当事者意識が、円滑な現場運営の鍵に。大規模プロジェクトを支える現場管理の流儀
関東支店 建築部に所属する蓑田。現在、主任として大宮西口再開発作業所の現場管理を担当しています。
「私たち現場管理者の役割は、安全管理、品質管理、工程管理、コスト管理など多岐にわたります。工事の進捗方法を綿密に検討、立案し、現場の作業員と連携しながら建造物の完成に向けて取り組んでいます。
現在携わっているプロジェクトは、総工費200億円を超える大規模な開発案件です。低層階は商業施設、上層階は住居エリアという構造で、所長の統括のもと、施工管理、設計監理、事務管理など、さまざまな専門分野の職員が派遣の方を含め40~45名が常時現場で稼働してきました。
プロジェクトは現在、施主への引き渡しを完了し、テナント工事に移行した段階です。約10名の職員だけが残り、商業施設のテナント内装仕上げや、住居エリアの入居者に対するアフターサービス対応などを行っています。数カ月後には事務所の撤収を済ませ、次の現場に移動する予定です」
プロジェクトを円滑に運営することが蓑田の役割。これまで約2年にわたって現場を取りまとめてきました。
「今回のような大規模プロジェクトでは、工事は躯体工事と内装工事に大きく分けて進められます。複数のユニットが並行して稼働する中、私は主に躯体工事を担当し、建物の構造体の構築、仮設エレベーターやタワクレーンの解体、さらには外構工事へと段階的に移行しながら、詳細な工程表の作成や部下への指示出しなど、工程全体を管理してきました。
日々500人近い数の作業員が出入りするような現場では、工事の進捗管理だけでなく、職員のマネジメントも非常に重要です。そのため、現場の運営方法やルールの策定、その徹底も私たちにとって大切な任務となります。作業員の中から選抜された職長で構成される職長会と連携しながら、効率的で円滑な現場運営を進めてきました」
キャリアを通じて現場管理に携わってきた蓑田。施工現場を運営する上で、大切にしていることがあります。
「プロジェクトの規模が大きくなると、『とくに、当事者意識が非常に重要と考えています。職員は担当を受け持つと思います。『担当工事のみを見る』といった考えを持たないよう心がけ、部下にも当事者意識を持つことの重要性を説いてきました。
誰かがその役割を担わなければならない以上、献身的な精神を持って仕事に臨むことが、現場の円滑な運営には欠かせません。時代にフィットしない考え方かもしれませんが、そのような人材がいなければ、プロジェクトの成功は困難です。私自身、この理念を体現しようと日々努めています。
人は楽なほうへと流されやすい生き物です。それを理解した上で、特定のメンバーに負担が偏って大きな問題に発展することがないよう、個々の職員の状況を把握し、適切なケアと指導を行いながら、プロジェクト全体の進捗を管理することが私の責務だと考えています」
父を超えようと挑んだゼネコンへの道。現場で学んだ人間力がキャリアの糧に
大学では建築設備について学んだ蓑田。建設業界を志すきっかけとなったのは、建設業を営む父の存在でした。
「建設関係の仕事をしている父を超えたいという野心が私のキャリアの出発点でした。同じ業界で働くだけでは父を超えることはできません。業界の上流に位置し、父に対して仕事を発注する立場になることが目標を叶えるための近道だと考え、ゼネコンをめざしました。
前田建設との出会いは、大学で開催された会社説明会がきっかけです。準大手ゼネコンに漠然とした興味を抱いていた中で、直感的に当社に惹かれました。その後、企業研究を進めるにつれて関心が深まり、万が一不採用となった場合は、建設職人になる覚悟で、前田建設一社に絞って選考に臨みました。
当初は大学で専攻した設備施工でキャリアをスタートさせる予定でしたが、選考過程で建築施工への配属変更を願い出ました。施工業者の選定に関与する機会があると考えたからですが、『何十年も働く会社だから、自分の後悔しない道を選んでください』と柔軟な対応を受け、社員を大事にする会社だと感じたのを覚えています。
念願かなって建築施工に採用されましたが、本当の挑戦はこれからです。施工業者を選定する立場にある所長になるのは何年も先のこと。所長就任を待たずに施工業者の選定を任されるような人材となり、一日も早く父と対等な立場で協業できることをめざしています」
入社後、蓑田が最初に配属されたのは東京建築支店。そこでキャリアの礎となる精神的な強靭さを身につけました。
「私が現場に配属されたのは、地下躯体工事が本格化し始める多忙を極めたタイミング。工期が迫る中、連日の長時間勤務を余儀なくされ、チーム全体に緊張感が漂っていました。
当時、慣れない現場業務に専念するあまり、事務所での作業時間を確保できず、そのことを先輩から指摘されるなど、職員間の立場や意見がうまく噛み合わない場面が多かった記憶があります。コミュニケーションに課題を抱えた一連の経験を通じて、職場での円滑な人間関係の重要性を学びました」
その後、蓑田は北陸支店へ。現場管理者として多岐にわたる業務経験を積みました。
「約2年間にわたり大規模な開発新築工事に携わり、自ら手を挙げて幅広い業務に挑戦しました。工程計画の立案を初めて担当させてもらうなど、所長のサポートを受けながら、現場運営に必要な要素を適切に評価したり、意思決定したりする能力が養われたと実感しています」
信頼関係が現場を動かす。プロジェクトを通してつかんだマネジメント哲学
2022年に現在も所属する関東支店の配属となった蓑田。東京建築支店と北陸支店で培った経験を糧に、大きな成長を実感する出来事がありました。
「関東支店に配属された当初は、地下躯体工事が始まろうとする重要な局面。既存の計画に沿って業務を遂行せざるを得ませんでしたが、地上工事に移行し、低層階から上層階へと展開する段階で、計画立案に参画する機会を得ました。
建設現場では、経験豊富な職人たちの信頼を得ることが極めて重要です。ほとんどの作業員が年上という状況の中、適度な距離感を保ちながら、説得力のあるコミュニケーションに努めました。
職人たちは根拠のある適切な判断を求め、中身のない指示には従おうとしません。そのため、的確な知識と明確な根拠に基づいて指示を出し、必要に応じて率直に意見を交わすことをとくに心がけました。
結果として、今回のプロジェクトでは、現場の作業員たちが私の指示に従って効率的に動いてくれたと感じています。徐々に彼ら、彼女らの信頼を獲得できた実感があり、『蓑田さんが言うことなら聞きますよ』と言葉をかけられたこともありました。彼ら、彼女らとスムーズに連携できたことに、現場管理者として大きな手ごたえを感じています」
さまざまな職人から多様な要望や質問が寄せられ、ときにキャパシティを超えてしまう場面も。それでも、蓑田が可能な限り誠実な対応に努めてきた背景には、若手時代のこんな経験がありました。
「最初の配属先で、先輩に対して業務に関する質問をした際、即座に回答を得られないことがありました。当時は繁忙期であり、いま振り返れば状況的に致し方なかったと理解しています。
しかし、自分が部下や後輩を指導する立場になったときは、たとえ時間外の業務となったとしても、このような状況を決して繰り返さないと強く心に刻みました。
現場では、ひとつの対応の遅れが工程全体に影響を及ぼすことが少なくありません。迅速かつ誠実な対応は、プロジェクトの成功に不可欠だと考えています」
技術と人間力で拓く建設業界の未来。手と手を取り合い、新時代に挑む
入社8年目を迎え、蓑田に期待されているのは中核としての役割です。現場管理を担うプロフェッショナルの立場から、自身の将来を次のように展望します。
「当面の最優先課題は一級建築士の二次試験合格ですが、間もなく着手する予定の大規模プロジェクトにも万全の準備で臨むつもりです。工事工程全体を俯瞰的に把握し、プロジェクト全体の最適化を図りたいと考えています。
また、ホールディングス化にともなって、当社の事業領域が大きく拡大しています。コンセッション事業や自家発電設備など、建設業の枠を超えた多様な分野にも積極的に関心を広げ、より総合的な視野を持った技術者として成長していきたいです」
キャリアを通じて、技術力だけでなくコミュニケーション力にも磨きをかけてきた蓑田。めざす組織像についても明確なビジョンがあります。
「あらゆる業務の根幹にあるのは、人と人との関係性です。年次を重ねるごとに業務の幅と深さが増し、仕事そのものにも充実感を覚えるようになりましたが、人間関係の構築が何よりも重要だと確信しています。
これを後進に伝えることも、上司の大切な役割です。『この人の指示なら従いたい』と思われるような信頼関係を築くことをめざしています。こうした信頼関係こそが、風通しの良い職場環境の基盤となり、結果として後輩たちの業務効率向上や、高い生産性を持つ人材の育成につながると信じています」
組織と個人が共に成長できる組織づくりをめざして。蓑田の新しい挑戦が、またここから始まります。
※ 記載内容は2024年7月時点のものです
