学生時代の知見を「食」へつなげる。小麦粉という変幻自在な素材に魅せられて
私のキャリアの原点は、大学や大学院で学んだ機械・情報工学にあります。研究室では自律型ロボットの制御プログラム開発に取り組み、「いかに複雑なものを効率的に動かすか」というロジックを追求してきました。
就職活動は二つの軸で行いました。一つは、民間企業というダイナミックなフィールドで自分が学んできた技術や知見を活かし、価値を生み出したいという想い。そして、もう一つは「食」に関わる仕事に携わりたいという想いです。父は野菜のバイヤー、母が料理研究家という、幼い頃から食が身近にあった私にとって関心のある分野で、かつ社会に必要不可欠なインフラの一つだと考えたからです。
そして、食品メーカーを幅広く見て回る中で、私の好奇心を最も強く刺激したのが「小麦粉」という素材でした。小麦粉は、それ自体が完成された製品ではなく、パンやうどん、パスタ、お好み焼きなどあらゆる形に姿を変えられる幅広い汎用性と可能性に強く惹かれました。
さらに、工学的な視点で見ても非常におもしろさを感じました。流体のような性質を持ちながら、同時に固体としても振る舞う。そんな小麦粉の持つ「変幻自在な複雑さ」を制御する機械やプロセスに興味を抱き、今までやったことがない分野へ挑戦できることに心が動いたのです。
数ある企業の中から日清製粉ウェルナを選んだ決め手は、業界トップクラスのシェアを持つ企業であるという点でした。規模が大きな会社の方が、広い領域で仕事ができて、社会に与える影響も大きいと感じたからです。
そして、食品業界は自動車などの精密機械業界に比べると機械化や自動化の伸びしろが大きいことを知り、学生時代に学んでいた経験を活かして自動化に携わりたいという想いが強く芽生えました。
食という社会のインフラを支える仕事。そして、技術を活用して工場の自動化を進められる仕事。その両方を実現できる場所として、私は日清製粉ウェルナへの入社を決めました。
工場の運営を司る生産技術。DX担当としてインフラから塗り替える
入社後、研修を経て館林工場の生産技術職に配属され、これまで4年間キャリアを積んできました。工場には大きく分けて、製品の品質を担保する品質管理系、資材や工程を管理する業務系、そして私が所属する生産系の3つの機能があります。
生産技術のミッションは、一言で言えば「人・設備・コスト・安全を考えながら、工場全体の運営を最適化すること」です。設備の定期点検やメンテナンスの年間計画を立てるだけでなく、人の安全や環境負荷に配慮した生産体制の構築、そして大きな挑戦となる設備導入など、その業務は多岐にわたります。
館林工場では、小麦粉に塩や砂糖などの副原料を混ぜてプレミックス製品を作る「製造エリア」と、完成した製品をパッキングする「包装エリア」がありますが、私はその両方を経験しました。とくに、製造エリアは大規模な生産設備でありながら、内部には緻密な制御プログラムが組み込まれており、大学時代の知見がダイレクトに活きる場面も多かったです。
現在は、2024年に新設された「DX担当」として、工場の次世代化をメインで推進しています。具体的に取り組んでいるのは、工場のインフラ整備です。食品工場のネットワークは、セキュリティや制御の関係上、外部と隔離されていることが多いのですが、まずはそこを整備し、データを可視化できる環境を構築しています。直近では、これまで現場で「紙」に手書きしていた帳票類をすべて電子化するツールの導入に取り組んできました。
仕事をする上で私が最も大切にしている価値観は、仕事の先にいる「人」のことを考えることです。 DXや設備投資において、いくら数値的な効率化が進んだとしても実際にその設備を使う現場の社員が「使いにくい」、「以前より安全でない」と感じるようでは、それは本当の改善とは言えません。
この価値観が芽生えたきっかけは、2年目の時に初めて大きな投資案件で機械設備の更新を担当した時の経験です。更新の計画を立てる段階で、先輩方から「ここは危険じゃないか」、「ここはどうなのか」などさまざまなご指摘をいただきました。その時に、実際に機械を使う人のことをしっかり考えなければいけないと強く感じ、それ以降はこの価値観を持って仕事に取り組むようになりました。
効率化を図ってコストパフォーマンスを高めるのは、現場の負担を減らして誰もが安全かつ快適に働ける仕組みにすることが前提です。機械設備を導入して終わりではなく、現場の方たちと密にコミュニケーションを取り、「導入してくれたおかげで、仕事が楽になった」と言ってもらえるような関係をめざしています。
マルチタスクの荒波を乗り越えて。工場を自らの手でアップデートできる醍醐味
入社後に直面した最大のギャップは、想像していた以上に多岐にわたるマルチタスクでした。学生時代の研究では、一つのテーマを深掘りすることに集中できましたが、社会人となり工場のエンジニアの一人となった今はそうはいきません。
設備のトラブル対応をしながら数カ月先の投資計画を練り、同時にDXプロジェクトの打ち合わせをして……。入社してすぐに四、五件のタスクが発生し、今では常に数十個のタスクが同時並行で動いています。正直に言うと、慣れるまでは2年ほどかかり、タスク管理の甘さから工事の発注が漏れそうになって冷や汗をかいたことも一度や二度ではありません。
そんな私が苦境を乗り越えられたのは、上司と先輩の存在があったからです。一人は直属の上司である次長。毎週の面談で悩みはないか気にかけてくださり、パンクしそうな私のタスクを一緒に整理し、優先順位の付け方のアドバイスをしていただきました。
もう一人は、隣の席にいたグループのリーダー的な先輩です。その方は、タスク管理に長けた方でした。先輩のやり方から学び取り、自分のものにしていくことを意識し、私は先輩の手帳の使い方から仕事の手順、進め方などを観察し、真似することから始めました。
そうして経験を重ねる中で、仕事における段取り力が上がったと感じます。何かをやりたい時に、何を用意すればいいか。どういう納期で何を発注すべきかを考えられるようになりました。また、現場の皆さんと深く連携し、どうすれば使いやすくなるかフィードバックを聞きながら組み上げていく能力も身に付きました。
今の仕事の最大の魅力は、若手であってもやってみたいと提案すれば、会社が本気で向き合ってやらせてくれる裁量の大きさにあります。工場にまだない新しいものを入れられることがおもしろく、今まで使ったことのないツールを導入したり、自分で組んだツールを実際に見せて「これはすごく使いやすい」と好評をもらったりすると大きなやりがいを感じます。
実際に私が「このDXツールを入れたい」と提案した際、工場長や経営層の方々は「効果があるならやってみよう」と二つ返事で背中を押してくれました。伝統ある巨大な工場を、自分の手で新しい形にアップデートしていく。この手応えは、日清製粉ウェルナだからこそ味わえる醍醐味だと感じています。
「日清製粉グループのDX第一人者になりたい」。世界に誇る「日本の食」を支え続ける
入社5年目を迎える今、私が見据えているのは「日清製粉グループにおけるDXの第一人者」という自身の将来像です。DXのスキル自体はIT企業でも学べますが、プレミックス工場の特殊な機械構造や、原料から製品に至るまでの独自の工程を理解した上でITを実装できる人材は、決して多くないと感じています。
今後は、現在いる館林工場という「点」での経験を、本社や研究所といった横のつながりへと広げ、線、そして面で捉えられるようにしたいです。そして、工場の現場を熟知しているからこそ描ける、地に足の着いたDXをグループ全体のスタンダードにしていきたいと考えています。
また、事業全体としてはグローバルへの挑戦が加速しています。「小麦粉」という国や文化を超えて愛される素材を、いかに高度な生産技術によって安定供給し続けるか。日清製粉グループが製品を通して起こす社会のインパクトに携われていることを誇りに思い、今後も貢献していきたいです。
最後に、就職活動をしている学生の皆さん、そしてエンジニアとして新しいフィールドを探している皆さんに伝えたいことがあります。工場の生産技術という仕事は、「飽きることがない」仕事だと感じています。安全や予算、生産の管理まで毎日が変化と挑戦の連続です。そして、何より私たちが作っているのは、日本中の食卓を支え、都市部から地域の店舗まで幅広く届けられる、誇れる製品です。
もし、決められたルーティンではなく、自分の意志で現場を変えていきたいという方なら当社の生産技術は魅力のある舞台です。生産技術以外にも、自分の適性に合った職種で応募することも可能です。まずは、企業のファンになってみてください。私もスーパーへ行き、製品の裏側を見て、そこにどんな技術が注がれているか思いを馳せた経験があります。
そして、入社した後は、聞くことを恐れないこと。1年目の特権を使い倒して自分だけの専門性を磨いていってほしいです。「やりたい」と願う若手の背中を全力で押してくれるこの場所で、皆さんと一緒に食の未来をアップデートできる日を楽しみにしています。
※ 記載内容は2025年12月時点のものです

