「問題ありません」の一言が、入社を決意させてくれた
幼い頃から英語を学ぶ環境が身近にありました。両親の方針で小さいときから英語に親しみ、高校3年生のときには英検1級を取得しました。大学に入ると、環境が大きく変わったことで、それまで比較的怠惰だった自分が学業に強く打ち込むようになりました。2年次の成績では学科の優秀学生として表彰していただき、4年次には卒業論文がゼミの最優秀論文に選ばれました。目標を定めて粘り強く取り組む姿勢は、この頃に培われたと感じています。
就職活動では、まず「障がいの有無にかかわらず、安心して長く働き続けられる環境があること」を最初の軸に置いていました。私は生まれつき肢体に麻痺があるため、転んでけがをしやすかったり、障がいのない方に比べて早く歩けなかったり、身体が強張りやすく筋力も低いために疲れやすかったりします。このような事情から、日々多くの方に助けていただきながら生活しています。そうした立場だからこそ、間接的にでも社会に恩返しがしたいという想いがあり、将来にわたって人々の暮らしや社会基盤を支える事業を展開している企業を中心に見ていました。加えて、学生時代から積み上げてきた英語力を活かせる可能性があること、海外事業にも取り組んでいることも軸のひとつでした。そのため、建設業や住宅設備など、社会インフラに関わる業界を中心に企業を探していました。
選考の場では、自分の障がいについて率直にお伝えしながら、障がいのある方を受け入れた実績があるか、実際の職場でどのような配慮を受けられるかを確認することを大切にしていました。中には「これから障がい者雇用や支援体制を整えていきたい」と話す企業にも多く出会いました。それ自体はとても大切なことだと思いますが、初めて社会人として働く自分にとっては、すでに受入れや支援の実績があり、相談しながら働ける環境があることが大きな安心材料でした。
清水建設の選考でとくに印象に残っているのは、私が「お盆の上に物を載せて運べません。倒れてカップを割り、お茶もこぼしてしまうかもしれません。お茶くみができなくても事務員として働けますか」と率直に申し上げた場面です。そのとき、「問題ありません」と、ごく自然に受け止めていただきました。加えて、「梅澤さんの能力を最大限生かして一緒に働いてほしいです」と言っていただき、その言葉がとても印象的で、一人ひとりの状況を踏まえながら、成果を評価していただける会社だと感じました。障がいのある社員が実際に働き、活躍している実績があること、そして人を支え社会に必要なものをつくる建設業の仕事に魅力を感じたこと。この二つが重なって、入社を決意しました。
「わからないことを一つずつ」入社研修から積み上げてきた実務への土台
入社後はまず研修期間があり、そこで社会人としての基礎を身に付けることから始まりました。研修の中でとくに印象に残っているのが、アンケート調査の集計を担当したときのことです。
当初は「集計作業」と聞いてそれほど複雑なものとは思っていなかったのですが、実際に取り組んでみると、正確性と効率の両立が想像以上に難しく、作業に時間がかかってしまいました。「どうすればもっとスムーズに進められるだろう」と試行錯誤しながら、作業の進め方を工夫し、何から処理すべきかという優先順位を意識する大切さを学びました。この経験は小さな出来事のように見えて、今の自分の働き方にも影響を与えています。期限を守ること、正確に仕上げること、どちらも妥協せずに向き合う姿勢は、あのときに培ったものだと思っています。
研修を経て実際の業務に就いてからは、事務業務を中心に担当してきました。データの入力・整理・確認といった日々の積み重ねが組織の動きを支えている、そのことを肌で感じながら仕事に向き合っています。
入社後にギャップを感じたかと聞かれると、正直なところ大きなギャップはありませんでした。実家が自営業だったこともあり、家族が仕事に向き合う姿を身近に見て育ちました。その影響もあってか、社会人として働くことは「常に学び、成長し続けること」だと、入社前から自然と考えていたように思います。
だから入社後も、「わからないことがあって当然」という感覚で、一つひとつ丁寧に解決しながら対処法を身につけてきました。うまくいかないことがあっても「次はどう動けばいいか」を考えることができたのは、そういった心構えがあったからかもしれません。
振り返ると、研修期間からこれまでの経験が積み重なって、今の自分の仕事への向き合い方がつくられてきたと感じています。一歩一歩は小さくても、それが確実に自分の土台になっている。そのことを、日々の業務の中で実感しています。
経理業務での苦い経験と、頑張っている姿を見ていてくれた幹部からの一言
現在は、土木国際支店の土木生産計画部(営業部門と現場・技術部門などをつなぎ、新規案件の受注を支援する部署)で事務を担当しています。支払いに関する伝票処理や書類の取りまとめ、派遣・購買契約に関する事務手続きをはじめ、海外への書類発送、名刺の発注、会議室の手配、部長のスケジュール調整、経費申請の補助など、部署運営に必要な業務を幅広く担っています。事務担当が私一人ということもあり、可能な限り優先順位を付けながら、正確かつ着実に仕事を進めることを常に意識しています。
この仕事の性質上、「目立つ成果」よりも、日々の業務を滞りなく進め、皆さんが本来の業務に集中できる環境をつくることに価値があると感じています。そんな中でとくに嬉しかったのは、経理部の方から仕事の正確さを評価いただいたと聞いたときのことです。また、部門幹部の方から直々に「君がいつも頑張っているのを皆が見ているよ」と声をかけていただいたことも、忘れられない出来事です。職位の高い方からそのようなお言葉をいただけるとは思っておらず、驚きと嬉しさが一緒にこみ上げ、その日の帰りの電車の中で思わず涙ぐんでしまいました。
一方で、苦い経験もあります。入社2年目の頃、作成した支払い伝票に不備があり、現場をはじめ支払いや予算に関係する多くの部署の方々にご迷惑をおかけしてしまいました。大きな金額を扱う業務でしたので、当時は本当にクビになるかもしれないと思い、しばらく何を食べても味がしなくなりました。周囲のフォローもあり、現在も働き続けることができていますが、それ以来、不明点は早めに書面にまとめたうえで複数人に確認すること、提出前には時間をあけて必要項目を複数回チェックすることを徹底しています。この経験を通じて、正確性だけでなく、周囲と連携しながら確認する姿勢が事務業務では不可欠だと身をもって学びました。
大変さを感じる場面もあります。海外現場と国内の協力会社の間をつなぐ窓口を担当しているため、関係者との連絡や書類の受け渡しを円滑に進めるための調整が必要となることがあります。時差のある国の責任者から請求書の承認を受ける場合や、書類を早急に現場へ届ける必要がある場合には、関係者と早めにスケジュールを確認し、計画的に対応するよう心がけています。そのような中で、自分の仕事が部署や関係者を支えていると実感できる瞬間に、やりがいを感じています。
「完璧な人間はいない」。強みを磨き、対話で切り拓く自分らしいキャリア
まず短期的な目標としては、現在担当している業務の精度とスピードをさらに高め、部署の皆さんに、より安心して任せていただける存在になることです。業務の流れを整理し、手続きや情報共有をより円滑にする工夫にも取り組んでいきたいと思っています。日々の業務を少しずつでも改善し続けることが、部署全体への貢献につながると信じていますし、そうした積み重ねこそが自分自身の成長にもつながると感じています。
当社にはパラアスリートとして活躍しながら働く方や、車いすを使用しながら工事現場で工夫を重ねて働く方など、多様な社員がそれぞれの強みを活かして活躍しています。一人ひとりが「挑戦したい」と考えたときに、対話を通じて方法を一緒に考えてくれる土壌があると感じます。障がいを理由に可能性を狭めるのではなく、それぞれに合った形で挑戦を続けられる環境だと思っています。そういった会社の姿勢があるからこそ、私自身も長期的なキャリアに対して前向きに考えることができています。
参考:
デフリンピック日本代表が挑戦する仕事と競技の両立とは
車いすユーザーになった私の未来への挑戦~共に成長できる環境の中で~
就職活動中の方や、障がいのある方で、自分らしく働きたいと考えている方へ伝えたいのは、自分にできること・得意なことを理解し、それを着実に伸ばしていくことが大切だということです。同時に、苦手なことや必要な配慮についても、具体的に伝えることが安心して働くための第一歩になります。
障がいのあるなしにかかわらず、この世に完璧な人間は存在しないと思っています。大切なのは、自分の強みを通じて周囲や社会にどのように貢献できるかを考え続けることではないでしょうか。対話を重ねながら、自分らしく働ける場所を見つけてほしいと思います。そして、もしこの記事を読んでいる方が少しでも「挑戦してみたい」と感じてくれたなら、その気持ちを大切にしてほしいと心から思います。
※記載内容は2026年9月時点のものです

