少数精鋭の現場を率いる責任──安治川口駅長としてのミッション
──現在の所属部署の概要について教えてください。
私は現在、関西支社の安治川口駅で駅長を務めています。当駅は直営社員が私を含めて7名と組織としては非常にコンパクトですが、新入社員がいきなり配属されるような駅ではなく、ある程度経験を積んできた精鋭たちで構成されています。そして、協力会社のメンバーを含めると30名規模の体制となり、知見や技術のあるメンバーが集まったチームとして一丸となって日々貨物輸送の最前線を守っています。
また、安治川口駅は優等列車を取り扱う駅になります。日本を代表する大手物流企業のお客さまが列車を一編成まるごとお買い上げいただく専用列車を運行しており、非常に生産性の高い駅です。業務は多岐にわたるため、一つの業務に限らず皆で協力し合いながら運営しています。
──駅長としての具体的な業務内容と、必要なスキルについて教えてください。
お客さまから大事な荷物を預かって貨物列車として本線を走らせることが当社のミッションです。その中で、一駅長である私の役割は、駅の責任者として実務をこなすこと以上に管理をすることにあります。社員や協力会社の皆さんがルールを遵守し、列車を仕立てるまでの作業を安全に完遂できる環境を整えること。そして、何らかのトラブルが発生した際に、最終的な決定権者として進むべき方向性を示すことが私の使命です。
また、一つの駅だけで完結するわけではなく、他の駅や貨物列車の運転士、利用していただく運送事業者や荷主のお客さまなど、社内外との密な連携が必要です。そのため、調整業務もメイン業務の一つとして、さまざまな管理者とのコミュニケーションは欠かせません。
──仕事をする上で、とくに大切にしている価値観は何でしょうか?
安全第一という考えです。もちろん、会社として収益を上げることも求められますが、鉄道事業にとって安全を損なうことは、お客さまへの信頼を失うだけでなく社会全体に多大な影響を及ぼしてしまうからです。
鉄道事業には明治、大正、昭和から続く長い歴史があり、さまざまな過去の事例が蓄積されています。先輩や上司から教わったことに加え、自分自身20年以上に渡るキャリアの中で業務中に経験した「ちょっと危なかったな」と思える体験を通じて、今の安全に対する価値観が形成されました。
しかし、安全は言葉だけで守れるものではありません。現場の全員が同じ方向を向き、自主的に知識を深め、互いに学び合う文化が必要です。私は駅の全管理者と協力し、これまで培った経験を惜しみなく伝えることで、社員の成長を促すことを第一に考えています。
「人に聞く」ことから始まった──未経験から挑んだ大規模改良工事の記憶
──入社当時のエピソードを教えてください。
大学卒業後に他の企業に就職しましたが、転職して当社に入社しました。じつは、私はそれまで鉄道にほとんど興味がなかったんです(笑)。前職を離れ、次の就職先を探していた時期に「貨物列車って何を運んでいるんだろう?」という純粋な好奇心が芽生えたのがきっかけでした。そして、モーダルシフトやCO2削減などが言われ始めた時期でもあり、物流への大きな可能性を感じて2005年にJR貨物の門を叩いたのです。
キャリアのスタートは、吹田信号場(現:吹田貨物ターミナル駅)での操車担当。機関車の誘導や信号の取り扱いなど、右も左もわからない状態からのスタートでした。そんな私が大きな転換期を迎えたのが、吹田貨物ターミナル駅の開業に向けた改良工事の担当に指名されたことです。
この工事は、関西最大規模の駅であった梅田駅をなくし、その機能・業務を吹田駅と百済貨物ターミナル駅に分散させる大規模なものでした。駅を運営しながら駅の大部分の建屋や線路設備などを新設・撤去する工事を進めるという、なかなか経験できないプロジェクトに運良く携わることができたのです。
──未経験の分野で苦労されたことも多かったのでは?
前代未聞のプロジェクトのため難しい局面が多く、中でも調整業務が本当に大変でした。打ち合わせでは聞いたこともない専門用語が飛び交い、当初は立ち尽くすしかありませんでした。
そこで、私が徹底したのは「プライドを捨てて人に聞く」ということです。先輩や上司、時には協力会社の方や後輩にまで、わからないことはその場で教えを請いました。自分一人では何もできません。だからこそ、周りを巻き込み、調整を繰り返す。この経験が、現在の管理業務や調整業務の土台になっています。現場のオペレーション以外の視点を得られたことは、私のキャリアにおいて最大の財産です。
──その後のキャリアではどのような経験を積まれましたか。
改良工事の経験を経て大阪貨物ターミナル駅に異動し、当直助役として管理者の第一歩を踏み出しました。今までは上司の指示に沿って業務をしていましたが、管理者となると一日の業務を自ら決定してやりきらなければならず、同時に部下への教育指導や業務指示の仕方も学びました。
その後、関西支社の企画・駅業務グループでは駅関係の業務全般を調整し、本社からの指示事項を各駅に落とし込む業務や、新入社員などの教育研修の講師を担当しました。そこから再び吹田貨物ターミナル駅に戻り、総括助役として駅全般の管理業務を補佐した後、安治川口駅の駅長として従事しています。
3年1サイクルの成長論──仲間の活躍が最大の達成感
──これまで20年以上に及ぶキャリアの中で、とくに印象に残っている実績は何ですか?
やはり、先述した吹田貨物ターミナル駅の改良工事を無事に完遂させ、開業に結びつけたことです。関西の物流拠点であった旧・梅田駅の機能を移転・分散させるという、歴史的なプロジェクトの一端を担えたことは大きな自信になりました。
また、新入社員などの研修を担当していた時の生徒たちが順調にステップアップしてくれているのも、実績といいますか、喜ばしいことです。仲間を増やしたというところも一つの実績かなと思います。
現在安治川口駅の駅長としては、事故なくケガなくをモットーに、みんなで実績作りをしている最中です。従事する中での印象に残る実績は、共に働く仲間たちの成長です。かつて支社で研修講師を務めていた時の教え子たちが、今では各地の現場で主任や助役として立派に活躍しています。彼らが成長した姿を見ることは、何物にも代えがたい喜びです。鉄道は一人では動かせません。「仲間を増やし、育てること」も、この記事を読んでいる皆さんに伝えたいこの仕事の真髄です。
──自身の成長を止めないために、意識していることはありますか。
私には持論があります。それは「3年1サイクル」という考え方です。 先輩社員から教わったことですが、「最初の3カ月で仕事を覚え、1年が経つ頃には仕事の大枠が見えてくる。そして、2年経てば自分の色を出して挑戦ができるようになる。しかし、3年が経つ頃には手を抜き出す」という言葉を今でも忘れません。
私はこれまで、幸運にも3年周期で新しい役割を与えられてきました。慣れた仕事を長年やる方が楽ですが、3年サイクルで違う業務に携われてきたことが、初心を忘れず成長できた要因だと思います。常に初心を忘れず、今の自分に満足しないこと。人が楽な方へ流されそうになる時こそ、自分を律して新しい課題を見つけることが大切だと考えています。
昔は、「まず3年は同じ場所で頑張れ」と言われたものですが、そのぐらいやり続けないと仕事の中身が深く見えてこないというのは今も変わらずそう思います。ただ、3年経って見える景色に満足せず、常に自分が今やらなければならないことを見つめ直す姿勢、新しいことにチャレンジして成長を続ける姿勢を大事にしたいです。
個性を消さずに突き進め──次世代へつなぐ「失敗を恐れない」バトン
──JR貨物の魅力、そしてご自身の強みはどこにあると感じますか。
JR貨物は今、転換期にあります。物流の2024年問題やモーダルシフトへの期待が高まる中、私たちは一民間企業として、より主体的な営業活動や業務改善を求められています。変化の激しい時代だからこそ、新しいことに挑めるチャンスが溢れています。
私の強みは、何よりも与えられた仕事を完遂させるために努力できるところです。それは、自身が負けず嫌いで「わからないことでも、まずはやってみる」精神で行動に移せているからだと思っています。中途入社で一度失敗を経験しているからこそ、「失敗しても、そこから学べばいい」と割り切れる強さがあります。
しかし、それができているのは同僚や先輩、上司がいろいろとフォローしてくれてきたからだとしみじみ感じています。私のロールモデルとなってきた方々は、今では本社の重要なポストで活躍されています。私も、彼らのような先輩、上司になっていきたい。
また、昨今の働き方改革と言われる時代において、職場内のコミュニケーションだけでなく、プライベートも重要だと考えます。私は部活動としてのラグビー、仲間内のフットサルやマラソンと、さまざまな活動も楽しみつつ仕事と両立できています。
駅長としてはまだ1現場目ですから、もっと他の現場を経験してキャリアを重ね、その経験を後輩に教えて引き継いでいくような立場になれればと思っています。
──これから入社を検討している候補者の方へメッセージをお願いします。
「みんなに合わせようとしすぎるな。個性を大事にしろ」。 これは私が若手だった頃、先輩に言われて救われた言葉です。個性を押し殺して働いても、いつか限界がきます。自分のカラーを出し、それを組織の力に変えていけばいいんです。
最初は興味がなくても構いません。私もそうでした。まずは縁あって選んだこの場所で、自分がやりきったと思えるまで踏ん張ってみてください。3年経てば、必ず景色が変わります。また、過去に挫折を経験したことがある人でも、頑張ればそれに応じたポジションになっていけるということを、今後入ってくる新入社員や若い世代に伝えていきたいです。
あなた方の挑戦を、私たちは全力でサポートします。JR貨物の現場で、それぞれの個性が輝く日を楽しみにしています。
※ 記載内容は2026年4月時点のものです
