「社会をより良く変えたい」という思いが導いた、たまたまの出会いと即決の入社
大学時代に最も力を注いだのは、部活動です。もともと格闘技が好きで、中学・高校時代は柔道部に所属していました。ただ、打撃系の武道にも挑戦してみたいという思いが強くなり、大学では経験ゼロから空手を始めることにしました。
当然、周囲との経験の差は大きく、その差を埋めるために考えたのが、「自分の強みを最大限に生かすこと」と「技術を補う身体的な土台を作ること」でした。柔道で培った、相手の体勢を崩すスタイルを空手に応用しつつ、筋力トレーニングに取り組みました。目的意識を持って日々の練習を続けていくことで、卒業するころには、自分なりに納得のいく試合運びができるようになったと感じています。
就職活動では、「一度きりの人生なら、社会をより良く変えていけるような大きなことをしたい」という軸を持って企業を探していました。商社やメーカーなどのさまざまな企業説明を聞いて回りましたが、どの企業の事業も確かに社会的意義はあるとは感じるものの、領域が限定的に感じられて、漠然と「もっと本質的な何かがあるはずだ」という感覚が拭えずにいました。
そんな中で、日本漢字能力検定協会との出会いは、偶然のものでした。合同企業説明会の合間に時間が空いたので、ちょうど近くで説明をしていた漢検協会のブースに立ち寄ってみたのがきっかけでした。漢検(日本漢字能力検定)は高校時代に受検したことがありましたが、当時は「漢検を主催している組織」という認識しかなく、特別なイメージは持っていませんでした。
ところが、採用担当者の方から話を聞いて、その印象は大きく変わりました。「漢検はあくまで事業のひとつであり、私たちが目指しているのは、日本で暮らす全ての人々の学びの土台となる日本語能力向上のための教育インフラを作ることだ」という言葉に、感銘を受けました。社会を変えていくのはいつの時代も新しい知識や考え方であり、それを支える教育の重要性に初めて目を向けることになりました。「この企業であれば、自分が目指している本質的な何かを実現できるかもしれない」と直感し、選考に進むことを即決しました。最終的な入社の判断も迷いはなく、気づけば自分の軸と会社のビジョンが重なっていた、そんな感覚でした。
教育と社会貢献への情熱に囲まれ、普及部から検定運営へと歩んだ8年間
入社後は、普及部という部署に約7年間所属しました。普及部とは、学校や塾、自治体などに対して、漢字・日本語能力の育成を目的とした検定等の活用を提案し、導入を支援する部署です。幅広い相手と向き合いながら、検定を通じてどうすれば多くの人に学びの機会を届けられるかを、日々考え続けていました。
入社前は、漢字や日本語が好きな人が集まっているというイメージを漠然と持っていました。もちろんそういった方もいましたが、それ以上に印象的だったのは、教育や社会貢献に対して強い情熱を持った人が、身近にたくさんいたことです。そうした仲間や先輩たちの姿勢は、私自身にとって大きな刺激になりましたし、日々の仕事の励みにもなりました。
普及部時代のなかでも特に印象に残っているのが、ある自治体における検定料補助事業の立ち上げ支援です。経済的に厳しい家庭も多い地域で、子どもたちの学習習慣の定着や自己効力感の向上を目的としたその事業に、協会側の窓口担当として関わりました。
具体的には、自治体の事業担当者からヒアリングを重ねて課題を整理し、事業検討のための資料を作成しながら、運用方法の提案を行いました。実際に受検の機会を提供する学校との調整や、社内の関係部門との運用設計のすり合わせも私の役割でした。顧客にとって実施しやすい仕組みをつくることを最優先にしながら、一方で協会内の業務負荷が過度にならないようにするバランスの取り方に、頭を悩ませることもありました。
それでも、自らの仕事を通じて、これまで経済的な理由で検定受検が難しかった子どもたちに、学びの機会を届けられるようになったときには、教育を通じて社会をよりよい方向に変えていくという理想に一歩近づくことのできた達成感を得ることができました。
その後、普及部での知見や現場経験を活かして、検定運営業務の管理とサービス改善に取り組む部署へ異動しました。普及の現場で積み上げてきた視点を、今度は仕組みそのものを変えることに活かしてほしいという期待を受けてのことでした。現場で感じてきた課題を、より構造的なレベルから解決していく立場へ。キャリアの大きな転換点となった異動でした。
「身近に受けられる環境を」月間数十万アクセスを生んだ新サービスの誕生
現在私が所属しているのは、CS推進部サービスデザイン課です。検定を中心とした商品の顧客体験価値や利便性の向上を通じて、受検機会の最大化を図ることをミッションとする部署で、私は課長補佐として、安定的に検定を提供していくためのチーム運営や、各種サービス改善企画のマネジメントを担っています。上長とともにサービス改善の全体戦略を描きながら、その実行をしっかりと前に進めていくのが私の役割です。
この部署でここ最近もっとも力を入れてきたのが、「地域開放型準会場」という新しい受検形態の企画・立ち上げです。漢字検定(漢検)の個人受検は、これまで協会が自社で用意した会場で受検する「公開会場」が中心でした。しかし検定日は年に3回しかなく、都道府県によっては県庁所在地などに1会場しか設置できないケースもあり、遠方にお住まいの方にとっては受検しづらい環境が続いていました。また、今後ご高齢の方の受検が増えていくことを見据えると、身近な場所で受けられる環境を整えていくことが必要だとも強く感じていました。
こうした課題意識をもとに、2024年の冬から検討を開始しました。一般の受検者を受け入れてくださる漢検実施団体(学校や企業など、協会と契約して検定を実施する団体)を協会のホームページで公開し、広く受検機会を提供する枠組みをつくる、というものです。2025年にはサービスを社会実装することができ、延べ1,000件を超える団体様にご協力をいただけました。現在では公開ページに月間平均数十万名の方にアクセスしていただけるようになっており、この取り組みの手ごたえを実感しています。
とはいえ、実現までの道のりは決して平坦ではありませんでした。協会として初めての取り組みだったため、顧客にどのようなメリットを提示するか、ホームページ公開に至るまでの顧客・協会双方の対応コストをいかに削減するか、など検討課題は多岐にわたりました。そのすべてをスピード感を持って複数の部署と調整していく必要があり、全体のマネジメントには難しさを感じることもありました。それでも、取り組みの主旨に賛同してくれた部内外のメンバーが主体的に動いてくれたことが、本当にありがたかったです。
この経験を通じて気づいたのは、他者を巻き込むためには「なぜやるのか」を丁寧に伝えることが不可欠だということです。目的や意義をしっかり共有し、関わるメンバーの目線を合わせていくことができたからこそ、初めての挑戦を形にできたと思っています。また、失敗を恐れず、うまくいかない点はその都度改善していくことを愚直に積み重ねていったことも、成功につながった要因だと感じています。
サービス開始後には、受検者の方から「今まで遠方の会場まで子どもを連れて行くのが大変だったので、本当に助かります」というお声をたくさんいただきました。数字の向こうに、実際に助かっている方たちがいる。その声が、次の改善に向かう力になっています。
「仮説と情熱があれば挑戦できる」。決裁権を広げ、社会へ価値を届けたい
今後の短期的な目標としては、自部署の枠を超えて、協会全体としての社会への価値提供を最大化していくような取り組みに積極的に参画していきたいと思っています。これまでの地域開放型準会場のような新しいサービスを立ち上げた経験を通じて、一つのプロジェクトが社会に与えられるインパクトの大きさを実感してきました。だからこそ、より広い視野でそのインパクトを追求していきたいという気持ちが強くなっています。
中長期的には、社会への価値提供をより大きなスケールで実現するために、より決裁権を持ったポジションを目指していきたいと考えています。上のポジションに就くことは目的ではなく、社会に対してより大きな価値を届けるための手段として捉えています。また、いずれは社外のステークホルダーとの協働によって、自社の枠にとどまらない価値提供の仕組みを構築することにも挑戦したいと思っています。
そう考えるようになったのは、サービス改善の戦略を立案する中で、協会内のリソースだけでは実現できないこともあることを実感したからです。社会を大きく変えていくためには、同じ志や目的を持ったステークホルダーとの協働が不可欠だと実感しています。一社・一組織だけで描ける未来には限界があります。だからこそ、志を共にする外部のパートナーと手を取り合い、より大きな変化を生み出す枠組みを作ることが、自分のめざすキャリアの一つの到達点になっています。
最後に、就職活動中の方へお伝えしたいことがあります。当協会は、一見すると堅い組織というイメージを持たれる方も多いかもしれません。しかし実際には、ベンチャー的な気風が根付いており、根拠に基づく自身の考えと情熱さえあれば、若手でも新しい取り組みにどんどん挑戦できる環境があります。私自身30歳前後から、かなりの裁量を持って仕事を進める機会をいただいてきました。地域開放型準会場という新しいサービスを立ち上げる際も、経営層から「まずはスモールステップで始めてみて、そこから改善していけばいい」と背中を押していただけました。
活躍できる人物像としては、変化を恐れず、まず挑戦できる人。 そして、「なぜ取り組むのか」という目的に常に立ち返れる人だと考えています。社会変化が激しい時代だからこそ、情熱を持ちながら、できたこと・できなかったことを丁寧に振り返り、実直に行動を改善し続ける姿勢が重要になると思っています。また既存の枠組みにとらわれず、新たな取り組みを進めていくためには多様な関係者との協働が必要になります。社内外の関係者と意見が分かれる場面でも、目的に立ち返り、認識を合わせることで前に進んでいくことができるとも考えます。自分の仕事が社会に与える意味を真剣に考えながら、ともに挑戦してくれる仲間をお待ちしています。
