幼稚園や保育園にはない、当社だけが提供できる価値を模索し続ける

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中村が部長を務めるキッズ教育事業部では、「幼児教室の運営」と「オンラインや幼稚園・保育園など教室外での教育サービス提供」 の2つを事業の柱としています。

 「幼児教室には、ショッピングモールなどで展開する『ドラキッズ』と、ミキハウス様と提携して百貨店で展開している『キッズパル』という2つのブランドがあります。対象は生後10カ月から小学3年生までですが、とくに小学校入学までに身につけたい力を先取りできる、“楽習(がくしゅう)”という楽しく学べるカリキュラムになっています。

もう一方の『オンラインや幼稚園・保育園など教室外での教育サービス提供』 では、幼児教室で培った当社独自のカリキュラムを、オンラインや幼稚園・保育園などに向けて提供しています」

幼児教育は学びの基本であり、子ども時代の学びは一生ものである──そう考える中村は、幼稚園でも保育園でもなく、当社にしか提供できない価値は何かを常に考え続けています。

「とくに最近は少子化やコロナ禍といった社会情勢の変化にともない、保護者の方のライフサイクルや子育て環境も大きく変わってきています。幼稚園中心だった幼児教育が保育園やこども園にも移りつつあり 、子ども自体の数が減っているという状況の中で、どのような差別化ができるのかを意識して、授業内容やサービスを考えています。

幼児教室事業で言えば、一人ひとりに合ったカリキュラムにアレンジでき、幼稚園や保育園とは異なる少人数の環境で、先生、お友だちといっしょに時間を過ごしながら、さまざまなわくわくや夢中になる体験を通して、幼児期に身につけることで大人になっても使える力を蓄積していくプログラムを組んで授業を進めています。

また、親子で楽しく通える・学べることも大事にしていて、学ぶ環境づくりにも力を入れています。たとえば『ドラキッズ』の教室内は、オリジナルキャラクターの“まめドラ”が散りばめられていたり、入り口がドラえもんのどこでもドアになっていたり、教室外の壁面はドラえもんとせいくらべできるデザインになっており、教室の空間ごと好きになってもらえる工夫をしています」

小学校の手前にある“一人ひとりに合わせた”幼児教育への関心

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長年幼児教育に情熱を注いできた中村は、自身の幼少期をこう振り返ります。

「もじについては絵本や新聞やおもちゃ、すうじについては競馬のゼッケンなど身のまわりで見たり、触れたりしたもので興味を持つようになりました。小さいころはよくしゃべる子だったのですが、ある出来事を機に人の話をよく聞くことを意識するようになりました。そのきっかけとなったのが、小学校5年生のときの道徳の授業。

普段あまり発言しない子がしっかりとした自分の意見を発表し、皆が納得して称賛している姿を見たときに、『なんでもたくさん話せば良いわけではないのだな』という発見があったのです(笑)。また、普段もの静かな子がこんなことを考えていたのだ、という驚きもあり、人に興味を持つことのおもしろさに気づいたように思いますね」

学びや子どもに興味を持つきっかけは、大学時代にありました。

「大学時代にアルバイトをしていたテニススクールには何人かのインストラクターがいたのですが、教える人によってわかりやすさが違ったり、同じインストラクターでも初級者と中・上級者で接し方を変えたりしていることに気づいて、目の前の相手一人ひとりに合わせた教育をすることの大切さを実感しました。

先輩からナイスショットの時のほめる言葉を100種類持つようにと言われたことは今でも覚えています。そのとき、相手に満足してもらえる、あるいは喜んでもらえる教育サービスを提供する仕事に就けば、やりがいを感じられるのではないかと思ったんです」

教育の中でも、小学校の手前にある幼児教育に対して、とくに大きな関心と可能性を感じたと言う中村。

 「私自身は子ども時代に幼児教室に通った経験がありませんが、だからこそそこで学ぶとどんな力が身につくのか、とても興味を惹かれたのです。生涯学習という言葉がありますが、その最初の一歩であり、学ぶことの基礎になるのは間違いないはず。その部分の専門性を磨いていきたいと考えました」

そんな彼が小学館集英社プロダクションに入社を決めた理由は、事業の幅広さにありました。

「入社当初の当社は、小学館の100%子会社。小学館といえば、ドラえもんをはじめとした子どものころから慣れ親しんでいるマンガやアニメをたくさん扱っている会社で、やはり憧れがありました。出版事業と教育事業の両方をできる会社はあまりありませんでしたし、いろいろな角度で幼児教育に携われそうだという期待があったと思います」

AI事業もメディア運営の経験も、より良い幼児教育を作るための糧となる

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2000年に新卒で入社した中村は、まず学習教室・英語教室の運営に携わりました。埼玉エリアの担当を務めた中村は、運営担当として教室に足を運び、先生と話し、授業も受け持って子どもたちやママ・パパたちとも接しているうちに、教室運営において新たな取り組みを実施します。

「当時の上司が、マイクロマネジメントを苦手とする私の性質を見抜いていたのか、いろいろなことを任せてくれたおかげで、新しい取り組みにどんどんチャレンジしていきました。

前例のないイベントを実施したり、教室の先生と一緒に授業を考えたり、商業施設に初めて英語教室を入れたり。そうした取り組みをおもしろがってくれた先輩方の協力も得て、結果的に生徒さんを増やすことにつながりました」

埼玉エリアでの取り組みが認められ、異動先となった横浜エリアでも、教室の先生に合わせた丁寧なコミュニケーションを取りながら業績を伸ばした中村。2008年からはマーケティングや販促などを経験したほか、Web制作の関連会社での勤務、教育部門全体のデジタルコンテンツ企画や宣伝施策の推進、全社横断のAI事業企画室などさまざまな部署を経て、2020年にキッズ教育事業部へ。2022年1月からは同部門責任者に就任し、学習教室・幼児教室の運営を再び担当しています。

幼児教育に多角的に携わりたいという入社時の希望をかなえた中村ですが、さまざまな部署を経験したことで、あらためて幼児教育への想いが深まったと語ります。

「メディア事業やWeb制作、AIや知育アプリ開発なども経験しましたが、どの部署でも結局は『この知見やスキルを子どもの教育にどう活かせるか』と考えている自分に気づいたのです。

もちろん、各部署で学んだことは、幼児教育という事業にしっかりと役立っています。たとえば、今後AIは効率的な学習を提供する上で必要になりますし、現代のママ・パパたちはSNSやアプリなどで情報収集するので、その知識も必要不可欠。すべての経験を総動員して、『親子で楽しく学ぶ』を叶えていくのが、今後の私の役目だと思っています」

培ってきたノウハウを受け継ぎながらも、変化することは厭わない

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50年以上にわたって培ってきた幼児教育ノウハウをもとに、楽しく学べる質の高い教育を提供しているキッズ教育事業部。しかし、その長い歴史の中で、幼児教育を取り巻く環境も大きく変化してきました。

「入社した20年以上前とは、保護者の方のニーズも解決しなければいけない課題も大きく様変わりしているので、リサーチしながら変えるべきところは変えていかなければなりません。たとえば、都市部を中心に共働き世帯が増えたことで、お預かりニーズが増えていたり、土曜日のクラスの受講希望者が増えていたりします。

また、以前は兄弟姉妹で同じ習いごとをさせるご家庭が多かったのですが、比較できる教育サービスが多くなってきた最近では、『子どものために最善を選んであげたい』といった希望から、同じ種類の習いごとであってもそれぞれの子どもの性格に合った教室を選ばれる親御さんが少なくありません」

そうしたニーズの移り変わりを前に、積み上げてきた歴史を守りながらも、中村は変化することを厭いません。

「幼児教育を取り巻く環境が変化していく中で、長時間のお預かりニーズに応えたり、土曜日クラスを拡充したり、個人レッスンを設けたりと、サービスを変えていくことも必要だと思っています。コロナ禍には、教室は休業せざる得ない状況でも学びを途絶えさせてはいけない、という想いでドラキッズのオンライン授業を開始しました。

一方で、昨年からは絵が苦手な子でもお絵描きに挑戦できる『コドモエアトリエ』という授業を新たに追加。創業時から一貫して大切にしてきた“楽しく学ぶ”をキーワードに、新しいコンテンツの構想も日々練り続けています」

歴史ある会社として守っていくことと、変わっていくこと。そのバランスを保つのは、社員一人ひとりの視点です。

「新しいことをするためには、会社の固定観念にとらわれない新しいメンバーや若いメンバー、社外のパートナーの発想に耳を傾けていく必要があると思います。

一方で、トレンドに合わせて何もかもを変えようと右往左往していると、ブランドとしての信頼が揺らいでしまうのも事実。会社として守り続けなければいけないことについては、多くのベテランの方が理解しています。それぞれの視点で役割を果たしていただきつつ、現状維持ではなく進化していけるといいですね。

私自身もメンバーの意見を積極的に聞くことをさらに意識すると同時に、『従来のやり方を疑ってみてほしい』とも伝えていきたいと思っています。そうしないと、なかなか新しいアイディアや発想が生まれませんから」

そんな理想の組織をつくるために、中村がともに働きたいと考えるのは、相手を尊重しながらも主体性を持っている人。次のように続けます。

「教室で楽しいまなびを提供する先生方、生徒さんを募集する役割の方や教室運営に携わる方、バックオフィスを担当される方など、本当にいろいろな方がいて成り立っている会社ですので、相手を尊重できることがとても大切です。欲を言えば、さまざまな方と円滑なコミュニケーションを取りつつ、『自分はこうしたい』という主体性を持ち合わせている方なら理想的ですね。

幼児の主体性を育む授業を展開しているのに、われわれが主体性を持ち合わせていないでどうするというところです。これからの時代を担う子どもたちの後押しができる、やりがいのある教育サービスのお仕事です。想いを持って取り組んでいただける方と一緒に働けることを楽しみにしています」

※ 記載内容は2023年8月時点のものです