さまざまな技術が集結するeVTOLは、開発メンバーのバックグラウンドも多様
次世代モビリティとして注目を集める電動垂直離着陸機「eVTOL」。ヘリコプターやドローン、小型飛行機の特徴を併せ持ち、滑走路が不要で騒音が少ないことから、都市部における新たな交通手段としても期待されています。
これまで多くのモビリティを生み出してきたHondaは、2019年ごろからeVTOLの開発を本格化。自由な移動の可能性を大きく広げるため、地上と空を組み合わせたモビリティエコシステムの構築をめざしています。
Hondaが培ってきたさまざまな技術が注ぎ込まれているeVTOLは、その開発に携わるメンバーのバックグラウンドも多種多様。新卒で入社した西村と吉田は、F1や学生フォーミュラなどに関わってきました。
西村:私は就職活動をする際、「世界初もしくは世界一にチャレンジできそうな会社」を志望していました。そのため、業界問わずに技術力が高い企業を見ていましたが、もともとクルマが好きだったこともあり、第一志望はHonda。Hondaが一番、世界一に挑戦できそうだと感じていたんです。
入社後は、ディーゼルエンジンの開発やトランスミッションの先行開発を担当。量産化はされませんでしたが、世界初の機構を開発する経験もできて、まずはひとつ目標がかないました。
その後はしばらくF1のエンジン開発に携わっていたのですが、ありがたいことに、そこで世界一を経験することができました。
吉田:私は、学生時代に学生フォーミュラに参加して足回りの機械設計などをしていました。Hondaのサポートを受けていたため、社員の人たちと話す機会が多く、気さくに話せる雰囲気に惹かれたんです。私自身クルマもバイクも好きで、昔からHonda車は身近な存在だったこともあり、いろいろなモビリティを製造しているHondaに入社を決めました。
入社後に配属されたのが、今の部署です。じつは、この部署に新卒社員が配属されたのは私が最初でした。
三井と小野里は、キャリア入社。それぞれ前職でのキャリアも異なります。
三井:子どもの頃から動くおもちゃが好きで、「自分でも動くものを作ってみたい」と思い、新卒で国内の完成車メーカーに入社しました。はじめは汎用エンジンの開発を担当し、その後、四輪の事業部に異動。排ガスや燃費の認証申請を行っていました。
ただ、「もっとものづくりをしている実感がほしい」と考えるようになったのです。ちょうどその時に、Hondaの航空エンジン領域での募集を目にしたことがきっかけで入社しました。
まだ挑戦している人が少ない新しいモビリティに関わってみたいという想いもあったので、興味を持ったことを覚えています。
小野里:私は、世の中にインパクトを与えるような大きな仕事がしたいと考えていたことから、大手重工業メーカーに入社し、身近な電気を作るガスタービンや他の産業に関わるさまざまな「回るもの」の技術開発を担当していました。
振り返ると、大きな仕事がしたいという希望はかない、充実した毎日を送ることができました。一方で、日々の業務を推進するなかで、「ゼロからイチを生み出す仕事もしてみたい」と思うようになったのです。
当時、世界的に宇宙事業やeVTOLなど空のモビリティが注目を集めていました。その領域も盛り上がっていて関心を持っていたところ、Hondaとの縁がつながり入社することになりました。
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未知の領域への挑戦だからこそ、力を合わせて解決できた時の達成感が大きい
新しいモビリティに挑戦したい、eVTOLの開発に携わりたいという想いで入社した三井と小野里に対し、西村と吉田は思いがけずeVTOLの開発を担当することになったと振り返ります。
西村:レース車両に携わる中で、モーターの出力などを強化する電動領域を担当するようになりました。軽くて高出力な電動アシストユニットは、eVTOLの技術と親和性が高いということで、声をかけてもらったのです。
正直、eVTOLについてはほとんど知らなかったのですが、モータースポーツで培った技術を他の領域にも展開したいと思っていたので、挑戦することに決めました。F1ではチームの力で世界一になれましたが、その技術を世に出して、お客様の喜びにつなげたいという想いがあったのです。
吉田:私が入社した当時は、まだeVTOLの開発を行っていることは社外に公開されていませんでした。そのため、eVTOLの開発部署があることも知らなかったのです。もともとクルマやバイクの開発を志望していたこともあり、配属を聞いた時は驚きました。
はじめに担当した発電機の制御は、学生時代に専攻していたものと異なる分野だったので、右も左もわからない状況からのスタート。でも、何もない状態からHondaのeVTOLを作るという貴重な経験ができることをうれしく思いました。
入社以来eVTOLの開発でキャリアを積んできた吉田も、F1で「世界一の技術」に携わってきた西村も、航空機ならではの難しさに試行錯誤してきたと言います。
吉田:まわりのエンジニアたちも、四輪領域の知見はあっても航空機に関しては手探りの部分が多くあります。たとえばHondaのeVTOLは、ガスタービン発電機とバッテリーを利用したハイブリッドシステムのパワーユニットが特徴ですが、四輪とは動作点が異なるため、検証過程でいろいろなトラブルが起こります。
当然、部品が壊れることもありますし、そんななかでも開発スケジュールを守るために原因究明を急がなければいけません。焦りもありますが、皆で力を合わせて解決できた時は大きな達成感があります。
西村:四輪のパワーユニットとの大きな違いは、出力の大きさと回転数の高さです。高出力、高回転のF1のマシンと比べてもはるか上ですから、未知の領域。どこが問題になるのか、どういった壊れ方をするのかを手探りで検証していかなければいけません。
でも、製作したプロトタイプがはじめて目標とする回転数で運転できた時は、メンバーでハイタッチをして喜びましたね。なかなか超えられなかった壁をひとつクリアできた。達成しがいのある壁があることがおもしろいんです。
正解がないことにゼロベースで挑む。皆が意見を出しやすいHondaだからできる
eVTOLの開発は、まさにゼロからイチを生み出す仕事。そこに挑戦したいと入社した三井と小野里も、おもしろさと難しさのどちらも味わっていると話します。
三井:現在担当しているのは構造部品の設計です。机上の計算では証明しきれないことが多く、実際に作ってみてさまざまな検証をする必要がありますが、Hondaは「まずは作ってみる」という文化があると感じています。
ものづくりのベースがあるという意味では前職の経験も活かせるものの、やはり地上のモビリティとは安全面での制約も使える材料も技術も異なります。新しい知識を吸収しながらスピード感を持って検証を繰り返していくことは、楽しくもあり苦労もあります。
小野里:私はパワーユニットの構造の信頼性に関わる技術を担当しています。いろいろなテーマがあるのですが、「正解がないこと」が一番難しく、おもしろいポイントです。誰も正解を持っていないからこそ、自分たちがどう考えるかで未来も変わるということですから。
さまざまな状況を考慮した上でも成立する信頼性が必要ですし、既存の技術の延長線上では考えきれない部分もあります。ビジネスとしての側面も含めて、皆でゼロからアイデアを出し合い、模索しながら進めていく過程がおもしろいですね。
新しいものを生み出すからこそ、思考もゼロベースで変えなければいけない──その文化が根付いていることは、Hondaの魅力だと口をそろえます。
西村:時には非現実的な目標に挑戦しなければならないこともありますが、自分好みの方法にとらわれていてはめざすレベルに到達できません。
とくに、eVTOLは多くのスタートアップも参入していますから、スピード感も必要です。一人ひとりの創意工夫や発想の転換が積み重なることでブレイクスルーが生まれるはずですし、これまでたくさんのチャレンジをしてきたHondaには、困っている人がいたら助け合う文化もあります。
吉田:私が所属するチームは比較的若いメンバーが多いのですが、若手が率先して動けるようにベテランのエンジニアがサポートしてくれていると感じます。実際に、検証も若手が主導して進めていますし、皆で意見を交わしながら「まずはやってみよう」という雰囲気があります。
三井:そうですね。管理職も若手も関係なく意見が出せて、良いアイデアであれば採用されます。入社して驚いたことのひとつが、管理職のデスクが皆のデスクと同じように配置されていること。物理的にもすぐに相談できるような環境があるので、誰でも意見を言いやすいのかなと感じます。
小野里:議論しやすい文化は私も感じています。技術的なことはもちろん、開発に対する想いもオープンに話すなど、他者を尊重するカルチャーがありますよね。予算も含めて開発に何がどのくらい必要なのかという意見を出しやすい空気があることは、新しい事業を生み出す上でも強みだと思っています。
同じ目標に向かう企業と切磋琢磨しながら、新たな市場を作り出す
正解のない道を模索しながらも、新たな挑戦を楽しんでいる4人。そのモチベーションは、「歴史が変わる瞬間に携わっているかもしれない」という想いだと小野里は切り出します。
小野里:今、世の中にないものを作ることは、もしかしたら世界を変えることにつながるかもしれません。それは、アイデアだけがあってもできないことです。
これまでのモビリティの変遷があり、Honda以外にも多くの企業が挑戦している今だからできる。タイミングよく、自分がその最前線で関われることがうれしいですし、「一緒に一旗あげたい」という人が集まってきたら、もっと盛り上がると思っています。
三井:他の企業と一緒に市場を作り上げている醍醐味がありますよね。どこかの会社がブレイクスルーを起こすかもしれないし、その逆もあり得る。先が読めない市場を作る楽しさがあります。
西村:クルマに例えると、まだタイヤの数も、何人乗りかも決まっていないモビリティですからね。そのなかでスタンダードを作っていけることが魅力です。信頼性や技術要素は既存のモビリティと違うけれど、これまでHondaが陸海空で培ってきたノウハウのシナジーで最先端に挑戦できます。
吉田:新しいモビリティを生み出すことに携わることができていることが光栄です。自分の手で一から設計して、テストして、うまく動いて、それを世の中に出すことができるかもしれない。それを夢見て日々頑張っています。
陸海空で培ってきたHondaのノウハウの結晶とも言えるeVTOL。では、「HondaらしいeVTOL」とは──「難しいですね」と笑いながら、それぞれこう答えます。
西村:小型軽量にはこだわりたいですね。クルマと同じように、機械部分はできるだけコンパクトにして、お客様が乗るスペースを広く快適にできると「Hondaらしいね」と言ってもらえるのではないでしょうか。
吉田:パワーユニットにはこだわり抜きたいです。Hondaのエンジンは世界一だと自負していますから、最高の効率で大きな出力を誇るパワーユニットにしたいです。
小野里:Hondaのモビリティの魅力は、「人を中心に考えた、人にやさしいモビリティであること」だと思っています。また、Hondaのキーワードは「夢」。ビジネスのことを考えれば収益性も重要ですが、何よりも乗っている人がハッピーになるモビリティを作りたいですね。
三井:幅広い人に乗ってもらえるモビリティにしたいです。小さなお子さまから高齢の方まで、他にも災害時に困っている方や急いで病院に向かいたい方など、いろいろな状況で使ってもらいたいと思っています。
そのためには、やはり長い時間稼働できて、さまざまな企業や団体が使いやすいことが大事。そんなモビリティをめざしたいですね。
Hondaが培ってきた技術と、開発メンバーの多様な視点と創意工夫。そして、同じ夢に挑戦する他社と切磋琢磨しながら、モビリティの歴史に1ページを加えるべく、試行錯誤を続けます。
※ 記載内容は2025年9月時点のものです
