海外への輸出業務と並行し、チームでの改善活動に参加。マネジメントの極意も学ぶ
部品を作る部品メーカー、クルマを製造するHonda、そのクルマをお客様に届ける販売店。それぞれをグローバルにつなぎ、Hondaの物流領域を一手に担うホンダロジスティクス。
入社34年目を迎えたSは、長らく海外への輸出を担当する部署でキャリアを積んできました。
「キャリアの3分の2以上は、輸出のための梱包・出荷に関わる業務を行ってきました。最初は、流通部製品流通課に所属し、Hondaで作られた船外機や発電機などの輸出業務を担当。その後、海外流通課に異動し、KD(ノックダウン)といって、海外にある生産工場でクルマを組み立てるための部品を包装して出荷する業務や、バイクの輸出業務などを行いました。
現場に入って包装作業を行うことから始まり、船で運ぶための出荷管理や部門全体の事業管理など、輸出に関わる業務に幅広く携わってきました」
輸出にまつわる仕事には、時には大きな苦労も。その一つが、海外の港湾で起こるストライキだったと言います。
「ストライキが起こると、輸出先の港湾がストップしてしまいます。そうなると船が使えなくなるため、飛行機での出荷に切り替えなければいけません。
セキュリティ上の課題も、運べる量も変わりますから、発生する仕事は膨大です。他部署にも協力してもらいながらなんとか乗り切りましたが、とても苦労しました」
また、現場業務と並行して取り組み、自身の成長につながったと振り返るのが「NCサークル」での活動。NCサークルとは、小さなチームを作って取り組むホンダロジスティクスの業務改善活動のこと。
たとえば、クルマの部品を輸出するための梱包・積み替え作業を、品質を保ったまま効率良く行うための治具を作るなど、現場の作業効率や品質向上につながる改善に取り組みます。
「入社して間もないころからNCサークルに参加していて、チームのリーダーも経験しました。活動が高く評価され、各部署から選抜されたチームは、全社大会に出場することができるのですが、私も何度か全社大会に出場することができました。
キャリアが長くなるにつれて、NCサークルでもメンバーに取り組み方などをアドバイスする立場に変わりましたが、メンバーが大会に出場できた時は嬉しかったですね。
改善活動に取り組むにあたっては、それぞれの得意不得意を活かして役割を与えることが大切です。この経験は、マネジメントにも役立っています」
各事業所や海外拠点との架け橋となり、事業を前に進める立場へ
現場でのさまざまな経験を経て、2022年4月から日本事業本部に異動したS。国内事業全体の方針を策定する戦略推進部を経て、現在は日本事業推進部の部長を務めています。
日本事業推進部は、国内事業の統制部門として各地にある事業所と連携し、サービス品質の向上や課題解決に取り組むなど、ホンダロジスティクスの国内事業を束ねる役割を担っています。
「各事業所で取り組んでいる改善やお客様への提案内容を吸い上げて、他の事業所に展開するのが私たちの仕事です。『ここを改善したいけれど、どうすれば良いのだろう』と困っている事業所があれば、同じような課題を解決した事例を紹介し、サポートする。私たちが架け橋になることで、事業がさらに前に進みます。
また、当社はグローバルに事業を展開していますから、海外事業本部との架け橋となることも私たちの役割。定期的に各事業所から報告を受け、それを取りまとめた上で日本事業としての成果をグローバルに発信しています」
各事業所との連携が重要となる部署だからこそ、これまでのキャリアを活かせているとSは話します。
「私は、現場でいろいろな業務を経験してきましたし、三重、熊本、埼玉などさまざまな事業所で多くの人たちと関わってきました。たくさんの人に出会い、助けてもらい、勉強させてもらった経験が私の一番の財産です。
そのおかげで現場の課題も理解できますし、長年かけて築いたコミュニティを活用することで仕事を円滑に進めることができています」
これまでの経験を活かしつつも、現場のマネジメントから国内の事業全体を統括する立場へと変わったことで、自らの視点も変化したと言います。
「現場に関わっていた時は、『いま目の前で取り組んでいることを、どうやって良くしよう』ということに集中していました。しかし、日本事業本部には、各事業所からさまざまな情報が入ってきます。いろいろな発想や苦労を、より高く、広い視野で捉え、それをどう活かしていくかという視点を大切にしています」
変革を求められる物流業界。現場に負荷をかけない自動化、省力化が必須
ホンダロジスティクスは、「包括的かつ主導的なHonda物流のリーディングカンパニーになる」という「2030年ビジョン」を掲げています。日本事業推進部は、このビジョン達成のための推進力となる役割も担います。
「全社に向けて、『新たな発想で、自ら考えて行動していこう』ということを大きく発信しています。とくに、物流業界はいま変革期であり、自分たちから変わっていくこと、行動していくことが大切です」
ドライバーの労働時間に上限が課されることで、輸送リソースの減少などが懸念される「2024年問題」の真っただ中にある物流業界。労働力の減少以外にも、変化が求められる背景はさまざまです。
「まずは、環境問題です。私たちに直接的に関わってくることで言えば、カーボンニュートラルへの対応です。CO2削減に向けた物の運び方、倉庫業務における省エネ運営の実行を行いつつ、ガソリン価格高騰など物流費上昇に対してのコスト面の対策も必要です。
また、 DXも大きな課題です。労働力が減っていくことからも、物流オペレーションの自動化は必須。物流には、まだまだアナログな仕事がありますが、デジタルを活用して省人化、省力化を進めていかなければいけません」
Hondaの物流を支えるホンダロジスティクスにとって、自動車業界の変化は大きな影響となります。そこには、新たな物流の可能性も見えてきます。
「これからは、クルマを作り、販売したあとのサイクルが重要になってくると思います。『リソースサーキュレーション』と言いますが、乗れなくなったり乗り換えになったりしたクルマの部品や材料を、再資源化していくということです。
クルマを回収し、再資源化されたものを再び製造工場に運ぶといった新たな物流スキームができていくはずであり、自分たちがいかに効率よく運べるかを提案、サポートしていかなければいけないと考えています」
こういった変化に対応していくためにSが一番大切に考えているのが、従業員が新たなアイデアを積極的に生み出せる、“発想できる”環境作りです。
「そのためには、従業員や協力会社などの現場を支える人たちに負荷をかけないこと、働きやすい環境職場を整備していくことが最も重要です。
働きやすい環境作りの一つとして、自動化するにあたっても大きなカギとなります。技術本部が提案してくれる新しいアイデアをどうやって各事業所の現場に導入していくか、私たちが知恵を絞らなければいけません。それぞれの事業所には個々の事情がありますから、それを加味しながら仕事を簡素化、自動化していくことが必要です」
変化の中にこそ新しい常識が生まれる。その発信基地となることをめざして
社会に欠かせないインフラとして、労働力減少や環境問題への対策など、さまざまな変化への対応が求められる物流業界。現場を熟知しつつ、広い視野で業界を見渡す立場であるSは、これからの変化をどう捉えているのでしょうか。
「自動車産業に関わる部分で言えば、日本の人口が減少するなかで、当然クルマの生産台数は減っていくわけです。そうなると、一度に運ぶ物量も少なくなります。また、クルマが電動化していくと必要な部品の数が減るため、部品の運び方が細かくなっていくはずです。
今後、効率よく運ぶためには、運ぶモノをどうやって集めるかがカギになっていきます。これまで、それぞれの自動車メーカーが運んでいた部品を集約して、一括で運ぶような仕組みができるかもしれません」
そのなかで、ホンダロジスティクスはどのような存在価値を発揮していくべきか。最大のミッションは、Hondaのものづくりをしっかりと支えることだとSは話します。
「まずは、Hondaへの供給を切らさないこと。さらに、Hondaのものづくりがスムーズに進むような物流設計を構築していくことです。
たとえば、クルマの部品を工場で組み付ける順番に並べて生産ラインに届けるという付加価値をつけることができるかもしれない。宅配便の置き配のように、テクノロジーを使って受け渡しを省人化する方法ができるかもしれない。
これまでの常識を覆すような“新しい当たり前”を作っていく。私たちがその発信基地、そして舵取り役になっていかなければいけません」
物流に“新しい当たり前”を──そのためには、これから仲間になる人たちの新たな視点や感性が必要です。
「どれだけ良いアイデアでも、実行するのは難しいこともあります。だからこそ、さまざまな意見を聞き、議論しながら、一緒に作り上げていくことが大切です。
これからの時代を担う世代の人たちが、客観的に当社の実態を見て未来のことを議論し、アイデアを出し合いながら新しい物流を作り上げていってもらえることが私の理想です」
Sは、これからも変化の中にチャンスを見出しながら、未来を担う世代が活躍する舞台を作ります。
※ 記載内容は2023年11月時点のものです
