リニア新幹線を支えるシールド工事を担当。50人の職人と共に巨大プロジェクトに挑む
東京土木支店の梶ヶ谷シールド作業所で勤務するタッサナン。前田建設の新入社員研修における仮配属第1タームとして着任しました。
「リニア中央新幹線のためのシールド工事現場で主に3つの作業を担当しています。ひとつめは材料管理。トンネル建設に必要な資材、とくにセグメントと呼ばれるトンネルの壁を構成する部材を適切に管理し、必要な場所に供給する作業を行っています。
ふたつめは掘進工(くっしんこう)といって、シールドマシンという大型の掘削機を使用して地中を掘り進める作業です。これがトンネルを『掘る』工程にあたります。
みっつめはセグメント壁の組立てです。掘削が進んだ後、工場で製作されたセグメントをトンネルの内側に円形に組立てます。これら『掘って、壁をつくって、また掘る』という一連のサイクルを繰り返すことでトンネルを建設していくのが、シールド工事の基本的な流れです」
タッサナンが現場に入ってまだ4カ月ほどですが、さまざまな経験を通じて、着実に成長を遂げてきました。
「現在、梶ヶ谷シールドで勤務する職人の数は約50人。それぞれグループに分かれて作業しており、私のグループは材料の運搬を主に担当しています。先輩に教えてもらいながら、これまでさまざまな業務に挑戦してきました。おかげで、梶ヶ谷シールドの現場作業はひと通り学ぶことができています」
音楽への関心が紡いだ異国でのエンジニアの夢。運命的な出会いに導かれ、土木の世界へ
タッサナンが日本に興味を持ったきっかけは日本のポップミュージックでした。現在のキャリアへとつながるその原点をこう振り返ります。
「私が日本に興味を持ったのは、日本の音楽シーン、とくに多数のアーティストが出演する音楽フェスや、さまざまなジャンルの音楽が楽しめるミュージックバーを好きになったことがきっかけでした。日本語を学びたいと考えたのも、好きな曲の歌詞の意味をわかるようになりたいと思ったことが理由でした」
その後、母国タイの大学で土木工学を学び、日本で博士課程を修了したタッサナン。土木業界に足を踏み入れたのは、実務経験を積みたいと考えたからでした。
「博士課程を終えた後も、できればまだ日本に残りたいと思っていました。大学教員をめざしていましたが、私にはまったく実務経験がありません。ゼネコンなど土木の世界で実際にどのように仕事が行われているかを理解したいと考えるようになりました。
日本の建設会社は東南アジアでとても有名で、とくに安全第一を掲げていることが広く知られています。せっかく日本で就職するなら、大きな建設会社に入りたいと思っていました。
そこで当時の指導教授に相談したところ、現在仮配属されている梶ヶ谷シールドの工事現場を見学させてもらえることになり、実際に現場に触れ、その規模と技術力に圧倒されました。日本の建設会社では母国にはない新しい技術を学ぶことができるだろうと胸が高鳴ったのを覚えています」
見学後、タッサナンはすぐに前田建設への入社を決意。運命的な出会いがきかっけでした。
「梶ヶ谷シールド作業所の所長の存在が、私にとってこの会社へ入社を決めた最大の理由でした。当時、私の日本語はまだ十分ではありませんでしたが、海外経験が豊富な所長は英語で丁寧に説明してくださいました。
所長は、ドイツ製のベルトコンベアなど海外の先進的な機械を数多く導入している、当社内でも先駆的な考えを持たれている存在です。国際的な視野を持ち、異なる文化や技術の橋渡しをしている所長は、私にとって憧れの存在。
将来的に大学に戻るかどうかはいまもまだ決めていませんが、ここでの実践的な学びが私の将来のキャリアにとって貴重な財産になると確信し、入社を決めました」
現在、1年間におよぶ研修に取り組んでいるタッサナン。最初に直面したのは、言葉の壁でした。
「日本人の新入社員と同じ研修を受けているので、読めない漢字や理解できない内容がたくさんあり、最初はとても苦労しました。いまも勉強中ですが、通訳アプリやネットで調べたり、それでもわからないときは同期入社の仲間に聞いたりして、一つひとつ習得しています。
現場の職人に対して、日本語である程度は仕事内容を説明できるようになりましたが、大勢の職人さんを前に施工の段取りを発表するときなどは、まだ緊張してうまく話せないこともよくあります。入社当初と比べれば成長できていると自分でも思いますが、まだまだ努力が必要だと感じています」
その後、日本特有の組織文化に戸惑うこともありましたが、少しずつ新たな環境に順応できていると言います。
「入社してから研修が1年間あると聞いたとき、あまりに長くて驚きました。海外の会社では、研修期間は1カ月程度が一般的です。しかも、講義やテストがたくさんあって、毎日違う課題に取り組まなければいけません。最初は『そんなに必要なのかな』なんて思ったものでした。
また、日本の職場の硬い雰囲気にも違和感を覚えました。以前イギリスでインターンシップを経験したときは、もっと自由な雰囲気があったからです。
でも、半年ほど経験してみて、研修で学ぶことは現場で使えることばかりだとわかりました。いまではこの研修の重要性や必要性を身に染みて理解できています。最初は長すぎなのではというイメージを持っていましたが、会社がこれだけの期間を投じる意味がわかってきました」
通訳から、技術的な課題解決まで。強みを活かしてチームに貢献できることがやりがいに
現在の部門へ仮配属されて間もないタッサナンですが、すでに存在感を発揮できた出来事がありました。
「ドイツの土砂運搬用ベルトコンベアメーカーの技術者が当社を訪れた際、英語と日本語の両方ができる強みを活かして、同時通訳を務めました。さらに、技術者たちが帰国した後も、トラブルが生じた場合に英文マニュアルの内容を現場に伝える役割も果たしています。
また、現場にはあらゆる作業の手順書や安全関連の掲示物が貼り出されていますが、外国人作業員の方も内容を理解できるように、英語版の作成と導入を提案し、採用されたこともあります。業務環境の改善に貢献でき、大きな達成感がありました」
また、技術者として現場の課題解決に貢献したこんな経験も。
「縦穴を掘削する現場で土砂を土砂ピットまで運ぶ際、これまではベルトコンベアからこぼれ落ちた土砂を手作業で拾ってトンパックに詰めていたんです。しかし、作業が追いつかず、風雨にさらされて人が歩けないほど散乱していました。
そこで、こぼれ落ちた土砂を自動的に土砂ピットまで運搬できるよう、メインのベルトコンベアと並行してポータブルタイプのベルトコンベアを設置することを提案しました。
このアイデアが採用されることになり、現地調査から必要機材の算出、設計図の作成、発注、導入までを担当し、結果的に周囲から高く評価されたことは、大きな自信につながっています」
存分に持ち味を発揮しながら活躍できているのは、働きやすい環境があるからこそだと強調するタッサナン。前田建設で働く醍醐味について、次のように話します。
「私の日本語能力はまだ不十分ですが、一緒に働く皆さんがそれを良く理解し支援してくれてとても助けられています。1年目から遠慮せず自由にアイデアを出せているのは、年次や国籍に関係なく、誰の意見にも耳を傾けてくれる文化が当社に根づいているからこそ。チームに貢献できている実感があり、それがやりがいにつながっています」
多様性が導くイノベーションの未来。真のダイバーシティを実現し、より強い組織へ
インフロニアグループ合同入社式・合同研修ドキュメンタリー動画はこちら
日本語能力にますます磨きをかけ、より組織に寄与できる人材になることが当面の目標だと話すタッサナン。すでに、その先のキャリアを思い描いています。
「より良いワークライフバランスを実現することが、私にとって大きな課題であり目標です。日本語を学ぶ前から何度も日本を訪れてきましたが、言語力が向上したことで、いまはより深く文化を体験できていると感じます。日本には魅力が満載なので、さまざまな場所を訪れ、多くの人々と交流したいです。
また、間もなく本配属となりますが、さまざまな現場を経験してみたいと思っています。配属先がどこであれ、地方でも山の中でも、喜んで赴任したいです。
さらに、前田建設には多様な企業や公的機関とオープンイノベーションを推進する中核拠点『ICI総合センター』があります。十分に現場経験を積んだ後は、研究者としてスタートアップとの協業や、施工管理などの研究にも挑戦してみたいですね」
イノベーションを促進し、前田建設の競争力をより高めていくために。日本での就職を検討する外国籍の学生や求職者に向けて、次のようなメッセージを送ります。
「外国籍の方は、日本人と同じように振る舞うことを最終目標とするのではなく、積極的に自分の考え方を発信すべきだと私は思います。私も最初は日本人に同化したいと思っていましたが、博士課程時代の恩師の教えを受けて、異なる意見や考え方を掛け合わせることでより良い成果が得られると確信するようになりました。
日本人と同じように考えていては、企業が外国籍の人材を採用する意味がありません。日本人の考え方や働き方を理解した上で、ありのままの自分の力を発揮することが、真のダイバーシティの実現につながると信じています」
多様な視点が交わる建設現場こそが、未来のインフラを生み出します。真のダイバーシティを実現する原動力として、タッサナンはイノベーションを加速させていくことでしょう。
※ 記載内容は2024年9月時点のものです
