前田道路の技術を実装。イノベーションを現場へ、そして世界へ
技術部に所属する村田。照井、西川の上司であり技術推進課長として4名のメンバーを率いています。
村田:技術部は技術推進を担う推進課と技術情報を管理する管理課から構成され、それぞれが密に連携しながら横断的に業務を行っています。
技術部のミッションはふたつあります。第一に、前田道路が保有する技術、とくに技術研究所が開発した革新的な手法を、自社の現場に効果的に導入すること。第二に、これらの先進技術を対外的にアピールし、外部からの需要を喚起できるような環境をつくり出すことです。
技術研究所、東京合材工場、川崎合材工場を経て技術部に配属され、私は4年目を迎えました。これまでの経験を活かしながら、現在は技術推進に関する戦略立案やプロモーションのほか、工場および施工現場への製造・施工指導を行っています。
一方、入社12年目の西川と4年目の照井。少数精鋭の技術部の一員として、重要な役割を果たしてきました。
西川:入社後1年半ほど人事部に在籍し、主に給与関連の業務を担当していました。その後、2年目から現在の技術部に配属され、技術的な資料の作成、展示会の企画・運営、ノベルティの制作、商標登録の申請手続き、小笠原プロジェクトなどを担当しています。
照井:新入社員研修後に東京合材工場に配属され、1年2カ月ほどアスファルト合材の品質管理や現場での各種試験、さらに現場から送られてくる供試体の分析などを担当しました。その後、約1年半前に技術部へ異動し、現在は技術的な資料の作成、展示会の準備と説明、小笠原プロジェクトなどに取り組んでいます。
村田:西川さんと照井さんが取り組んでいる小笠原プロジェクトとは、小笠原の生物多様性保全とアカギ木材を活用した商品企画開発を目的とするもので、技術部が発案したプロジェクトです。
現地でのフィールドワークや勉強会、企画会議を通して学生の皆さんに実践的な環境保全と商品開発の経験を提供すると共に、前田道路の環境への取り組みを推進する一環として実施されています。
環境負荷軽減とビジネスの両立へ。全社一丸となり低炭素化とブランド価値向上に挑む
低炭素合材のプロジェクトが立ち上がったのは2021年のこと。村田の上司にあたる常務からの提案がきっかけでした。
村田:当社では2030年度までに、2013年度比でCO₂排出量を50%削減する、という目標を掲げています。この目標達成に向けて、私たちはさまざまなCO₂削減技術を開発し、実際の現場への実装を進めてきました。
従来の取り組みは主に社内目標の達成を念頭に置いたものでしたが、低炭素な独自手法によって製造されたアスファルト合材を、温室効果ガスの排出削減に寄与する商品として、対外的にもアピールできないかと上司から相談があったんです。そこで、これを低炭素合材と命名し、ブランド価値の向上と販売促進を図ることとなりました。
販売コンセプトと戦略の策定にあたっては、現場の負担を最小限に抑える点を重要視しました。当初、低炭素化への取り組み度合いに応じて工場をランク分けする案も検討されましたが、現場の士気に悪影響を及ぼす懸念があり、断念した経緯があったからです。上司からの指摘もあり、会社全体の取り組みとして推進する以上、前田道路が一丸となって取り組める体制を構築すべきだと考えていました。
これらのことを踏まえ、単に低炭素なアスファルト合材として販売するのではなく、CO₂削減証書(アクションレポート)を発行し、CO₂排出削減を可視化するというコンセプトを確立しました。
プロジェクトの立ち上げ後、最初に取り組んだのが、ロゴマークの作成。村田が常務と作成した素案をもとに、メンバーがデザインを洗練させていきました。
村田:ロゴマークには、ホワイトの「C」とグリーンの「O」の2文字を配置しています。この配色と構成に、「CO₂をゼロにしていこう」という想いを込めました。また、このロゴマークには「MAEDAサーキュラー」という名前があり、循環型社会の実現に向けた当社の強い意志を象徴しています。
環境ラベルや商標登録を担当した西川。当時の苦労を次のように振り返ります。
西川:私は文系学部の出身なので、入社時点では建設、土木、化学に関する専門知識がほとんどありませんでした。そのため、今回のプロジェクトでもまず自身が知識を身につけることから始めなければなりませんでした。
とくに難しかったのが、特許事務所の弁理士さんや弁護士さんに対して、低炭素合材の技術的特性を正しく伝えることです。私自身が技術についてまだまだ勉強している身なので、専門的な内容をしっかりと説明するのには、当初とても苦労しました。
さらに、商標登録の手続きを進めるには、特許法に関する知識も必要です。弁理士さんに助けていただきながら、実務を通じて学びを深めていきました。時間はかかりましたが、結果として大きく成長できたと感じています。
全社一丸の取り組みが生んだ大きな成果。低炭素合材プロジェクトが歩んだ険しい道のり
プロジェクト推進のための下地が整い、2022年から社内への周知に着手した村田ら。そこで大きな壁に直面しました。
村田:当初は動画による社内への周知・PRを計画していましたが、それでは現場の理解がなかなか進まないと考えました。そこで、全国の支店や100近くある工場を一つひとつ訪問し、説明会や勉強会を実施することにしたんです。
実際に顔を合わせて説明すると、相手が理解していない部分が見えてきます。「これってどういう意味ですか?」という初歩的な質問は、対面で説明を行うことでやっと出してもらえる、ということが頻繁にあり、地道なコミュニケーションの重要性を再認識しました。
また、温室効果ガス排出量を包括的に理解し、管理するためには、「スコープ1・2・3」の概念を理解することが非常に重要です。「スコープ1」は、事業者自らが排出する温室効果ガスの直接排出、「スコープ2」は他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出、「スコープ3」はスコープ1、2以外の間接排出を指します。
これをわかりやすく説明するだけでも難しい上に、工場ごとに燃料の質や量が異なります。アクションレポート(CO₂削減証書)の作成に必要なCO₂排出量の計算を現場に任せると、現場の業務増加を招くため、現場の反発を招きかねません。低炭素合材を社内に浸透させるためには、現場の負担を軽減する仕組みが必要でした。
照井が低炭素合材プロジェクトに参画したのはちょうどそのころ。これがプロジェクトにとって大きな転機となりました。
照井:私が技術部に配属された時点で、低炭素合材の運用開始からすでに1年が経過していました。各現場ではExcelを使用してCO₂排出量を算出していますが、現場の負担を軽減するため、依頼書と計算表を一体化し、作業の効率化を図りました。
現場にいた当時はパソコンでこういった作業をする機会はほとんどなかったため、技術部に配属されてからはまず、ExcelやPowerPointの操作方法を集中的に学びました。とくに、低炭素合材プロジェクトは、私が技術部で初めて任された大きな仕事です。プロジェクトを通じて、アスファルト合材製造に関する現場経験を活かせた実感があり、大きな達成感とやりがいを抱いています。
2022年の時点で80件だったアクションレポートの件数は、照井がプロジェクトに参画した2023年には、なんと1,925件もの数に。社外周知にも取り組み始めたことで低炭素合材の引き合いが増える一方、新たな課題に直面します。
村田:以前、アクションレポートの発行業務は技術部が担当していました。しかし、件数が急に2,000件近くに増えたため、業務過多に陥ってしまったんです。技術部全員で手分けして対応しましたが、かなり厳しい状況でした。
西川:当時、産休に入ったメンバーが担当していたデザイン業務を私は引き継いだのですが、簡単な作業ですら、つまずいていたのを覚えています。
想定を超える社内外からの反響を受け、村田らはアクションレポートの電子化とシステム構築に踏み切りました。その結果、発行スピードが大幅に改善され、低炭素合材プロジェクトが軌道に乗り出します。
照井:これまでは、現場から技術部宛にメールで送られてきた依頼書をもとに、一つひとつ手作業でアクションレポートを作成していました。そこで、業務効率を向上させる目的で、情報システム部と連携し、ポータルサイトから申請すると自動的にアクションレポートが作成される仕組みを構築しました。
施工面積や出荷量など、アクションレポートに関する要望はお客様ごとにさまざまです。そうしたニーズに対応するために、情報システム部門に協力を依頼し、西川さんとも相談しながら申請画面などのデザイン設計を進めていきました。
村田:システム化を進めた主な理由は業務過多の「解消」ですが、そのタイミングで実施できたのは経営陣の判断があったからです。私たちの動きを見ていた経営陣が臨界点を察知し、GOサインを出してくれました。その後、アクションレポートの件数が急激に増加したため、システム化していなければ業務が完全にストップしていたと思います。
また、半年ほど前からロゴマークを名刺に印刷する動きが進んでいますが、これも経営陣の後押しがあったおかげです。現場に対してロゴマークの使用をお願いしているうちに、「名刺に入れたい」という声が上がり、それを受けた経営陣の判断で実現しました。技術部だけでなく、会社全体で取り組んだからこそ、今回のプロジェクトが成功したと実感しています。
技術力で舗装業界の未来を切り拓く。技術部は新たなステージへ
今回のプロジェクトを通じて大きな成長を遂げた西川と照井。技術部で働く醍醐味を次のように語ります。
西川:プロジェクトを通じて、単に上司に質問するのではなく、自ら考え、相手の立場に立って物事を捉えるようになれたのではと実感しています。これは、新しい挑戦の機会が豊富な技術部だからこそ成長できた部分だと思っています。
今後は、技術説明のスキル向上はもちろん、PRの企画立案にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。
照井:私にとっても、今回のプロジェクトは主体的に考える習慣を身につける貴重な機会となりました。結果として、上司からの指示の理解度が格段に深まったと感じています。
また、現場では経験できない業務に携わることで、視野が大きく広がりました。今後は、村田さんのような優秀な技術者をめざして、さらなる知識の習得に励みたいと思っています。
一方、上司の立場からそんなふたりの成長を見守ってきた村田もまた、大きな手ごたえを感じています。
村田:立ち上げに関わったプロジェクトが会社全体の取り組みに発展したことに、大きな充実感を覚えています。とくに、西川さんと照井さんが低炭素合材に対して強い思い入れを持ち、プロジェクトに携われたことを前向きに捉えてくれていることは、私にとっても非常に喜ばしいこと。全員が一丸となって取り組み、記憶に残る仕事になったことが、最大の成果だと感じています。
技術部の役割は、新技術の普及や付加価値の創出など、会社の競争力強化に直結します。今後は、アスファルト舗装の本質的な価値を追求し、技術力で勝負できる強い前田道路をめざしたいと考えています。
そのためには、技術部の規模を拡大していかなくてはなりません。社内PRを通じて部門の重要性を訴求し、成長を図っていきたいです。同時に、社外へのアピールも継続するつもりです。社会のCO₂削減意識が高まれば、私たちの取り組みがよりいっそう評価されると確信しています。
挑戦を後押しする前田道路の組織文化の中で育ってきた村田。チームを率いる立場として、部下への想いを次のように述べます。
村田:管理職として、部下の成長を促すことも私の重要な責務です。そのため、ただ指示を与えるだけでなく、「私はこう考えるが、あなたはどう思う?」と問いかけ、自主的な思考と行動を促してきました。
時に難しい場面と直面する経験もあるかもしれませんが、こうした過程を通じて彼らが着実に成長していることを実感しており、とても心強く思っています。
前田道路では、長く同じ部署で働くことは稀です。私が直接指導できるのはほんの数年間ですが、この期間に学んだことを活かし、将来どの部署に配属されても、会社と自身のために力を発揮できる人材に成長してほしいと願っています。
自分の意思で行動することが仕事の醍醐味です。組織の中でそれを実現するのは困難をともないますが、彼らにもぜひその技術を習得してほしいと考えています。
※ 記載内容は2024年9月時点のものです
