香料単体で完成ではない。製品になったときをイメージして開発する
池田糖化グループの中でも、甘味料や香料の開発を行う第四開発室に所属する徳屋。第四開発室では、セイボリー系(塩気のあるもの)からスイート系の香料までさまざまな取り扱いがありますが、その中でも桃や柑橘類など、主に果物の香料開発に携わっています。
「桃の香料を作るとなったら、最初に桃の香りがなんの成分で構成されているかを調べます。その成分をベースに、“完熟した桃”なのか“まだ固さのある桃”なのかなど、お客様の要望に合わせて配合を調整していきます。
4〜5パターンの香りを作ったら、そこから絞り込んでいき、お客様のイメージ通りのものに仕上げていきます」
香りは目に見えない上、同じ“完熟した桃の香り”でも、人によって好みやイメージは少しずつ異なります。また、お客様が求めているのは、「食品が完成したときに感じる香り」。そこが香料開発の難しさだと徳屋は話します。
「香料単体でベストな香りになってもダメなんです。ほかの原料と混ざり合ったときに、イメージした香りになる必要があります。チーズのように香りの強いものと組み合わせる場合もあるので、最終形を想像しながら作ることが難しいですね。
そのため、お客様にチェックしていただく際は、製品に近いものを試作として持参します。たとえばチーズに使う香料なら、チーズに入れた状態で確認していただきます。そこでイメージをすり合わせて、修正していくんです」
もちろん、開発室のメンバーも心強い存在です。自分が作ったものを客観的にチェックしてもらったり、自分に足りない知識を教えてもらったり、「周りの力を借りること」も大事だと話します。
「社会人ですから、自分で考えて実行することは必要です。でも、私には足りない部分もたくさんあります。開発室には、別の部署を経験してきた人もいますし、それぞれ得意分野を持った人がいますので、いろいろとアドバイスをもらうようにしています。
また、自分がベストだと思った香りでも、他の人の反応を見ることで新しい発見があります。皆さんの知見を借りて、より良いものを作りたいと考えています」
苦手を克服するために、積極的にお客様に提案する機会を作る
徳屋が入社したのは2015年。食品業界に進もうと決めたのは、ケーキ店を営む両親の影響でした。
「幼いころから両親がお客様と接しているのを見ていました。お店に来たお客様が笑顔で帰っていくのを見て、食品で人を笑顔にする仕事がしたいと思ったんです。
でも、私は人前で話したりすることは苦手。中間原料の会社なら、自分が作ったものが食品の一部として届き、笑顔が生まれるお手伝いができると考えました」
人前で話すのは苦手だと言う徳屋ですが、入社後は想像以上にお客様の前に立つ機会が多く、苦労したと振り返ります。
「プレゼンの際は、開発担当者も同行して説明をする場合が多くあるんです。自分が開発したものですから、しっかり紹介したいという気持ちはあるものの、どうしても苦手意識がありました。
でも、苦手だからと逃げるわけにはいきません。そこで、お客様に会えそうなチャンスがあれば、営業担当者に『同行させてください』とお願いして、できるだけ提案の機会を作るようにしました。今でもお客様の前で話すときは緊張しますが、提案の仕方はつかめてきたかなと思います」
お客様がイメージしているものに近づけるためには、お客様を知ることが大切。そこで、開発中の商品以外についても話をすることを心がけています。
「お客様も食品業界の会社ですから、最近流行っている食べ物や好きな食品などを聞きながら、どんなイメージを持っているのかを理解するようにしています」
徳屋が自らお客様と接する機会を作ることができているのは、開発室の雰囲気も大きいと言います。
「お客様のところに訪問することを、室長もすごく後押ししてくれるんです。営業担当者だけでも試作品の魅力は十分伝えることができると思いますが、開発者が入ることでより理解を深めていただけますし、私たちも新たな気づきを得られると感じています」
「池田糖化さんなら、なんでも解決してくれる」。大型展示会で知った自社の魅力
自ら行動を起こして、苦手なことを克服しようと努力してきた徳屋。入社3年目には、東京で行われた大型の展示会にも、自ら手を挙げて参加します。
「食品業界に関わる企業が数多く出展するイベントで、当社もブースを出していたんです。そのブースに来場された方に対応する係として参加しました。
実は、その前の年も立候補したのですが、まだ経験が浅いこともあり参加することはできませんでした。でも、自分がどのくらいできるのかを知るためにもぜひ経験したいと思っていたので、次の年も『やっぱり行きたいです!』と手を挙げたんです」
展示会では、食品メーカーの担当者から一般の参加者まで、1日に数百人がブースに訪れます。たくさんの人と名刺交換しながら、会社の紹介を繰り返しました。
「いつもは自分が開発した商品の説明をするのですが、展示会で聞かれるのは会社のこと。初めて池田糖化という会社の存在を知ったという人もいるため、パンフレットを使いながら、私たちがどんなことをしている会社なのかを紹介する必要がありました」
会社のことを説明しながらお客様と話をする中で、徳屋自身も自社の強みや魅力を客観的に知ることができたと振り返ります。
「『いろいろな製品があるんだね』『池田糖化さんに頼んだら、なんでも解決してくれそうだね』と言ってくださる方が多かったことが印象に残っています。
それまでも、お客様から要望があったことに応えるスピード感や、求められている味や香りに仕上げる力など、当社の強みを感じていたことはありますが、展示会を通してより深く会社を知ることができました。
私が紹介したことをきっかけに当社に興味を持っていただき、仕事の依頼につながる可能性が見えたことも、とても嬉しかったです」
開発者のベースは食べることへの興味。香りのスペシャリストをめざして
人を笑顔にする仕事がしたいと食品業界に進んだ徳屋。努力を重ねてできあがった商品が多くの人に届いているのを見ると、喜びもひとしおだと語ります。
「池田糖化という名前が表に出るわけではないのですが、私が関わった商品がスーパーなどに並んで、それを手に取ってくださる方や、実際に食べて笑っている姿を見たときは、すごく嬉しいですよね。やっぱり、そこが食品に関わる大きなやりがいです」
甘味料や香料だけではなく、ソースやタレ、スープなど、池田糖化が扱う製品は多岐にわたります。だからこそ、開発に取り組む上では食への興味が大事だと徳屋は考えます。
「食べることや食品が好きという気持ちがあることが大切だと思います。知識は入社後に得ることができますから、まずは食への興味があること。興味関心が仕事のベースにあれば、新しい製品に触れたり、流行の飲食店に行ってみたり、自然といろいろなところにアンテナを立てられますし、お客様から依頼されたものだけではなく、新しい味や香り作りに意欲的に取り組むこともできると思います。
当社が関わっている製品は本当に幅広くて、お店で手に取った商品には大体入っているんじゃないかと思うくらいです。入社後に研修でさまざまな開発現場や工場を回ったのですが、『こんなものも作っているんだ!』という驚きで、さらに興味が湧きました。
これから入社する方にも、そういった経験をしてもらえたら嬉しいです。一つのことを突きつめるにしても、いろいろなことにチャレンジするにしても、本当にやりがいのある環境だと思います」
入社以来ずっと、香料の開発に携わってきた徳屋。さらにその道を究めて、“香りのスペシャリスト”をめざしたいと話します。
「ずっと香料を担当してきたことは、私の強みだと思っています。今までの経験を活かして、『香りのことなら徳屋に聞けばわかる』と思ってもらえるようになりたい。私自身、周りの人たちの力を借りながら成長してきたので、今後は私が頼られる側の存在になりたいと思っています」
自分が作った香りが、一人でも多くの人の笑顔につながるように──これからもお客様のニーズに真摯に向き合い、努力を重ねます。
※ 記載内容は2023年9月時点のものです
