試行錯誤の先にあるもの。医療機器の製造を支えるやりがい
──現在の仕事の内容について教えてください。
私は、設備技術に関わる部門に所属しています。主なミッションは、開発部門が企画した製品を工場で生産するために必要な設備の要素技術を開発すること。開発者との要件定義からはじまり、どのような技術を使えば安定した生産ができるか検討した上で、設備の仕様を決めています。
扱っている製品は内視鏡で、私はその中でも「撮像ユニット」と呼ばれる、いわば「眼」の部分の担当をしています。内視鏡の先端部にある非常に小さなパーツであるため、繊細な技術が必要になる箇所です。たとえば接合の技術。組み立ての際は、基本的に接着剤を使用するのですが、接着剤の固まる力で部品が破損したり、洗浄した際に接着剤が溶けることがあったりするため、そうしたリスクを避けられるような接合方法を模索しています。技術の方向性が固まった後は、試作機で製造テストをし、問題なければ工場の設備に反映していくという流れになりますが、その際も小さな製品をいかに精度よく組み立てられるか、マイクロメートル単位で調整をしながら仕様を決めています。
製品に合わせて新たな技術や設備が必要になるため、常に試行錯誤をしていく仕事ですね。
──今の仕事のやりがいをどのようなところに感じていますか?
誰かの助けとなる医療機器の製造に携わっていることが、私のやりがいになっています。設備の要素技術開発とは、絶対的な「正解」がない中で問題の答えを作り上げていく業務です。試作品レベルでは製造ができるけど、工場での安定生産になるとどうしてもうまくいかないといった課題に向き合い、実験を繰り返す中で解決策を見つけ、量産が可能になったときは大きな喜びを感じます。医師やその先にいる患者様の元に製品を届けるための重要な役割を担う仕事だと感じています。
医療×ものづくりの軸でオリンパスへ。自らの手で製品をつくりあげる喜び
──学生時代に学んだことや、オリンパスに入社した経緯について教えてください。
大学では機械工学を専攻し、医療系のテーマを扱う研究室に所属していました。生体適合性を考え「体内で安全に分解される素材」を使ってものづくりをするといった研究の中で、私は生分解性のマイクロニードルを使ってマラリアの薬をつくる研究をしていました。
昔から手を動かしてものをつくるのが好きで、医療系に対する関心も持っていたため、就職活動では「医療分野で、ものづくりができる仕事がしたい」と考え、オリンパスへと入社しました。
──入社後、どのようにキャリアを歩んでこられましたか。
配属当初から現在に至るまで、設備の要素技術開発に関わる仕事をしています。最初は検討用のサンプル作りをするところから始め、その中でそもそも撮像とは何か、どういった仕組みで、どんな風に組み立て、調整をしていくものなのか、医療機器を生産していくためにはどういった課題があるのか、といったことを学んでいきました。
要素技術開発の仕事に携わって感じたのは、技術職の中でも、実際に手を動かしてものをつくることが多い仕事だということ。工場での生産では、製造ラインの方たちが大部分の作業を担いますが、その前段階で、自分の手で製品に触れ、観察し、評価し、生産可能な状態まで作り上げていくという仕事は、ものづくりが好きで、自分で手を動かすことが好きな自分にぴったりの職場だと思っています。
現場・現物・現実──3現主義を通して、答えを見つけていく
──これまでの取り組みで、印象に残っていることを教えてください。
新規のレンズユニットを製造するための接合技術の検討がうまくいったときのことが印象に残っています。オリンパスとしてもこれまでにない製品であり、従来にはない技術を用いて作られるため、撮像の組立においても新しい技術が必要とされていました。
具体的には、レンズユニット内のレンズ同士を接合するときの接着の課題です。接着剤の塗り方が適切でないと周囲に溢れてしまうし、接着剤が足りないとパーツがうまく接合されない。この調整を考えることがミッションでした。そこで私は、手動で接合作業が可能な小さな設備を用いて、接着剤の量と塗布する位置についての条件を検討し、答えを導き出しました。その方法を実際に試してみたところ、担当者に「この条件なら導入しても良さそうだね」とうれしいフィードバックをいただけました。
こうした課題に直面した際は、納得できる答えが見つかるまで試行錯誤を重ねることが多いです。Aの部分の課題を解決すると、その次の工程であるBの部分に新しい課題が出てくるなど、絶妙なバランスのもとに成り立っているケースが多いため、「正解」と呼べるものを導き出すのは簡単なことではありません。ただ私は、答えが決まったことを続けるよりも、新しいことに取り組んでいくことが好きなので、飽きが来ずに楽しくやらせていただいています。
──仕事をする上で大切にしている姿勢はありますか?
「3現主義」です。現場・現物・現実を、自分の目で見て考えるということを大事にしています。たとえば、工場に設備を導入し稼働をしてみたものの、うまく製造ができないという不具合の連絡がきた場合。ヒアリングした情報だけで対策を考えるのではなく、可能な限り現場に足を運ぶようにしています。現物がどのぐらいのサイズで、どういった不具合がどのタイミングで発生しているのか、最初の情報を自分の目で確かめた上で、判断をするようにしているんです。この考えは、入社当初の上司から教わったことなのですが、前提を鵜呑みにせず、いい意味で疑いを忘れない姿勢として常に心がけています。
また、自分のせいだとあまり思い詰めないことも大切にしています。製造の基盤を作るという仕事なので責任も感じますし、明確な「正解」がないからこそ行き詰ってしまうこともあります。そんな時でも、人間には限界も向き不向きもあると考えて、現時点での自分の力不足はしょうがないと割り切り、周囲とコミュニケーションを取って、助けてもらう。そんな気持ちでいることで、解なしの八方ふさがりと思える状況が発生しても、周りの方々の助力を得ながら、前向きに仕事に取り組むことができています。
今後も現場に立ち、目の前の「ものづくり」に実直に取り組み続けたい
──入社前のご自身と比べて、変化したと思うことは?
コミュニケーションを大切にするようになりました。ものづくりというと黙々と職人のように手を動かしていくイメージがあるかもしれませんが、この仕事は1人だと何もできません。たとえば新しいレンズを組み立てるための実験をしたい場合、その製品を担当している部門の方に試作用のパーツをつくっていただく必要があります。求める結果にたどり着くためには、自分に必要なものを背景を含めてしっかりと人に伝えるスキルが欠かせないのです。
たとえ設備の懸念点を発見し、その対策について一生懸命訴えようとしても、部署ごとの専門性が異なれば、問題に対する重要性の認識も異なってきます。とくに相手の専門分野となると、知識の違いから認識の齟齬が生まれてしまうこともあるため、丁寧な説明が必要です。私自身はもともとコミュニケーションは得意な方ではなかったのですが、すれ違いがないよう努力するようになりました。
──最後に、今後の展望を聞かせてください。
まずは現在行っている新製品の設備開発が軌道に乗るまで、引き続き頑張っていきたいです。従来、医療製品の開発期間はかなり長期間にわたるものが多かったですが、最近ではそのスパンがかなり短くなってきており、今後もこのスピード感はどんどん増していくと思われます。その速度に置いていかれることなく、しっかりと対応していきたいですね。
中長期的な観点では、できるだけ長くものづくりの現場に携わっていきたいと思っています。自分自身が手を動かすことが好きなので、マネジメントというよりは、スペシャリスト寄りですね。一つの分野に留まっていると、考えが凝り固まってしまい、課題に当たったときの選択肢が狭まってしまう可能性もあるため、広い意味でものづくりに挑戦することが理想です。目の前のものづくりに実直に取り組みながら、見識を広げ、自分の選択肢を増やし続けていきたいです。
※取材内容は2023年11月時点のものです。

