整、社長との打ち合わせを行うなど、本当に泥臭い日々を送りました。
その甲斐あって、大規模施設での視点の置き方や、スーパーマーケットの各部門の特性を考慮した設計の知識などを習得できた上に、周辺地域の活性化など周囲に対する影響も考えながら取り組むダイナミックさを味わいました。とても学びの多い案件だったと感じています」
より良い空間のために、いかに考え抜き伝えるか。AI時代に求められるデザイナーの力
入社して18年。Design Lab.の課長・部長を経て、2025年よりクリエイティブ事業部 事業部長に着任した町田は、社内での自身の立場を「武器」と表現します。
「新規開拓するお客さまは、すでに別のデザイナーや同業他社と取引しているケースが多いです。そのため、受注するには高いデザイン力と企画力が求められます。私が担当することで仕事を獲得できたなら、デザイナー冥利に尽きますよね。
どんな業種・業態であれ、周りより半歩でも飛び抜けた良いものを提案できればという意味で、スペースみんなの武器でありたいと考えています。そんな思考でいないと、デザインにおける自分の成長が止まってしまいますよね」
そんな町田が考えるスペースの最大の魅力は一気通貫で業務を行えることだと続けます。
「設計もできて、資金管理や工事スケジュールの調整もできる人材は、市場価値が高いと感じます。一人ひとりが極めた才能が掛け合わされて、より大きな価値が生まれるのもスペースならではです。
また、私のように『一貫した業務をしているけどデザインを極めたい』と思ったときでも、転職せずに社内でスキルアップできる環境があります。社内で関われる業種・業態が多いため、さまざまなジャンルの知識を得られたり、人脈をつくれたりする点も醍醐味。お客さまとの商談も、施工現場での職人さんとの会話も、なんでも楽しめる方であれば魅力に感じてもらえると思います」
求める人材像として「自発的に動けて、24時間考えられる人」を挙げる町田。そして、デザイナーには伝える力も必要だと言います。
「私は、デザイナーは営業でもあると思っています。アーティストであれば、喋らなくても作品の価値でお金が動きますが、私たちは企業に所属するデザイナーです。自分で考えたデザインの魅力はなんなのかを自身の言葉でお客さまや一緒に空間を創り上げる関係者へ魅力的に伝えられなければ、デザイナーとして独り立ちするのは難しい。
喋る力があって魅力的な人に、お客さまは惹かれます。営業力や求心力があることも、デザイナーに必要な能力だと実感しています」
最後に、AIの発展によりデザインの世界も大きな変革期を迎えている今、入社を検討している方に向けて町田からメッセージがあります。
「利用者の背景やその場所のサステナビリティ、そしてさまざまな工程において、決して思い通りに進まない中でもお客さまのご要望を汲み取りながら、その空間の魅力や価値を最大限に高めていくにはどうすればいいのかを最後まで追求できることが重要です。
表面上の格好良さ、可愛さといった時代の流行をトレースするだけのコンピューターとは違う、本質を見極めてやり抜く覚悟を持った方に、ぜひスペースに来てほしいですね」
※ 記載内容は2025年3月時点のものです

