生成AIの急速な進化および普及に伴い、社会変革への期待の声が大きい一方、不安や懸念の声も少なくなく、「AIによって職業が奪われる」という声もよく耳にします。
みずほリサーチ&テクノロジーズのコンサルティング本部では「生成AI時代においてコンサルタントはどうあるべきか?」をテーマに第一回アイデアソンを開催しました。ゲストスピーカーに山口 周先生をお招きし、当日は会場に約30名、オンラインでは100名超が参加しました。
この記事では、アイデアソンの企画から当日の様子をお伝えします!
アイデアソン開催に至るまで
コンサルティング本部では、時代の先を読み、お客さまの成長や社会の課題解決を支援するため、中長期を見据えた革新的ビジネス創出に向けた施策を行ってきました。
そこで中心になっていたのが、コンサルティング本部の戦略・企画を担う部署であるコンサルティング推進部の鈴木 隆弘です。
鈴木:2022年に組織横断のタスクフォースを設置し、革新的ビジネス創出に資するビジネスデザイン人材の育成研修や新規事業モデル作成に取り組みました。
タスクフォースの参加者からは、「どこまで本気で新規ビジネスを立ち上げるのか」、「革新的ビジネスとは何なのか」などの声があがり、目的の明確化と目的に応じた施策展開の必要性をあらためて感じました。そこで、民間企業の新規事業創出に知見のあるデジタルコンサルティング部の野口に、どう進めていくべきか相談しました。
アイデアソン事務局長を務める野口 博貴は、普段の業務ではお客さま向けに新規事業創出のコンサルティングを実施しており、アイデアソンのコーディネートもこれまで多数行ってきました。
野口:日頃接している同じメンバーで同じテーマで議論していても、メンバーのマインドセットが同じであるため似たような意見しか出せず、新しい事業は生まれません。そこで有効なのがアイデアソンです。部署・年次を越えて多様な専門性を持つ参加者が集まり、先端的なテーマや論点でフランクにディスカッションすることで、参加者の価値観がぶつかり合い、既存の業務では得られない深い洞察、画期的なアイデアが得られるとともに、部署を越えた交流のきっかけにもつながります。
アイデアソンに開催にあたっては、コンサルティング本部の業務推進役であり、部署をまたがる協業や共創ビジネスを牽引している加地 靖がアイデアソン長に就任しました。
加地:外部環境の急激な変化によって、これまでの経験や実績が役に立たなくなってきており、また世の中のニーズはモノ発想からコト発想へとシフトするなど、構想力や創造力の重要性が増しています。
今のコンサルティング本部のコンサルタントは経験から学んで備えることは得意ですが、経験していないことに創造力を駆使して備えることをさらに伸ばす必要があるため、変化の激しい社会をたくましく生き残るためにも、思考力、判断力、表現力を磨くことを、アイデアソンを通じてコンサルタント個々人が意識できるようになっていってほしいとの想いでアイデアソン長に就任しました。
アイデアソンの企画段階では、鈴木、野口、加地、さらにコンサルティング推進部長の山岡 由加子が加わり、繰り返しディスカッションを行いました。
アイデアソンでは、未来に対する深い洞察を得るためにも、先端的なテーマが必要です。また、参加者が従来の価値観を越え、発想に拡がりを持たせられるよう社外の専門家も交えたいというのは企画メンバー共通の想いでした。
山岡:2022年から生成AIの実装が加速し、ビジネスに与える影響は計り知れないものがあり、コンサルティングへの影響も例外ではありません。生成AIがホットなまさにこの時期に、われわれコンサルタントに求められる価値はどのように変わっていくのか、どうあるべきなのかについて、生成AIをテーマに調査研究を行っている当社コンサルタントの見解もシェアしながら、コンサルティング本部のメンバーと共に議論したいと考えました。
また、以前に参加した研修で山口 周先生の講義に感銘を受け、コンサルティング本部の多くのメンバーにもぜひ山口先生の話を聞いてもらいたいと考えていたこともあり、社外専門家の候補として真っ先に山口先生が浮かびました。
アイデアソン当日の様子
当日は、事務局長・野口からアイデアソンの趣旨やプログラムの説明の後、アイデアソン長・加地からのオープニングスピーチがありました。
▲アイデアソン事務局長 野口
オープニングスピーチでは、アイデアソンを通じて、何を考えてもらいたいのか、コンサルタントとして自身の存在価値を考え高める必要性についてお話がありました。
▲アイデアソン長 加地
続いて、トークセッションです。
まずは、デジタルコンサルティング部の武井康浩(※1)から、生成AI普及後にリサーチ・コンサル業務とその付加価値はどのようになるのか、仮説のインプットがありました。
※1 武井は、デジタル分野に関わる市場・技術・制度等を専門としており、官公庁や民間企業を対象にAIに関する多数の調査・コンサルティングの支援を行ってきたほか、生成AIについては〈みずほ〉の社内投資制度も活用し、生成AIの可能性や脅威についていち早く検討を進めています
▲武井(中央)、羽田(左)によるインプット
山口先生からは、
- コンサルティングのビジネスモデルでは、主な売りものは「情報」である。「情報」の価値にもいろいろあり、天気予報のように「情報」自体が変化するもの、子ども向け定番アニメのように「情報」は変わらないが受け取り手が変化するものはビジネスになる。生成AIによって仕事がなくなるのではなく、「情報」の価値が下がる
- 生成AIでは、デジタルデータ化されていない「空間軸」、トレンドの変化という「時間軸」には対応できない。そこにコンサルティングのチャンスはある
などの示唆がありました。
▲山口先生からのコメント
続いて、デジタルコンサルティング部の羽田 康孝(※2)からは、生成AIの利用可能性という観点で仮説のインプットがありました。
※2 羽田はデジタル・モビリティ領域に関する技術・政策動向調査のほか、同分野での新規ビジネスの創出に向けた実証実験支援などを専門としています
山口先生からは、
- 生成AI (ChatGPT)は壁打ち相手にはなるものの返ってくる回答は中央値であり、独自の着眼点、世の中で一般的に言われていないような新たな視点は期待できない
- 日本の社会システムの多くは中央値によって作られるが、企業には差別化が必要である。中央値から外れた外れ値ではあるものの、実は時代を先取ったものであり、後にマジョリティになっていくようなもの、それを推察することは人間に頼らないとできない
などの示唆がありました。
トークセッションに続き、参加者によるグループディスカッションが開催されました。
参加者が4グループに分かれ、「生成AIの進展により、どのような新しい機会と脅威が生まれるか」「自分はどのようなことに取り組むべきか/取り組みたいか」をテーマに、組織や年齢など関係なく、白熱した議論を交わしました。
▲グループディスカッションの様子
グループディスカッションで出た視点について発表がなされました。
「現在のコンサルティングの価値のバリューチェーン自体が変わるのではないか」「外れ値をどう出していくのか?究極的には生成AIに外れ値を出してもらうことになるのではないか。しかし、いずれは外れ値の中央値がでてくるのでは?」などの意見が紹介されました。
山口先生からは、
- コンサルティングとは、ある大きな意思決定をする人に横から何らかの知的な情報を与えて意思決定のクオリティを上げることであり、ソクラテスも諸葛孔明もコンサルタントといえる。そこには4000年の歴史があり、おそらく今後も4000年は続き、未来永劫なくなることはないだろう
- ただし、情報の価値が下がる中では、意思決定の「コンテンツ」を支援するのではなく、あらゆる手段を使い、より納得力、推進力のある、意思決定の「プロセス」をコンサルティングするという価値の出し方もある。ICT技術が向上しても企業の取締役会の意思決定の方法は150年変わっていない。どんなに優れた人たちによる意思決定も、長い目で見れば集合的な意思決定のほうがクオリティは高いことは市場が証明している。コンサルティングはクライアントファーストであり、クライアントの意思決定のあり方が向上すればよい、と考えて行動すればよいのではないか。
などのコメントがありました。
さらに、オンライン参加者も含めてQ&Aの時間が設けられました。
最後に、優れた発表をしたグループに山口先生の最新刊(サイン入り!)が一人ひとりに手渡しされました。
参加者の声
参加されたメンバーに対してアンケートを実施しましたが、総じて高評価でした。
アンケートで挙げられた感想をご紹介します。
- 山口先生のお話が直接聞けたことが素晴らしい。
- 山口先生の多くのご意見が聞け、新たな視点や多くの気づきを得られた。
- コンサルタントの仕事の存在意義について改めて見直すことができた。
- 普段交流の少ない他部署の方の取り組み内容や姿勢を知ることができ、自らの仕事ぶりを客観的に考える良い機会になった。
限られた時間だったため、もう少し山口先生の話を聞きたかった、グループディスカッションはもう少し時間が欲しかった、などのリクエストも。次回に向けた改善点です。
第二回アイデアソンは12月を予定しています!
※ 記載内容は2023年7月時点のものです
