シャチが泳ぐレストランで、最高の食体験を。ここでしか作れない価値がある
2024年6月1日、新たに開業した「神戸須磨シーワールド」は、イルカやシャチのパフォーマンス、地元の生態系を再現した展示など見どころあふれる施設で、大きな魅力となっているのが「食」の体験です。
中でも「ブルーオーシャン オルカスタディアム」は西日本で唯一、雄大に泳ぐシャチの姿を眺めながら食事ができる特別な空間。津元はこのレストランの魅力についてこう語ります。
「巨大な水槽の中を悠々と泳ぐシャチを見ながら食事を楽しめる。これは他のレストランにはない最高の魅力だと思います。その特別な体験に加えて地元・兵庫県のおいしい食材をふんだんに使った料理を提供することで、さらなる付加価値を感じていただけると信じています」
津元は水族館内の飲食施設の調理マネージャーを務めており、メニュー開発からオペレーションの指導まで、責任者として携わっています。
そんな津元が仕事のやりがいを最も感じる瞬間は、お客様の笑顔に触れた時だと言います。
「お客様が楽しそうに食事をされている姿を見ると、この仕事をしていて本当に良かったと感じますね。もちろん、自分自身が納得できる良いものを作れたという手応えも大切ですが、最終的にその価値を判断してくださるのはお客様です。お客様のうれしそうな表情が私たちにとっての答えであり、一番のモチベーションになります」
とくに「ブルーオーシャン オルカスタディアム」のライブキッチンは、お客様の反応をダイレクトに感じられると津元は言います。
「ライブキッチンに立つと、お客様から直接『おいしかったよ』と声をかけていただいたり、楽しそうな笑顔を見られたりします。時には『どなたが作っているんですか?』と興味を持っていただくことも。
お客様との何気ない会話の中から、私たちの料理が思い出の一部になっていることを実感できる。それは調理キャストにとって大きな喜びと励みになります」
美容師から料理人の道へ。ようやく見つけた「天職」と地元への想い
水族館の食を支える津元ですが、そのキャリアのスタートは意外なものでした。
「かつては美容師になろうと専門学校に通い、免許も取得しました。ですが、いざ働き始めると、体質的に薬剤が合わないことがわかって。1年ほどでその道を断念せざるを得ませんでした」
次の道を模索していた時、ホテルの宴会サービスとしてアルバイトを始めます。しかし、そこでも予期せぬ転機が訪れました。接客の仕事から調理場への異動を打診されたのです。
「もともと接客が好きで、お客様と直接関わる仕事がしたいと思っていました。ある時、上司から『調理スタッフとして働いてみないか』と声をかけられたんです。新たな挑戦として、その道に進むことを決意しました」
和食からキャリアをスタートし、その後先輩の影響で洋食の技術も習得。ホテルで料理長を務めるなど着実にキャリアを積み重ねていきました。
そのキャリアの中で、津元は忘れられない言葉に出会います。
「『料理ができるからって料理長じゃない。1つで勝るだけじゃ務まらない仕事だ』。当時お世話になった料理長のその言葉が、その後の私の仕事観を大きく変えました。人との接し方や物の伝え方、人の話を真摯に聞く姿勢。料理の腕だけではない、人としての在り方を教わった気がします」
さまざまな場所で経験を積んだ後、故郷である兵庫県に戻ることを考え始めた頃に出会ったのが、神戸須磨シーワールドのオープニングスタッフの募集でした。
「前身である神戸市立須磨海浜水族園は子どもの頃からよく遊びに行く思い出深い場所でしたが、新しく生まれ変わると聞いて、どんな楽しい場所になるんだろうとワクワクしました。自分の料理人としての経験を活かして、このプロジェクトに貢献できるなら、こんなにうれしいことはないと思いました」
長年親しんだ場所だからこそ貢献したいという強い想い。それは、地元・兵庫への愛情の裏返しでもありました。
「正直なところ、ずっと地元にいるとその土地の魅力になかなか気づきにくいんです。オープン前、まだ厨房もないオフィスでメニュー開発をしていた頃は、兵庫ならではの食材を探すのに苦労したこともありました。
ですが、その試行錯誤があったからこそ、現場で食材と向き合いながら新しいものを生み出す仕事が、心から楽しいと感じられます」
美容師からの転身というユニークなキャリア。それは決して回り道ではなく、料理人としての新たなステージを見つけるための大切なプロセスでした。
怒涛のオープンから生まれた絆。チームで乗り越えた先に見た景色
2023年12月、津元は開業準備室のメンバーとして入社。オープンに向けて、入念な準備を進めていました。しかし、開業初日に待っていたのは想像をはるかに超える事態でした。
「3日分を想定して仕入れた食材が、オープン初日で尽きてしまうほどの盛況ぶりで、本当にうれしい悲鳴でした。当時は無我夢中で乗り切りましたが、あの一体感があったからこそチームの強さが生まれたのだと思います」
オープニングの熱狂が落ち着くと、次に津元が取り組んだのは多様な経験を持つキャストたちが1つのチームとして機能するための組織作りでした。とくに大切にしたのは、キャスト一人ひとりが自分の考えを発表できる「場」を作ることでした。
「チームのスキルレベルはさまざまだからこそ、トップダウンではなく全員が考えを共有し、互いを理解し合う場を大切にしています。ベテランも若手も、想いを言葉にして伝え合うことで無用な衝突を避け、円滑なコミュニケーションが生まれるんです」
3カ月に一度のメニュー改定は、チームの成長を促す絶好の機会です。津元は、若手キャストの意見にも積極的に耳を傾け、チーム全体で新しいメニュー作りに取り組みます。
「水族館らしさというコンセプトが明確な分、毎回新しいアイデアを生み出すのは大変です。ですが、チームで知恵を絞り試行錯誤を重ねて作り上げた一皿が、お客様に『おいしかったよ』と言っていただけた時の喜びは何物にも代えがたいですね」
異動により現在は主にフードコートを担当している津元。新たなステージでも、家族みんなで楽しめるような心温まる料理を提供したいと意気込みます。オープン時の苦労を共に乗り越え、対話を重ねてきたチームと共に津元の挑戦は続きます。
調理業界のイメージを変えたい。誰もが成長できる、働きやすい環境を
ホテルやレストランなど、さまざまな調理の現場を経験してきた津元は、働く場所としての神戸須磨シーワールドには、他にはない大きな魅力があると感じています。
「私たちは、水族館の食事のイメージを覆したいんです。パフォーマンスや生きものたちに癒やされるだけが魅力の水族館ではなく、おいしいご飯でも感動していただく。一日を通してここで最高の体験が完結する、それが私たちの施設の強みです。経験豊富な料理人が作る安全でおいしい料理を、最高のロケーションで提供する。この価値を伝えていきたいですね」
そんな津元が、共に働きたいと考える仲間について語ります。
「調理の仕事は決して1人ではできません。チームで協力して初めて、お客様に満足していただけるものを提供できます。ですから、新卒・中途を問わず、周りのキャストと協調できることを最も大切にしています。腕が立つことも素晴らしいですが、それ以上に、チーム全体で良いものを作っていこうという気持ちを持った方に来てほしいですね」
さらに、「きつい、厳しい」といった調理業界のイメージを払拭し、誰もが安心して成長できる環境作りにも力を入れています。
「私自身、率先して有給を取得しています。プライベートの時間を大切にしながら、仕事に集中できる。そんな当たり前のことがここでは実現できています」
津元は料理人をめざす人が減っている現状に危機感を抱きながらも、この場所ならその魅力を再発見してもらえると信じています。
「『成長したい』という意欲さえあれば経験は問いません。私たちが全力でサポートします。実際、入社当初は自信がなかった若手キャストに仕事を任せ、信じ続けることで、1年で驚くほど成長した例もあります。失敗を恐れず挑戦できる環境で、一緒に成長していきましょう」
お客様の思い出の一コマに残るような、心に残る料理を作りたい。その想いを胸に、津元はこれからもチームと共に神戸須磨シーワールドならではの食の魅力を追求し続けます。
※ 記載内容は2025年9月時点のものです

