SE時代に海外駐在で直面した課題。自問自答し、変革者になるためのキャリアを選択
学生時代は情報システム学科で学んだ田中。地図情報システムを使い、地域の医療課題に取り組む中で、富士通に興味を持つようになりました。
「地理的な条件や人口分布から最適な医療リソースの配置を研究するにあたり、多くの医療関係者と接する機会がありました。その中で富士通が電子カルテ市場においてトップシェアであると知り、事業を調べるうちに富士通で働きたいと考えるようになりました」
そして2010年、田中はSEとして富士通へ入社。製造業のお客様を担当し、ERPと生産管理システムの製品開発に従事しながら、商談支援、導入作業にも携わります。
「この業務を希望したのは、SEとしての総合力を高めてビジネスに貢献したいと考えたからです。私はプログラミングの経験が少なかったので、イチからシステムを構築して技術を極めるより、パッケージ製品を担当して、お客様向けの提案や導入作業などフロント部門における幅広い経験を積もうと思いました」
2015年ごろからは日系企業の海外展開に携わる機会が増え、田中はASEANを中心にERPの導入や本稼働の支援を担当。そして2018年には、タイのバンコクへ駐在することになります。
「ちょうど日本でDXの概念が広がり始めた時期に、現地法人の社長やCFOと接する機会に恵まれました。SEとしての視野を広げる貴重な経験ができた一方で、これまで気づかなかった課題にも直面しました。それはERPの導入を実現しても、有効活用できていないという現実です。現地の経営者は自社のビジネス状況を把握するのに苦労し、本社への報告にも時間を要していました。
この課題をどうすれば解決できるのか──自問自答を繰り返す中で、SEという役割にこだわっていては現状を打開できないと考えるようになりました。また、DXがビジネスの主軸になっていく時代の中で、焦燥感もあったんです。会社やビジネスの変革を実際に経験しないままでは、経営者の課題解決に貢献できず、自分の市場価値も向上できない。そう考え、変革の実践者になるべく、コーポレート部門である財務経理本部への異動を決意しました」
ファイナンス部門で見えた新たな景色。SEの経験を活かし、データドリブン経営を推進
財務経理本部へ異動したことで、田中は新たな気づきを得ることになります。
「自分ではある程度の財務知識があると思っていましたが、実際にはファイナンス部門の実態や抱えている課題を理解できていなかったことに愕然としました。また、ファイナンス部門が富士通という企業全体を理解し、サポートしているということも、大きな刺激を受けました。SE時代は関連部署の事業知識しかありませんでしたが、ファイナンス部門に来てから全社を俯瞰的に見る視点が養われたと感じています。
一方で、元SEとして自身の新たな役割が見えた面もありました。それはファイナンス側の要望や課題を、SEが理解しやすいように提示するということです。ファイナンス側が真に望むソリューションが得られるよう、SEの視点にも立ちながら意思疎通を図っています」
SE時代に磨いたITの専門知識とコミュニケーション能力──その強みをファイナンス部門で存分に発揮した田中は、異動から1年でマネージャーに昇格。現在はデータドリブン経営の実践に向けた取り組みを推進しています。
「具体的には、経営や事業推進に関するダッシュボードの構築、データ基盤の整備、データをより使いやすく加工する業務などを担当しています。その中でもとくに、FP&Aをサポートするために注力しているのが、AIを用いた予測モデルの構築やデータ分析です。ファイナンス人材が日常業務の中で予測モデルを活用できるよう、運用プロセスの整備を進めています」
不確実性が高まる現代において、ニーズが高まっているFP&A。その役割の重要性を田中はこう話します。
「企業価値の最大化を支援することが、FP&Aの本来のミッションだと考えています。とくにハードウェア事業からサービス事業へのシフトに取り組む富士通においては、FP&Aが果たす役割は重要です。従来の会計アプローチでは対応できないため、フロント部門に深く入り込み、提供価値を高めていくことが求められていると感じます。
またFP&Aの強みは、財務データを起点に会社の状況を横断的に把握できることです。この強みを活かし、会社の全体像と各事業や組織の状況を一連のストーリーとして提示することが大切になります。そこから改善に向けての提案を行うためにも、データ基盤の整備や予測モデルの構築といったDXの推進が欠かせないと考えています」
精度の高い予測モデルの構築に挑戦。データを有効活用し、企業文化とマインドも変革
今年度から本格的な運用を開始した予測モデル。その構築においても、SEの経験が活かされました。
「単なる売上や受注、費用の予測にとどまらず、目標達成までの課題分析もできるシステムを構築しました。その中で意識したのは、AIによる計算のロジックをブラックボックス化させず、可視化に努めることで、予測結果に対する経営層の信頼を得られるようにすることです。さらにAI予測に対しての解釈を説明するようにして、継続的な精度向上とともに納得感を得られるように工夫しています。
さらに、予測の報告に関しても月次から週次に変更し、商談の推移や売上の変動要因を視覚的に伝える形式に刷新しました。その結果、管理会計チームからの質問やリクエストが大幅に増え、運用のサイクルをより効果的に回せるようになったと感じます」
月次から週次に報告回数を増やすにあたっては、工数が増えないように自動化を図りました。
「必要なデータをリアルタイムで取得できる社内のデータレイクを活用することで、効率的な運用を可能にしました。その一方で工夫したのが、報告の読ませ方です。
単にダッシュボードを提示するのではなく、外部のサービスを活用し、収集データから自動的にレポートが生成・配信される仕組みをつくりました。とくに、各レポートに込めるメッセージにこだわり、毎回レポートの見せ方も変えてストーリー性のある報告にしています。SE時代に感じていた課題を、ファイナンス部門の当事者として解決したいという想いで取り組んでいます」
こうして田中が運用してきた予測モデルは、着実に成果を上げています。
「成果の1つは、予測精度が飛躍的に向上したことです。これまでは事業部門からの申告に基づく予測だったため、精度にばらつきが見られました。しかし予測モデルが進化を続けていることで、直近では実績と予測の誤差は2%台にまで向上しています。
もう1つの成果は、ファイナンス部門全体への波及効果です。社内や本部内の会議で私たちの取り組みを紹介したところ、分析ツールを使いたいといった声が複数の部門から寄せられました。自分たちのDXの取り組みが、少しずつですが組織全体のマインド変革につながっていると感じます。
今後はデータをいかに使いこなせるかが富士通のプレゼンスに直結すると考えているので、データ活用・分析の取り組みをいっそう強化していきたいと思います」
異分野で輝く「自分だからできること」──停滞を恐れ、次のキャリアを模索し続ける
「ファイナンスの仕事はすごく楽しい」と話す田中。日々新たな発見があることが、やりがいにつながっていると言います。
「フロント部門にいた時には見えなかった事実が、財務データを通じてクリアに理解できるのがとても楽しいです。日々新たな知識が増え、成長を実感できる喜びがあります。
また、自身の提供価値が認識できることもやりがいの1つです。ファイナンス部門の中で10年以上のSE実務経験があるという異色の経歴を持つからこそ、計画の立案やプロジェクトの推進、会議でのプレゼンテーションなど、『自分だからできること』がいっそう明確になったと感じています」
現在の業務に魅力を感じているものの、田中はファイナンスでのキャリアにはとくにこだわっていないと話します。
「私の会計専門性は他の財務経理部門員には遠く及びません。もちろん第一優先は会計専門性も付けてファイナンス部門に貢献することですが、一方で今の強みであるデータ活用についてはより専門性を高めたいと考えています。
現在の業務で培った知見を社内のさまざまな事業領域で活かし、データ活用において日本のトップランナーになることが目標です。全社DXプロジェクト『フジトラ(Fujitsu Transformation)』を推進する富士通なら、それが実現できると信じています」
SEからキャリアを転換し、ファイナンス部門で次の目標を描く田中。新たな挑戦を続ける背景には、強い危機感がありました。
「若手の頃は単純に出世をめざしていましたが、今はむしろ危機感が挑戦の原動力になっています。1年後、3年後と、近い将来に自分がめざすポジションを獲得するために今どう行動すべきか。そうした意識が常になければ、キャリアアップは望めないからです。長いようで短い社会人生活の中で、1年1年が非常に貴重な時間であり、少しも無駄にはできないと考えるようになりました。
富士通では2020年度からポスティング制度を大幅に拡大し、キャリアの選択肢が広がっています。そのチャンスを活かすには、自ら考えて積極的に動く姿勢が必要です。私自身、メンバーに対して『このチームに3年も居続けると考えず、常に時代の変化に合わせて次のキャリアをどうするかを考えてほしい』と伝えています。
異なる部署や職種の経験は、今後のキャリアに必ず活かされます。仕事に変化がないと感じたら違う場所での挑戦をおすすめしたいですね。自分が価値を発揮できているかを、数年ごとに見つめ直すことが重要だと考えています。
私はそうしたマインドを、タイでの駐在経験で養いました。成果がシビアに問われる環境でスキルを磨きましたが、3年もするとノウハウの使いまわしが生じ、成長が止まる危機感を覚えました。忙しい日々の中でもキャリアが停滞していないかを点検し、5年くらいを目安に環境を変えるなど、自分をアップデートする意識を常に持つことが大切だと思います」
※ 記載内容は2025年3月時点のものです
