クレーンの安全な操作のために。使いやすく安全な機能を考え、ソフトで実現
2016年に新卒で前田製作所に就職した常田は、クレーンなどの建設機械に使われる制御装置や運転室に取り付けられるモニタ表示のソフト開発を担当。クレーンを安全に操作するためには欠かせない仕事です。
常田 「クレーンを使うユーザーの危険な操作を検出したら動作を規制したり、ユーザーにとって重要な情報をモニタに表示する機能を考えたりします。たとえば、操縦席にクレーンを動かすボタンがありますが、これを間違えて押してしまったときにクレーンが反応したら困るという要望が現場から上がったら、2秒間の長押しの後に動作するようにプログラムで制御することを提案。それをソフトに実装するのが私の仕事です」
2023年5月現在、技術部設計グループの社員は15名ほど。クレーンのソフト開発は常田がひとりで担当しています。責任ある仕事も増えてきたという常田は、日々どのような作業を行っているのでしょうか。
常田 「たとえば昨日であれば、午前中に機械に不具合があって、検査場でクレーン実機を動かしながら、不具合の洗い出しを行いました。その後、見つかった不具合に対して修正を行い、実機で検証する……という日でしたね。
一方、ソフトの設計に集中する日は、社内で1日中パソコンに向かって、プログラミングをしています。使用するプログラミング言語は、ST言語というC言語に近いもの。もともと高等専門学校で、電気制御工学を学んでいましたが、本格的にプログラミングを学んだのは、入社してからですね」
クレーンの既製品に関する現場からのニーズに対応する業務だけでなく、メインは新製品に搭載するソフトの開発を行っています。CADなどを用いて、ハード側の設計をするスタッフと連携しながら、安全で使いやすい機能を考え、ソフト側でこれを実現するのがミッション。
常田 「もちろん開発したソフトが思い通り動かないこともあります。建設現場では、少しの不具合が大事故につながりかねません。そこで、ミスをしたら必ず原因を突き止め、しっかり記録して、再発防止に努めています。これは技術者の基本ですね」
水泳に夢中になった高専時代。あきらめない根気強さが身についた
長野県内の高等専門学校の電子制御工学科で学んでいたという常田。電子制御工学を学びつつも、高専時代に夢中になったのは部活動でした。
常田 「高専時代は、水泳部の活動に力を注いでいました。平泳ぎの100mでは、高専の全国大会に出場したことも。諦めずに継続する根気強さを学んだ気がしますね。これは、細かい作業が多い今の仕事に役立っていると思います。
もちろん電子制御工学の知識も役立っています。電子回路の設計やプログラミングから、旋盤などを使った機械工作、さらにCAD設計や材料力学など、かなり幅広く学べる学科だったので、その経験が結果的に他部署の業務の理解につながっています」
就職活動では、漠然とプログラミング関連の仕事に就きたいと考えていた常田。前田製作所との出会いは、どのように訪れたのでしょうか。
常田 「本社が長野県で、実家から近かったので、この大きなビルの会社は、何をしているのかと思って、調べてみるとどうやらクレーンなどの建設機械をつくるメーカーらしい……ならば、クレーンの開発にも携われるのかなと考え、興味を持ちました。子どものころ、クレーンなど工事現場の大型機械が好きだったので、それを自分でつくれたらおもしろいだろうなと考えたんです。
入社して感じたのは、先輩たちが後輩に丁寧に指導をしてくれる会社だということ。また入社して1カ月くらい研修があり、クレーンやフォークリフトの操縦、溶接に関する技能講習などを受けることができました。20名ほどの同期社員とも研修期間でかなり仲良くなれて、ここでなら仲間と一緒に新しいチャレンジができそうだと感じました」
現場の声を聞いて、ユーザー視点でのソフト開発を意識するように
入社後、同期の仲間にも恵まれ、順調な社会人生活をスタートした常田でしたが、新人時代には、現場でさまざまな試練も経験したと言います。苦しい局面をどのように乗り越えたのでしょうか。
常田 「入社1年目の後半にひとりで現場に急行して、『集材機』という機械の不具合を直す業務を担当したんです。実機を動かしながら、不具合を直して、新機能を追加して……ということをしたのですが、これは本当に大変でした。
机上で作っているのと実際の現場ではぜんぜん違って。建設機械は雨風や寒暖差のある野外で使用されるもの。不具合といってもハード側が原因の可能性もあります。パッと症状を見ただけではソフト側なのか、ハード側なのか、原因の特定が難しいことも。
上司から携帯電話でアドバイスをもらいながら、なんとか任務を達成できたことで、大きな自信を得ることができました。そのときは、ここを乗り越えたら、もう怖いものはないという感じになりましたね」
現場で実際に建設機械を操作する様子を目の前で見て業務に携わることで、新たな発見もあったと言います。もう一段階、視野が広がり、ユーザー視点で物事を考えられるようになったことは常田にとって大きな成長への転換点でした。
常田 「自分はクレーンのソフト開発をしていて、社内で要求された仕様に対して、その通りに制作するような形で仕事を進めています。当然ながら、その先にはユーザーさんがいますよね。それでも入社したころは、目の前のことで精一杯で、製品をつくった後のことまで考える余裕はなかったんです。
けれども、現場でソフトの動作を実機確認する過程で、現場スタッフや検査担当者からアドバイスをもらうことで、現場ではどういう使い方をしているのか、使ったときどういう気持ちになるのか。ユーザーの視点を意識するようになりました。この点は本当に現場の皆さんのおかげで成長できたと思います」
最近では不具合が発生したとき、ハード側なのか、ソフト側なのか、原因を切り分けられるようになったと言います。回路図と実際の機械の設計図を使いながら、原因を調べていくことも。さらには電気回路に強い方にアドバイスをもらったり、ハード側と連携して解決していったり、広い視野で課題解決に取り組めるようになりました。
クレーン実機を動かすおもしろさ。これから挑戦したい数々の夢
建設現場を裏側から支える縁の下の力持ちといえるクレーンのソフト開発の仕事。そのおもしろさを常田はこう語ります。
常田 「やはり巨大な機械が自分のつくったプログラミングで思い通りに動くのは、シンプルに喜びを感じますね。ノートPCを抱えて、すぐ隣にあるクレーンの実機を動かしているときの手応えはたまりません。やはり、こうした大型機械が好きなんだと思います」
少年のような瞳で、技術者らしい仕事のやりがいを語ってくれた常田。今後、この仕事において成し遂げたい目標はあるのでしょうか。
常田 「失敗を繰り返しながら、やっとソフト開発の仕事をマスターしつつあります。今後は、自分が積み上げたノウハウをベースに、後輩を育てることにも挑戦したいですね。他にやってみたいこともあるので、一緒に働く仲間を増やしたいです。
たとえば、自分たちが取り組むソフト開発の仕事内容を知ってもらうマニュアルのようなものもつくりたい。ソフトの使い方で問い合わせをいただくことも多いので、機械設計側の方にもわかりやすいマニュアルがあれば、仕事がスムーズになると思うんですね。つまり、業務プロセスを改善するような仕事に挑戦したいです」
また、現在はソフト開発の業務がメインですが、いずれはクレーン自体の設計にも挑戦したいと考え、機械設計の勉強も始めているとのことで、常田の夢はさらに膨らみます。そのため、扱えるプログラミング言語の幅もさらに広げていくつもりだと言います。
常田 「今後、別のプログラミング言語を使っていく予定で、それに対応できるように習得していくつもりです。自分がプログラミングを本格的に学んだのは入社後です。この会社には、プログラミング初心者でも丁寧に教えてくれる先輩がいるので安心ですね。機械制御やプログラミングを仕事にしたいと思う人なら、ぜひ勇気を持って、最初の一歩を前田製作所から踏み出してほしいと思います」
