各国の文化や特徴を背景に、キャラクターを送り出す
渡辺の所属しているグローバル事業部は、キャラクターの使用について海外との折衝を行う部署。ミッションは「国内キャラクターの海外への展開」と「海外キャラクターの国内への展開」の2つです。
「私は国内キャラクターの海外展開を担うセクションにいます。その中でさらに2つの課に分かれていて、海外での商品化展開の窓口業務を行う課と、番組販売を行う課があります。私は前者のライセンス課というところで仕事をしています。メンバーごとに国を分担していて、私の担当は韓国とタイ。主に『名探偵コナン』や『犬夜叉』などの小学館の作品を扱っています」
キャラクターの商品化にとどまらず、キャラクターとコラボレーションしたイベントやカフェを開催したい国も多いと言う渡辺。やりとりする窓口は海外の代理店で、「コナンをこの国でどう広めていくのか」「ターゲットはどうするか」「どんな商品や企画をするか」などについて、細かく打ち合わせていきます。
「国によってアプローチが違うのがおもしろいところです。カフェを開くことでヒットにつながる国もあれば、イベントのほうが手応えのある国もあって、千差万別。韓国とタイの場合は、すでにたくさんの人気キャラクターが存在しているのが特徴です。たとえば、韓国ではかわいいゆるキャラが人気で、タイでは『ドラえもん』『ディズニー』をはじめさまざまなキャラクターが人気。そんな市場に、担当のキャラクターをどう入れていくか、戦略が求められる2カ国です」
海外の代理店と一緒に市場を調べながら、ベストなアプローチを探ります。
「日本国内であれば、すでに漫画市場が盛り上がっていることもあり『このキャラクターならこんな商品がいいよね』とメーカーさんから連絡をいただき商品化を進める正攻法が、ある程度効果的であることが多いと思います。でも海外の場合は、そもそも前提自体がありません。アニメがそこまで人気ではない国や、アニメ関連の商品がまったく売られていない国も。だから、アプローチを一から考えるところからスタートするんです。難しいですが、その分やりがいがありますね」
日本では人気が高い『名探偵コナン』も、海外で必ずしも人気とは限りません。キャラクターの知名度にあぐらをかくことなく、作品の魅力を自分たちで訴求していく使命感を胸に、仕事に取り組む毎日です。
大学4年時にドイツ留学を経験。キャリアの軸が明確になっていく
小さいころから海外に興味があったという渡辺。きっかけは、母親の影響でした。
「母は海外、とくにヨーロッパが好きで、母の部屋にはヨーロッパ街歩きのような本がたくさんありました。ヨーロッパに一人旅に行くことも頻繁にありました。写真を見たり話を聞いたりしているうちに、小さいころから興味と憧れを持つようになったんです。大学では、留学したい一心で、ヨーロッパ文化を専攻。実際に4年生の時、1年間のドイツ留学を経験しました。
印象的だったのは、ドイツが親子連れにやさしい街だったことです。どんなお店にも当たり前に子どもが遊べるような場所があったり、おむつ交換ができるところがあったり。街全体がベビーカーにも寛容でしたし、ドイツのおもちゃは世界的に有名なものが多いことに気づきました。そんな環境に驚き、自分も将来は、親子のためになるものに関わりたいと感じました」
帰国し、就職活動を迎えた渡辺。親子の関係性を築く場所やサービスの提供に貢献しようという決心のほかに、自己分析を進める中で浮かび上がってきたのは「キャラクター」というキーワードでした。
「昔からゆるキャラやアニメキャラ、いろんなキャラクターが好きで、キャラクター関連の仕事ができたら楽しいかもと思っていました。そこで、親子やキャラクターというキーワードで調べていくうちにShoProと出会ったんです」
親子のための教育事業やキャラクターを軸としたライセンス事業を提供していることに惹かれた渡辺。「これぞまさにやりたい仕事だ」と思い、第一志望で選考を受けました。
こうして、2018年に入社。初任配属はポケモン事業部の業務推進課でした。
「契約書を作成したり、ライセンシーに対して請求書を送ったり、証紙の手配をしたり。権利者への分配金処理も行う経理のようなお仕事です。自分では想定していなかった仕事内容だったので、最初は拍子抜けしたような気持ちがありました。
ただ、続けていくうちに、自分がいかに大事な業務をやっているのかがわかってきたんです。権利者やライセンシーとの契約書における重要なポイントはどこか、版権に関わるお金の処理の流れ、その中で気をつけるべきポイントはどこか。4年間かけてキャラクタービジネスの根幹を学べたことが、現在の業務をする上でも支えになっています」
その後、2022年4月に現在の部署へ異動。想定外だったと渡辺は話します。
「異動を打診された時は、驚きました。入社した時から海外に興味はありましたが、躊躇する気持ちがあり『グローバルな仕事がしたい』という意向は会社に伝えていなかったんです。というのも、留学先ではドイツ語で授業を受けていたこともあって、英語にあまり自信がなかったから。配属された時はうれしかったのですが、自分にできるのだろうかという不安も大きかったです」
英語の不安と向き合い、日々勉強。周囲に支えられつつ、独り立ちしていく
英語に対する苦手意識を感じながらも、挑戦意欲を持ってグローバル事業部ライセンス課へとやってきた渡辺。
先輩社員の補佐役として半年間、商品の流れや、契約のポイント、映画関連の業務など、一通りの動き方を習得しながら、並行して英語の勉強も行いました。
「仕事では、英語と日本語を半々くらいの割合で使います。出張やイベントを除けば直接対話することはなく、オンライン会議やメールが基本。先輩が英語でやりとりしているメールを見て表現をストックしたり、朝に自主的に英会話を勉強したりして、英語力を伸ばしていきました。続けていくうちに『なんとかなる』という気持ちが出てきて、英語に対する抵抗感もなくなっていきましたね」
これまででとくに苦労したのは、韓国でコナンの映画に合わせた商品化を行う仕事でした。
「私が引き継いだ時期は、2019年に韓国で起こった日本製品不買運動後、コロナ禍を経て商品展開がとても少ないタイミングでした。でも、2022年公開の『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』で一気に盛り上がり、商品展開の希望もどんどん増えていきました。前例のない仕事がたくさん舞い込み大変でしたね。他国を担当している先輩の事例や判断基準を聞きながら、それを韓国の状況にどう落とし込んだらよいか、自分で判断を下していきました。関わる人が多かったため、海外だけでなく、国内の映画配給会社や、アニメ会社の担当者など、それぞれの立場を考えながら連携して商品化やイベントを実現させていくことにも苦労をしました」
こうした経験の中で培ったのは、自らの裁量で仕事をすること。
「前部署では事務的な処理がメインであるため、決まった手順に従って正確に仕事を進めることが求められていましたが、今の仕事は自らの判断で物事を進めることが多いです。だからこそのプレッシャーもありますが、その分、自分の仕事に誇りを持てるようなやりがいのあるポジションだと感じています」
仕事をする中で忘れられないエピソードについて、渡辺はこう語ります。
「私が異動した当初は新型コロナウイルスの影響があり、グローバルではありつつも、オンラインで仕事をすることが多かったんです。だからこそ、初めて韓国出張に行けた時はとても嬉しかったですね。現地で、いつもやりとりしているライセンシーさんとはじめて会ったのですが、実は相手の年齢が近く、コナンやサンリオといった日本のキャラクターが大好きな方だとわかったんです。それまではビジネスメールのような形で堅いやりとりをしていたのですが、対面で盛り上がって、一気に意気投合して。今では確認事項や、韓国人としての意見を聞きたいときなど気軽に会話ができるようになりました。やはり直接会うと、お互いに仕事もやりやすくなるんだと感じました」
自らの意思で仕事を進め、各国の担当者との関係性を築き、成長していった渡辺。次のプランに向けても、意気込んでいます。
「『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』という映画の最新作が、日本では2024年4月から、海外でも順次スタートする予定で、商品化などさまざまな展開を練っているところです。前作で培ったノウハウをもとに、今作を盛り上げていくことができるよう、尽力したいですね。
『キャラクタービジネス』というと、どうしてもキャラクター単体にスポットライトがあたってしまいがちですが、やはり作品の魅力は物語にあると思うんです。私はコナンのストーリーのおもしろさに引き込まれ、キャラクターが好きになり、愛着が湧きました。私のように日本で育ち幼いころからコナンのストーリーのおもしろさを味わってきた人間が、その物語のおもしろさを海外にも広めることで、個々のキャラクターを愛していただけて、商品も手に取ってもらえると思います。そのためにも、コナンの根幹の物語性も伝わるような展開を意識していきたいです」
苦手意識を乗り越えたからこそ見えたもの。グローバルな仕事の魅力
研鑽を重ね、成長を続ける渡辺。今後に向けて描いている展望についてこう話します。
「今は商品化に特化した仕事をしていますが、いずれは番組販売にもトライしたいです。番組と商品、相乗効果でコンテンツを盛り上げていけたらいいですね。
もうひとつの希望は、担当する国を広げていくこと。自分が留学していたドイツを含め、欧州では今、コナンがとても人気です。過去の留学経験を活かせる地域で、より活躍できたらうれしいなと思っています。
いずれにしても、日本にいながら英語を使える仕事は、とてもレア。この舞台を活かして、いろいろなことに挑戦してみたいです」
英語力はもちろん、留学時に身につけたコミュニケーションスキルも活かしながら、自身の幅を広げていきたいと渡辺は言います。
「留学中は、ドイツの方だけではなく、さまざまな国の友人ができました。深く交流する中で、国によって人柄や考え方が違うことや、日本人と考え方をイコールにすることは難しいということを学びました。だからこそ、相手の事情や背景を理解しながら接することが大事だと思っています。
今も海外の方とやりとりをしていると、性格も文化も大きく違うのを感じます。さまざまなバックグラウンドを持つ方一人ひとりに対し、どう接するべきか考えるのがおもしろいですし、海外に関わる仕事だから得られる視点だと思っています。この視点はどんな仕事をする上でも大事なことだと思うので、これからも『当たり前』の感覚を疑って、違いを受け入れながら柔軟にコミュニケーションをとっていこうと思います」
最後に、グローバルな仕事に携わる立場として、メッセージを紡ぎます。
「ShoProでグローバルな仕事をしていますが、スタート地点として英語ができないと絶対にダメ、というわけではありませんでした。各国の代理店によっては日本人の担当者がいるケースもあります。また、意外と英語のビジネスメールはとてもシンプルで、日本のように丁寧な言い回しは必要ないです。簡素なので、習得しやすいと思いました。
英語を扱う課内のメンバーも翻訳サイトを活用して契約書を読んだり、日常的に適切な言い回しを調べたり、アドバイスし合ったりしているので、自分の力ですべてできなくてはいけない、ということもありません。周囲の先輩たちからのフォローも手厚いです。
配属が決まった時の私のように、グローバルという響きを聞いて抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、日本のコンテンツで育ってきているからこそ、伝えられる魅力があると思います。海外の背景を理解して、自分の知っている魅力をその国でどのように展開すべきか、日々試行錯誤しながら仕事をすることにとてもやりがいを感じます。興味を持った方は、ぜひチャレンジしてみてください」
熱い想いを胸に、自らを高めてきた渡辺。キャラクターの魅力を、物語の素晴らしさを広く伝えるべく、これからも挑戦を続けます。
※ 記載内容は2024年2月時点のものです
