源流改善から官公庁への報告まで。品質づくりを進めるため、人を動かす司令塔
120%の良品をめざせ──「目標を100%に置く場合、人間のすることであるから、事実1〜2%の不合格は免れ得ない。何千分の一、何万分の一台の不合格品を許さぬためには、120%の良品でなければならない」という本田 宗一郎の言葉です。この想いを根底に持ちながら、Hondaの品質をさらに高める役割を担うのが、品質改革本部です。
そのなかで前川と本田が所属するのは、品質保証を担当する部署。前川は四輪開発における品質づくりを担う仕事、本田は二輪に関して官公庁への報告業務やリコールの対応などを行っています。
前川:私が担当するのは、品質目標の策定や品質プロセスの構築といった「源流改善」と呼ばれる業務です。「品質づくりを全社統一で進めるための司令塔」として、不具合が起きた時にその根本原因を追求し、該当部署と共にプロセス改善を行ったり、新しいプロセスを構築したりといったことに取り組んでいます。
本田:私は主にふたつの業務を担当しています。ひとつは、官公庁への報告業務です。不具合情報のなかから、安全面に関わるものを国土交通省に報告する際、解析依頼から解析内容の確認、報告までを私たちの部署が行っています。
もうひとつは、リコールの判断が下された際の対応です。リコールとは、お客様の安全を最優先に考えた、メーカーとしての責任ある行動です。私たちに求められるのは、「お客様の安全が完全に確保された状態」を最短で作り上げること。どんな小さな懸念も残すことがないよう、一刻も早く部品をお客様の元に届けるべく、お取引先と納期調整などを行います。
当然ながら、品質を守るための活動はものづくりの現場をはじめ、さまざまな部門が関連します。そのため、仕事を進める上でふたりが共通して大切にしていることは、「人を動かすためのコミュニケーション」です。
前川:品質保証という仕事の成否は、他部門に動いてもらえるかどうかに大きくかかっています。現状のプロセスの改善や新しいプロセスの導入は、現場にとっては負荷がかかるもの。さらに、担当する領域が違えば、目の前の事象の捉え方や仕事における感覚も異なります。それでも、品質を守るためには変えるべきところは変えてもらわなければいけない。
だからこそ、日頃から密にコミュニケーションをとり、相手がどのような仕事をしているのか、何を重視しながら取り組んでいるのかを知ることで、信頼関係を築くようにしています。時には他部門を含めた俯瞰的な視点やグローバルに視野を広げる必要性などを伝えながら、品質保証のための理想を共有しています。
本田:私の場合、多くが緊急性の高い対応です。スピード感を持って進めるためには、細かなニュアンスのズレを起こさないことが大切。そのため、メールだけで済ませずに電話や直接会うことを徹底しています。
マネジメント層とやりとりすることも多いですが、品質保証部門は妥協せずに意見を言うことが求められます。言葉を選びながらも、伝えるべきことは伝えるコミュニケーションを意識しています。
視野を広げることで新たな手応えがほしい。Hondaの文化に惹かれて入社を決意
前川は2022年、本田は2023年にキャリア入社。ふたりとも前職から自動車業界で仕事をしてきました。
本田:前職は別の完成車メーカーで、認証業務に携わっていました。排気ガスや燃費を計測して認証書類を提出し、認可を得る仕事です。クルマをお客様に届ける過程において重要な役割ではありますが、しだいに自分の仕事がお客様とつながっている実感がもっとほしいと感じるようになりました。
というのも、私たちが関わるのは製造におけるほんの一部。不具合があった際の原因をもっと深く知ることができれば、お客様に安全・安心な製品を届けていると実感できるのではないかと思ったのです。
そんな時、転職のきっかけとなったのは、Hondaに勤めている知人から聞いたHondaのものづくりの精神です。
本田:「Hondaでは、三現主義(現場・現物・現実)を重視していて、気になることがあればすぐに工場へ行って現物を確認できる」という話を聞きました。開発工程を知ることができれば、クルマをどのように作っているかの理解が深まり、お客様に届けているという手応えが得られると考えました。
実際に、入社以来、四輪も含めてほとんどの工場を見学させてもらっていて、自分の視野や知識も広がった感覚があります。
前職では、自動車部品メーカーで排気系部品のテストエンジニアをしていた前川。ある程度専門性がついたことで、自身のキャリアをさらに広げたいと考えたことがHonda入社のきっかけでした。
前川:エンジンの実機を使った騒音試験や振動試験などの耐久試験のほか、不具合の再現テストなども行っていました。ただ、もともとクルマが好きだったこともあり、排気系部品だけではなくクルマ全体を見た仕事がしたいと考えるようになったんです。そこで、完成車メーカーへの転職を視野に入れるようになりました。
Hondaへの入社を決めたのは、本田と同じく知人の話がきっかけでした。
前川:年齢や役職に関係なく意見をぶつけ合う「ワイガヤ」という文化があると聞き、おもしろいなと感じました。それまで同じ分野で専門的にキャリアを積んできたものの、正直、Hondaのような大きな組織で自分の経験がどこまで通用するのかという不安がありました。
でも、立場にとらわれずに本音で意見をぶつけ合える風土があると聞き、情熱と意欲さえあれば自分らしく挑戦できるのではないかと思えたのです。
立場や部門を超えたコミュニケーションと幅広い視点が品質向上につながる
立場に関係なく意見が言い合えたり、ボトムアップで物事が進んでいったりすることがHondaの文化。前川は、入社して数カ月の頃にその文化を実感した仕事があると言います。
前川:データを俯瞰的に分析していたところ、特定のカテゴリーに不具合が多いことに気がつきました。そこで、まずは部門内で新しい改善活動の提案をしたのです。すると上司から、「良い提案だから、開発部門の統括部長に説明してきてほしい」と言われました。
しかし、Hondaの統括部長は大きな組織を束ねている立場。入社したての私が提案していいものなのかと不安でした。
しっかりとロジックを組み立てた上で資料を作成し、提案に臨んだ前川。当時の統括部長の反応が印象に残っていると話します。
前川:私の拙い説明を、丁寧に聞いてくれたのです。気になる部分は一つひとつ質問してくれるなど、「誰が報告しているか」ではなく「提案の内容そのもの」に真剣に向き合ってくれたのです。
その結果、私の提案は受け入れられ、開発部門での改善活動につながりました。本当に役職に関係なく意見が出せるのだと感じる経験でしたね。
本田もまた、入社後に新たなチャレンジをしてきました。とくに、官公庁向けの報告資料の作成は、関連部門との調整などをスピーディーに進める必要があり、自らが主導して動いていくことが重要だと言います。
本田:指摘があれば、短い期限のなかで多くの部門と協議を重ねて解決しなければいけません。上位層の承認も必要になりますが、皆が集まる大規模な会議が実施できる日数は限られます。
そこで、実務担当者で行う会議を細かく設置し、現場のエキスパートたちとともに意見をぶつけ合って資料の精度を高めていくことを優先しました。その結果、スムーズに承認まで進めることができたのです。
品質を守るための重要な役割を担う仕事。その難しさもありながら、現場を見られる環境があることで自らの視点も増えていると話します。
本田:解析担当者が「この不具合であれば問題はない」と主張する場合でも、それが正しいかどうかを判断するためには、法律や安全性、商品性、発生件数など、さまざまな観点から総合的に検討する必要があります。
そのためには、構造はもちろん、製造工程や管理の仕方までを知っていることが、仮説の立てやすさにもつながります。私たちの部署には現場でキャリアを積んだベテランのメンバーも多いので、皆の知見にも学びながら検討しています。
「誰のために、何のために働いているのか」。安全・安心を支える誇りを胸に挑戦する
それぞれ違う角度で品質保証に携わるふたりですが、根底にある「お客様のために」という想いは同じ。120%の良品をめざし続けるために、専門性を磨きながら視野を広げていきたいと話します。
本田:どのような仕様違いや製造上の問題が不具合につながるのかといった知見や、製品に関する知識がまだまだ足りていないと感じています。もっと経験を積んでいって、多角的な視点から品質を担保できるようになりたいと考えています。
Hondaは比較的自由に仕事をさせてもらえる環境です。もちろん、承認を得ることは必要ですが、「挑戦したい」という意思を発信していけばチャンスをもらえるのがおもしろいところ。そうやって経験を積み重ねてもっと全体像がつかめてきた先に、もしかしたら新たな目標も見えてくるかもしれません。
前川:私たちの仕事は直接お客様とつながる仕事ではありませんが、仕組みを作ることで安全・安心を守ることができる。そこに誇りを持って仕事をしています。その役割を果たしていくためにも、さまざまな知識を身につけて最適なプロセスを構築できるようになることをめざしています。
とくに、自動運転やSDV (ソフトウェア・デファインド・ビークル)といった新しい領域は、わからないことがたくさんあります。自分の知らないことをひとつずつ学んでいきながら、自分の知見を総合的に活かしたプロセス改善ができる存在になりたいと思っています。
そして、同じ想いを持ちながら「Hondaの文化を活かせる人」と共に、さらなる安全・安心に貢献していきたいと続けます。
前川:言われたことに取り組むだけではなく、自分なりの意見を持った上でアウトプットを生み出せる人、主体的に周りを巻き込んでいける人は、Hondaの文化に合っていると感じます。
私自身、当初はHondaのボトムアップ文化に戸惑ったこともありますが、自分で深く考え、理解するからこそ、軸をもって仕事を進められるのだとわかりました。Hondaという大きな組織のなかで、他部門をリードしながら全体の品質改善に取り組んでいきたい方には、とてもやりがいのある環境です。
本田:そうですね。組織が大きいがゆえに、部門間の壁が立ちはだかる時もあります。でも、外から見れば全員同じHondaの社員。目の前の仕事に追われる状況はありますが、一歩引いて自分たちを見つめ、「誰のために、何のために働いているのか」という本質をとらえて仕事に取り組める方と一緒に仕事をしたいですね。
お客様のために──自分の仕事が安全・安心につながることを誇りに、Hondaの品質を守っていきます。
※ 記載内容は2026年3月時点のものです
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