周囲に支えられながら積み重ねた努力。壁を乗り越え掴んだコンサルタントとしての自信
中学では柔道、高校ではテニスに打ち込み、大学では登山サークルに所属して山ごもりをするなど、幼いころからスポーツを通じて集団におけるコミュニケーション能力や意思決定力などを育んできました。
また、高校時代から海外に興味を持つようになり、大学では国際教養学部という、講義の8割が英語で行われ、海外留学が必修の学部に入りました。1年間のドイツ留学も経験し、海外との文化や言語の違いを通じて多様な価値観があることを知りました。そして大学院でも国際関係学を専攻しました。
就職活動では地元での就職も検討しましたが、若者離れが進み企業の選択肢が限られ、魅力的な仕事が見つからなかったことから、そのような状況自体をいずれ自身で変えたい、地元を元気にしたいと思い、まずは視野を広げるため様々な業界と関われる仕事を中心に選考を受けました。
最終的に、コンサルタントとして多くの企業と関わりながら知見を広げ、地域の活性化にも貢献できると考えて、富士通総研に入社しました。
入社後は、富士通グループが推進するSAPビジネスの拡大をミッションとする部門に自ら希望して所属し、製造業のお客様を中心に、業務改革やERP導入を見据えた構想策定、実行計画の立案を担当しました。
周りの同期からは「あらかじめ決められた実現手段に誘導することはコンサルと言えるのか?」と揶揄されることもありました。しかし私は、アイデアを実現する手段が整っていることや、運用までを視野に入れた提案ができることはむしろ魅力だと感じていました。構想や計画を“絵に描いた餅”で終わらせないよう、どう実現するのかの手段も考慮して描き、クライアントが自ら実行できる状態にまで落とし込めるからです。
とはいえ、当時新卒1年目の自分はSAPの専門知識もなく、お客様の業務内容にもまだまだ詳しくありませんでしたから、高度な会話についていくことに精一杯で、「自分はコンサルタントに向いていないのではないか」と悩むことが度々ありました。
そのような最初の壁を乗り越えられたのは、周囲の支えがあったからです。プロジェクトを一緒に進める先輩やPM(プロジェクトマネージャー)に悩みや不安を素直に打ち明けられる環境があり、ことあるごとにアドバイスをもらっていました。
特に、「どんな仕事も選り好みせず吸収し、まずは自分でやってみてほしい。わからないことは教えるし、最後までサポートするから」というスタンスで、師匠のように背中を見せて育てていただけたことが、自身の成長につながったと感じています。
初めのころは、自分で主体的に考えたり人前で話したりすることに苦手意識がありましたが、プレゼンを楽しいと思えるようになったのも、準備段階で多くの方々にレビューをいただき、内容に自信を持てるようになったことが大きく影響しているのだと思います。周囲に助けられながら、自分自身で深く考え抜く経験を通じて、それまで知らなかった新しい自分を発見することができました。
コンサルタントとして大きな手応えを感じたのは、初めてチームリーダーを任されたプロジェクトです。打ち合わせのたびに、「今日の打ち合わせは、本当にこれで締めてよかったかな……?」と不安を覚えながらも、お客様のキーパーソンと何度も密にコミュニケーションを取り、一丸となってプロジェクトを成功に導けたときは、部活動を3年間やり抜いたときのような達成感を味わいました。
キャリアの葛藤が道を開くきっかけに。仕事と育児の両立を模索して見つけた可能性
私が入社9年目の頃、Ridgelinezが立ち上がることになり、私も出向することになりました。出向後は製造業のお客様の業務改革やERP導入の構想立案を担当しました。その後、1年半ほどして富士通に帰任し、すぐに産休と育休を取得。職場復帰後、数か月で再度Ridgelinezへマネージャーとして異動し、現在はBusiness SceinceというPractice(※)に所属しています。
※ Practiceとは:専門領域(業界・ビジネステーマ・技術)ごとに組成されるプロフェッショナルコミュニティのことで、従来の組織体よりも組織間の壁が低いことが特徴です。したがって、業務内容が限定されることがなく、様々なテーマのプロジェクトに携わることができ、Practice間のコラボレーションもしやすく、柔軟な仕事の進め方が可能となっています
育休中は、復帰後の自分が以前のようなパフォーマンスを発揮して働けるのか、正直不安に思うこともありました。以前は、多少の残業は当たり前という働き方をしていたため、復帰後、時間制約ができた自分がどのようにプロジェクトを回していけるのか、生活と仕事を両立させられるのか想像ができなかったからです。
ただ、子どもが保育園にどのくらいでなじめるのか、どのくらい呼び出しがあるのかなども、蓋を開けてみなければ分かりません。まずは、病児保育やベビーシッターサービスに登録するなどできることから始め、余計な想像をして悩まないように心がけていました。
ところが、実際に復帰した後は苦悩の連続でした。リーダーとして3つのプロジェクトを担当しましたが、保育園のお迎えまでの日中の時間はほぼ打ち合わせで埋まってしまいます。そのため、自分で考えたり作業したりするのは子どもを寝かしつけた後……という、今考えても無理のある働き方をしてしまっていました。
こんな働き方をしているのに自分で思っているパフォーマンスが出せず、私はこんなに仕事ができなかったのだろうか、力不足だろうか……と、しばらくは自分1人で悩みを抱え込んでいました。しかし、1人で悩んでいてもらちが明かないと思い、プロジェクトがひと段落したタイミングで思い切ってディレクターに相談したのです。
その結果、ディレクターは私の差し迫った状況を理解し、1つの選択肢を提示してくれました。当時、組織変更に伴いPracticeの人数が急増したタイミングだったということもあり、組織全体の課題となっていた標準化やナレッジ整備を担当する役割を任せていただけることになったのです。
ライフステージに応じた選択を重ね、自分らしいキャリアを
担当することになったのは、組織における共通チーム的な位置付けでナレッジ・メソッドの整備や、整備したメソッドを活用した横断的な商談・プロジェクト支援のほか、富士通のクライアントプロジェクトへのアドバイザリー支援です。
特に、組織内でのナレッジ・メソッド整備の活動はBusiness Science全体としての生産性向上に寄与できていると感じます。実際、私が整備したアウトプットサンプル集やフレーム、Tips集はすでに複数のプロジェクトで活用されており、アウトプットの位置付けや目的、イメージをクライアントや若手メンバーに説明・合意するのに役立った、実際の作成の際に時間が短縮できて助かった、との声をもらっており、クライアントワークのフロントからは外れたものの、最前線の一歩手前で引き続きコンサルタントとして活躍できているのかな、と思います。
私が入社した頃は、子どもが生まれた女性がコンサルタントとして働き続けることは決して簡単なことではありませんでした。そのため、私の働き方のような選択肢が1つできた、というのはとても意義があることだと考えています。
さらに働き方を段階的に見直し、2024年10月からは新しくできた「勤務と育児・介護などの事情を両立させる勤務制度(※)」を利用しています。
※ 勤務と育児・介護などの事情を両立させる勤務制度:Ridgelinezの幹部社員は労働時間管理対象外のため、時間で管理する時短勤務ではなく、職務権限は変えずに業務量の調整(従事率)をすることにより、勤務時間の調整がしやすくなるよう定めた制度
この制度の利用を決めた理由は2つあります。1つは、単純に業務量に制限をかけたかったためです。制度を利用する前は、仕事を頼まれると以前の感覚でつい引き受けてしまい、結果として歯止めが効かなくなっていました。クライアントワークから離れたことで突発的なお客様対応が減り、業務の負担は軽減されたものの、気がつけばまた持ち帰り仕事の時間が増えていたのです。
もう1つは、心理的な理由でした。制度を利用する前は、フロントから離れたこともあり、ほかのマネージャーと比べ組織に対する貢献度合いが下がっていると感じているのに、彼ら彼女らと同じ待遇であることに自分の中で申し訳なさを感じていました。
そうしたこともあり、前述のように、つい仕事を引き受けてしまうという事態にもつながっていたため、明示的に制限をかける、という状態にして、心と体の負担を軽くしたかったのです。
この制度には、マネージャーとしての裁量を担保するため勤務時間に縛りはありませんが、私は自身の生活スタイルと現場の運用を鑑み、「9時15分〜16時30分まで」と設定して働いています。制度を利用し始めてからは、時間外に仕事をすることがほとんどなくなりました。
また、私がこの制度を利用したことで、女性に限らず若手の社員から大きな反響がありました。例えば、以前、私を含む子持ちのマネージャーが激務をこなしている様子を見て、「自分には真似できそうにない」と思っていたという後輩から、「今ではHさんが希望の星です」という言葉をかけられました。「復帰したら私も同じ制度を使うつもりです。お手本にさせてください」と言い育休に入った後輩もいます。
私がどんな働き方を選ぶかは、自分だけの問題ではありませんでした。後輩たちの素直な気持ちを聞いて、マネージャーである私の制度利用前の働き方自体が意図せず後輩たちにプレッシャーを与えてしまっていたことに気づかされました。
私がまだ若手のころ、出産後の女性の多くがバックオフィスに異動するのを目にして、「違うやり方はないのかな」と思っていましたが、実際に育児を経験したり、働き方に悩む後輩から相談を受けたりする中で、「ライフステージに応じた働き方があってしかるべきだ」という想いを強くしました。今は、あえて全力投球せず、ゆるやかに成長する時期や選択肢があっていいと考えています。
学びを、次の世代へ。より働きやすい社会をめざして
Business SceinceというPracticeでは、技術やメソッドはテコであると考えています。レバレッジを利かせることで、同じ人数で出せる価値をあげていくことができます。最先端のテクノロジーを追求している方がいる一方で、蓄積してきた経験や知見をナレッジとして整備してテコとして使えるようにしていく。私が今担っているのは、後者の役割なのです。これまでがむしゃらに働きながら得た学びを、後輩たちに惜しみなく伝えていきたいと考えています。
将来的には……という展望ですが、実は私は、どんなキャリアを歩みたいか明確には描いていません。人生、何が起こるかわからないと思っているので、あらゆる選択肢がある中で、その時自分が望む選択ができる力を養っておきたいと思っています。これが自分にとって面白いとか、興味を掻き立てられるとか、その時の自分なりにチャレンジしたいと思ったことに取り組み、成長し続けていきたいです。
そうしたチャレンジをするなかで、クライアントや社会の課題解決に役立つことができているのが理想ですね。あえて言うならば、私の娘はまだ幼いですが、彼女が社会に出るころには、働きやすい良い会社が増えていてほしいですし、増やしていきたいですね。
労働人口の減少やテクノロジーの進化に伴って、企業の形は否応なく大きく変化していきます。私がコンサルタントとして携わっている仕事は、そうした企業の変化を促す仕事です。娘が企業で働くことを選ぶかはまだわからないものの、彼女の将来も思いながら、今の自分にできることを積み重ねていきたいと思います。
コンサルタントとしてキャリアを築きたい方にお伝えしたいのは、「ひとりで抱え込まないでほしい」ということです。私自身、既存の選択肢だけで頑張ろうとして疲弊した経験がありますが、信頼できる人に相談したことがきっかけで、当初は見えていなかった新たな解決策にたどり着くことができました。
諦める前に、「こういう働き方がしたい」と声を上げてみてください。新しい選択肢がきっと見つかるはずです。もちろん、「自分で新しい道を切り開きたい」という意欲的な姿勢も大切にしてほしいと思っています。
※ 記載内容は2024年12月時点のものです
