データ作成から重機の操作まで。ICT技術で現場を支える機械職の仕事
安部が現在所属するのは、前田道路の本店にある機械センター施工指導課。機械センターは、通常の現場ではあまり使用されない特殊な重機を専門に扱う部署です。
「最近だと、道路をアスファルトからコンクリートに打ち替える現場が増えています。しかし、コンクリート舗装ができる特殊な機械は社内でも数が少なく、基本的にこの機械センターが保有しているため、われわれが機材とともに現場に向かい対応します。機械センターは、このような現場で対応が難しい要件があった場合に、全国各地の現場をサポートする役割を持っています。
施工指導課の中でも、私はICT施工に関する業務を多く担当しています。たとえば、従来は複数人で行っていた道路の高さや幅などの測量を、『トータルステーション』という機器を使えば一人で、しかも高精度で行えるようになります。この技術を応用して重機をコントロールするための3Dデータを作成・処理するのが、私たちの主な役割の一つです。
ICT施工では、この3Dデータがそのまま道路の仕上がりを左右するため、実際に現場に入ってから、現地の状況に合わせて微調整することも欠かせません。そうして完成したデータをもとに、私自身が重機を操作したり、現地のオペレーターに操作指導を行ったりしています」
施工指導課は全体で20名ほど。現場へは案件に応じて3〜4名で向かいます。重機のオペレーター、トータルステーションの担当など、それぞれが役割を担い、一つのチームとして作業にあたります。
「部署全体では20~30代が多く、50代の上司層もいるような環境です。和やかな雰囲気ですし、仕事に必要な会話はもちろん、プライベートの雑談もしながら、コミュニケーションが取りやすい環境で働けていると思います」
そんな安部が仕事で最も重視しているのは、コミュニケーションです。全国の現場へ行くたびに、現地の協力会社や現場監督と密に連携を取ることが、安全で円滑な施工には欠かせません。
「現場に赴くと、図面だけではわからない変化を見つけたり、予期せぬ事態が起きていたりすることもあります。そういう時に、こまめに工程や現場の状況の認識のすり合わせを行うようにしています。お互いの認識がズレていると手戻りが発生するといった自体が起こりかねません。対話を大切にすることで、現場全体の作業をスムーズに進められています」
普段扱えない重機を扱ったり、多くのデータに触れたり。四国の3年間で得た成長
大学時代に参加したインターンシップが、安部と前田道路の出会いでした。入社の決め手をこう振り返ります。
「インターンで訪れたときに、社員との話しやすい雰囲気があって『自分に合っているな』と感じました。加えて、地元の大分を出て全国で仕事をしたかったですし、道路の仕事は将来的になくならないだろうという安心感もありました。いろいろな面で、前田道路は自分にぴったりだと思ったんです。また、専攻していた工学部の知識を活かせると思ったので、機械職を選びました」
2017年に入社後3年間は現在と同じく本店の機械センターで、先輩の指導を受けながら業務の基礎を学んだ安部。その後、入社4年目からは四国支店へと異動しました。
「四国ではまだ導入が進んでいなかった3Dブルドーザーの指導と操作を担当するために、転勤となりました。異動して本店と大きく違ったのは、人の数です。本店では人数も多いので役割分担ができますが、四国ではデータ作成などをほぼ2人で担っていたので、一人当たりの業務量が格段に増えました」
限られた時間の中で、膨大な量のデータ作成と現場での施工を両立させるため、安部は工夫を凝らしながら仕事を進めていきました。
「たとえば、協力会社の方にお任せできる作業はお願いして代わりに進めていただくなど、時間を捻出するためにも人に頼ることを意識していました。
また、当時は大変に感じることも多かったですが、多くのデータを扱ううちに、パッと見ただけで違和感を覚えるような感覚も身につき、作業スピードは格段に上がったと思います」
愛媛、香川、徳島、高知と、四国内のさまざまな現場を訪れた安部。本店ではあまり触れる機会のない重機に触れられたことも、大きな財産になったと言います。
「重機の操作は、何度も触れることで身体が覚えていきます。少しずつ自分の手足のように、思った通りに動かせるようになるんですよね。この感覚は、現場で新しい重機に触るタイミングでも、『こう動かしたら危ないかもしれない』という危険察知能力につながり、今の業務にも活きています」
「自分がつくった」と誇れる仕事。完成した道路を見たときが、最高の達成感に
これまでのキャリアで最も印象に残っているのは、四国時代に担当した高知中央インターチェンジの建設プロジェクトだと言います。
「道路は、地面を固める『路床』、その上の『路盤』、そして表面の『アスファルト』というように、層を積み重ねてできています。それまでは一部分の施工だけを担当することが多かったのですが、この現場では一番下の路床から、すべての工程に携わることができたんです」
とくに印象的だったのは、道路脇の側溝などを設置するための「丁張り(ちょうはり)」という作業だったと振り返ります。測量して基準となる杭を打ち、高さを決めていく工法です。
「最近ではあまり経験できない業務だったので、道路がどのように作られていくのかを、より深く理解できる貴重な機会になりました。また、道路建設の『路床』から、完成までを全部経験できたので、現場のどこが難しいのかが感覚的にわかるようになったのも大きかったです」
安部にとって、その達成感が頂点に達したのは、道路が使われる場面を見た時でした。
「後日テレビで『高知中央インターチェンジ』が映されて、たくさんの車が道路を走っている様子を見た時が一番感動しましたね。
また、この現場に限りませんが、自分が建設に携わった道路の近くを通る時はわざわざ遠回りして、自分が手がけた道を走りながら『ここの現場やったなあ』と感慨にふけることもあります」
やりがいを感じるのは現場の仕事だけではありません。機械職の醍醐味を、次のように続けます。
「やはり、自分が作成したデータが道路の仕上がりに直結することです。道路を走っていて、たまに『ガタン』と揺れることがありますよね。経年劣化の場合もありますが、時に施工のズレで、道路に凹凸ができていたことが原因の場合もあります。
私たちのデータが正確であれば、滑らかで乗り心地の良い道ができるんです。自分の仕事がそのまま形になる、その責任の大きさがやりがいですね」
知識を後輩たちに伝えていけるように。「物怖じしないこと」が活躍の秘訣
今後のキャリアについて「現場で施工に関わり続けていきたい」と語る安部。また、自らが先輩たちから受け継いできた知識や、自分が得た経験を後輩たちに伝えていきたいと考えています。
「先輩から教わったことが、後で『ああ、あの時の話はこういうことだったのか』と現場でつながる瞬間が何度もありました。知識として持っているだけで、応用できる場面が格段に増えるんです。自分の経験が必ず後輩の役に立つかはわかりませんが、選択肢の一つとして伝えていきたいですね」
安部が入社してからの8年間で、前田道路という会社も変化してきました。とくに、人材を育てる環境が充実してきたことで、自ら学ぶ姿勢を持つ人材がより活躍しやすくなったと、自身の経験を振り返りながら語ります。
「私が入社した頃よりも、研修制度などの教育体制は格段に充実してきていると感じます。5年目や指導職になってからの研修など、キャリアの節目で学ぶ機会が用意されていて、会社として人材育成に力を入れているのを実感しています。
また、優しい人が多く、聞けば教えてくれる先輩ばかりなので、自ら学ぶ姿勢があればいくらでも成長できる環境ですね。そういった意味で、『物怖じしない人』であれば、当社で活躍できると考えています。
時には、忙しそうな先輩に声をかける必要があり、ためらってしまう気持ちもわかりますが、一人で抱え込まずに『手伝ってください』と言えることが大切です。それに、建設現場では協力会社の方々に明確に意図を伝える必要があるので、堂々とコミュニケーションが取れる人が向いていると思います」
ICTの技術を駆使しながらも、その根底にあるのは人とのつながりと、地道な経験の積み重ねです。安部の挑戦は、これからも日本の道を、そして前田道路の未来を力強くつくり上げていきます。
※ 記載内容は2025年10月時点のものです
