チャレンジドの特性を汲み取りながら、コミュニケーションをとる
私は現在、京都工場製造一課 アセプ充填包装係に所属し、アセプティックブリックの生産に携わっています。アセプティックブリックとは無菌で作られた紙パック飲料で、常温保存可能であることが特徴。中でもプロテイン飲料「ザバス」シリーズの売上は非常に好調で、社内的に注目を浴びている部署です。市場への供給責任を果たすべく、使命感を持って日々の業務にあたっています。
現在は係長として、生産管理や労務管理を主に担当しています。安定した、かつ効率的なものづくりができるように働きかけています。また、お客様に安心して商品を手に取っていただけるように、品質の維持・向上にも努めると同時に、社員みんなが働きやすいと感じられるよう、環境整備にもこだわっています。
京都工場では2022年から、エンゲージメントスコア向上の取り組みに力を入れています。私自身は、職場環境をより良いものにするために、皆さんからの赤裸々な思いに耳を傾けています。日々のコミュニケーションや個人面談を通して、不満や不具合があれば聞き取り、改善の可能性を模索しています。全員が快適に働けるよう、適材適所の人財配置も進めてきました。
アセプ充填包装係は、全体で47名の組織です。30代から40代がボリュームゾーンですが、新卒からベテランまでさまざまな年代の社員が所属しています。そのうち1名はチャレンジド。時間のコントロール、管理が苦手という特性を持つ彼を、大事な仲間として迎え入れています。
工場では文化として時刻を24時間表記で示しますが、彼は、14時とか15時と言われても、お昼の2時、3時だとすぐにはピンときません。そのため、本人が理解できるように「2時にこの作業があるから一緒にやろう」など、指示の出し方を変えています。
また、主体的に行動することが難しいので、やってほしい作業を都度わかりやすく指示して、理解してもらうように気をつけています。配慮が必要なシーンは多いですが、彼は「チームの戦力になりたい」という強い意識を持ってくれているんです。だからこそ周囲も仲間として認め、一致団結して作業を進める雰囲気ができています。
現場の理解を促し、チャレンジドを受け入れやすい土台を作った
私は2007年に群馬工場に入社しました。当時も今と同じで、アセプティックブリックの生産を担当していました。そして2011年に京都工場に異動。ここでもまたアセプティックブリックを担当しました。現在に至るまで、同じ商品にずっと携わることができています。
チャレンジドの存在については、群馬工場在籍時からぼんやりと認識はしていました。隣の職場に1名いて、その様子を横から見ていたからです。実際にチャレンジドとともに働き始めたのは、2020年のこと。京都工場の近くにある特別支援学校の卒業生が仲間になってくれました。
そんなチャレンジドの彼を受け入れるにあたって、当時の私は不安意識を抱えていました。何が苦手なのか、どのような作業制約が発生してしまうのかなど、心配なことがたくさんあったのです。それに工場の生産現場にはさまざまな機械設備があり、安全ルールを守って正しく取り扱わないと危険なモノとなるので、安全に働けるかどうかという懸念もありましたね。
でも彼が実習で現場に来てくれてから、不安は溶けていきました。しっかりとした受け答えや、自身の意思を持って発言することができ、作業を見ていても先輩社員たちの言うことをしっかり聞いて行動している。その姿を見て、ぜひ仲間になってもらえたらと考えるようになったのです。
実際に入社してからは、さらに安心できました。彼からは「社会人として自立したい」というやる気が感じられ、仕事に対する前向きな姿勢があるから成長も目覚ましい。最初は簡単な作業から始めてもらいましたが、作業難易度をあげていってもきっちり内容を覚えてくれます。ハンディキャップを抱えていても、仕事に取り組むやる気や、チームの力になりたいという前向きな姿勢、自立していこうという強い意志があれば、社会で活躍できることを教えてもらいました。
彼を迎え入れる上で意識したのは、現場の理解促進です。
事前に障がい特性をチームメンバーに周知して、「彼はこういう特性があるから、そういうつもりで接していこう」というふうに働きかけました。私からチームのメンバー、また別のメンバーへと伝言ゲームのように連携し、仲間としての理解を広げていきました。
同時に強調してきたのは「彼の成長が自分たちの職場の成長につながる」ということ。チャレンジドは、基本的に職場体制人数に含まれないため、純粋にプラスアルファの人員になり、仕事の負担を分け合うことができます。その意味でも彼の成長をみんなで促していこうと伝えました。
チャレンジドは「可能性の塊」。その社会的な活躍を支えたい
彼の積極性には、いつもうれしい気持ちになります。たとえば基本的に7時出勤、お昼の時間帯で働いてもらうのですが、ある日「僕も3交代でみんなと同じような仕事がしたい」と本人から申し出を受けました。そこで最近は、他のメンバーと同様に、夜間の勤務などにも取り組んでもらっています。自立したい、そのために給料も増やしたい、そんな前向きな勢いを感じます。
現場では、当初は彼を健常者と同じ感覚で捉えている方もいて、「積極性があまりない」などの戸惑いの声が挙がったことも。でも3年かけて徐々に理解は深まっていき、今では社員一同、自分たちの仲間として大切な存在に感じています。かくいう私自身も、かつてはチャレンジドに対して間違った認識を持っていたと思います。自主性や積極性がここまであるとは知らず、何か問題が起きなければいいなと心配していました。その認識をいい意味で裏切ってくれたことで、私自身の認識が変わったし、人間的に成長できたと思っています。
チャレンジドは、可能性の塊です。これは、かつて特別支援学校を見学したときに感じたことです。生徒たちは、授業風景を見ていても、実際に会話してみても、とてもしっかりしているんですよ。そんな彼ら彼女らがハンディキャップがあるからという理由だけで線を引かれ、距離をとられてしまうのは悲しいこと。「みんなが社会で活躍できるよう、可能性を広げる手助けをしたい」と強く思ったきっかけです。
私は彼に「仕事、辞めたくなっていない?」などの声掛けをしています。すると彼はいつも「周りの方がサポートしてくれて、すごく働きやすい」「この職場でずっと働きたいと思っています」と言ってくれるんです。「可能性の塊」が活躍するための一助になれていると思うと、誇らしい気持ちになります。
ハンディキャップがあるからといって、あえて特別扱いはしない
彼と関わる中で意識しているのは、過保護にしないということ。他の社員と極力同じように対応し、平等に扱うようにしています。特別扱いで過保護にしても、本人の主体性を削いでしまうと考えたからです。
また、周囲と差をつけると、自分のハンデを気にしてしまい、息苦しい職場関係になってしまう可能性があります。だからできる作業が増えるなどプラスのことがあれば褒めますし、何かダメなところがあったら遠慮せずに指導します。フラットなコミュニケーションで、仲間として認め合えればと思っています。
今後、もう1名チャレンジドを迎え入れる予定です。今は実習の途中ですが、私たちのチームで働きたいと言ってくれています。自分からの発信力が弱い、言いたいことがなかなか言えないという特性を持っていますが、実習中には周囲がそれを理解し、今どんなことを思っているのかを丁寧に聞いてあげていました。
1人目のチャレンジドがかなりの戦力になってくれているのもあり、職場全体のムードとして、チャレンジドに対してポジティブな雰囲気が確立されています。細やかな気配りで、ストレスなく働けるようにしっかりサポートしようと思います。
労働人口の減少が叫ばれている中、生産現場も例外ではなく慢性的な人手不足に直面しています。そんな中、チャレンジドは大切な戦力です。そのことを、今後もっと皆さんに知ってもらいたいと思っています。
明治にはさまざまな雇用形態の社員がいますが、立場に関係なく、現場にいる一人ひとりが、チャレンジドを歓迎できるマインドをもてるといいですよね。これは工場だけの問題ではないので、会社全体として教育を積極的に行い、環境をどんどんアップデートしていってもらいたいなと思っています。多様な人が安心して働ける環境作りに、これからも積極的に取り組んでいきます。
※ 記載内容は2023年12月時点のものです

