メンバーと共に成果を追求する喜び。基礎研究を通じて、探究の楽しさを伝えたい
私が所属する健康機能研究室では、日清製粉グループが扱う小麦粉などの素材について、健康機能性を科学的に検証する研究に取り組んでいます。そこから得られたエビデンスを活用し、事業会社の製品開発や販売に貢献することが私たちのミッションです。
その中で私は、約10人のチームをリードし、研究全体のマネジメントを担当しています。具体的には、研究テーマの設定から業務のアサイン、進捗管理、実験計画の立案、結果の考察まで、研究が円滑に進むようメンバーを支援することが私の役割です。
マネジメントにおいて意識しているのは、一人ひとりの強みを活かしながら、チームでの相乗効果を発揮することです。研究は、個人の深い探究が重要であると同時に、メンバーとのディスカッションを通じてチームだからできる成果を追求することが大切です。私たちのチームは、異なる分野で経験を積んできた多様なメンバーで構成されており、それぞれの強みを活かして成果の最大化を図っています。
また、私はメンバー全員に研究の本質的な楽しさを味わってもらいたいという想いがあります。未知の領域に挑み、仮説検証を繰り返す中で期待通りの結果が得られる喜びはもちろん、予想外の結果から生まれた疑問を探究することも研究の醍醐味です。それが味わえるのは、基礎研究も重視し、長期的な視点で価値創造に取り組む日清製粉グループの企業風土があるからだと言えます。
私たちが研究している小麦粉という素材は、人々が日常的に食するものです。その健康機能性を明らかにすることで、社会に貢献できることが仕事の魅力だと感じます。そして、メンバーが成長していく過程を見守ることは、マネジメント業務のやりがいです。メンバーから学ぶことも多く、日々新たな発見があることにおもしろさを感じています。
製造現場から海外派遣まで幅広く経験。新しい分野に挑戦し、築いてきたキャリア
大学院で農学研究科に在籍していた際、小麦は長く研究されているにもかかわらず、未解明な点が多いことに興味を持ちました。そこから小麦粉という汎用性の高い素材を通じて社会に貢献したいと考えるようになり、日清製粉グループに入社しました。
2009年に入社後は、日清製粉(株)千葉工場で1年間、小麦粉製造の品質管理を担当しました。業務用の小麦粉は用途・等級別に非常に多くの製品が販売されており、その製造プロセスを学べたことは、現在の研究活動に大いに活かされています。
工場勤務を経て、(株)日清製粉グループ本社の基礎研究所へ異動してからは、外部の研究機関と共同で遺伝子組換え小麦を検知する技術の開発に取り組みました。「安全性の確保」「法令遵守」「消費者の選択権保護」といった観点からも非常に重要なテーマですが、私にとってこれまで知見のなかった領域でした。そのため一から勉強する必要があり、共同研究先の専門家の知識レベルに追いつくのに最初は苦労しました。それでも貪欲に学び続け、最終的には開発した技術が実際に検査法として活用されることになり、自身の研究が社会の役に立つ喜びを感じました。
その後は日清製粉(株)つくば穀物科学研究所へ移り、小麦粉生地の物性に影響を与える成分について研究。その過程で、アメリカのノースダコタ州立大学へ2年間派遣され、最先端の技術と考え方を吸収しました。
海外派遣は、正直に言うと期待よりも不安が大きかったです。英語が流暢ではなかったため、異国で生活基盤を築き、研究成果を出すことにプレッシャーを感じていました。とくに苦労したのは、共同研究者の信頼を得ることです。専門外の分野だったため、相手と対等に議論できるように必死で専門知識と語学力を磨き続けました。
その努力が実を結び、徐々にディスカッションで意見を求められるようになりました。共同研究者がシンポジウムを開いた際には、スピーカーの1人として発表の機会を与えてもらえることになり、研究成果を含めて信頼が得られた証だと感じました。
帰国後も日清製粉(株)つくば穀物科学研究所で研究に励み、2024年6月に現在所属する(株)日清製粉グループ本社の基礎研究所へ異動。異動後もアメリカでの研究成果をもとに論文を執筆し、2025年3月に博士号を取得しました。上司や会社のバックアップがあったからこそ取得できたと感謝しています。現在は健康機能研究室でこれまでの専門知識と経験を活かしつつ、新たな研究分野の開拓とマネジメントに取り組んでいます。
腸内環境の改善から免疫調節まで。健康機能性の解明で、小麦の新たな価値を示す
これまでにわれわれのチームが成果を上げた研究の1つが、外部の研究機関と共同で取り組んだ小麦ブラン(ふすま)の健康機能性に関する研究です。日本では高齢化が進み、高齢者の健康維持・向上に対する社会的なニーズが高まっています。そこでブランの免疫機能に対する働きを科学的に解明することで、加齢による免疫調節機能の低下予防に寄与するべく、研究に取り組みました。
共同研究を通じ、小麦ブランには免疫応答に働きかける成分が含まれており、それがアルキルレゾルシノールという物質であることを明らかにしました。小麦ブランは市販されている全粒粉のパンやシリアルなどさまざまな食品に用いられている素材です。そのため今後も幅広い活用を通じて、健康維持に貢献できることが期待されています。
もう1つ印象深いのが、高食物繊維小麦粉に関する研究成果です。日清製粉(株)では、高食物繊維小麦粉「アミュリア」を製造・販売しています。従来の全粒粉とは異なり、「アミュリア」は小麦粒の中心部分に食物繊維を含有している小麦から製造されることが特徴です。主原料の小麦粉を「アミュリア」に置き換えることで、パンや麺、菓子といったさまざまな食品で発酵性食物繊維を豊富に摂取できます。
私たちはその健康機能性の解明に挑み、高食物繊維小麦粉が腸内環境の改善効果を有する可能性があることを示しました。科学的なエビデンスは、消費者が製品を選択する際の判断材料の一つとなり得るため、製品の差別化や信頼性向上のためにも非常に重要です。今後も日清製粉グループが扱う素材の価値を高めるべく、健康機能性の科学的なエビデンス構築に挑戦していきたいと思います。
このように素材の健康機能性に関する幅広い研究ができるのは、日清製粉グループならではだと感じています。原料から最終製品まで一貫して扱っているため、各分野の技術と知見を統合し、包括的な研究アプローチができることが大きな強みです。
また、120年以上の歴史の中で培われたノウハウと、共同研究などで取り込む最新の科学技術を融合できることも強みだと言えます。そして何より、小麦という食文化の中心を担う素材の価値を追求できることが魅力です。健康機能性とおいしさの両面で社会に貢献できるのは、日清製粉グループで研究に取り組むやりがいだと感じます。
“おいしい”の先に健康がある世界の実現をめざして。仲間と共に、食の未来を切り開く
これから挑戦したいのは、「“おいしい”の先に健康がある世界」を実現することです。パンや麺など汎用性の高い小麦粉の健康機能性を解明し、おいしく食べることが健康寿命の延伸につながる未来をめざしていきたいと考えています。
具体的には、腸内環境改善効果や免疫調節効果など、各種の健康機能性の研究開発を推進していきます。
そのためには、消費者のニーズに素早く対応できるスピード感を意識しつつ、揺るぎないエビデンスを構築することが重要です。その点において日清製粉グループは、共同研究などで外部の先端技術を取り入れると共に、基礎研究も重視し、長期的な視点で技術を開発する風土があります。また、多様なキャリアパスが用意されており、研究の知識を活かして他部署に異動するなど、幅広い経験を積めることも魅力です。
日清製粉グループでは、多様な人材がそれぞれの得意分野を活かして活躍しているため、特定のスキルや経歴にこだわらずさまざまなバックグラウンドを持つ方に入社してほしいと考えています。研究者として、論理的な思考力や矛盾に気づく観察力は必要ですが、それ以上に大切なのは、飽くなき探究心です。新たな領域への挑戦を恐れず、知的好奇心を満たすために積極的に学び続けられる方が向いていると感じます。
これから日清製粉グループに入社してくださる方に伝えたいのは、仕事を楽しんでほしいということです。私自身、「明日この実験結果はどうなっているだろう」と考え、翌朝の出社が待ち遠しくなるなど、日々の業務の中にある喜びをモチベーションとして研究を続けてきました。
これまで私が経験したことを活かしつつ、研究にワクワクできる環境づくりを心がけているので、探究心を原動力に成長し続けたい方が仲間に加わってくださるのを心待ちにしています。
※ 記載内容は2025年11月時点のものです

