想いを届けるからこそ、安全はすべてに優先する。各所と連携して事故なくクルマを運ぶ
部品メーカー、Honda、販売店をつなぐ架け橋として、Hondaのモノづくりをグローバルな物流で支えるホンダロジスティクス。Nの所属する製品物流部 海上輸送課は、年間およそ約45万台もの四輪完成車を自社保有の専用大型船で全国各地に運ぶためのオペレーションを担っています。
「Hondaの四輪完成車輸送は海上輸送が軸になっていて、そこを当社が一手に引き受けています。また、Honda以外の完成車、一般中古車などの海上輸送も請け負っており、その営業活動も私の仕事の一つです」
四輪完成車を陸上輸送するキャリアカー1車両に積載できる台数は、最大7台です。大量に完成車を輸送するには多くの車両が必要となり、走行時に発生する排出ガスによって環境負荷問題が起きてしまいます。
この問題を解決するためにも、少ないエネルギーで一度に大量のクルマを運ぶことができる、船を使った海上輸送は欠かせませんし、今後、より深刻となる「物流の2024年問題」に対しても、重要性が高まっています。
「物流の2024年問題では、トラックの運行時間に上限が設けられることで、陸上輸送できる量が少なくなっていきます。そうなると、海上輸送の需要が高まっていくはずですから、私たちの役割がさらに重要になります」
海上輸送では、自社で保有する自動車専用船4隻のほか、他社の船(併用船)を利用することも。さらに、船への積み卸しを行う港湾荷役会社、工場から港、港から販売店へ運ぶ陸上輸送部門など、さまざまな関係者との連携が必要です。
Nが率いるオペレーションチームは5名。専用船の担当、併用船のブッキング担当、他社からの依頼対応の担当など、それぞれが担当分野を持ちながら、荷量や納期に応じてスケジュールを組み、各所を取りまとめながら安全を最優先にクルマを届けています。
「年間で45万台ほどのクルマを運びますが、その1台1台はお客様が心待ちにしているクルマです。もしかすると家族へのプレゼントかもしれないし、納車日から大切な人と旅行に行こうと決めている人もいるかもしれない。
いろいろな想いが詰まっているクルマなのです。もし、商品事故や交通、海難事故が起きてしまったら、その想いをお届けることができませんから、絶対に事故は起こせません」
お客様の想いを運ぶ──Nが大切にする心の原点は、前職に
社会人としてキャリアをスタートしたのは、大手物流会社。はじめは、営業所でセールスドライバーが集荷してきた荷物を集約するターミナルセンターで配車業務を担当していました。その後、社内ライセンスを取得し、セールスドライバーへ。主に法人を担当しながら、時には集荷で一般家庭へ行くこともありました。
「農家の方のお宅に行くと、段ボールいっぱいに野菜やお米を詰めた荷物を預かることがありました。『県外に住んでいる子どもに送る』と仰っていました。そういう話を聞くと、モノだけではなく気持ちや想いも届ける仕事だと実感しました」
8年ほど勤めた後、ホンダロジスティクスに転職したのは2013年。きっかけは、何気なく登録した転職サイトでした。
「当時は、転職サイトが注目され始めたころ。ドライバーとしてある程度経験を積んだので、物流業界の中でも少し違う仕事をしてみようかなと、気軽な気持ちで登録しました。
そうしたら、ホンダロジスティクスがマッチングして。親も私もHondaのクルマに乗っていたり、身近にHondaに勤めている人がいたりと、Hondaには何かと縁があったので、そのグループ会社で新たに挑戦してみようと決めました」
現場研修を経て配属されたのは海上輸送課。意外な配属ではあったものの、「これまで船を扱ったことはなかったので、楽しみな部分が大きかった」と振り返ります。
とはいえ、初めての領域に戸惑うことも。とくに、港湾ならではのルールを覚えることに苦労したと話します。
「全国各地の港に船を運航させるのですが、その港で昔から受け継がれている商慣習があり、その商慣習やルール、他船舶のスケジュールを把握するのが大変でした」
悔しさをバネに名実ともに部署のエースへ──初めてのことでも失敗を恐れず挑戦する
慣れない海上輸送の仕事に苦戦しながらも着実にキャリアを重ねたNですが、5年ほど経ったころに大きな挫折を味わいます。
「オペレーションのほか、営業も任せてもらえるようになり、『自分がこの課のエースだ』というプライドを持って仕事をしていました。
けれど、お取引先に挨拶や打ち合わせに行くと、先方が話すのは10年前の担当者(現在の上長)のことばかり。北海道から沖縄まで全国いろいろなところに行きましたが、どこでも前任者の名前が出てくるのです。
しかも、前任者を通して仕事の依頼が来ることも。『今の担当は俺なのに』と悔しくて……前任者のインパクトは強烈なのでしょうがないですが(笑)」
名実ともにエースになるべく、その悔しさをバネに奮起したN。こまめに取引先を訪問し、顔と顔を合わせて話をする時間を大切にしました。次第に、直接仕事を依頼してもらえるようになり、数字として目に見える成果が出るように。自信がついたことで、新しい試みにも積極的に挑戦しています。
「あるメーカーさんが電気自動車の展示会を全国で開催することになり、一緒に回ってほしいという依頼を受けました。クルマだけではなく、イベント備品などを含めたすべての輸送です。全国開催のイベント輸送は初めてでしたが、各地の営業所と連携しながら無事に完了することができました。
その後、お客様とお会いした際に『君のおかげでイベントも成功し、困った時には、輸送の領域を超えてフレキシブルに対応してくれてありがとう。今後はホンダロジスティクスではなく『君』にお願いするね』と言っていただけた時は、嬉しかったですね」
初めての試みでも、「まずはやってみる」のがNのポリシーでもあり、部署全体の文化だと言います。
「一度断れば、その仕事は他の会社に行ってしまう。だから、依頼を受けたら断らない。失敗してもいいから、やれることは全部やってみる。成功しても失敗しても、そこから学べるもの、得られるものがあるはずです」
もちろん、初めてのお客様から荷物を預かる時にはプレッシャーもありますが、その責任感も含めて楽しむことが大切だと話します。
「仕事は楽しくないと続きません。だから、初荷をいただいて、運び終えて、また次の依頼をいただいて、定期的に仕事をさせてもらえるようになって……と、達成したあとをイメージすることで楽しむようにしています。
『絶対に成し遂げなければいけない』と思うと、ワクワクもヒヤヒヤもするのですが、『どうすればできるのか』を考えるのが楽しいのです」
どの部署でも活躍できる人材を育てたい。先輩に支えてもらった経験を受け継ぐ
プレッシャーを楽しみに変えながら海上輸送に携わって10年。後輩を育成する立場となったNには、新たなミッションが課せられています。それが、「ワクワクプロジェクトリーダー」です。
「仕事でワクワクすることを次世代のメンバーにも経験してほしいと、課長に任命されました。それぞれが楽しいと思える仕事を企画したり、達成するためのサポートをしたりするのが私の役割です」
後輩を育てるにあたりNが心がけていることは、「決して1人にしない」ということ。それは、多くの先輩に助けてもらってきた自身の経験があるからです。
「私も一人前になるまで、しょっちゅうミスをしていました。その度に先輩たちが、『なぜこのミスが起きたのか』『今後どうするべきなのか』を一緒に考えてくれたのです。だから私も、自分の失敗談も伝えながら後輩と一緒に考えることを大切にしています」
時には背中を押し、時には皆を引っ張りながら、同じ目線で一緒に挑戦することを大事にしているN。そこには、後輩への想いがあります。
「当社は業務が多岐にわたり、未経験の部署に異動することもあります。どの部署に行っても通用するような人材になってほしいという想いで指導しています。挑戦する気持ちや誰とでもコミュニケーションをとれる力を、海上輸送課で育んでほしいのです」
もちろん、チームを牽引する立場として、N自身も挑戦を止めません。
「当社の海上輸送の強みは、信頼のおけるオペレーターの存在。物流において海上輸送の需要が高まっていく中で、私たちの部署の重要性も増していくはずです。今後は、Honda車以外の輸送の仕事をもっと増やしていきたいと考えています」
Nは、会社の一番の魅力を「人の良さ」と話します。良い人に支えられて育ってきたからこそ、自分も先輩から受けた恩を後輩につなぎたい。一緒に挑戦を続けながら、海上輸送の可能性をさらに広げます。
※ 記載内容は2024年2月時点のものです
