多岐にわたる業務を同時並行で遂行。大切なのはオーナーシップとコミュニケーション
私は現在法務部に所属し、多岐にわたるさまざまな業務を同時並行で担当しています。
コーポレートの領域(コーポレート・ガバナンス、株主総会、グループの内部管理などに関連する領域)では、株主総会招集通知の作成をはじめとする株主総会の準備・運営に関わる業務に従事しており、その一つとして現在、株主総会の運営に関連するシステムを新たに導入するプロジェクトでリーダーを務めているほか、株式事務や社内決裁の受付審査なども担当しています。
契約をはじめとする事業推進支援の領域では、法務部は社内の各部門から相談を受けて、契約のドラフト・レビューや法務的なアドバイスを行いますが、私は主にマネジメント層として、メンバーが主担当で遂行する案件をチェックしています。また、契約書のひな型などの業務基盤の整備も担当しています。
コンプライアンスの領域では、主に表示関係を担当し、製品パッケージや広告、キャンペーンの内容が景品表示法などの観点から問題がないかをチェックしています。
このほかにもトラブル、紛争案件や、M&A、グループ再編の案件に対応したり、グループで付保する主要な損害保険について保険会社との折衝も含めた統括管理を担当したりと、業務内容は非常に多岐にわたります。
法務部は15人ほどの組織で、部長、部長補佐の下に、私のようなマネジメント層やメンバーが配置されています。部の下に課のような小組織があって担当領域が分かれているわけではなく、部内での担当の割り振りという形で、全員がさまざまな領域の業務を同時並行で進めている形ですね。
基本的に、各業務や案件にはマネジメント層とメンバーが最低1人ずつアサインされて小さなチームを組んで対応します。必然的にマルチタスクになるため、常に優先順位やタスクごとの期限を意識しながら遂行するように心がけています。
私が普段、仕事をする上で大事にしていることが主に2つあります。まずは、オーナーシップを持って取り組むということです。担当する業務・案件においては、リソース管理も含めたマネジメントをしっかり行い、責任を持って結果・成果にコミットする姿勢が非常に重要だと考えています。
2つめはコミュニケーションです。どのような業務でも、突き詰めればコミュニケーションの積み重ねで成り立っていると考えています。裏を返すと、業務上で何かがうまくいかない場合、コミュニケーションに起因していることが多いということです。そのため日々、小さなコミュニケーションを適時・適切に積み上げていくことが、あらゆる業務を成功に導くカギだと思っています。
M&Aの契約交渉に参加。役員などによるハイレベルなやりとりに感嘆
これまでのキャリアを振り返ると、私は大学で法律を学んだ後、2009年に新卒で大手電機メーカーに入社し、一貫して法務部門で働きました。法務パーソンとしてのスキルやマインドのベースは前職で培われたと思っています。
転職を考えたきっかけは、東南アジアの子会社の法務機能を強化する取り組みでした。その会社には法務の専任者がいない中で、法務に関わる活動を推進するリーガルマネージャーという非専任の担当者を選任してもらい、その方を動機づけしつつ、法務に関わる活動計画を一緒に立案し、その実行をフォローしていました。
その中で、海外子会社のトップに対し、活動計画の内容をリーガルマネージャーと一緒に報告する機会がありました。当時の私は、契約やコンプライアンスの一部分のみを担当する立場だったのですが、経営者から法務に対する期待は、契約まわりだけ、特定の法領域だけ、といったことではなく、会社の法務課題全般に対してどう対処していくのかということにある、ということを体感したのです。当時の自分と、経営者の視座に大きなギャップがあることを感じました。
そこから、自分としても、一つの会社や事業における法務課題全般を総合的にマネジメントできるようになりたいと強く思うようになり、幅広い領域の業務を経験できる環境を探す中で、今の会社に入社しました。
契約のレビューをはじめとして、法務の業務においても、自社の製品・サービスに関する一定の知識や、商流・物流・カネの流れなどへの正確な理解が求められる場面は多くあります。ただ、私の場合、働く業界は変わったものの同じ製造業であり、製品開発から調達、製造、販売といったプロセスは共通していたため、キャッチアップしやすい面はあったと思います。
また、当社グループのBtoCの製品について言えば、小売店などで実際に手に取ったり、買ってみたりと、自分自身が消費者の立場に立つことも容易にできるため、まったく異なる業界からの転職者であったとしても比較的キャッチアップしやすいのではないかと思います。
一方で、食品を扱っている当社グループの品質や製品安全に対する意識の高さ、問題が発生した際の対応の厳格さには、最初は驚くこともありましたね。
入社後で印象深い出来事は、ある企業を子会社化したM&A案件の対応です。M&A案件においては、スキームの検討、デューデリジェンス、契約、競争当局への届出、開示、クロージング対応、PMI、情報管理などの場面において、法務に期待される役割があるため、法務部も必ず関わります。
株式譲渡などの契約への対応としては、交渉すべきポイントや交渉戦術を社内関係者や社外の弁護士などとも協議した上で、ドラフト・レビューを行い、相手方との交渉のためのロジックを整理するなどして、通常なら交渉担当の方の側面支援をするケースが多いです。しかし本件では、さまざまな事情や巡り合わせもあり、契約交渉に当社の役員や事業責任者などと共に参加することになりました。
私の役割としては、当社側が希望する契約条件やその理由についてロジカルに説明するとともに、相手方からの質問や反論などに対して適宜回答するというものでしたが、事前準備は大変でした。相手方からの質問や反論を予測した上で、説明・回答する内容を表現レベルまで細かく練り、役員や事業責任者などとも交渉戦術を調整するなど入念に準備して、乗り切りました。
事前準備も含めて非常に勉強になりましたし、交渉の場で、役員や事業責任者による、相手方との肚(はら)の探り合いや駆け引きのようなハイレベルなやりとりを生で見ることができたのは、とても貴重な経験でした。交渉が終わった後、役員や事業責任者から、説明の仕方や相手方からの質問に対する受け答えについて褒められたことは大きな自信につながりましたね。また、準備さえ周到にしておけば本番でも恐れることはないということを体感しました。
電子契約の導入に注力。ゼロからイチを生み出す挑戦はとてもエキサイティング
過去の仕事では、日清製粉グループとしての電子契約の導入に関わったことも心に残っています。
電子契約は、コロナ禍に入る少し前から急速に普及し始め、契約相手先から電子契約での締結を要望されることが徐々に出てくるなど、社内からの要請が高まってきたこともあり、法務部と情報システム部門が連携して当社グループでの導入を検討することになりました。
紙の契約書よりも事務手続きの効率化やスピードアップ、印紙税の節減などを見込める一方で、法的な懸念もありましたし、導入にあたってどういった課題があるのか、何を決めなければならないかを洗い出すところからスタートしました。
たとえば、電子契約システムの選定に関しては、ベンダーの評価やシステムの利便性はもちろん、セキュリティ、グループ単位でのアカウント管理の容易性、電子帳簿保存法への対応、サポート体制などの検討課題がありました。
また、契約書はトラブル・紛争が発生した際に契約当事者間の合意事項の証拠になるという機能を持っていますが、電子契約の証拠力について、法令調査を行い、法務の専門家ではない経営陣なども理解できるようにわかりやすく整理して報告し、納得を得なければなりません。
導入後の運用ルールとしては、どのような契約について電子契約の利用を認めるのか、電子署名を行う契約名義人のルールをどうするか、契約相手先から当社グループが導入するシステム以外のシステムでの電子契約締結を求められた場合はどのような基準で可否を判断するのか、といったことをゼロから検討していきました。
また、電子契約の導入についてはグループ各社でも温度差があり、導入時期や運用ルール、費用負担などについても、各社の意見を踏まえながら調整を図りました。
これらのさまざまな課題に対して、優先順位をつけながら対応、方向づけをしていかなければならず、課題によって調整する部門もさまざまでしたが、一つひとつ整理し、目標として定めたスケジュールも考慮しながらマネジメントを続けていきました。
最後は海外研修に出るタイミングと重なったため、導入される瞬間を見届けることはできませんでしたが、新しい仕組みを学びながら検討し、仮説を持ちながら案を作って関係者と合意形成を図っていくという、ゼロからイチを生み出すプロセスはとてもエキサイティングでしたね。この導入プロジェクトの経験は、今進めている株主総会の運営に関連するシステムの導入対応にも活きていますし、今後も、業務の効率化や高度化などにつながるシステムの導入案件には積極的に関わっていきたいと考えています。
電子契約の導入に携わった後は渡米し、約1年半、研修に臨みました。現地のロースクールに通い、学位を取得した後にニューヨーク州の司法試験を受験し、無事合格。続いてアメリカにある当社グループの会社にトレーニーとして身を置かせてもらい、アメリカでの法務実務や現地のビジネス、アメリカの企業文化などを学びました。
これは当社の海外派遣制度の一環で、法務部では2、3年に1回程度の頻度で、メンバーが派遣されています。私の場合、もともと関心を持っていたところに上司からチャレンジしてみないかと打診がありました。語学力を強化するための取り組みとしてはもともと、会社が提供する自己研鑽プログラムの一つであるオンライン英会話を利用していましたし、ロースクールへの入学に必要なTOEFLスコアを取得するために、会社の補助を受けて語学スクールにも通わせてもらいました。
現地ではアメリカの法律やその背景、理論などを学ぶことができ、貴重な財産になりました。でもそれ以上に、さまざまな国から集まった学生と一緒に授業を受け、グループディスカッションをしたり、グループでの発表に向けて協力して準備したりと、異文化協働を経験ができたことが最大の収穫だったと感じています。
いざという時に頼りになる・頼られる人に。部門横断的にリーダーシップを発揮したい
私が将来的にめざす姿は、「いざという時に頼りになる・頼られる人」です。M&Aなどの重要な交渉の佳境の局面やトラブル、紛争への対応、危機管理対応といった局面においては、判断に与えられた時間が限られていることや、ときには判断のよりどころとなる情報が不十分な状況だったとしても、次のアクションを決めなければいけないことがあると思います。
そんな場面でも部門横断的にリーダーシップを発揮し、状況や課題を整理した上で、説得力を持って経営陣に対して的確な提言を行い、重要な意思決定に影響を与えられる存在になりたいと考えています。
めざす姿に近づくためには、ひと言で言うと、総合力をもっと磨いていかなければならないと思っています。法務の専門性としてはこれまでに培ってきたものはあるものの、まだまだ足りない部分も多いですし、変化の激しい時代ではその専門性も常にアップデートしていかなければなりません。
また、部門横断的にリーダーシップを発揮していくためには、リスクマネジメントや危機管理、ファイナンス、テクノロジーなどさまざまな周辺領域の知見も一定程度必要ですし、加えて、リーダーシップやコミュニケーション力、影響力といったヒューマンスキルももっと高めていかなければなりません。そういう意味では終わりのない自己研鑽が求められており、高い目標だと思いますが、努力を続けていきたいと思います。
最後に、当社に興味を持ってくださった方々へのメッセージとして、法務部の3つの魅力をお伝えします。まずは部内が小組織に分かれておらず、全員がさまざまな業務を分担しながら対応するので法務として幅広い経験を積むことができます。
2つめとして、ホールディングス体制なので多種多様な事業に関わることができます。主要3セグメントの製粉事業、加工食品事業、中食・惣菜事業は食品を扱うという点では同じながらもそれぞれに特徴が異なりますし、食品以外の製品・サービスを扱うグループ会社もあるので、この点でも幅広い経験ができると感じています。
3つめとして、経営陣との距離が近く、担当者レベルであっても役員に直接報告や相談をする機会がよくあるので、高い視座や経営のダイナミズムを肌で感じることができます。
このような環境で、幅広い経験を積みながら成長したいと考えている方々と共に仕事ができる日を心待ちにしています。
※ 記載内容は2025年2月時点のものです

