古典文学と「先生」への憧れから見つけた、日本語を支える道
大学では古典文学の研究に取り組んでいました。平安時代から鎌倉時代くらいの「中古」の作品が対象で、特に日記文学を中心に読み込んでいました。ある時、読んでいた場面に出てきた「したためる(認める)」という語について、現代語との意味の違いになんとなく興味を持ったんです。そこで、卒業論文は「したためる」の変遷をテーマにすることにしました。どのような場面で使用されているのか、どのように解釈されているのかなどを確認するために、100を超える文献にあたり、繰り返し辞書を引きました。ある事実を確認するために、ねばり強く調査をする習慣は、この経験から培われたものだと思います。
学外では「キンボール」というスポーツに熱中していました。直径1.2メートルの大きなボールが目を引く上、チームメイトと声を出しながらコート内を駆け回る様子を見て、初めてスポーツに興味を持ちました。運動は得意ではなく、むしろ苦手意識が強かったのですが、対戦チームと接戦になりやすく、協力しないと試合が成り立たないルールのおかげで、チームの勝利のために頑張り、自分の限界を少しずつ広げていく楽しさを知ることができました。大学生になる頃には、世界大会で金メダルを獲ることを目標に、競技選手として活動するようになっていました。来る数年後のチャンスを見据え、現在まで続けてこられたのは、チームメイトや各地で出会ったプレーヤーの方々、支えてくれる家族や友人のおかげです。
就職活動では「日本文化の保存・発展に寄与できる組織」をイメージして探していました。幼少期から書道を学び、文字や作品のおもしろさに触れる機会が多く、気づけば大学でも国文学を専攻していました。現代を生きる私たちが、さまざまな時代の環境や価値観について知ることができるのは、作品を守り、受け継がれてきたからこそです。その不思議な縁と作品の中で生きる当時の人びとに魅了されてきました。同じように魅力を感じる人が増えたらうれしいという思いがあり、多くの人がはじめに作品と出会う場となる学校で、国語教員になる道もずっと頭の片隅にありました。就職するか、国語教員になるか、迷いながら日々を過ごしていました。
並行して続けていた就職活動の中、就職情報サイトで漢検協会と出会いました。「漢検」は受検の経験がありましたが、協会の存在を認識できておらず、「こんなお仕事があるんだ」と驚いたことを今でもよく覚えています。採用ページで「日本語・漢字を学ぶ楽しさを提供する」という理念に辿りついたとき、これまでの自分の「日本語・漢字」の学習や、教育実習での経験などがリンクし、協会の事業に携わりたいと考えるようになりました。検定を実施するための仕事のイメージは全くつきませんでしたが、「学びを支える」という理念への共感だけで、とにかく飛び込んでみようという気持ちで選考に臨みました。最終面接まで進むと教育実習の時期と重なってしまったのですが、実習後に面接が実施できるようにご調整いただきました。
実習中は指導教諭の先生に大変お世話になりましたし、担当したクラスの生徒の皆さんから教わったことがたくさんありました。実際に生徒の皆さんの前に立って授業の機会をいただくことで、教材研究・授業づくりの難しさを痛感しました。国語という科目で身につけなければならない力は思っている以上に多くあります。そこで、先生方のサポートができれば、結果的により多くの人に「日本語・国語」の学習の楽しさが届くようになると考え、最終的には協会への就職を選びました。
入社後の研修で知った漢検の奥深さと温かな職場環境
入社後、約2ヶ月間は新人研修の期間となりました。社会人としての基礎を身につける「基礎研修」と、各部署の業務について学ぶ「部門研修」を通じて、漢検という組織の全体像を理解していくことになります。研修を受ける中で最も印象に残っているのは、いち消費者の視点から、商品として「どのような価値を社会に提供しているか」と考える視点へと変化したことです。その組織に就職する以上は、提供する商品やサービスについてある程度知っておく必要はありますが、やはり入ってみて初めて知ることも多くありました。
漢検については、進学や就職の際の資格取得目的で受検するというイメージが強かったのですが、それだけではなかったのです。学習におけるゴールとして設定することで、学習意欲を高める効果も期待できるなど、さまざまな活用方法があると学びました。また、漢字は誰にとっても身近なテーマであり、学齢期の子どもだけでなく、生涯学習のひとつとして全世代が取り組みやすい学習素材であることを再認識しました。私が取り組んできたキンボールも、「誰でもできる、楽しめること」が魅力のひとつです。挑戦のハードルがあまり高くないことによるメリットは、そこで得た「できる」という体験が自信に繋がったり、別の苦手意識を持つものへの克服のエネルギーに繋がったりする可能性があることです。このような体験の場をつくりだす取り組みやお仕事ができることは、私のはたらく上での喜びのひとつだと感じました。
実際に働いてみると、検定事業の裏側に驚きの連続でした。。漢字検定は全国で実施されていますが、検定事業において、検定の問題作成や申し込み、実施サポート、採点から返却までのほとんどを協会が担っていることを知りました。新人研修を経て、培われたノウハウと職員の皆さんのはたらきにより、円滑な運営が実現されていると分かりました。自分もそのピースの一部になると考えると、背筋が伸びる思いがして緊張の日々でしたが、配属先の先輩職員の皆さんはあたたかく迎え入れ、指導くださいました。
また、大変ありがたいことに、キンボールの活動についても、いつも応援の声を寄せていただいています。国際大会の場合は数日間お休みを頂戴することもありますが、業務調整にご協力いただいています。仕事以外にも取り組まれていることがあったり、プライベートで趣味を楽しんでおられたり、家族との時間があったり、充実されている職員の方が多いという印象です。
受検者の能力を正確に測る、問題作成の日々
現在、コンテンツ開発部コンテンツ開発課で、漢検の問題作成・編集業務を担当しています。検定の問題作成は、受検者の皆さんの能力を正確に測ることを目的としており、そのために非常に精緻なプロセスを経て作られています。配属されてから約3年が経ちますが、漢検は受検経験があり身近に感じていたものの、実際に業務に携わってみると、その緻密さに驚きの連続でした。
問題作成の工程には、問題の検討・チェックのフローがいくつもあります。これは受検者の皆さんの能力を正確に測ることができるように、問題案を出題に適した形に整えていく重要な工程です。たくさんの人の目を通すことによって、問題を多角的に捉えブラッシュアップすることを大切にしています。基本のルールの他にも配慮すべきことはたくさんあり、今も勉強の日々が続いています。検定が実施され続ける間は問題を作り続けなければならないので、ケーススタディを重ね、明快な答えに辿りつくスピードを上げることが今の私の目標です。
検定の問題作成における最大のゴールは、検定日までに確実に検定問題を完成させることです。そのためには、スケジュール通りに着実に業務を進める必要があります。基本的にチーム単位で業務を進めますが、約2ヶ月から3ヶ月間、進行役を務めた際に、大きなトラブルなく検定問題が完成したときは、大きな安心感と喜びを感じました。漢検も文章検も年に複数回、検定を実施します。当たり前を守るために、チームの皆さんと協力しながら引き続き業務にあたっています。一つひとつの検定を着実に完成させていくことが、受検者の皆さんへの責任であると感じながら、日々の業務に取り組んでいます。
直感を信じて、自分の可能性を広げていってほしい
これからも一つひとつのタスクに丁寧に向き合い、チーム全体の目標達成に貢献できるよう、着実に経験を積んでいきたいと考えています。そのためには、先輩方から学んだゴールから逆算して動く習慣を、より確実に自分のものにしていく必要があります。タスクの細分化と優先順位づけは、まだ完璧にはできていません。実践を重ねながら、精度を高めていきたいですね。
漢検を選んだ選択は本当によかったと思えています。機会をいただけたことに感謝しながら、これからも成長を続けていきたいです。
就職活動中の学生の皆さん、そして漢検への入社を考えている方々へ。キャリア教育が進む中で、自分の人生について考える機会は増えつつあるのだろうと拝察しています。とはいえ、実際にはたらき出してからでないと分からないことも多いと思います。私自身も、入社前には想像できなかった成長や学びを日々経験しています。型にはまりすぎずに、成長の可能性を自分らしく伝えることで、おのずと道が拓けます。皆さんの挑戦を心から応援しています。
