剣道で培った礼儀や継続する力、アルバイトで身につけたコミュニケーション力が強み
──どのような幼少期を過ごしていましたか?
小学3、4年の頃から水泳と剣道を始めて、とくに剣道は中学3年まで続けました。練習は厳しくて、行きたくないなと思うこともありましたが、継続したおかげで礼儀や社会性が身についたと思います。
また、今でこそ屋外で体力勝負の仕事をしていますが、子どもの頃はインドア派で、学校から帰るとランドセルを放り投げ、すぐに友達の家に行ってテレビゲームで遊んでいました。
──高等専門学校に進んだきっかけと、学んだ内容を教えてください。
子どもの頃から自動車やバイクが好きで、将来はそれらに触れたりつくったりする仕事に就きたいと思っていました。父も高専出身だったので、ものづくりに携わりたいなら高専がいいと勧められ、進路を決めました。
高専では、クロム鋼の応力集中部についての研究に従事。鋼は溶接した際に亀裂が生じますが、その部分にどのくらい荷重がかかると破損するのか、パソコン上で可視化するための研究です。私たちの代では、理論値と実際の実験値を近づけるための調整まで行い、あとは後輩たちに引き継いで、実用化をめざしています。
──勉強以外で注力したことはなんですか?
高専時代に一番注力したのは、軽音楽部での活動です。バンドを組んでギターを担当し、文化祭やライブなどで演奏する機会もありました。ギターがうまい人と自分との実力の差を思い知り、落ち込むこともありましたが、人前に立って何かを発表することには強くなりました。また、これまでの体育会系から文化系の部活に変わったことで、新しいタイプの人たちとのつながりができました。
──学生時代にやっておいて良かったことはなんですか?
アルバイトでいろんな人と接する経験は、仕事をする上でも役に立つと思います。社会人になったばかりの頃は、仕事ができなくて当たり前で、誰かに教えてもらう必要があります。そんな時にどんな相手ともしっかりコミュニケーションが取れないと、苦労すると思うからです。
私自身はコンビニやガソリンスタンドでバイトをして、世の中には多様な考え方の人がいること、どんな人ともまずは臆せず話してみることが大事だと実感しました。
日本で唯一の貨物鉄道会社でしか得られない経験を求めて。チームで挑む車両検修業務
──就職活動での軸を教えてください。
自動車やバイクは好きでしたが、仕事にするなら普段個人では触れないものを扱いたいという思いがありました。そこで、船や飛行機、鉄道などの業界をめざすことにしたのです。
──JR貨物に入社した決め手はなんですか?
インターンシップに参加し、実際に車両のメンテナンス現場を見学させてもらった時、見たこともないような大きさの工具に圧倒され、JR貨物に興味を持ちました。入社を決めた一番の理由は、日本で唯一の貨物鉄道会社であり、ここでしか得られない経験ができると思ったからです。
また、鉄道はトラックの約11分の1のCO2排出量で貨物を輸送できると知り、カーボンニュートラルの時代に沿った会社だと感じたことも、入社の決め手です。
──入社後はどんな研修がありましたか?
最初の1カ月間は本社での新入社員研修があり、その後、駅でコンテナの積み下ろしなどを行う「駅業務」、線路や電気設備などを整備する「保全業務」、車両のメンテナンスを行う「車両検修業務」のどれを選ぶか、面談の上で決定します。私は車両検修業務を選び、関東支社大井機関区に配属となりました。
配属後は「検修研修」という、車両検修に特化した専門的な研修が年2回行われます。検修研修では、専門知識がゼロでも理解できるように、鉄道の仕組みやブレーキの構造、電気系の基礎知識などについて詳しくわかりやすく教えてくれます。この研修のおかげで、文系出身者や高卒入社の社員でも、図面の読み方がわからなくても、今後仕事を始める上で必要な知識を身につけることができます。
──現在の仕事内容について教えてください。
大井機関区の車両係として、主に貨車と貨物電車の交番検査や重要部検査を担当しています。交番検査とは、簡単に言うと「車検」のような仕事です。貨車や貨物電車は、3カ月に1回定期検査をすることが決まっていて、検査時期を迎えた車両に対し、壊れている箇所がないか、ブレーキがちゃんとかかるかなどの機能試験を行います。
交番検査は、ボルトや溶接部分など点検すべき箇所が数百カ所あるため、チームプレイで進めます。まずは主任が各メンバーに業務を割り振り、1両あたり4〜5人で取り掛かります。大きな問題がなければ1日で8両程度検査でき、検査が終わった車両はアントという入れ換え機を使って出場線(列車が走る本線と車両基地をつなぐ線路)まで送り出します。
マニュアルにはない「職人の感覚」をつかみたい。ミスが許されない現場で芽生えた責任感
──入社後はどんな苦労がありましたか?
学生時代は図面を書くことはあっても、実際に手を動かしてものをつくることはあまりありませんでした。たとえばハンマーや釘を使った作業は、この仕事に就いてから初めて経験したので、うまくできるようになるまで苦労しました。
もちろんマニュアルはありますが、どのくらい力を入れればいいのかなど、ベテラン社員の言語化できない技や感覚をつかむのは、とても難しいですね。
──チームプレイの大切さを実感するのは、どんな時ですか?
以前、コンテナ車両が整備中に脱線してしまったことがありました。その時、私たちが「親方」と呼んでいる現場の統括責任者の方が、誰が何をやるべきか的確に指示し、皆がそれに従って素早く動いたおかげで解決することができました。親方が各メンバーの得意・不得意をしっかり把握してくれているのはありがたいし、困った時は皆で助け合うチームワークの大切さを再確認しました。
──仕事のやりがいを感じるのは、どんな時ですか?
自分が検査や整備を担当した車両に試運転で乗せてもらったり、本線で走っている姿を見たりした時です。自分が手をかけた車両がしっかり走っていると嬉しくなりますし、自分の毎日の仕事が、物流や人々の生活の役に立っているという実感が湧きます。プライベートでも貨物列車が通過するのを見ると、「もしかしたら自分が整備した車両かな」とつい眺めてしまいます。
──学生時代と比べて、どんなところが成長しましたか?
学生時代はどちらかと言えば受け身の姿勢だったのですが、今は「自分の作業ミスひとつで人の命を奪いかねない」という責任感を持ち、積極的に行動するようになったと思います。自分の仕事がさまざまなところに影響を及ぼすことを自覚し、「私がやらなければ」という使命感を持って仕事に取り組んでいます。
──入社前後でギャップを感じたことはありますか?
いい意味で驚いたのは、残業が少ないことです。鉄道事業はどうしても遅延が発生するので、それに起因した残業が多いのかなと思っていましたが、引き継ぎをしっかりとし、チームとして動く体制なので、定時で帰れることが多いのです。また、現場は上下関係が厳しい体育会系のようなイメージを持っていましたが、実際は先輩たちとも気軽に食事に行きますし、わからないことがあればすぐに聞ける雰囲気です。
悪い意味のギャップは、夏は作業現場が想像以上に暑いことです。車両は鉄でできていて、真夏の太陽で熱せられた巨大な鉄板が8両分入ってくるわけなので、作業場の中はかなり高温になり、車両に触る時も注意が必要です。
将来は出向を経験し、車両のプロフェッショナルに。1を100にするための挑戦は続く
──仕事をする上で大事にしている価値観を教えてください。
当社の行動指針にもある「安全を最優先」を、私も大事にしています。また、安全行動指針として「人命を第一に考え、安全確保の主役となって、常に正しい作業を実行する」と宣言している通り、自分のミスで自分が死んでしまうかもしれないし、誰かを傷つけてしまうかもしれない、ということを常に肝に銘じています。
──今後挑戦してみたいことや、めざすキャリアについて教えてください。
入社時は車両知識ゼロだった私が、現在は車両検査の責任者を任されるまでになりました。ゼロから1にはステップアップできたと思うので、今後は1を100にするために、さらに勉強していきたいと思います。
キャリアとしては、一度は部品メーカーや車両メーカーへの出向を経験してみたいですね。私たちは整備や点検の際、メーカーから届いた部品を当たり前のように使っていますが、届く前はどんな風につくられ、どんな工程を経て当社まで届くのかを学びたいと思っています。
また、当社には車両工場がなく、メーカーが納品した車両を使用しているので、ただの鉄の塊から車両をつくり上げるという仕事は経験できません。そのため、一度は車両製造の現場に出向して、ものづくりの基礎を最前線で学びたいと考えています。
──JR貨物の魅力はどんなところにありますか?
JR貨物は、日本で唯一、貨物鉄道を扱っている会社なので、ここでしか得られない経験ができます。他の旅客鉄道会社でも電車の整備はできますが、貨車や機関車については当社が日本では最もノウハウを持っているはずなので、専門知識を身につけるには最適な環境です。
また、昨今の旅客車両は最新鋭の技術でつくられていますが、貨車は構造自体は国鉄時代からあまり変わらず化石のような車両で、私はそれが逆に魅力的だと思います。構造はシンプルだからこそ奥が深く、物流を支える車両を整備するというやりがいもあります。こうした点に共感してくれる方に入社いただき、一緒に働きたいですね。
※ 記載内容は2026年2月時点のものです
